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マーンボンド王家の現状

ナミニッサの手伝いをすると決めた俺達は詳しい話を聞く前に場所を移した。ナミニッサの指示で向かっていた村、マイマの村近くの岩場へと向かう。騎士っぽい男達は街道に寝かしておいた。向かう途中、俺が先頭で進んでいたのだが、やたらと後方から視線を感じるので振り返るとナミニッサが居たのだが、オーランドと話していて顔はこちらを向いていない。あれ?気のせいかと思い進み出すとまた視線を感じる……


バッ!!!


急に振り返ってもやはり向いていない。むしろ2人には不思議そうな顔をされて恥ずかしかった。その後は視線を感じても気にしないようにして岩場へと後方から案内されるまま向かった。これ、俺が先頭で居る意味あるんだろうか……


岩場に着いた俺達は各々適当に座り、ナミニッサから詳しい話を聞く。メアルは近くでひらひらと飛んでいた小さな蝶を追っている。癒されるなぁ……おっと、ちゃんと話を聞かないとなーーー




マーンボンド王国は昔は「ボンド王国」と呼ばれており、この国には2つの王家が存在していた。最初に王となった「グナルボンド」、初代王の弟であった「マーンボンド」。この2つの王家が交互に王となり、また王家を常に支えてきたのが、初代王の従兄弟の血筋にあたる公爵家「フレボンド」。この2つの王家とフレボンド公爵家によって、この国は栄えてきた。だが、今この国に王家は1つしか存在しない。先代王デオ=グナルボンドは子が居らず病気でこの世を去ったのだ。現在の王はギヴィリオ=マーンボンド。良王として知られ国民からも慕われており、王妃ミレリナ=マーンボンドとは今でも熱々との事。羨ましい。この2人には3人の子供が居る。長男の名はナヴィリオ=マーンボンド。内政・外交・戦略と何でもやりこなし「稀代の天才」と呼ばれている知略家で有名らしい。長女の名はナレリナ=マーンボンド。戦闘能力に優れており闘いでは血の雨が降ると言われる事から「血雨の戦姫」と呼ばれている。そして次女のナミニッサ=マーンボンド。結界だけに留まらず、ありとあらゆる防御に優れており「無血の聖姫」と呼ばれている。これがナミニッサから聞いた依頼内容の前情報だ。


だが、問題はここからであり、依頼の助けて欲しいという部分だ。現在、王と王妃は原因不明の病で眠っており、意識も戻らないそうだ。そして、兄ナヴィリオと姉ナレリナは理由もなく敵対し、現在互いを殺そうと戦の準備をしているらしい。本来兄姉の仲はとても良く、ナミニッサは急に始まった戦には何かがあると思い独自に3人の従者と協力者で調査を行っていたそうだ。その内の従者の1人が指輪と剣の持ち主だった。何も掴めぬまま急に連絡が取れなくなったその人を探している内に、謎の集団に襲われ2人の従者は捕らわれた。なんとか捕まった2人を助け出そうと協力者に頼み居場所を突き止めてもらったが、1人で挑んでしまったため返り討ちに会い、逃げている最中に俺達に出会ったそうだ。


「つまり、その兄姉の戦を止める事とその原因を突き止め、取り除いて欲しいって事でいいの?」

「はい」


ナミニッサは悲痛な面持ちで現状を話してくれた。


「えっと……なんだっけ……そうそう、フレボンド家に協力は頼めないの?王家を支えてきたんでしょ?」

「……たしかにフレボンド家は王家を支えてきました。現在、当主のゼィズ=フレボンド様は宰相の地位に居ますが、どうにも信頼が置けないというか……それと実はゼィズ様の息子デンローガ=フレボンド様は私の婚約者なのですが、どうにも胡散臭くて……」


おっと、既に婚約者居ますか。ならやっぱりさっきの報酬は私ってのは俺の聞き間違いだろうな……なんだろう……ちょっと胸がもやもやする。


「ですが、これは形ばかりの婚約なので!!宰相に半ば強引に進められた話ですので、父様に頼めばいつでもばっさり切る事が出来ます!!本当ですからね!!むしろ、私はあの方との結婚など望んでおりませんので!!」

「あっ、はい」


ナミニッサがずずいっと俺に迫って真剣な表情で言ってくる。わかった!!わかったから!!近いから!!近すぎるから!!心臓がもたないから!!正直、ナミニッサが近付いてびっくりしたから、直前の話が飛んじゃったよ。


「では、ナミニッサ様。私達はこれからどう行動すればよろしいのでしょうか?」


オーランドが冷静に聞いてくる。おい、この状況で普通だなお前。ナミニッサはハッとしてあたふたと俺から距離を取ると、コホンと小さく咳払いをしてオーランドの問いに何もなかったかのように答える。


「まずはこのままマイマの村へと向かいます」

「直ぐに王都に向かわれないのですか?」

「はい。マイマの村には私を襲った集団の拠点がありまして、そこに従者の2人が捕らわれているので助け出したいと思います。私は防御に特化しており、攻撃は全然駄目ですので先程は失敗しましたが、御二方が居れば……」

「なるほど。まぁ確かに俺達とは言わずワズが居れば大丈夫でしょうね」


そう言ってオーランドは俺に向かってニヤッと笑い、ナミニッサは熱い視線を送ってくる。あれ?俺当てにされてる?


「彼はFランク冒険者なんですが、実は既に何度もリニックの街を救い、英雄と呼ばれているんですよ」

「まぁ、それは凄い」

「微力ながら自分もお助けしますので、必ずご家族を救いましょう」

「ありがとうございます。ワズ様も宜しくお願い致します」

「あ~、はいはい……」


そうして俺達は夜遅くにマイマの村へと、こっそり潜入した。

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