第33話 再び死んでから
うー! また死んだー! 今度こそは上手くいったと思ったのに、足元にいたカニめ! 絶対にリベンジするから、首を洗って待っていろー!
あれ? そういえばカニの首ってどこ……? うん、まぁそれはどうでもいいや! そんなことよりも私の進化ポイントと経験値ですよ!
金金金 : あの場合って経験値はどうなんの?
ミツルギ : あー、言ってもいいのか、これ?
イガイガ : 色々な理由で言うのを躊躇うな……。
「うー! もうその内容は言っちゃって良いですよ! ふーんだ、どうせ私の経験値と進化ポイントは無駄になったんですよ! そこで気を遣ってくれなくて大丈夫ですから、バッサリやっちゃって下さい! 覚悟はしました! うぅ、私の経験値と進化ポイントー!」
ミツルギ : もの凄い言いにくい状態ー!?
咲夜 : あれ? 大真面目にこの状態ってどうなるんだっけ?
神奈月 : そう簡単に発生する状況でもないからなぁ……。
金金金 : 悔しさを前面に出した、狐っ娘アバターの表情もこれはこれで……。
イガイガ : なんというか、サクラちゃんの百面相になってるよなー。
チャガ : さて……この状況は教えるべきか、否か……。
真実とは何か : 真実はじきに分かる。今は待つべし。
ミナト : まぁ今は待ちかな?
金金金 : 今は待ち……?
ミナト : うん、そう。今はまだ言えない。
「皆さん、教えてくれないんですか!? 真実さん、じきにわかる真実って何ですか!? ミナトさん、今は待ちって何ですか!?」
うぅ、確かに言い辛いような内容かもしれないけど、皆さん揃って伏せなくても良いじゃない! 私の百面相とか言ってないで、普通に教えてくれたって――
<幼生体を撃破しました>
<進化ポイントを1獲得しました>
<サクラ【ライオン】が幼生体:Lv7に上がりました>
<基礎ステータスが上昇します>
<進化ポイントを1獲得しました>
<幼生体を撃破しました>
<進化ポイントを1獲得しました>
<幼生体を撃破しました>
<進化ポイントを1獲得しました>
<幼生体を撃破しました>
<進化ポイントを1獲得しました>
<サクラ【ライオン】が幼生体:Lv8に上がりました>
<基礎ステータスが上昇します>
<進化ポイントを1獲得しました>
「……え、なんですかこれ? え、なんか一気に経験値が入ってきましたよ!?」
え、え? なんでこんなに一気に経験値が? それに進化ポイントも結構入ってきましたよ? Lvが2も上がって、進化ポイントが6も手に入った……?
金金金 : あ、死んでからでも倒したことになれば経験値は入るのか。
ミナト : うん、この場合はねー。だから言ったの、待ちだって。
真実とは何か : これこそ真実である。
ミツルギ : どうなるかを言えば、ネタバレだったしな。
チャガ : サクラちゃん、言わなかったのには悪気があったからじゃないぞ。
咲夜 : あー、ネタバレになるからか。
神奈月 : そういう事だなー。自分が死んだ後で、一定時間以内に同じエリアにいる敵が死んだ場合は少し量は減るけど経験値は入るんだよ。えーと、何分以内だっけ?
ミツルギ : 3分以内だな。まぁそうある事じゃないから、忘れても仕方ない。
あ、そっか。私が悔しそうにしてたから言い辛かったんじゃなくて、無事に経験値が入ってくるのを言ったらネタバレになるから、皆さんは教えてくれなかったんだ。
そっか、そっか! 少し死んだ事への釈然としない気持ちはあるけど、これはこれで大成果じゃないですか!
「はっ!? それじゃこの手段で乱獲をすれば、お手軽な経験値と進化ポイントを稼げるのでは!?」
注意点さえわかってしまえば、これこそ最高効率の育成が出来る! ふっふっふ、転んでも私はただでは起きないのですよ!
ミツルギ : サクラちゃんがそれでいいなら別にいいけど、正直おススメはしないぞ?
ミナト : 私としても、それは止めといた方が良いと思うよ。経験値と進化ポイントは稼げるけど、それ以外の全てがまともに成長しないままになっちゃうから。
金金金 : あー、要はパワーレベリングみたいなもんか。
ミナト : そう、そうなんだよね。まぁ今回のはオフラインゲームだから、サクラちゃんがそれでも良いといえば良いんだけどさ。
チャガ : 慣れてからなら、これでも別に構わんのだがな。流石に初見プレイだと後々に支障が出る。
「あのー、パワーレベリングって何ですか?」
んー? パワーレベリングってどこかで聞いたことはあるような気はするけど、どういう意味だっけ? いつどこで聞いたんだっけなー?
咲夜 : パワーレベリングってのは、オンラインゲームとかでよく言われるやつだな。あれだ、強い人に経験値のいい場所に連れて行ってもらって、本人は特に何もせずに経験値を荒稼ぎしてLvを上げるって手段だ。
神奈月 : 初心者にこれをやると、色々と慣れるべき部分をすっ飛ばす事になるからなー。
「あー、なるほど! それですか! って、それ、私、されたことありますよ!?」
ちょっと前に何気なくやってみたオンラインのゲームで、なんか初心者歓迎ってギルドっていうのに勧誘されて、その人達が戦ってる後ろでボサーっと突っ立ってLvが上がった覚えがある!
なんかその後に笑われたり、苦笑されることが多くて、居心地が悪くてそのゲーム自体を辞めたけど、原因はそれかー!
「うがー! パワーレベリングってどこかで聞き覚えがあったけど、あの時だー!」
ミツルギ : あー、サクラちゃん、パワーレベリングでプレイヤースキルが上達しなかった経験ありか……。
咲夜 : ちなみにサクラちゃん、その言い方だとオンラインゲームはやった事はあるんだな?
神奈月 : そういやそうなるのか。
「あ、はい! 春頃に今、大人気っていう剣と魔法のファンタジーのやつを2週間くらいしてました! もう2度とやりませんけど!」
それが初めてのフルダイブでのオンラインゲームだったけど、全然楽しくなかったもん! ボサーっと突っ立ってるだけでLvはどんどん上がってたけど、スキルの育て方やステータスの育て方は指示されてたし!
何かミスしたら怒られるし、通りすがりの人は笑うか、苦笑いだったし、あんなの全然楽しくなーい!
金金金 : あー、あのゲームか。……確かにプレイヤー数が多い分だけ、変なのも多いからなぁ。
ミナト : んー、初のオンラインゲームで、盛大に大外れなギルドに当たっちゃった感じっぽいね。
「とにかく分かりました! パワーレベリングに近いという事は、面白くないんですね! それじゃ絶対にやりません!」
あんな突っ立ってるだけでLvが上がる戦闘なんて、絶対に嫌だー! はっ、そういえば確かにさっきの手段は私は突っ立ってただけだった!?
ミツルギ : あ、サクラちゃん、パワーレベリングそのものが悪ではないからな? 慣れてからの育成時間の短縮には普通にありだからな?
イガイガ : 問題は何も分かってない初心者に対してやる事だから……。
「あ、そうなんですね? でも、今はしない方が良さそうなのでやめときます!」
ふむふむ、そっか、慣れてきてからなら問題はないんだね。そうなると2種族目以降に時間を短縮したい時には良いのかも。まぁ今は無しで決定ー!
「それじゃ普通に敵を倒す方向で進めていきますね! 進化ポイントは7ポイントになってるので、攻撃用のスキルを増やします!」
あ、そっか。さっきの私自身がほぼ戦ってない状況でこれだけの進化ポイントが手に入って、Lvが2も上がってるという状況が続くのが良くないんだ。
初見の実況プレイとしても、あれを繰り返すだけじゃ面白くないもんね! そういう意味でもあれは封印なのさ!
チャガ : お、今度こそちゃんとした攻撃用のスキルか。
イガイガ : 今度はどうなるか。
咲夜 : まぁここは見守るのみだな。
神奈月 : 見守ること、多いなー。
金金金 : ま、それが楽しみ方だしな。
真実とは何か : それが真実である。
「それじゃ、『威嚇』の時に本来取るつもりだった『爪撃』を取っていきます!」
戦ってて思ったけど、近接攻撃用のスキルは確実に足りてないからね! 威嚇は作戦を思いついたから予定を変えて取っちゃったけど、結果的には進化ポイントと敵の位置を大量に表示させる事には成功したから良いのです!
あ、そういえば今の場所ってどこなのか確認してないや。パッと周囲を見てみても、川は見えないし、広がってる草むらとちょいちょいある木くらいしかない。
うーん、折角の川から離れちゃったっぽい……。うぅ、川から離れたのは残念……。あ、そういえば石の確保が殆ど出来てない!? むぅ、とりあえずスキルを取ってから考えよ。
<『屈強』第2段階:スキル『爪撃』を解放しました>
よーし、これで進化ポイント3を消費して『爪撃』を手に入れたー! えーと、残りの進化ポイントは4あるから、もう1つ取ろうと思えば取れるね。
ミツルギ : よし、これでまともな近接攻撃が手に入った!
イガイガ : むしろ今までなぜ無かったのか……。
咲夜 : まぁそこはサクラちゃんだから。
神奈月 : ライオンとしては順当な攻撃スキルだな。
「ふっふっふ、これで明確にパワーアップなのですよ!」
私としても近接攻撃の威力は不足してる部分だとは思ってたから、これで良し! あ、でも『噛みつき』も欲しいなー。再使用時間の都合もあるし、進化ポイントもまだあるから取っちゃおうかなー?
「よし、戦力増強も兼ねて『噛みつき』も取っちゃいます!」
<『屈強』第2段階:スキル『噛みつき』を解放しました>
これで更にパワーアップ! ふっふっふ、一気に近接攻撃の強化が出来たよ! 残り進化ポイントは1になったけど、ここからまた増やしていけばいいのです!
ミツルギ : え、一気に2つ取った!?
イガイガ : まぁありといえばありか。
咲夜 : 現時点で結構な数の幼生体の位置は分かるだろうし、ありだろ。
チャガ : 確かに、結果的には効果的な状況か。
ミナト : 後回しになってるけど、次はマップの確認からだねー。
「はい、そうしていきますね!」
よーし、敵の位置は結構判明しているし、新しい2つの近接用の攻撃用のスキルも活用して、幼生体の撃破を頑張るぞー!
目指せ、私のライオンの敵討ち! 地味に数は多いけどね!
「パワーレベリングは悪! これは間違いないです!」
「いや、使い方次第だからね? そりゃ初心者にはなしだけど」
「作者さんはそういう経験がないから言えるんですよー!」
「いや、経験あるよ? オンラインゲームを初めてやったその日に、どこでどうすれば良いのか分からないのにパワーレベリングされた事は」
「え、そうなんですか!?」
「そのゲームに誘ってきた友人にねー。いやー、不具合があって適正Lv外が入れるダンジョン……クリアした時に経験値が一気にもらえる類のとこに放り込まれて、邪魔だからって入り口に放置されたからなー」
「うぅ、それは絶対に楽しくないのです!」
「うん、ぶっちゃけ楽しくなかった。……慣れてきたら有りだとは思うけど、初心者に向けてやることではない」
「ですよねー! それじゃ今日はこれですね! 初心者にパワーレベリングをするのは悪だと思う方は、ブックマークや評価をお願いします!」
「作品の内容は関係ないそ、それー!?」
「たまには良いじゃないですか!」
「……まぁいいか。それじゃ次回は『第34話 確認したい事』です。お楽しみに!」
「確認って大事ですもんねー!」
「……え、サクラがそれを言う?」
「その反応は失礼じゃないですかねー!?」