第74話 待機時間で模様替え
「ひとまず最低限は完成だー!」
ふっふっふ、配信用のVR空間を和風用に模様替えする為の素材作りは終わったー! 時間の都合で部屋全体の枠組と畳と障子と襖までしか作れなかったけど! 一応柱や土壁は枠組に組み込んだのさ!
とりあえず床の間も作ったから、そこに置く掛け軸や壺みたいなの小物は後から作る! 机とか箪笥とかの家具類も後から作るのですよ!
という事で、デザイン用のアプリへのフルダイブは終了! 性質的に仕方ないんだけど、真っ白な空間だからちょっと違和感があるんだよねー。あー、ちょっと集中し過ぎて疲れたー!
えーと、兄さんに言われた件があるからまずは兄さんの部屋に行ってこよう! そしたら素材の準備は完了だから、配信の待機時間に模様替えをやっちゃおー! 並べるだけだから、10分もかからないしね!
「兄さん、とりあえず最低限は完成したよー!」
今はもう17時半だから、急いで兄さんの部屋へ突撃ー! 配信までには完全に使えるようにしておくのです!
「……少し待て。一度中断する」
「それじゃ待ってるねー!」
うん、兄さんは思いっきりフルダイブの最中だったけど、今回は兄さんから言ってきた事だから問題なし! あ、でもノックするのを忘れた!?
あれ? 特に何も言われずに兄さんはヘルメット型のVR機器を外しながら、普通に起き上がってきたよ。今のは怒られる気がしたけど、何もなかったね? まぁ怒られなかったならそれでよし!
「さて、手早く済ませるか。作ったのを見せろ」
「はーい!」
あ、これって多分ただ兄さんが時間を無駄にしたくないだけのやつだー!? うん、思いっきり邪魔しちゃってるもんね。という事で、兄さんにチェックを手早く済ませてもらうのさ!
いつものように兄さんへ承認……あ、携帯端末の方じゃなくてVR機器の方だね。えっと、それならこっちのはず!
「ん? あぁ、フルダイブの方で作ったのか」
「ふっふっふ、姉さんにもらったアプリで作った!」
「……旧バージョンとはいえ、あれはプロ用なんだがな」
「それはどうでもいいから、兄さん、早くー!」
そりゃ本職のデザイナーの姉さんが使ってたんだから、機能としてはしっかりしてるのですよ! 私はお遊び程度には使えるけど、そんなのプロに比べたら全然質は悪いしねー。
「俺は流石にそれは持ってないから、リモートで使わせてもらうぞ」
「うん、それは良いよー!」
そう言いながら、兄さんが再びVR機器を被っていってる。あ、そっか、携帯端末の方からじゃ動きが鈍いもんねー。
さーて、どういう処理をするのかよく分かんないけど、ちょっと見てよっと! 私のVR機器の動作状態だから、私の携帯端末から様子くらいは見れるのです!
「……短時間の割に作り込みが凄い上に、データ容量がとんでもない事になってんじゃねぇか。こりゃ、ごっそり削った方が早いな」
「って、兄さん、何やってるのー!?」
えっ、なんで畳の裏面半分を削除したの!? え、なんで襖も障子も同じようにやってくのー!? あー!? 見えない部分の柱の中が空洞になったー!?
「兄さん、兄さん! ストップ! 私が作ったのをそういう扱いにするのは酷いよ!?」
「……気持ちは分からんでもないが、配信用はこれで良いんだよ。無駄に作り込んでバカみたいにデータ量が大きいから、見えないところは削って負荷を減らすぞ」
「うぅ、兄さん酷い……って、え? そうなの?」
「データ容量を減らすのが目的だからな。業務用のVR機器ならこの程度は問題ないが、流石に家庭用だと出来るだけ軽くした方がいい」
「……むぅ、それなら仕方ないよね」
なんだか釈然としないけども、兄さんが言うならそうなのかもしれない。って、そういう訳にもいかないよ!? 模様替えの様子も配信するつもりなんだから、反対側のない張りぼてだと困る!
「兄さん、やっぱり待ったー! 配信の時に模様替え自体をやりたいのです!」
「……なに? ちっ、そういう事だとこれじゃマズいか。なら、今日のところは空洞化だけして……おい、一時的に姉さんの作ったVR空間を閉じるぞ」
「えー!? あの憩い空間を!?」
「……あれは地味に常駐させてるから、ホームサーバーのメモリをかなり無駄に使ってんだよ。一度模様替えしてから見えない部分を削る調整は明日にでもしてやるし、あのVR空間も再生成するから今日だけは我慢しとけ」
「……むぅ、そういう事なら了解です」
姉さんがいつでも自由に寛げるようにって作ってくれたあの満開の桜のある和室だけど、今日は仕方ないかー。まぁ一時的に閉じるだけで別に消えてなくなる訳じゃないもんね。
でも、兄さんはあの部屋を消すのは嫌がってなかったっけ? なんか、作り込み過ぎてて再起動には時間がかかるとかなんとか? うん、兄さんが良いって言ってるんだし、まぁいいや!
「とりあえず手早く作業するから待ってろ」
「はーい!」
ふー、これでとりあえず問題はなさそうだね! 半分削除された畳や襖や障子が元に戻っていくー! あとは兄さんに任せておこう!
◇ ◇ ◇
それから10分ほど待っている。うぅ、そろそろ17時50分だから、配信の準備をしないとー! 兄さん、作業はまだ終わらないのー!?
「よし、終わりだ。もう配信用のVR空間に必要なデータは読み込ませておいたぞ。配置の変更の仕方は知ってるな?」
「おぉ、そこは自分でやろうと思ったのに、やってくれたんだー!? 模様替えの仕方なら問題なしだよー!」
ちょいちょい拠点の模様替えの出来るゲームはあったりするし、ホームサーバーの中に作れるVR空間にそういう調整が出来るのは知ってる! というか、それでカスタマイズしまくったのが姉さんが作ってくれたあのVR空間の部屋だしね!
「なら、もういいな」
「兄さん、ありがとねー!」
さーて、それじゃ自分の部屋に戻ってモンエボの配信準備を始めるぞー! 今日はちゃんと10分くらいの待機時間は作れそうだね!
「……ったく、先に把握出来ていて良かったな。データ容量を無視して変に作り込むところとか、妙なとこが姉さんに似たもんだな」
兄さんの小声が聞こえたけど、ゲームの邪魔してすみませんでしたー! そこはちょっと悪い事をしたと思っているから、ごめんなさい!
というか、私って姉さんに似てるのー? うーん、帰省してきた時に見た目は似てるとよく言われるけど、他は自分じゃよく分かんない? あ、時間が無いんだから今はそれどころじゃなーい!
◇ ◇ ◇
大急ぎで自分の部屋に戻って、すぐに配信の準備ー! 配信用のVR空間を作ってフルダイブですよ! おぉ、新しく追加されたデータって一覧が出たね! よし、これなら問題なーし!
「それじゃ今日の配信を開始するぞー!」
<配信を開始しますか?>
という事で、先に配信開始ー! 今回は3回目だから、【初見プレイ】Monsters Evolve part.3だね! そして、忘れちゃいけない配信のシェアをするのです! SNSの連携機能、活用するよー!
サクラ☆モンエボ実況配信中! #***
18時から第3回の配信をやっていきますー!
配信会場はこちら!
【初見プレイ】Monsters Evolve part.3
URL:*tp://***
待機中に、配信用のVR空間の模様替えもやっていきますよー!
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これでSNSでの通知は完了! さーて、とりあえず今ある標準のVR空間は何もない状態にしないとね。えーと、それは確か『レイアウトの変更』に……あ、あった! よし、今あるのは全て非表示に変更!
うん、テーブルや小物どころか、壁とかも全部無くなった! まぁ壁から変更するんだから邪魔なだけだからねー。流石にただの真っ白い空間になったから、部屋の枠組みだけでもすぐに展開しようっと。これで和室の土壁と柱は表示されるようになるからね。
ミツルギ : おし、一番乗り! って、もう既に何もねぇ!?
ミナト : サクラちゃん、こんばんはー! あはは、急だけど模様替えをするんだね?
「ミツルギさん、ミナトさん、こんばんはー! はい、標準のままだとなんか不満だったので、和風に模様替えする事にしました!」
おー! 今日はミツルギさんもミナトさんもすぐに来てくれた! それじゃ少し雑談をしながら模様替えをやっていこー!
「とりあえず、土壁と柱の設置ですね!」
えーと、そのデータは……これだね。配置する場所は、多分この辺! おぉ、まだ障子とか襖とかが無いし、床はまだ畳を敷いてないから木が剥き出しのままだし、部屋の外が真っ白にしか見えないから違和感が凄いけど、それ以外は良い感じ!
ミツルギ : サクラちゃんの姿が見えないんだが。
金金金 : サクラちゃん、こんばんは! って、土壁しか見えないんだが!?
ミナト : カメラの位置が部屋の外、それも壁の前に行っちゃってるねー。
「金金金さん、こんばんはー! むぅ、一発で位置が決まりませんでしたね。えーと、これをこう移動して……皆さん、どうですかー?」
ちょっと部屋の位置自体を配信のカメラの設定位置の方にずらしてみたけど、多分これでいけるはず。自分で配信画面をチェックしてもいいけど、既に皆さんがいるならその辺は教えてもらおうっと。
ミツルギ : お、良い感じだな。
金金金 : ちゃんと部屋の中が見れた……って、畳も障子も襖もねぇの?
ミナト : この手のってデータ容量を削減の為に可動部分以外は個別パーツにはしないんだけど……サクラちゃん、もしかして自作?
え、個別には作らないの!? 私、畳すら1枚ずつ別に作っちゃったよ!? うん、でもまぁいいや。サクサクと設置していこうっと。
「はい、自作ですよー! それじゃ畳とか障子とか襖を設置していきますね!」
とりあえず、畳とか襖とか障子を実際に見える形に出していこ! 触れて持ち上げられるけど、重さはないから設置自体は簡単なのです!
ミナト : あ、やっぱりそうだった。うん、良い出来だねー!
金金金 : おぉ、和室が出来上がっていく。和服の狐っ娘アバターにはこっちのは合ってるな。
ミツルギ : 確かにそれはそうだなー。
うふふ、皆さんからの評判は上々! さーて、それじゃ18時までに模様替えは終わらせちゃいましょう! そして18時からはモンエボの続きをやっていくぞー!
「ふぅ、なんとか最低限の素材は完成しましたよ!」
「あ、お疲れ様」
「はい、頑張りました! でも、まだ最低限のものなんですよね」
「サクラ、そこは市販品じゃ駄目なの?」
「お金をあまりかけたくないのです! そんなにお金が沢山ある訳じゃないですし……」
「あー、なるほどね」
「でも、私が自分で使う分には問題ないくらいのものは出来たので、良しとします!」
「……うん、まぁそうだね」
「作者さん、その反応はなんです?」
「いや、なんでもないよ」
「んー? 気になるけど、まぁ良いです! さて、私、サクラの第3回目の配信も応援してくれるという方は、ブックマークや評価をお願いします! どんどん頑張っていきますからねー!」
「うん、その調子で頑張って。さて、次回は『第75話 3回目の配信』です。お楽しみに!」
「模様替えを終わらせて、配信の本編の始まりですね!」