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圧倒する者

メアルを頭に乗せたまま戦場に向け一気に駆け出した俺は、まず手始めに進路上に居た黒い鉄の棍棒を持っている牛型の魔物の頭を掴むと、思いっきり後方に今もわらわらと現れている魔物の集団に向けてぶん投げた。


ボッコーーーーーーッン!!!!!


投げられた牛型の魔物が通り過ぎた後には、数百以上の魔物の死骸がバラバラに点在し、集団の中に1本の線が出来上がっていた。牛型の魔物はあまりのスピードの圧力に耐えられなかったのか既に死んでいる。そのまま俺は空中へと飛び上がると、くちばしが鉄のように固く鋭く尖っている大きな鳥を、そのくちばしを破壊しながら顔面をぶん殴り、そのまま振りかぶって魔物の集団が居る地面へと殴り落とす。


バッコーーーーーーッン!!!!!


鳥が地面にぶつかると爆発するように大きくえぐり土埃を上げ、周辺に居た魔物はその衝撃だけで吹き飛び、周りの魔物達を巻き込みながら死んでいく。


俺は着地をしようと体勢を立て直し、横幅が大きくでかい緑色の口から涎を垂らしている魔物の頭上に踵落としを食らわしたのだが、勢いが止められず、そのままその魔物を2つに引き裂くようにして地面に着地する。メアルが楽しそうにペチペチと拍手をしている。


騎士団、冒険者達、魔物達も何が起こっているのかわからないとでもいうようにその場で固まっているが俺は止まらない。着地点の近場に魔物達を正拳突きや、回し蹴り等覚えたての「格闘」スキルを練習するように試していき、全ての魔物を一撃の元に木っ端微塵にしていく。弾けるように爆散していく魔物達に他の多くの魔物達は戦々恐々、混乱したかのように逃げ出していく。それでも俺が止まる事はなく、未だ残っている魔物達を凄まじい速度で動きながらその命を刈り取っていく。俺の行動で動きが止まっている冒険者や騎士達に襲い掛かろうとしている魔物を見つければ直ぐ様石を拾い、顔に向かって投擲すると、石は視認出来ない速度を持って魔物の顔面を貫いた。俺は半円を描くように移動していく。移動中も魔物を殴り飛ばし、蹴り飛ばしていくと俺の通った後には、顔のない魔物や腹に穴を空けている魔物が雨のように降ってくる。そのまま魔物を駆逐しながら進んでいくと気が付けば俺の後ろには数百に及ぶ魔物の死骸が転がっており、残りの魔物は既に逃げて、この場に生きている魔物は1体も残っていなかった。


俺の動きはそれでも止まってはいなかった。今度はそのまま赤い盾の集団へと向かう。俺が迫ってくるのを見掛けると、大多数の奴は持っている武器を捨て、降参するように両手を挙げる。さすがに戦う意志の無い奴に攻撃を加えるのは流石に気が引けたので、近場に居る騎士達に任せた。というか、俺が通ろうとするだけで自然と道が開けていく。俺と目が合うだけで土下座しだす始末だ。おい、まだお前らに何もしてないんだが……それでも挑んでくる奴は居る。俺を殺そうと斬りかかってくるが返り討ちにしていく。剣を砕き、赤い盾をぐっちゃぐちゃに丸めてポイして、1発殴って終わらしていく。赤い盾の集団と騎士達は、魔物側と違って至る所で戦っていたので戦場を縫うように突き進んでいく。その間も挑んでくる奴は殴り蹴りでご退場してもらっていると、オーランドがガタイのいい奴を中心とした2、3人と斬りあっているのが目に飛び込んできた。実力はオーランドの方が上なのだが、盾と人の使い方が上手いみたいで、なかなか決定打を決められないようだ。


「よぉ、オーランド!手伝おうか?」


俺は足を止め、それをチャンスとばかりに斬りかかってくる奴を見もせず殴り飛ばしながらオーランドに軽い調子で声を掛ける。


「くっ……い、いや……大丈夫……だ!!こ……れぐらい……こなせないと……騎士には……なれないからな」


相手の攻撃をいなしながら俺へと返答してきた。大分息も上がってきているがオーランドが勝つだろう。オーランドは冷静に相手の動きを読んで的確に攻撃を加えていっている。というか、オーランドは多分騎士より強いと思うぞ。


「じゃ、ここは任せた」

「あぁ!!任された!!」


俺はシュタッと右手を挙げると、オーランドが戦っている赤い盾の集団以外の奴等を倒しに向かった。殴り、蹴り、投げ、倒した奴は騎士達に任せて、俺は次々と駆逐していく。気の荒い奴も居るので、そういうのは念入りにボコっていると、ドシンドシンと3m程あるんじゃないかと思えるくらいデカイ奴が現れた。


「グヘヘ!!おで、お前を殺ーーー」

ズドムッッッッッ!!!!!


赤い大盾と鎧を砕き、そのまま腹に1発入れて沈んでもらった。まぁ、デカイだけだったね。俺は再び赤い盾の集団の残りを倒しに駆け出した。




気が付くと赤い盾の集団は壊滅し、至る所で呻き声が聴こえる。オーランドも無事勝ったようで、辺りを見渡しながらこっちに向かって歩いてきていた。


「……ワズ……流石にやりすぎじゃないか?」

「……だよな。俺もそう思う」


結局、魔物達と赤い盾の集団のほとんどを1人でやってしまった。

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