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頑張れ!!オーランド!!

俺とメアルはオーランドを追って近場の森へと入っていった。そのままメアルが指し示す方へ進んでいくと、少し開けた場所でオーランドが剣を抜き、10人程の盗賊達と対峙していた。盗賊達の中で一際大柄な男が小さな女の子を掴み、斧の刃を首筋に当てている。どうやら人質を取り、オーランドの動きを封じているようだ。オーランドの左肩には後ろから切りつけられたような切り傷があり、少し血も流れている。多分、一緒に着いていった盗賊達に不意討ちをくらったのだろう。とりあえず、無事で良かった。状況を確認しているとオーランドが俺に気付いた。


「ワズ!!どうしてここに?」

「どうしてって……様子見?」

「なんだテメェは?」

「あっ!あいつ!村でそこの馬鹿と一緒に居た奴ですぜ」


盗賊の1人が女の子を人質に取っている大男を親分と呼び、俺の事を教える。しかし、俺の友達を馬鹿呼ばわりはいけないなぁ……コロスヨ。


「ふぅ……んで、アンタが親分って事はナントカ兄弟の兄って事?」

「『ディゴンド兄弟』だ!!」

「テメェ、『ディゴンド兄弟』の兄であるディゴ様を知らねぇのか?」


周りの盗賊達が喚き散らす。


「いや、さっき知ったよ。丁寧に村に居た盗賊達が教えてくれた。まぁ、今は全員地面に埋まってるけどね」

「「「?」」」


盗賊達は何を言っているのか訳がわからないという顔をして、オーランドは想像がついたのか苦笑いをしていた。大変だったんだよ、全員埋めるの。


「訳のわからん事を……まぁいい、確認は後だ。どうせテメェも手も足も出ねぇんだからな」


そう言って大男は女の子に向ける斧をこれ見よがしに俺へと向ける。女の子は目に涙を貯め、恐怖のあまり叫ぶ事も動く事も出来ないようだ。俺はオーランドへと声をかける。


「オーランド、大男はお前がやれ。大丈夫、強くなったお前なら充分勝てる。まぁ、鍛練の一貫だと思え」

「……わかった」

「テメェ等、少しでも動きやがったらーーー」


オーランドが頷くと同時に俺は一瞬その場から消えた。


「この小娘がどうなっても……どうなっても……」


大男が虚空を掴む自分の手を見て、俺の方を見ると腕の中に女の子が居る事で驚きの表情を浮かべる。


「なっ……一体どうやって……何のスキルなんだ……」


普通にちょっと本気で動いただけです。女の子も状況がよくわかっていないのか固まったままだ。俺は女の子を抱き上げ、落ち着かせるように背中を撫でる。


「もう大丈夫だから、もう少しこのままでいてね」


オーランドも女の子が助かってほっとしたのか、安心させるために優しい表情を女の子に向け言葉をかける。すると、女の子の頬は真っ赤になった。助けたのは俺なんだけどなぁ……はぁ……つくづく自分は女性にモテないんだと思った。


「お前等、囲んでコイツ等を殺せ!!」


盗賊達が大男の言葉に従い俺達を囲む。俺はそれを見ながらオーランドへと再び声をかける。


「さっきも言った通り、お前は大男をやれ。他のは俺がやっとくから」

「わかった!!」


オーランドは返事と共に大男に向かって駆け出した。行く手を遮るように盗賊が立ちはだかるが、勢いそのままに一振りで無力化すると大男に斬りかかる。その剣を大男は斧で受け止める。


「コイツは俺が殺る!!お前等はそっちを殺れ!!」


大男の言葉に従い残りの盗賊達が襲い掛かってくるが、女の子に当たらないように回避しながら蹴り飛ばしていく。両手は女の子を抱えてるから塞がってるんだよね。村に居た盗賊達と同じようにその他山を作っていく。


程なくして盗賊達は全員その他山へとなりました。大男はその結果に驚愕の表情を浮かべる。


「馬鹿なっ!!!」

「お~い、余所見していいのかぁ?」


大男に出来た隙を見逃さず、オーランドの剣が大男に届く。腹部に浅い切り傷を作った。


「テメェ、ぶっ殺す!!!」


大男が斧を振り回す。だが、オーランドは冷静に剣で受け流していく。それでも何回かは危ない場面があった。どうやら互いの実力は近いみたいだ。それでも僅かながらオーランドの方が上回っているように感じる。大男は勝負を決められず、徐々に苛立ちを表して攻撃が大振りになる。そこを見逃さずオーランドは斧を避けると大男の体勢を崩すように体当たりをし、転倒させると即座に斬りかかる。大男は転倒した時に掴んでいた土を目眩ましのように投げると体勢を立て直すように立ち上がりかけるが、オーランドは目眩ましの土などものともせず、そのまま突っ込み剣を大男の胸を貫いた。


「はぁ……はぁ……」


オーランドが大男の胸から剣を引き抜くと、大男はそのまま力を失ったように倒れた。オーランドは剣についた血を払うと、顔の汗を拭いこちらに勝利の笑みを見せる。


「強くなった実感は持てたか?」

「あぁ……ふぅ……少し自信が持てたよ。なんたってワズにはいつもボコボコにされてたからなぁ」


憎まれ口に笑顔で返すとオーランドに女の子を預け、そのまま捕まっている人達を助けに向かわせた。見張りが居るかもしれないので注意は怠るなと伝え送り出す。俺は既に事切れている大男を片手で担ぎ上げ、それを土台にその他の盗賊達を乗せていき、乗せ終わるとゆっくりと村に向けて歩き出した。

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