第93話 オオカミの脅威
「ぎゃー!? 卑怯ですよ! 怯ませて襲い掛かるとか、このオオカミは卑怯者ですよ!?」
うぅ、オオカミの咆哮……遠吠えな気もしたけど、ともかく怯んで全く動けない! うがー! ともかく、この怯んでいる状態異常は厄介過ぎる!
咲夜 : サクラちゃんがそれを言う!?
ミツルギ : サクラちゃんの常套手段だけど!?
イガイガ : まぁ、気持ちは分からなくはないけど……。
富岳 : 色々な種族をやってれば、こういう事もある。
うぅ、確かに私の常套手段だけど! それでもズルいと感じるものは感じるのさー! うがー! 近付いてくるな、オオカミー! うーごーけーなーいー!
「はっ!? オオカミが近寄ってきて……ま、まさか!?」
ぎゃー!? オオカミにライオンのお腹を噛みつかれた!? HPがー!? 元々減ってたHPが危険水準に!? 今の一撃で2割くらい削れて、噛みつかれた状態でじわじわ締め上げられて、どんどんHPが減ってる!?
「死にます!? このままじゃ身動きが取れないまま死にますよ!?」
いくらなんでも、このまま無防備な状態で一方的に仕留められるのは嫌ー!? 早く、早く、早く! 早く咆哮の効果が切れてー!
神奈月 : 咆哮の効果、早く切れろー!
チャガ : こればっかりは効果が切れるのを待つしかないが……。
ミナト : サクラちゃん、なんとか耐えて!
皆さんも応援してくれているし、ここで死んでなるものかー! あ、ようやく効果が切れた! でもHPは1割しか残ってないから、相当な危険水準!
まだ噛みつかれたままだし、このままだと危ない事には変わりない! 大急ぎで引き剥がさないと!
「いい加減、離れろー! 『振り回し』!」
おぉ、全身を捻るようにに動かしたら、オオカミの口が離れて、その顔面に尻尾を叩きつけられた! でも、全然安心できる状態じゃない!
「やられたからにはやり返しますよ! 『咆哮』!」
今度は爪で攻撃しようと飛びかかってきたオオカミに向けて咆哮を発動! ふっふっふ、怯んだ! 怯んだね! 怯みましたね! さぁ、ここから反撃の開始!
「おっと、その前に果物を食べておきましょう! どう考えても危険すぎますしねー!」
思いっきり反撃しまくりたいとこではあるけど、今のうちに回復をしておかないと咆哮の効果が切れた後が危なさ過ぎる! そもそもこのオオカミも咆哮を使ってくるんだから、私の咆哮の効果が切れた後の事を考えておかないと!
ミナト : うん、今はその方が良いね。
いなり寿司 : 攻撃よりも回復が優先だ。
金金金 : そういや、いつの間にか疾走と威嚇の効果が切れてるんだな?
ミツルギ : 怯んでいる間に効果時間が過ぎたっぽいな。
イガイガ : 別に発動自体はキャンセルはされてないけど、怯みの状態異常の方が優先度高いし。
富岳 : 怯みさえ入らなければ、そのまま使えるからな。攻撃スキルなら問答無用でキャンセルされるが。
「あ、そうなんですね!」
それどころじゃなくて気にも留めてなかったけど、発動自体がキャンセルされてた訳じゃないんだ! ふむふむ、非常に厄介な状態異常だね、怯むのって!
まぁ余計な事を考えないで、今はひたすら野イチゴを食べるのみ! よし、とりあえずHPは半分は回復! でも、このオオカミは少なくとも同格以上の敵になるから、これでも油断は出来ないから、可能な限りHPを回復だー!
「うぅ……採集したばっかの野イチゴをほぼ使い切る勢いですね……」
仕方ないけど! こういう時に使う為の回復アイテムだけど! 陸地でもこんなに強い敵が出てくるとか聞いてなーい!
「あ、起き上がりましたね、このオオカミ! まだ全快してないのに!」
ぐぬぬ、私の野イチゴでのHPの全回復までも待ってくれないとか、このオオカミはなんか気に入らないです! 絶対にぶっ倒してやるのさ!
「とりあえずどんなオオカミなのかを確認しようじゃないですか! 『識別』!」
少なくとも私より格下ではないのは分かってるし、エリアボスよりも強い事はないはず。だから多分Lv9だとは思う。
でも、どのスキルツリーから進化をしてるのかがよく分かんないんだよね。口周りが白いのが気になる。
『屈強なオオカミ』
進化階位:成長体
Lv:10
「えぇ!? あのザリガニと同じLv10なんですか!?」
ちょっと待って! エリアボスと同じLvの敵もいるの!? ぐぬぬ、まさかの格上!
ミツルギ : 過剰に時間を飛ばし過ぎてなければ、イージーだとエリアボスと同じLvまでが出るからなー。……飛ばし過ぎれば、そのうちエリアボスが最弱にはなるが。
チャガ : 今考えられるエリアボス以外での最強のオオカミになるな。
いなり寿司 : 河川域で、陸の方にこのLvの敵が出るのって割と珍しくね?
ミナト : 珍しいと言えば珍しいけど、実は陸上の種族をやってる場合はイージーが一番出やすいんだよ?
富岳 : ノーマル以降だと、川の中の敵の方に出やすいからな。戦いやすさを考えれば、こっちの方がマシだ。
「わっ!? 噛みつき攻撃ですか!?」
後ろに飛び退いて噛みつきを回避! ふぅ、とりあえず危険そうな攻撃は回避出来た。うーん、進化した時に特に強化された部分に白い模様が出るんだったっけ?
「このオオカミ、地味にレア個体だったんですね!? まぁどっちにしてもぶっ殺す事には変わりないです! 『投擲』!」
よし、この後ろへジャンプして距離を取ってからの投擲も慣れてきた! あ、でも思いっきりオオカミに回避されちゃったよ!
「でも、避けるのは狙い時です! 『体当たり』! やった、直撃……え、なんですか、その大口を開けるのは!? ぎゃー!? 思いっきり噛みつかれたー!? 」
え、さっきの噛みつきを回避したのに、なんでこのタイミングでまた噛みつかれるの!? 今さっきの噛みつきって、スキルじゃなかった!?
この噛みつき、さっき怯んでた時よりもダメージが多い!? ちょっと待って、なんで同じスキル……あー!? これ、多分同じスキルじゃない!
「このオオカミ、噛みつきのルートから進化してるんですね!? 今の噛みつき、第4段階以降のスキルですね!?」
って、推測したところで私のピンチには変わらないー! むしろ、このオオカミの危険性が増したー! 近接で戦ったら、私の方が不利なやつだ!?
ミナト : うん、それで正解だよー! 今の口の開け方が大きい方が威力が高い上位のスキルって感じだね。
チャガ : 屈強なオオカミだと『噛みつき』のルートで進化すれば口周りに、『爪撃』のルートで進化すれば脚回りに白い模様が出るからな。
いなり寿司 : これ、勝てるのか?
神奈月 : うーん、微妙なところ。
ミツルギ : なんだかんだで、咆哮持ちって厄介だからなぁ。
うぅ、分かったところでこの状態を好転させる情報がない!? とにかくこのオオカミの噛みつき攻撃と、咆哮には最大の注意が必要って事は分かったけど!
「あっ! 噛みついてたのを離しましたよ!?」
ダメージ量は今の攻撃の方が多かったけど、噛みつきよりも離すのが早いっぽい? まぁそれは良いや! 今は距離を取って、このオオカミを倒す方法を考えるのみ!
後ろに飛び退いて、飛び退いて、飛び退く! 出来るだけ距離を保ちつつ、投擲で削っていくのが安全……でもなさそうだー!
「やっぱり追いかけてきますよねー!?」
うぅ、そんなにあっさりと距離を取らせてくれるような相手じゃなかったー! どうしよう? ここからどうにかする方法を考えろー!
周囲に何か使えるものはないー!? 何か、ここからの逆転劇を成立させるような切り札になるような何かー!
「あ、回復に使えそうな赤い実は生ってますね。いざという時は、これを全消費して……」
あれ? でもこの小さな赤い実がズラッと生っている光景ってなんか見覚えあるよ? って、あー!?
「これ、昨日食べちゃった毒のある実じゃないですか!?」
咲夜 : お、マジだ!?
いなり寿司 : ここで、それを見つけるか!
ミツルギ : サクラちゃん、大急ぎで採集だ! それなら勝ち目が出てくる!
富岳 : 採集も重要だが、咆哮や距離を詰められる状況は避けろ!
よし! このオオカミにこの実を毒の実を食べさせて、それで倒していこう! でも、採集をしている最中に狙われたら……。富岳さんの警告が、本当に注意しないといけないやつだ!
「って、悠長に考えさせてもくれないんですね!?」
オオカミが突っ込んできたのを、飛び退いて回避ー! そのまま走ってとりあえず時間稼ぎー! 動き自体は私のライオンの方がほんの少し速いみたいなのが救いかな。
さーて、ここからどうやってオオカミを倒していこう? 思いっきり追いかけてきてるし、このままじゃ毒の実の採集どころか、また咆哮の餌食になりそうだよね?
「ライオン対オオカミですよ! いぇーい!」
「なんだか妙にテンション高いね?」
「いやー、勝つか負けるかの激戦はゲームの醍醐味じゃないですか!」
「まぁそりゃそうだけど……何か誤魔化そうとしてない?」
「ギクッ!? や、やだなー、そんな事はあるわけ無いじゃないですかー?」
「多分、誤魔化したいのは卑怯なオオカミって発言か」
「何も無いって言ってますよねー!?」
「よーし、だったらこれだね。はい、サクラ」
「……今、サラッとカンペを書きましたね!? えぇい、読みますよ! えーと『咆哮を使うのは卑怯だと思う方はブックマークや評価をお願いします』って、これは私が卑怯って言ってますよねー!?」
「サクラ自身が言った事だけど?」
「それはそれ、これはこれです! スキルを仕様通りに使うのは卑怯じゃなーい!」
「それ、敵のオオカミにも言える事だけどなー。まぁいいや。それでは次回は『第94話 オオカミとの激闘』です。お楽しみに!」
「うがー! 絶対にぶっ倒しますよ、あのオオカミ!」