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首謀者は……

このまま、はい終わりとはいかないだろうなぁ……主に森の方向に居る奴等のせいで。はぁ……


ナミニッサ、ナヴィリオ、ナレリナ様が俺へと近付いてくる。3人各々から御礼を言われるのはなんというかむず痒かった。だって相手は王族なんだもん。


「ナミニッサ、ナヴィリオ、ナレリナ様、頭を上げて下さいぃ~~~!!!」

「ちょっと待て、何故兄と妹は呼び捨てなのに、私は様付けなのだ?」


ナレリナ様がずずいっと俺に迫ってくる。美人が怒ると怖いと言うが、本当に迫力があって怖い。何か怒らせるような事しただろうか?


「え、いや……2人からは呼び捨てでいいと言われまして……」

「ほほぅ……兄上ならわかるが、ナミニッサもか……」


ナレリナ様がナミニッサへと顔を向けると、ナミニッサは何故か明後日の方向へと顔を動かす。口笛を吹こうとしているようだが、口からは「ヒューヒュー」と空気が漏れている音しかしていなかった。なんか可愛い。ナレリナ様はそんなナミニッサを見た後、俺の方へと向くとーーー


「なら、私もナレリナでよい……!!」

「わ、わかりました」


断れませんよ!!だってすんごい迫力なんだもん。本人が望んでるんですから断る理由もないですし。というか、なんでナミニッサは恨みがましそうな目で俺を見るんですか?


「いや~、フフフッ……ほんとよくやってくれたよ!!まさか、冒険者が王族を救う時をこの目で見れるなんてな」


レライヤさんが心底嬉しそうに笑いながら俺へと近付き、背中をバンバンと叩いてくる。レライヤさんはどこか警戒をしているような緊張感を持っていた。こんな空気の中で言いたくないんだけど……


「えぇと……まだ終わってませんよ?」


俺の発言にオーランド、ナミニッサ、ナヴィリオ、ナレリナ、レライヤさんは一斉に集まり輪のように立っている。


「ワズ様、終わってないとはどういう事ですか?」


ナミニッサが聞いてくる。


「大勢の人の視線をあそこにある森の中から感じる。多分だけど、そこに居ると思う……ナヴィリオとナレリナを呪具で操っていた奴が……」


ちらっとナヴィリオとナレリナを見ると、2人はナミニッサの方を見ていた。記憶が残っているのなら2人は自分に呪具を渡したのが誰なのかを知っているはず……まず2人にそんな怪しい物を渡せるなんて、相当地位が高く、近しい人でなければならないと思った。まずナミニッサは状況からして除外、専属執事、専属メイドさん達は元に戻った時の喜びようは本当だと思ったので除外、レライヤさんはナミニッサの協力者となると、2人に近しい人で現在この場に居ない人物……やっぱり2人に呪具を渡したのは……


「デンローガですね?」


俺はナミニッサの婚約者の名前を出して、2人に確認するように問う。


「……あぁ、私にあの腕輪を渡してきたのはデンローガだ。御守りだと言っていたよ」

「私もそうだ。兄上の様子がおかしくなり始めた時に、デンローガから守護のネックレスだと言われて……」


オーランドは驚愕の表情を浮かべているが、レライヤさんはため息を一つ吐いて緊張を解いていた。多分ナミニッサを除く、2人の周りに居る人物全員をレライヤさんは疑っていたのだろう。その人物がこの場に居ない事でほっと一息ついたのだろう。


「……これで婚約解消ですね……よし……」


ナミニッサはにやつきながら、何やらブツブツと言っていた。その顔に黒いモノを感じる。今度はレライヤさんが俺に問うてくる。


「しっかし、なんだってまたそんな事を?」

「さぁ?案外教えてくれるんじゃないですか?そういう奴って、自分のした事を誇らしげに言いますからね。ちょうど向かって来ているみたいだし」


そう言って森の方を指差すと、全員がそちらの方へと顔を向ける。そこには全員が赤い盾を持つ集団がこちらへと歩いていた。大体目算で800人くらいか?先頭には噂のデンローガが居るが、隣に両腕に赤い手甲を着けた大柄の男が居た。


「アイツはっ!!!」

「知っているのか?」


レライヤさんが大柄の男を見て叫び、ナヴィリオが尋ねるとレライヤは視線をその男に向けたまま頷き喉を鳴らす。


「名前はフリューゲル=レイザー。装備でわかる通り超近距離格闘戦を得意とするSランク冒険者だ」


Sランクという言葉にこの場は一気に緊張感が膨れ上がった。とうとうSランクかぁ。どれだけ強いんだろうなぁ……


「私の騎士達よ!!剣を取れ!!敵が来るぞ!!」


ナレリナの掛け声で先程までの歓喜の雰囲気はなくなり、一気に戦う空気をその身に纏う騎士達。よく訓練されてるなぁ……ナヴィリオも同様に自分の直属の騎士達に指示をとばし、レライヤさんも冒険者達へと話を通しに行っている。この場には俺とオーランド、ナミニッサとフロイド、クミアが残っている。メアルは念のため空中にて留まってもらった。

騎士達は慌ただしく動いている。


「なぁ……騎士志望として、俺も何かした方がいいのかな?騎士達の動きに付いていけないけど」

「そりゃあ、アピールしとくのはいい考えだと思うが……俺も騎士達がどこをどう動いてんのかわからん」


俺とオーランドが喋ってるとナヴィリオとナレリナがこちらへと来る。


「厚かましいお願いかもしれんが、相手にSランクが居る以上、君達にも協力をお願いしたいのだが」

「また力を貸して欲しい」


2人の言葉に俺とオーランドは了承の返事をしてナヴィリオとナレリナの後を着いていった。

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