第８９話 ワニとの戦い
今の私が倒すべきワニの姿を見つけたー！ 普通に陸地に上がって、思いっきり無防備だというとこが盛大に気に入らないけども！
「ふっふっふ、そうやって油断していればいいのですよ！ その間に、私はあのワニを倒す準備を始めますからねー！ 『獅子咆哮』！」
ミツルギ ： お、いきなり大技でいくか。
咲夜 ： そういや、このワニって……あ、今は止めとこ。
金金金 ： ん？ 何か気になる要素でもあるのか？
イガイガ ： あー、そういやこのワニって場合によってはもうあれか。
「え、このワニに何かあるんですか！？」
もう獅子咆哮の溜めに入った段階でそんな事を言われても困る！ ぐぬぬ、何かあるとしても、今更引き下がれないのさー！ とりあえず、獅子咆哮をぶっ放してから識別で確認しよう！
富岳 ： あー、気にしなくていい内容だぞ。危険とか、注意点とかそういう話じゃないだろうしな。
チャガ ： だろうな。むしろ逆か。
「……逆なんですか？」
え、逆ってどういう事？ うーん、よく分からないね？ でも、まぁ戦ってみれば分かるはず！
「あ、もう1体、ワニが出てきましたよ！」
おぉ、しかもこのワニも私を襲ってきた奴じゃないですか！ ぐぬぬ、私が目の前にいるというのに、呑気に日光浴とは舐めた真似を！
というか、そろそろ日が傾き始めてきてるのに日光浴とは、このワニは何を考えているんだろ？ あ、データだから考えるもなにもなかったよ！
いなり寿司 ： わざわざ殺されにやってきたか。
イガイガ ： ワニはご愁傷様。
「うーん、2体とも射程範囲に入ってるので、とりあえず1撃入れますね！」
2対1にはなっちゃうから本当は1体ずつ狙いたいんだけど、ワニ同士が並んでいて近過ぎてどっちかだけを狙うのが難しい！ なんでそこで並ぶかなー？
うぅ、無駄撃ちの方が勿体ないからやるけども！ うがー！ ワニ2体、同時相手も上等だー！ いざとなれば、疾走で距離を取って態勢を立て直せばいいのさ！
「発動準備完了です！ いっけー！」
狙いは先にいたワニの方だけど、もう片方のワニも盛大に巻き込む位置！ 他には敵はいないと思うけど、この状況なら他に敵がいたらミナトさんを筆頭に皆さんが気付いて教えてくれるはず！
流石に3対1以上になる可能性があるなら、そこで止めてくれないって事はないはずなのですよ！
おぉ、ワニ2体へと獅子咆哮による衝撃波が直撃してHPが減って……あれー？ 今のでどっちのワニもHPが結構消し飛んだんだけど！？
「ちょっと今の、効き過ぎじゃないですかねー！？ え、ワニってこんなに貧弱なんですか！？」
いくらなんでもこの状況は逆方向に想定外だよ！？ あ、さっきチャガさんが言ってた逆ってこういう事なの！？
でも、片方のワニは3割くらいのダメージで、もう片方は半分以上のダメージになったよ？ このダメージ量の差は獅子咆哮の当たり方の違いかなー？
ミナト ： サクラちゃん、どっちのワニでも良いから、識別ねー！ それで理由は分かるから。
「あ、はい！ 『識別』！」
どっちも頭に白い模様があるし……あ、よく見たら頭というか、口の周りを中心にしてる感じ？
さーて、私が戦わなきゃいけないワニの強さはどんなもんだろー？ 2体同時なんだから、せめてLv1くらい下であってください！
『屈強なワニ』
進化階位：成長体
Lv：4
ん？ 屈強なワニで攻撃力が高いのは分かったけど、なんだか全然予想してなかった情報があるのは気のせいかなー？ うん、見返してみても、間違いじゃないね。
「このワニ、もう私よりかなり格下じゃないですかねー！？」
今の私のライオンはLv8だよ！？ あ、でも昨日ワニと遭遇してからそれなりに育てたし、その間にLvが上回った？
咲夜 ： あー、Lv5か6くらいはあるかと思ったが、そんなもんか。
チャガ ： それはもう少し下流だな。まぁあくまで傾向であって、絶対的なものじゃないが。
ミツルギ ： さっきの松の木とか、あれは例外の方だよな。
富岳 ： ナマズの方もな。
「あ、そういう事なんですか！？ って、話してばっかでもいられないですね！ 『投擲』！」
とりあえず、こっちに近付いてきている識別した方のワニに投擲で追撃だー！ わっ、投擲でも思いっきりHPが削れた！？ Lvが下にしても、このワニは弱くない！？
いなり寿司 ： あ、これは嫌な予感。
チャガ ： ……こりゃ、極端に攻撃に特化してる系統か。
咲夜 ： サクラちゃん、そのワニの攻撃は受けるなよー！
「そういう傾向もあったりするんですね！？」
なるほど、Lv差があったとしてもスキル構成については個体によって違うんだね！ どうやって見分けてるのかは分からないけど、気を付けよう！
あ、もしかしてもう1体のワニのHPとの獅子咆哮のダメージ量の差ってここ！？ 識別してない方のワニはHPか防御力が、今攻撃した識別済みのワニより高いんだ！ そっか、見分け方はそこだね！
「脆い代わりに威力が高いというならば、攻撃をさせなければ良いだけです！」
ふっふっふ、攻撃こそが最大の防御！ その大口を開けて、私のライオンに噛みつこうなんて、させてたまりますか！
「『咆哮』からの『体当たり』！」
おぉ、ワニもかなり体格が良いから、ライオンの体当たりにも吹っ飛ばされずに耐えてくれたよ！ これなら追撃がやりやすいし、もうワニのHPも少ない！
それにしっかり怯んで口も閉じてるからね！ ふっふっふ、その口は開けなくしてやるのです！
「まずは1体目、トドメです！ 『噛みつき』！」
ワニの口を閉じるように、思いっきり噛みつきだー！ 弱い、弱い！ このワニは攻撃に特化し過ぎて、その他が疎かになり過ぎているよね！
一極集中の育て方の欠点、まさにここにあり！ いやー、あちこちのスキルツリーを解放しててよかったかも？ うん、目的の進化ポイントを溜めたら、ちょっとステータスの増強の為にスキルツリーの解放もしていこう！
「って、邪魔ですよ！」
2体1だから仕方ないけど、そこで体当たりをしようと突っ込んで来ないでください！ うーん、地味にまだあと少しで死にそうなのに死んでくれないから次の動きが出来ないね。
「それならば、これです！」
噛みつきを発動したままだけど、他の部分が動けない訳じゃないもんね。ちょっと邪魔してやる程度なら、これでいいや！ ライオンの尻尾をワニの目に叩きつけちゃえ！
＜成長体を撃破しました＞
＜進化ポイントを1獲得しました＞
＜サクラ【器用なライオン】が成長体：Lv9に上がりました＞
＜基礎ステータスが上昇します＞
＜進化ポイントを2獲得しました＞
＜規定条件を達成したので、スキルツリー外の基礎スキルが解放されました＞
＜スキル『振り回し』を取得しました＞
「……え？ えぇ！？ このタイミングでツリー外のスキルの取得ですか！？」
ちょっと待って！ 噛みついてたワニが死ぬのと、突っ込んできてたワニに私のライオンの尻尾を叩きつけたのと、新しいスキルツリー外のスキルの取得が重なるの！？
ミツルギ ： お、『振り回し』の取得が出たか。
咲夜 ： 『投擲』よりも遥かに取りやすいのになー。
いなり寿司 ： でも、これは普通に便利なやつだ。
イガイガ ： それは確かになー。
「皆さん、普通に取り方を知ってたんですねー！？ うぅ、そりゃこれはネタバレ案件ですよね！」
知ってても思いっきりネタバレ案件なんだから、皆さんが教えてくれる訳がなかったよ！ でも、この『振り回し』の攻撃は、尻尾で発動が出来そうだよね！
「少し質問です！ このスキル、普通にスキルツリーで解放する場合はどのスキルツリーですか！？ 『爪撃』！ うぅ、さっきのワニよりダメージの通りが悪いですね！」
うがー！ もう１体のワニはちゃんと防御かHPがあるみたいで、さっきのワニほど脆くはないっぽい！ でも、効かない訳じゃない！
「今度は噛みつきですか！」
とりあえず後ろに飛び退いて回避！ って、また突っ込んできたー！？ え、さっき体当たりを……あ、そっか！ 押し負けてなかったから、さっきのはスキルじゃないのかも！
ミツルギ ： 『振り回し』は屈強だな。
富岳 ： ゾウの鼻での攻撃とかがそうなるな。あれだ、ライオンでいう爪撃の代わりの位置に入ってくる。
チャガ ： ヘビや魚とかにもあるな。
ふむふむ、要するに爪が攻撃手段にならない種族での屈強の攻撃スキルって事なんだね！ そして、これはライオンでも普通に使えるやつ！
「それならこういう使い方も出来るんじゃないですかねー！？ 『振り回し』！」
あ、やっぱりだ！ 攻撃部位の指定って表示が出たけど、その中に前脚も含まれてる！ 要は叩きつけて攻撃が可能な部位ならどこでも発動出来るんだね。
それじゃ爪撃で前脚の爪を振り下ろすのと同じ感じで、『振り回し』を発動！ いっけー！ おぉ、頭を狙ったらワニが朦朧になったよ！
「まだHPが残ってますけども、朦朧が入りました！ これでトドメです！ 『連爪』！」
ふっふっふ、これで……倒しきれなかったー！？ うぅ、最後は気持ちよく倒させてくださいよ！
「うがー！ 爪とぎで死んでしまえー！」
あ、投擲の再使用時間が過ぎてるし、トドメはやっぱりこっちで――
＜成長体を撃破しました＞
＜進化ポイントを1獲得しました＞
「あー！？ 最後の〆はスキルにしたかったのに、なんで死んでるんですか！？」
ミツルギ ： 思いっきり死ねって言いながら、ワニの背中で爪とぎしてたのは？
いなり寿司 ： ツッコんだらダメなやつなんだろうな。
イガイガ ： まぁ、そういう事だなー！
金金金 ： サクラちゃん、ワニ討伐お疲れー！
富岳 ： ま、勝ちは勝ちだしな。
「あ、それもそうですね！ とりあえず討ち取ったり、ワニ2体！」
予定外の内容が結構あった気もするけど、今回は全部完全に自力で成し遂げたのですよ！ ふっふっふ、私の昨日の寛ぎのんびりタイムを邪魔した報いなのさー！
「うがー！ ワニが弱過ぎです！」
「サクラが明確に強くなった証拠だよ？」
「それは分かるんですけど、なんか拍子抜け感があるんです！」
「あー、まぁその気持ちは分からなくもない」
「でも、サクッと倒せるのも爽快ですよね！」
「あれ？ 手応えが無かった苦情なの？ サクッと倒せて爽快なの？ どっち？」
「両方です！ だから心境的に微妙なのです！」
「……あー、そういう」
「そういう事です！ 私の微妙な気持ちが分かるという方はブックマークや評価をお願いします！」
「まぁその辺は何とも言い難いとこだね」
「そうですよねー！」
「さて、次回は『第９０話 川沿いを進むと』です。お楽しみに！」
「出来れば苦戦はしない程度に、快勝したいですね！」
「……我儘な要求だなぁ」
「ふっふっふ、それでは次回も頑張っていきますよー！」