第99話 荒れた天候
「落雷で死亡ってなんですか!? 折角ザリガニを倒して浮かれてたのに、気分が台無しじゃないですか!」
うがー! 折角の大勝利のハイテンションがどっか吹っ飛んだ-! おのれ、落雷め、許すまじ! あぁ、もう、雨も土砂降りになってて鬱陶しいし、ゴロゴロと鳴ってる雷はムカつくー!
金金金 : サクラちゃん、荒ぶってるなー。
いなり寿司 : まぁ今の気持ちは分からんでもない。
イガイガ : 咲夜さんが落雷死亡フラグとか言うから……。
咲夜 : ちょ、俺のせい!?
「そういえば咲夜さん、そんな事を言ってましたよねー!?」
咲夜さんか! 咲夜さんが私の死亡フラグとか言うから、本当にフラグ回収をしちゃったのか! 咲夜さんは私のフラグを立てるのがお役目ですか!?
「……ふぅ、流石に単なる八つ当たりでしかないので、糾弾するのはやめておきましょう」
死んじゃったものは仕方ないし、咲夜さんを責め立てるのも筋違いだもん。ともかくエリアボスのザリガニを倒せた事は間違いないから、私も無駄にテンションを上げ過ぎちゃったしね。
咲夜 : ほっ……。
ミツルギ : よかったな、咲夜さん。
ミナト : ところでサクラちゃん、どの辺りにランダムリスポーンしたの?
「……そういえばどこでしょう?」
ちょっと荒ぶってて今いる場所の確認をしてなかったよ。えーと、現在地は……丁度マップのど真ん中辺りの川の横だね。
土砂降りの雨だから時間を飛ばしたい気分なのに、確保した安全圏からはかなり離れちゃったから寝て時間を飛ばそうにも飛ばせないー!
「うーん、なんとか滝の近くまで戻りたいですね……。流石にこの雨は鬱陶しいです」
小雨程度なら気にしないけど、こんな雷に打たれて死ぬような天候で呑気にしていたくはなーい! これこそ、本当に時間を飛ばして回避すべきタイミングな気がする!
ミツルギ : 雨は、まぁ基本的に鬱陶しいからなぁ。
イガイガ : 風邪を引く心配も服を汚す心配も何もなく、雨の中を走れるってのもあるんだけどなー。ここまでの悪天候は流石に飛ばしたい。
いなり寿司 : というか、雷雨はそう頻繁にはないんだけど……。
G : 普通の雨なら割とあるけど、雷雨は全然無いわけじゃないけど結構レア天候だよなー。
「レアな天気でも、死ぬのは勘弁です!」
うがー! 死因がレアな落雷って、何の意味があるのさー! あ、でも配信的にはレアな死に方は美味しい展開? ……そういう事にして、気を紛らわせよう! そうしよう!
「そこで質問です! エリアが変われば、天候も変わりますか!?」
変わるなら、他のエリアを目指そう! 変わらないなら、滝まで戻って時間を飛ばして晴れに戻す! それでも雨だったら、どうしよう……?
ミナト : んー、時と場合によるかなー? まぁ雷はそう長くは続かないし、エリアの移動までの間に収まるとは思うよ。
富岳 : ここまでの土砂降りだと、隣接エリアはどこも雨は降ってる可能性は高いがな。まぁ、雷はこのエリアだけだろうが……。
チャガ : どっちにしても、移動中は雷が落ちてくる可能性はある。
神奈月 : ランダムリスポーンした位置がどこに向けて移動しても遠い位置ってのがなー。
「あー、そうなるんですねー」
時間を飛ばすにしても、他のエリアに移動するにしても、結局この雷雨の中を移動しなきゃいけないんだ。……うーん、大自然の猛威をこんな形で体験するとは思わなかった!
それにしても、本当に今のタイミングでは嫌な位置にランダムリスポーンしたんだねー。これから次の目標を決めるとこだから、天気さえ良ければ場所としては良いはずなんだけどなー。
「……むぅ、仕方ないですね。こうなったら、落雷で死なないように注意――」
あれ? そういえば落雷では死ぬんだよね? そして、今も土砂降りと雷鳴も続いているよね? これ、もう一度落雷で死ねば、もう一度ランダムリスポーンが出来るんじゃない?
それで滝の近くまで行けたら時間を飛ばしてもいいし、富岳さんが言うには他のエリアだと雨は降ってても雷は落ちてこなさそうだから他のエリアに行けばいい! よし、これだー!
金金金 : はい、始まりました。サクラちゃんの狐っ娘アバターのしたり顔!
神奈月 : おー、何か思いついたっぽいな。
イガイガ : 今回のはなんとなく予想が出来た。
いなり寿司 : 同じく。
G : いっそ、やりまくったら良いのでは?
咲夜 : あー、確かにそれもありか。
「場合によっては何度かするかもしれないですねー! それじゃ、思いついたのをやってみましょう!」
疾走は再使用時間のカウントゲージが出てるから、まだ使えないねー。死んだらHPは全快なのに、スキルの再使用時間はリセットしてくれないんだ。まぁ流石にそれは仕方ないよね。
ともかく、さっきはライオンで思いっ切りジャンプしたら雷が落ちてきた。即ち、少しでも高い位置に行けば、再び私に雷が落ちるはず!
「それじゃいきますよー! 全力で走ってからの、大ジャーンプ!」
スキルはないけども、今の私に出来る渾身の跳躍! 雷よ、再び落ちてこーい!
<規定条件を達成したので、スキルツリー外の基礎スキルが解放されました>
<スキル『跳躍強化』を取得しました>
あれー? 雷は落ちてこないまま、普通に着地した上に、全然予定外のスキルが手に入っちゃったよ? 何がどうしたらこうなるのー?
「なんで雷は落ちてきてくれないのに、スキルの取得になってるんですか!?」
でも、この『跳躍強化』ってスキルは名前的に便利そう? え、でも今まで結構大ジャンプした事はある気もするけど、なんで今取得なのー?
咲夜 : このタイミングで『跳躍強化』の取得か-。
いなり寿司 : 『跳躍強化』ってスキルツリーにない場合だと、回数が必要だったよな? 何回だっけ?
ミツルギ : 思いっきりジャンプを50回だな。
富岳 : 結構ジャンプから攻撃に繋げてたり、回避に後ろに飛び退いてたりしたから、それがここで影響してきたか。
「あ、回数が必要なのもあるんですね!?」
そっか、そっか! 何だかんだでジャンプからの攻撃や後ろに飛び退いての回避は何度もやってたし、それが私の力となってスキルとして現れてきたんだね!
こうやって手に入るって事はライオンのスキルツリーの中には無いって事だし、予定外の取得だったけど、持ってて悪いものじゃなさそうだし、結果オーライ!
って、結果オーライじゃないよ! 落雷で死んでランダムリスポーン計画は結局失敗してるし!
「あの、なんで今、落雷は無かったんですかねー?」
神奈月 : 雷が落ちるのは割と運の部分があるからなー。
ミナト : 確率を上げるには、より高い場所に行くことだねー。そういう意味では、今『跳躍強化』を手に入れたのは良いかも?
「おぉ、そうなんですね!? ちょっと効果の確認の為に、スキルの詳細を見てきます!」
多分、シンプルにジャンプでの距離が伸びるとかそういう効果だとは思うけど、この辺はしっかり確認だ-! ということで、詳細を表示!
『跳躍強化』:パッシブスキル
ジャンプをする際に、少し飛距離を伸ばす事が出来る。
「おぉ、大体想像通りの強化内容でした!」
ふっふっふ、これならば雷が落ちる可能性を少しでも上げられるはず! そうして再び雷に打たれて、私のライオンは死ぬのですよ!
……あれ? なんで落雷で死んで怒ってた筈なのに、落雷で死ぬのが目的になってるんだろう? うん、まぁそこは気にしない方向で!
「それじゃ、もう一度行きまーす! 全力で走ってからの、大ジャーンプ!」
おぉ、今度はさっきよりも体感出来るくらいに高く飛んでる気がする! これがスキルで強化の――
<サクラ【器用なライオン】が死亡しました>
<死亡した為、ランダムリスポーンとなります>
……はい、今度はちゃんと雷が落ちてきて死にましたよ。狙い通りではあるんだけど、少し新スキルの効果を体感してたんだから、そこはもう少し余韻が欲しかったのですよ。
まぁいいや。とりあえず今回は狙い通りに落雷で死んで、無事に……この場合は無事って言うのかな? うーん、まぁそれは良いとして、何とかランダムリスポーンには成功!
「なんとかランダムリスポーンが出来たので、現在地の確認ですねー!」
さてさて、どこら辺にランダムリスポーンになったのかなー? 雷さえないのなら、湖でも森でも、更なる川の下流でもいいよね。あ、でも今は草原エリアに戻っても仕方ないからそこは除外……。
「あー!? ここ、さっきと大して位置が変わらないじゃないですかー!?」
G : おぉ、川は渡れたな。
神奈月 : まさか、対岸に渡っただけとは……。
ミナト : ……あはは、サクラちゃん、ドンマイ!
真実とは何か : 真実とは時として残酷なものである。
金金金 : サクラちゃん、もう一度だ!
ミツルギ : まぁそれもありだよな-。
咲夜 : もう一度やっちまえー!
「うがー! もうヤケクソでやってやりますよー!」
こうなったら意地でも狙ったところにランダムリスポーンで行ってやるー! そうじゃないと、この雷に負けた気がして嫌なのさー!
「うがー! こうなったらなる様になれです!」
「おっ、その意気だ!」
「……それにしても雷雨ってゲームの中に必要なんです?」
「なんだかんだで活用してるサクラがそれを言う!?」
「あるものを利用してるだけですよー!」
「……利用できるから存在してるんだよ?」
「あっ、確かにそれはそうですね」
「そうそう、そういう事」
「……何か誤魔化されてる気もしますが、今は良いとしましょう! 私が無事にランダムリスポーンで目的地へと辿り着けるように応援してくれる方はブックマークや評価をお願いします!」
「ここで普通に進まないのを選ぶのがサクラらしいよね」
「だって、ただ落雷で死んだだけじゃ悔しいんですもん!」
「そこがサクラらしいとこ。さて次回は遂に話数3桁に突入で『第100話 落雷を利用して』です。お楽しみに!」
「次は100話目ですよ! 雷め、存分に利用してやるのです!」