第58話 その木は
マップに表示されている威嚇では全く動かなかった赤い印の所まで辿り着いたけど、そこにいたのは見覚えのある感じの木だった!
少し離れた位置から観察してるけど、これは外れっぽい雰囲気!
「なんか成長体っぽくはないですね! これは大外れですか!?」
うぅ、成長体でなければ意味は……あ、ない訳じゃなかった。この木が一般生物ではないのだけは確定だから、幼生体でもLv9以上あれば進化ポイントは手に入る!
でも根が動く気配もまるでなくて、思いっきり弱そうなんだけどー! うーん、これは無駄足だったかなぁ……。
咲夜 : あれ? これってどっちだ?
チャガ : ……ふむ、分からんな。
いなり寿司 : 見分けがつかんパターンかい!
金金金 : どっちってどういう事?
ミツルギ : あー、それを答えるとネタバレ案件。サクラちゃん、あの木を識別してくれるか? 正直、俺らでも今見えてる情報だけじゃあれは分からん。
「えっ!? 皆さんでも分からないんですか!?」
うわー! いくらなんでも皆さんでも分からないとは思わなかった! どっちって言ってるけど、2択には絞れてもそれ以上は確定出来ない感じかな?
神奈月 : 思い当たる理由の2つを、スキルを使わずに見分ける手段がないんだよ。まぁ片方はスキルを使っても分からんから消去法にはなるんだが。
真実とは何か : そういう真実もあるものだ。
富岳 : ミナトさんなら分かるか?
ミナト : んー、あれはちょっと無理かな? 稀ではあるけど、兼ね備えてる個体が出る事もあるしねー。
イガイガ : あー、確かにその可能性もあったか。
「えっと、スキルで分かるならミツルギさんが言ってるようにこれですね! 『識別』!」
皆さんでも分からない事があるというのは驚きだけど、識別をしなければ分からないのなら、見た目での変化はないんだよね! そして識別では明確に違いが分かるみたい!
という事で、識別の対象指定の丸い枠にあの木を収めて、いざ発動!
『樹木』:エリアボス
進化階位:幼生体
Lv:10(上限)
ふふーん、これで識別の情報が出て……って、えー!? なんか、エリアボスって表示されてるんだけど!?
「この木があのライオンと同じエリアボスなんですか!? え、でも幼生体ですよ!? こっちの方が他の敵より弱くないですか!?」
周りは進化しているのに、強いはずのエリアボスが進化してないって、そんな事あるのー!? 周りより弱くなるエリアボスとは一体……。
神奈月 : そのツッコミの気持ちは分かる。
いなり寿司 : あるあるのツッコミだもんなぁ。
ミツルギ : まぁ簡単に理由を言えば、エリアボスだからこそだな。エリアボスは種族は変わっても、Lvと進化階位は変わらないんだよ。ついでに、エリアボスは威嚇でも逃げはしない。
イガイガ : ま、2回目以降はって注釈はあるけどなー。
「あ、エリアボスだからこそ変わらないんですか! でも2回目以降ってどういう事です? あ、これは質問で!」
微妙にネタバレになりそうな気もするけど、その2回目以降という部分は重要な気がする!
というか、エリアボスって威嚇じゃ逃げないんだ! そっか、だから動かずにいたんだね! ……でも、そうなるともう1つの動かない理由も気になるよ。
「わっ! この木、葉っぱを飛ばしてきましたよ!」
識別をしたら交戦状態に入るんだから、攻撃してくるのも当然だったー!? この木は幼生体だから私の方が圧倒的に優位だし、皆さんに質問しながら倒していこう!
「とりあえず葉っぱは邪魔ですよ! 『咆哮』!」
よし、これで飛ばしてきている葉っぱでの攻撃をキャンセルして全部落とした! ふっふっふ、咆哮の攻撃キャンセル性能は地味に便利なのさー!
「今のうちに距離を詰めて一気に倒します! その間にさっきの質問について教えてください!」
あ、木の弱点が根だって分かってるんだから、根を出してきてから怯ませれば良かったんじゃ!? うぅ、失敗したー!
でも、今の成長体の私のライオンなら幹を攻撃しても倒しきれるはず! というか、倒す!
イガイガ : まぁほぼ死ぬ心配はいらないから大丈夫な戦闘か。
ミナト : 進化階位が違えば、まずほとんど死ぬことはないからねー。はい、アドバイザーのミツルギさん、出番だよ。
ミツルギ : おうよっと。2回目以降ってのは、難易度によって変わってくる部分なんだよ。イージーなら初回と同じLvと進化階位で再出現だけど、難易度が上がれば2回目以降は少し強くなって出てくる。具体的な強化幅の情報はどうする?
「あ、そういう違いなんですね! 『爪撃』! んー、それじゃノーマルの場合を教えてもらっても良いですか?」
とりあえず木の近くまでやってきたから、爪撃で切り付けていくのです! おぉ、HPの3割くらいは削れたから、結構幹でも効くね! ふっふっふ、これこそ進化の力!
「続けて、『連爪』です!」
木が相手だから、爪をとぐ要領でガリガリガリと、3回ほどひっかき! おぉ、木が相手ならこれはやりやすい!
うん、木を相手にする時はこれが良さそう! でも欲を言えば、もうちょっと攻撃回数が欲しいねー。
いなり寿司 : あれ、今回のはノーマルの内容を聞くんだ?
咲夜 : サクラちゃんにしては珍しいな。
「ちょっと気になった以外に特に理由もないんですけど……わっ、枝ですか!?」
むぅ、今度は木が枝で殴りつけてきたよ!? その攻撃は想定外だったから思いっきり当たったけど、それほどダメージは無し!
「うーん、今回のこの木は根を使ってこないんですかねー?」
まだ単純に使ってきてないだけな気もするけど、まぁ別に弱点を狙わなくても倒せそうだから良いけどね!
わっ、今度はまた葉っぱを飛ばしてきたー!? 後ろに飛び退いて回避ー!
咲夜 : ノーマルについて聞くのが別に悪いって訳じゃないぞー。
チャガ : この木、さっきミナトさんが言ってた兼ね備えてるタイプか?
ミナト : 絶対とは言い切れないけど、その可能性が出てきたねー!
いなり寿司 : サクラちゃんが質問中だし、そっちが先じゃね!?
ミツルギ : そっちの話題は後にするとして……ノーマルだと2回目のエリアボスは初期のエリアなら成長体のLv1で出てくるぞ。
「あ、ノーマルだと進化してくるんですね! これでトドメです! 『投擲』!」
折角飛び退いて距離が空いたなら、ここは遠距離攻撃で仕留めるのみ! 取り出した小石を弾き飛ばすのです!
ふっふっふ、さっきのトカゲと違って的が大きいから狙いやすい! 敵の大きさによって戦い方って変わってくるんだねー!
<幼生体を撃破しました>
<進化ポイントを1獲得しました>
<エリアボスを討伐しました>
よし、木は撃破ー! えっと、これで進化ポイントが2になったかな? あ、違う! さっき生命のスキルツリーの解放で使い切ったからこれで進化ポイントは1だった!
「ふぅ、とりあえずエリアボスはもう雑魚ですね! そういえば、エリアボスって名前ですし、他のエリアに行けばそこでも別のエリアボスがいるんですよね?」
そうじゃなかったらエリアボスなんて言い方はしないよねー。あくまでこの木はここの草原エリアでのボスってだけ! そして私は今、このエリアで寝れる場所を確保したー!
ん? あれ、ちょっと待って? 何かいいことを思いつきそうな気がする!?
富岳 : まぁそういう事になる。
チャガ : エリアによって、エリアボスの強さは変わってくるがな。
ミツルギ : サクラちゃん、さっきのノーマルの例は今いる草原の場合なだけだからなー。法則としては似たようなもんだけど、同じじゃないから要注意だ。
「あ、はい! 要するに、他のエリアのエリアボスを倒しても今の難易度はイージーなんでその時の進化階位とLvのままで再登場って認識で良いんですよね?」
うん、ノーマルでは強くなってエリアボスが再設定されるなら、イージーでは今回の1戦のように変わらずに出てくるって事! あっ、良い事を思いついたー!
「このまま寝れば、エリアボスが復活して、威嚇が効かない相手を見つけて倒して、それを繰り返していけば進化ポイントの荒稼ぎが出来ますかね!?」
成長体Lv5までなら幼生体Lv9以上の敵からなら進化ポイントが貰える! それに時間を飛ばせば周囲の敵も成長体ばっかになって、探すのが楽になるかも!
おぉ、そうなれば威嚇で格上の敵を集める事も出来る! あ、そこに『死亡還元』を取っておけば死にまくっても進化ポイントが得られるかも!
ふっふっふ、この手法を思いついた私は天才かー! 私は天才なのですよ! それじゃ早速実行していこうじゃないですか!
金金金 : あ、狐っ娘アバターがしたり顔になってるぞ!?
ミツルギ : ちょ、それを実行する気か!?
ミナト : サクラちゃん、ちょっと待ったー!?
富岳 : いくら何でもそれは待て!
チャガ : 待て、その手段は実行するな!
「え、この手段って駄目なんです?」
なんだか皆さんが止めてくるから実行はとりあえず止めておくけど、何か駄目なのかなー? 良い事ばっかですよねー?
「…………」
「あの、作者さん? なんで頭を抱えて無言なんです?」
「……自称天才の行動に頭を悩まされてるからだよ」
「え、どこですか!? 自称天才の人って!?」
「……はい、どうぞ」
「え? なんで鏡を渡すんです?」
「皮肉が通じない……だと!?」
「むぅ、何か失礼な事を言われてる気がしますね!?」
「あー、もうどうにでもなーれ!」
「今回の作者さんの反応がおかしいですよ!? 読者の皆さん、作者さんの応援の為にブックマークや評価をお願いします!」
「誰の暴走のせいだと!? ……次回は『第59話 詰む可能性』です。いや、マジで何を企んでくれてんの?」
「詰むのがなんですか!? そこを乗り越えるのがいつもの私ですからねー!」
「今回のはそういう規模じゃないんだよ!?」
「ふっふっふ、だったら尚更それを乗り越えるまでです! え、あれ!? 作者さん、無言で立ち去らないでー!?」