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なんて簡単な奴等なんでしょう

厳つい声を出した男はカウンターの奥から出てきて、こちらの方をすげー睨んでいる。


男はこの場の誰よりも大きく高く、身長なら2m以上に筋肉で出来てるであろう厚い腕や胸板 、顔も厳つく、目は歴戦の戦士を感じさせるように鋭く、右目の横には頬まで続く大きな1本の傷がある。頭に髪は無かった。エプロンを着けていなければ普通に歴戦の戦士といった所だろう。


そんなハゲがのっしのっしとこちらに近付いてくる。すると、ルーラが俺の後ろから抜け出し、ハゲに抱き着いた。


「うわ~ん!!お父さ~~ん!!!」

「おぉ、どうしたんだ?ルーラ!!何があった?」


お、お父さん??あのハゲが??

……似なくてよかったね、ルーラ。


ルーラが涙をこらえながら、ハゲに何があったかを説明している。周りの冒険者達も時折、補足していた。ちゃんと俺の事も言ってね。時折ハゲがこっちを睨んでるからさ。ちなみに俺はその間、赤髪の腕を掴んだままお互いに睨みあっている。


説明し終わったのか、ハゲはルーラの頭を一撫でした後、自分の後ろに隠すとこちらに近付いてきた。


「テメェらが俺の料理にいちゃもんつけた『黒炎』とかいうガキ共か?」

「あぁん!!だったらなんだ、ヘボ料理人」

「俺は違うぞ」


俺は即座に否定した。こんな奴等と同じと思われるのは嫌だから。


「ふぅ……テメェらはどうやら最近この街に来た冒険者のようだな」

「だったらなんだ」



「俺がこの街の冒険者ギルドマスター・レーガンだ」






はっ!!!!!!

今、このハゲなんつった!!

ギルド……マスター……だと……このハゲが……


赤髪達はその言葉にポカーンとしていた。

そして俺はーーー


「う、嘘だっ!!!お前みたいなハ……奴がルーラと血が繋がってるだと!!!正直に言えっ!!!本当はケーラさんの連れ子で血は繋がってないんだろ?」

「そっちかよ!!ちゃんと血が繋がっとるわ!!正真正銘、ルーラはワシの愛する娘だっ!!!それとお前今何て言いかけた?」

「嘘だーーーーー!!!!!」


俺の言葉に周りの冒険者達は、うんうんと腕を組んで頷いている。俺はその場に崩れ落ちた。なんでなんだよ……こんなハゲたおっさんには奥さんと娘さんが居るのに、俺には現在、友達も恋人も居ないんだよ……不公平だ……不条理だ……あんまりだよ……


「ちっ」


『黒炎』の3人は舌打ちだけすると、このままここにいるのはごめんだとばかりに、出ていこうとしている。だが、それを見逃すハ……ギルドマスターではないようだ。


「おい、『黒炎』共!!明日、朝の内にギルドの俺の部屋まで来るように!!お前達の行動は少し目に余るからな」

「はぁ?なんでだよ?俺等Aランクがわざわざそんな事で小言と言われなきゃいけないんだよ?」


Aランク?あぁ、そう言えばコイツらAランクなんだっけ……ふ~ん……


……まてよ……




俺はにやっと心の中で笑うと、ハ……ギルドマスターと言い争っている『黒炎』にーーー


「おい、逃げんのかよ!なんだ、Aランクっつったって大した事ないんだな。ほんとにAランクなのか?あぁ、なるほど!!あれだろ?他人の功績に乗っかってAランクになったから、自分の実力じゃないんだろ?そりゃ、恥ずかしいよなぁ。だから威勢だけで、通じないとなると、アレコレ自分の中で理由をつけて逃げるんだろ?いいぜ、見逃してやるからさっさと逃げろよ」


思い付く限りの挑発の言葉を投げた。

ハ……ギルドマスターは、余計な事言ってんなとこちらを睨み、ルーラは心配そうに見てくる。肝心の『黒炎』達は、全員顔が真っ赤になるまで怒り狂っている。簡単な奴等だなぁ……


「上等だテメェ……なら、俺等の実力をその身に刻みつけてやるよ」


俺と『黒炎』の3人は互いに睨みあい、一瞬即発になる。『黒炎』の3人は既にそれぞれの武器に手をかけていた。だが、それを看過出来ない者が居た。


「やめんかっ貴様等!!」


ハ……ギルドマスターが俺と『黒炎』の間に割り込んでくる。ちょうど真ん中に立ち、両手を広げ俺達の距離を開けようとする。


「おいおい、ギルドマスターよぉ。いくらなんでもここまで言われちゃ、さすがの俺等も矛を収める事は出来ねぇぜ」

「わかっとるわ……」


ハ……ギルドマスターは苦虫を噛み潰したような顔をすると、こちらを見た。俺は『黒炎』の奴等にもよく見えるように、フッと鼻で笑ってやった。


「そっちの小僧もやる気か……わかった……なら、ギルドの修練場を使った模擬戦なら許可してやる。命のやり取りはするなよ。それでいいな?」

「いいぜ!なら、明日は調査報告で動けんから明後日の昼丁度でどうだ?」

「えぇ、構いませんよ」

「俺等に喧嘩を売った事を後悔させてやるよ!」


俺の了承を確認すると『黒炎』の3人はそれだけ告げ、そのまま出ていった。よしよし、上手くいった。俺はにやにやしながら、その後ろ姿を見送った。

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