魔人
ブクマ評価ありがとうございます!!
ストックに余裕が出来たので、早出しします。
明日もいつも通りに投稿します。
「オーランド!!何かあったのか?」
リニックの街に近付くと知り合いが見えたので状況を聞いてみた。先程から急いで街を出ていこうとする人が多い。まるで、この場から早く離れようとしているように。
「おぉ、ワズか。今反対側のもーーーってドラゴンッーーー!!!!!」
「あぁ、大丈夫だって。えっと……どう言えばいいのかな……」
やばい……すっかり忘れてた。オーランドはなんか臨戦態勢に入ってるし……どうしよう……
「……ま、まさかそのドラゴン……従魔なのか?」
従魔?
従魔ってたしか契約で従え使役する魔物の事だったよな……よし、その案で決定。オーランドよくぞ言ってくれた。
「ま、まぁ……そんなようなもの……かなぁ……」
「キュイッ!!」(ペシッペシッ)
メアルが頭の上で俺をペチペチと叩いてくる。抗議でもしてるのだろうか?やめなさい。しょうがないだろう。
「はぁ~……ドラゴンを従魔にするなんて、やっぱり凄かったんだなぁ!!あっ、じゃあ従魔とわかるように……これをどこかにつけておいて貰えるか。街中でも無用な騒ぎにならないように用意されている従魔の証明だからさ。と言ってもドラゴンじゃあ騒ぎは起こるかもしれないがな」
「ありがとう。まっ、その時はそれ相応の報いを相手が被る事になると思うよ」
オーランドが後ろにある簡易な机に置いていた袋から赤い帯を渡してきたので、受け取りメアルの首にそのまま巻こうとしたのだが、イヤイヤと頭を振る。え~、じゃあどうしろと。その思いが伝わったのかどうかはわからないが、唐突に俺の頭から降りると地面に蝶のような絵を描いて、むふんと首を差し出してきた……つまりそのような形で巻けと……はぁ……はいはい、わかりましたよ。メアルだって女の子だもんな。無骨に巻くより綺麗に着飾りたいよな。俺は四苦八苦しながらメアルの首に蝶の形で帯を巻いた。それに満足したメアルは再び俺の頭に乗っかった。
「それでオーランド。さっきも聞いたけど、この騒ぎは一体何があったんだ?」
「あぁ、そうだ!!ここの反対側に平原があるんだが、そこに魔人が現れたんだよ!!しかも3体も!!今はBランク以上の冒険者総出で抑えているが、それもいつまで持つかわからん。全ての住人を逃がせられるかどうか……」
「……魔人?」
知らないと言うと呆れられたが、オーランドから聞いた事によると『魔人』とは、邪神の手先と言われている元・人族で、魔物が生まれている魔力溜まりと呼ばれる空間に不用意に触れると、人族とは異質の魔力がその身に宿り、ステータスが大幅に上昇するが、破壊衝動に支配され、暴走している状態の事らしい。未だその状態から元に戻す方法はわかっておらず、現在は討伐対象になっているようだ。ちなみに魔人かどうかは見れば分かるらしい。見た事ない俺にはどんな姿なのか想像もつかない。
俺は情報を頭の中で反芻しながら、街中を突っ切って冒険者達が魔人を抑えているという平原へと急いだ。この街を見捨てるという選択はなかった。思い入れはないが、知り合った人達を助けたいと思ったからーーー
反対側の門に居た冒険者達に止められるかと思ったが、俺のAランクを相手にした模擬戦を見ていたらしく、すんなりと通され、平原へと着いた俺の目の前では魔人の3体を囲むように20人くらいの冒険者達で戦闘が行われていた。冒険者達の輪によって魔人の姿は確認出来ない。その光景から分かるのは、積極的に挑むのではなく防御主体である事から街の住人を逃がすために時間稼ぎに徹しているのだろう事だけだ。冒険者達の少し後ろから指示を出しているレーガンを見つけたので、状況を確認するために近くに移動した。
「レーガン!!状況はどうなってる?」
「あぁ、ワズか。お前が来てくれて正直たすかーーーってドラゴン!!!頭に!!!」
またか……俺は従魔であると嘘の報告をしてさっさと状況を聞いた。
「ギリギリだな……いつ均衡が崩れてもおかしくない。なんとか今までもったが、今回は相手が悪い……」
「ん?どういう事だ?」
「魔人の事は知ってるか?」
「あぁ、ついさっき基本的な事を聞いただけだが」
「それで充分だ。つまりだな、魔人になるとステータスが上昇するって事は元が強ければ強い程やっかいになっていくって事だ」
「なるほど……」
つまり、その3体の魔人は元々強い人だっただけに、今ステータスがさらに上がって、より強くなったという事だな。
「昨日目覚めて田舎に帰ると言って街から出ていったと思ったら、今日の朝方、この街に来ようとしていた行商から魔人がこの街に向かって、ゆっくりと歩いてきているとギルドに駆け込んで来てな。急いで街に居るBランク以上を集めて対峙したんだが……」
「……ん?で?」
レーガンが苦々しいものでも見るように冒険者達の輪の中に居る3体の魔人の方に視線を移す。
「魔人3体は元『黒炎』の奴等だ」
「はっ?」