前へ次へ
22/217

あれ?どこかで見覚えが……

PV1万5千突破しました!!


ありがとうございます!!

ありがとうございます!!


読んで下さってる皆様。本当にありがとうございます!!

ギルドを出た俺は早速準備に入った。といってもやる事はギルドからまた借りた袋に、食料と水を入れるくらいだ。風の光亭に向かい食料と水がどこで手に入るか尋ねると、ケーラさんは「任せなさい」と言って、カウンター裏に引っ込むと、魔物の肉を挟んだサンドイッチと水筒をすぐ用意してくれた。マジ感謝です。サンドイッチと水筒を袋にしまうと俺は街を出て、先ずは行った事のある東の森へと向かった。森に着くと今度は北に向かって歩きだした。ただ、尋常じゃない速度で。本来なら湖まで馬でも4、5日はかかる道程なのだが、俺の敏捷なら散歩してる感覚で辿り着く。早い早い。敏捷に関しては、街を歩いて普通に歩けてる事に気付いた事で自分の望む速度を出せるのがわかったので、この力を知った時から困る事は無かった。ただ、限界がわからない。自分で自分を見れない以上、どれだけ早く動けているのかわからないのだ。まぁ、特に問題はないが。


そんな事を考えている内に湖の近くまで着いた。そう言えば魔物に会ってないな。ゴブリンくらいならその辺りに居そうなもんなのに。別に出てきて欲しいって訳じゃないから、どうでもいいが。俺は湖の畔に座ると袋からサンドイッチと水筒を出す。さて、腹ごしらえでもするか。


サンドイッチを頬張っていると湖の先にある森が騒がしい。時折破壊音が聞こえる。その音が、まるで何かを追って攻撃しているように、段々と湖の方に近付いてくる。音がする方をじっと見ていると、森から俺の頭ぐらいの白い塊と、その後ろから2頭に1つの体、尻尾は蛇の全長3m程の犬「オルトロス」と呼ばれる魔物が現れた。どうやら、オルトロスは白い塊を食べようとしているようだ。白い塊にはコウモリのような羽が飛び出しており、その羽を使って飛び回って逃げまわっているが、どうやらそれほど高くは飛べないようだ。危ない場面もあった。俺はその光景をサンドイッチを食べながら眺めていると、唐突に白い塊が俺目指して飛んでくる。ん?何やらこの白い塊に見覚えが……そう思っている内に白い塊は俺の胸にひしっとくっついてきた。敵意を感じられなかったのだが、特に抵抗もせずそれを受け入れた自分に驚いた。飛び込んできた白い塊を確認しようとしたが、その前にオルトロスが俺の前に現れ、「「グルルッ」」と唸っている。2頭とも口端を上げ涎をだらだらと垂らして、こちらを大きな餌だと思っているのだろう。ベロリと舌で涎を拭き取ると、大きく口を開け迫ってきた。


「伏せっ!!」

ドゴォーーーーーーーーーンッ!!!!!


オルトロスの動きを片腕で止め、そのまま地面に叩きつけた。まったく人の食事を邪魔すんなよな。サンドイッチの残りを口に放り込み、オルトロスを確認すると、どうやらもう死んでいる。手加減を忘れてたからな……相変わらずデタラメな力だな。モグモグ……ゴックン。サンドイッチを呑み込むと、未だ俺にくっついている白い塊の首らしきところを摘まむと、引き剥がし、目の前にもってくる。


「キャウ!!」


白い塊が俺を見つめ、鳴く。爬虫類のような体。ずんぐりむっくりしているのは幼さの特徴だろう。瞳は大きく、全てを吸い込むような黒色で、手足には小さいながらも鋭い爪があり、歯も鋭い。尻尾も長く、体表は白く美しい鱗で覆われている。間違いなく今俺が摘まんで持ち上げているのはホワイトドラゴンである。というか、見覚えがある……ような……


「……もしかして……メアルなのか?」

「キュイ!!キュイ!!」


嬉しそうに頷きながら鳴く。人語を理解しているな。間違いなくメアルだ。こんなとこで何やってんの?


メアルは俺が山で生きていた時に知り合ったドラゴン夫婦の娘だ。出会いは、単純に喧嘩を吹っ掛けられた事。夫婦は共に人語を理解しているし、喋る事も出来る。なので、夫の方が「グハハ!!矮小な人間がこのような所に何故居る?どうれ、暇潰しに叩き潰してやろう」と言ってきたので、無言でブッ飛ばした。今思えばあの頃から俺のステータスは異常だったんだなぁ……その後、夫婦で謝りにきたが気にしてないと手の仕草だけで追い返したんだが、メアルを紹介されたり、夫婦それぞれが喋らない俺を相手にお互いの愚痴を言ったりと鬱陶しかったのは覚えている。あれだな?ただ、聞いて欲しかっただけなんだろうな……夫はブラックドラゴンで名は「ラグニール」、妻はホワイトドラゴンで名は「メラル」で、ラグニールは自分の事を龍王だと名乗っていた。


と、思い出していたんだけどーーー


「あれ?お前等の住処はあの山だよな?なんでメアルはココに居んの?」

「キュイ……キュイ~……」


駄目だ。わからん。


「え~と、ラグニールかメラルは一緒じゃないのか?」

「キュイ!!」


メアルは小さな手を、俺が向かおうとしていた山の頂上を指し示す。


「…………目撃されてたのはお前等かよ」


俺はため息を吐くと、メアルを頭の上に乗せ頂上を目指して歩き出した。

前へ次へ目次