第61話 有利な場所
急げ、急げ、急げー! ライオンの口の中で暴れている魚に無理矢理抑えこめている間に、川から出てしまうのさー!
「って、わっ!? あー!?」
うそっ!? 焦り過ぎたせいか、足が滑ってバランスが崩れた!? あわわ、口から魚が飛び出ていっちゃった! そして近付いてくる、川の水面ー!? わっぷ!?
ミツルギ : あっ。
咲夜 : あちゃー!
ミナト : あらま……。
富岳 : 焦り過ぎて、走るイメージが変になったか。
うぐぐ、思いっきり水飛沫を上げて転んだー! 魚は!? 魚はどうなったの!? あ、空中に舞って、このままだと川の中に戻っちゃう!?
うぅ、このままじゃ逃げられるー? 折角、目の前で進化したての個体を見つけたのに、ここで逃がしてなるものかー!
「うがー! まだこれがあります! 『咆哮』!」
川に突っ伏している状態ではあるけど、魚の姿が見えていれば問題はない! 大急ぎで今にも水の中に戻りそうな魚を怯ませるのさ!
「やった! 魚が怯みましたよ!」
すごく危ういタイミングだった気はするけども、成功したからそこはどうでもいい! さっさと起き上がって、怯んで水面近くに浮かんできている魚を咥えて、陸地へゴーなのですよ!
チャガ : とりあえずはギリギリってとこか。
金金金 : ……ふと思ったんだが、魚相手に咆哮が効いて水面に浮いてくるなら、元々そこから狙えばよくね?
ミツルギ : あー、水の外から水の中には咆哮は届かないようになってんだよ。
イガイガ : シンプルに乱獲防止だな。
金金金 : なるほど、そういう調整か。
いなり寿司 : それ、微妙に正確な情報じゃないだろ。
ミツルギ : いや、ネタバレ配慮だから!?
咲夜 : そうだぞ! 強化用のスキルを取れば水中にも届くようになるのはネタバレだ!
ミナト : 咲夜さん、全部言っちゃってるから!
咲夜 : あ、しまった!? くっ、思考入力でのコメント入力はこれだから!
いなり寿司 : コメントの入力方法に責任転嫁をするなよ……。
咲夜 : ネタバレ配慮してたのを、台無しにするような事を言ったせいだよなぁ!?
いなり寿司 : いやいや、だからって正確でない情報も駄目だろう!?
ミナト : 咲夜さんもいなり寿司さんも、ストーップ!
富岳 : 2人ともここで喧嘩はやめておけ。
えーと、何かコメント欄での言い争いが発生してる間に何とか川の外まで魚は運べたけど、これは私はどうしたらいいんだろう? とりあえず魚は川から少し離したところで解放して、ピチピチと跳ねているからこのまま弱ってもらうとして……。
「一応、攻撃して弱らしてもおきましょう! 『爪撃』! 『連爪』!」
うん、これでHPは半分くらいまでは減ったから、再使用が可能になるまでは放置でいいや。ふっふっふ、成長体といえども魚は魚! 地上では何も出来まい!
さて、私の配信のコメント欄での喧嘩は許しませんよ! んー、でもどうしようかなー? いなり寿司さんも咲夜さんも、もちろん事の発端になってるミツルギさんの配慮もどれも悪意があるものではないっぽい。
これでブロックとかコメントの音声化をオフにするのは流石に駄目だよね。んー、配信の範囲内で済む内容……うん、これにしよう! ふっふっふ、咲夜さんはちょっと巻き添えだけど、いなり寿司への私的な反撃です!
「よし、咲夜さんには『誤入力』の称号を、いなり寿司さんには『早とちり』の称号を与えましょう! 喧嘩両成敗です!」
私に『ドジっ子』の称号を与えてきたお返しです、いなり寿司さん! 嬉しくないよね、こんな称号!
ミツルギ : おっ、誤入力・咲夜と、早とちり・いなり寿司か!
いなり寿司 : うるせぇよ! ミステイク・ミツルギ!
ミツルギ : 残念だったな! 俺の公認は『アドバイザー』だ!
イガイガ : 勝ち誇るとこかー? てか、あれって称号なのか。
咲夜 : 誤入力……誤入力かぁ……。
いなり寿司 : まさかサクラちゃんから称号を与えられるとはなぁ……。意趣返しか、これ。
ミナト : サクラちゃんからのストップもかかった訳だし、これ以上の言い争いはなしだよ?
いなり寿司 : ……おうよ。
咲夜 : だなぁ……。
よし、これにて今の騒動は完結! というか、そもそもネタバレ案件だったよねー!? えっと、咆哮は水中には届かないけど、強化用のスキルがあれば届くようになる、だっけ? うん、思いっきり重要そうな内容!
でも、そこに触れると掘り返す事になるし、具体的なスキル名までは出てないからスルーでいこう! いずれ自力でそこに辿り着く時もあるはずさー!
「あ、そうしてる間に魚が結構弱ってきてますね! そういえば色こそ違いますけど、金魚っぽい形をしてますねー!」
シルエット的にはよく見る真っ赤な金魚だけど、色はくすんだ黄色っぽい感じ? んー、何か見覚えはあるんだけど、種類としてはなんだっけ?
ミナト : それはフナだねー!
神奈月 : フナが品種改良されて、観賞用になったのがよくいる金魚だな。
「あ、そうなんですか! そっか、フナかー!」
金魚って、フナを品種改良したものなんだね! フナって、そういえばおじいちゃんが釣ってた気がする!
あ、だから見覚えがあるんだ! 全然色が違うから、そこが繋がってるとは全然思わなかったよー。うん、どこで使うか分からない知識な気もするけど、一つこれで賢くなりました!
「それじゃ、フナを仕留めていきますねー! って、わっ!? びっくりしますね!?」
陸地なのに、今フナが結構な高さまで跳ね上がったよ! あー、もうびっくりするなー!
ミツルギ : 今のはスキルの体当たりか?
ミナト : んー、今の感じなら多分そうかな?
咲夜 : まぁ陸地でも無防備って訳でもないし、攻撃はしてくるか。
イガイガ : 場合によってはあれで水中まで戻るもんな。
チャガ : サクラちゃん、川からそれなりに距離を取っておいて正解だ。
「え、ああやって跳ねて川まで戻る可能性もあったんですか!?」
うーん、川に戻る可能性は一応考えてはいたけど、今みたいな跳ね方は完全に想定外だった! だって、私のライオンの頭を超えてるくらいに跳ねてたもん!
ミナト : 進化の方向によっては、陸地にいても水を噴き出して普通に攻撃してくるのもいるからねー。ところでサクラちゃん、識別は使わないのー?
「あ、そういえば水を飛ばしてくる魚もいましたね! うーん、この状況から識別って必要です?」
もうフナのHPは3割を切ってるし、水を飛ばしてくるような気配もない。時々、尾びれを凄い勢いで振り回してるけど、これはどう見ても私のライオンには届きそうにないから気にしなくてもいいよね!
あ、そういえば今のは誤発動しなかったよ!? ふむふむ、使う意思がなければ、スキル名を出しても発動はしないっぽい? これは地味に重要そう!
いなり寿司 : まぁ無理に使う必要性はなさそうだな。
富岳 : 図鑑を埋めるのでなければ、必要性を感じた時だけで構わんぞ。
ミナト : ……だよねぇ。うん、言ってみただけだから、気にしないで?
金金金 : ミナトさん、オンライン版ならその手のプレイヤーは多いぞ?
ミナト : やってるんだから知ってるよー! ただ、オフライン版でもそういうのをやってる人が増えてほしいだけー!
金金金 : ……なるほど。
富岳 : まぁ気持ちは分からんでもないが……。
んー、ミナトさんは自分が好きなものを他に人に好きになってもらいたいってのはあるんだろうねー! でも、流石に図鑑埋めは時間がかかりそうだし、単純に面倒なのでパスなのです。景色や動植物を見るのについては楽しみだけど!
「あ、再使用時間が過ぎたのでこれでトドメです! 『噛みつき』!」
ふっふっふ、ピチピチと跳ねまわるだけで何も出来ないフナなんてまな板の上のコイも同然! ……ん? 魚の種類が違うだけで、本質的にそのままな気もするよ? うん、まぁいいや!
とにかく、今度こそはしっかりと噛みついて、一気にHPを削るのさー! フナよ、くったばれー!
<成長体を撃破しました>
<進化ポイントを1獲得しました>
「無事にフナは撃破です! さーて、今度こそ下流を目指して進んでいきますよー!」
とりあえずこれで今の進化ポイントは2になった! 第4段階のスキルを手に入れたいから、器用のスキルツリーで『戦意の纏い』を取るのでも最低でも後5は必要だね。
他のスキルツリーなら第3段階や更にその前の解放も必要だから、まだまだ足りなーい! 出来れば今日の配信中に1個は解放したいけど、間に合うかな?
もし間に合わなくても、最低限でも草原以外には行くのを目標にしようっと! 進化ポイントを稼ぐための戦闘は、実況外の部分でも出来るからねー! それじゃ、川下りの再開だー! まずは少しだけど離れちゃった川まで戻ろうっと。
「サクラ、ミツルギの『アドバイザー』って称号なの?」
「さぁ? 適当に言ってみただけなんで、どうなんでしょう?」
「あ、適当なんだ?」
「いなり寿司さんへの反撃でしかないですからねー! 不名誉な称号をプレゼントしました!」
「地味に根に持ってる?」
「そりゃ、私はドジっ子じゃないですもん!」
「……審議が必要か? いや、そもそも必要ないか」
「そうですとも! 私はドジっ子じゃないから、審議なんて不要です! 読者の皆さんもそう思いますよね!? 私、サクラがドジっ子かどうかの審議なんて必要ないという方はブックマークや評価をお願いします!」
「……地味に墓穴を掘ってる自覚は、ある訳ないか」
「え、お墓の穴を掘ればいいんです? 誰のお墓ですか?」
「えー、次回は『第62話 川の下流へ向かって』です。お楽しみに!」
「なんでスルー何ですか!? あれ!? 私、なんか変な事を言いました!?」