第31話 死んだ結果
袋叩きにされましたよ! 死にましたよ、盛大に! あの数の敵は一体なんなのさー! うがー!
うー、死んだのは仕方ないとして、ちょっと落ち着こうっと。えっと、ランダムリスポーンになったけど、今の位置はどこになってるんだろ? 折角マップが使えるようになったんだから……って、え?
「わぁ! 川ですよ! 川がありますよ!」
うわー! さっきまでいた場所は草むらだらけで、ちょいちょい木があったくらいだけど、結構な大きさの川がある! わーい! 新鮮な景色の場所にやってきたー!
ミツルギ : お、これって結果的には結構いい場所に出たんじゃね?
イガイガ : 確かに目的地に一気に近付いた感じだしな。
咲夜 : 死んですぐは狐っ娘のアバターが凄い嫌そうな顔をしてたけど、今は満面の笑みだ。
ミナト : テンション上がってるね、サクラちゃん。
「はい! なんか死んだのがどうでもよくなってきました! うわー! ちょっと飛び込んできます!」
うふふ、同じ草原の中なんだろうけど、新しい景色は嬉しいのですよ! いえーい! 死んで嫌な気分だったのが一気に吹き飛んだー! いやっほー! 川に向かって走り出せー!
ミツルギ : あー、やっぱりサクラちゃんはサファリ系プレイヤーの素質ありだな。
金金金 : どう見てもそうだよなー。
ミナト : ほーら、サクラちゃん、おいでおいでー。サファリ系は楽しいぞー!
神奈月 : それ、なんか怪しい勧誘っぽい。
イガイガ : サクラちゃん、川にも敵はいるから要注意なー!
咲夜 : あ、そういえばそうか。
チャガ : 川の中は少し戦いにくいから、意外と忘れがちだしな。
「おー! 川の中にも敵がいるんですね!? それじゃそれを狙ってみるのも良いですね! えいやー!」
バシャーンと大きな音を立てて、川へと着水! って、川が浅い!? あれー!? 敵がいるならもっと深そうだと思ったのに、普通に足が立つよ!
「……むぅ、泳ごうと思ったのに、これじゃ無理じゃないですか!」
あ、でも川だからあちこちに小石が普通に落ちてる。これは投擲の弾の確保に良いかもね!
ちょっと泳げなさそうだったのはがっかりだけど、それでも悪い事ばかりじゃなかったよ!
ミツルギ : あー、まぁライオン自体が大きい方だしな。
チャガ : 泳げる深さの川となると、そこより少し下流の方か?
咲夜 : え、それって言っていいのか?
チャガ : ……あっ。
神奈月 : ……ネタバレなしって難しいね。
真実とは何か : それはまさしく真実なり。
「チャガさん、それは本当ですか!? 本当ですね!? 嘘だったら絶対に許しませんからね!?」
この川の下流に行けば泳げるんだね! だったら、行かない理由はなーい! よーし、このまま川に沿って下っていくぞー!
イガイガ : え、今のネタバレは良いんだ?
咲夜 : というか、サクラちゃんの川へのこだわりが凄い?
ミツルギ : 今日一番のハイテンションだもんな。
ミナト : サクラちゃん、川に何かこだわりがあったりする?
金金金 : あ、聞くんだ。
チャガ : まぁ気にはなるけども……。
ミナト : あ、つい……。サクラちゃん、リアル絡みなら無理に話さなくてもいいからねー!
「いえいえ、大丈夫ですよー! 田舎に帰省した時におじいちゃんが川遊びに連れて行ってくれたんですよー! おじいちゃんが腰を痛めてからもう何年も行ってないから、なんか思い出してテンション上がっちゃって! どちらかというと山寄りの田舎の川だったんで、ここと雰囲気は全然違うんですけどねー」
初めは兄さんのおまけで割と嫌々で連れて行かれたけど、なんだか途中から楽しくなっちゃって、毎年楽しみにしてたんだよね!
小学生の頃の話だけど、懐かしいなー! おじいちゃん、元気にしてるかなー?
ミナト : そっか、サクラちゃんにとっては幼い頃の思い出って感じなんだね。
ミツルギ : なるほど、それならテンションが上がるのも分かる。
咲夜 : こことは雰囲気は違うだろうけど、田舎の川なら結構大自然ってとこもあるだろうし。
チャガ : 山寄りの川って事は渓流とかそういう方向か。もっとテンションが上がりそうなエリアはあるな。
神奈月 : 確かに、それには心当たりはあるなー。
金金金 : ほほう?
ミナト : まぁその辺りは後々のお楽しみだねー!
「おぉ、そんなエリアがあるんですね! そこまで行けるように頑張ります!」
ふっふっふ、これはゲームを進めていく上で思いっきり楽しみな部分が出てきたね! リアルでは川には絶対に1人では近付くなって言われてたけど、ゲームの中だし問題なしなのさー!
あ、川の中に小さなカニがいるー! おじいちゃんの家で食べた、川で捕ったカニは美味しかったなー!
「あ、もしかして川にいる敵ってカニですかねー? よーし、ちょっと試してみようっと! えいや!」
こう、カニを叩き潰すイメージでライオンの右前脚で一撃を入れる! わっ、ハサミで弾かれた!?
「え、このカニ、意外と強かったー!? でも負けませんよー!」
ちらっとマップを見てみたら、このカニの表示っぽいのは赤色だー! という事は一般生物ではないのは確定!
すなわち、進化ポイントを持っている敵! ならば、進化ポイントを寄越せー!
「まずは動きを止めますよ! 『咆哮』!」
あー!? カニの動きが素早い!? でも、カニの捕り方はおじいちゃんがしていたのを見たことはある! 自分で取れた事はないけども!
「そこだー! おぉ、やりました!」
なんとか照準用の円の中にカニを入れて、咆哮は命中! ふっふっふ、攻撃のキャンセルには使えなかったけど、怯ませて動きを止めるのには充分!
ミツルギ : あ、なんかカニとの対戦が始まった。
イガイガ : ……さっき死んだ時の理由とか、完全にどっか行ってない?
咲夜 : サクラちゃん、その辺の情報はどうする?
「あ、そういえば完全に忘れてました。えーと、戦闘をしながらになりますけど、教えてもらっていいですかー?」
とりあえず怯んでいるカニを川の外の……あ、こういう事って出来るのかな? うん、ちょっとやってみよ。
「『投擲』!」
カニの手前にある川底の特に小さな石を投擲の弾に指定して、それの巻き添えにする形でライオンの脚をカニに当てる! これでどうだー!
「おぉ、成功です!」
ふむふむ、敵そのものを投擲の弾に指定する事は出来ないけど、カニを弾き飛ばせた! ふふん、こういう手段を思いつくとは、私は天才ですね!
あ、草むらの中に吹っ飛んでいった!? わー! それは見失うからダメー! 急いで追いかけて追撃なのですよ!
チャガ : なんでこう、基礎はすっ飛ばすのに、応用の方を先にやるんだろうな?
咲夜 : サクラちゃんだからだなー。
神奈月 : それしか理由はないよなー。
ミツルギ : まぁそうだろうな。えーと、それでさっきの死亡の原因についてだが、まぁ原因は威嚇だな。正確には威嚇を間違った使い方で使ったからだ。
チャガ : あれは格下は問答無用で追い払うが、格上の敵には効かないどころか逆に呼び寄せる。
「えっ、そうなんですか!? あ、カニ発見です! えいや!」
とりあえず吹っ飛ばしたカニを見つけたし、まだ咆哮の効果で怯えているから、ガブリと口に含んでバリバリとかみ砕く! うーん、噛んでいるから歯応えがあるんだけど、ライオンだし、味はしないし妙な感じ!
「それだと私を殺したあの集団って、私よりも全部格上って事になりません?」
あはは、そうなのだとしたら、私は格下を追い払いまくると同時に格上に威嚇して回って、喧嘩を売って回ってた事になるよねー!
そんな間抜けな事は……して……ないよね? え、してないよね!? お願いだから誰か否定してー!
ミツルギ : あー、まぁまさしくその通りだな。本来は強敵と戦う時にそれ以外の雑魚敵から横槍が入らないように追っ払うスキルなんだよ。
イガイガ : 今のサクラちゃんが幼生体のLv6だから、最低でも集まっていたのは全部Lv7以上だ。
ミナト : あそこまでそのLv帯が集まってる場所ってのもそんなにないんだけど、ランダムリスポーンしてた位置が悪かったかな?
咲夜 : まぁ、あれを切り抜けるのは相当な上級者じゃなきゃ無理だ。
神奈月 : ああなったら、実力がなきゃ数の暴力に負けるからな。
真実とは何か : これがあの死の真実である。
金金金 : 要するに無意味に強敵を集めすぎたって事か。そりゃ死ぬわ。
ミツルギ : まぁ単純に言えばそうなる。
「ぎゃー!? それって完全に私のミスじゃないですかー!?」
うぅ、誰も否定してくれないどころか、全力で私がやらかしたという事を肯定されたー! ぐぬぬ、これじゃ返上したはずのドジっ子が戻って……きてないね?
誰もドジっ子だとは言ってない! よし、皆さん、ミスだとは思っていても、私がドジっ子だとはもう思ってないみたいですよ!
「はっ! という事は、マップにはこれからの獲物が大量に表示されてはいるんですね!?」
殺されたとはいえ、ううん、殺されたからこそ交戦状態には入っていたという事になるはず! だったらマップに私を殺した敵たちは表示されているはず!
格上ならすぐには勝てなくても、育てれば探しに行かなくても美味しい獲物が大量に待っている事に! ふっふっふ、死んだ価値はそこにある!
咲夜 : サクラちゃん、前向きだな!?
チャガ : まぁ実際にそういう運用をする場合もあるにはあるからな。ランダムリスポーンの位置任せになるから、割と運頼りにはなるが……。
ミナト : そうなるんだけど、サクラちゃん、そのカニを倒したらマップの位置を確認できる?
「あ、はい! それはした方が良さそうですね!」
私のライオンの死は無駄ではなく、これからの糧を記す道標となったのさ! ふっふっふ、これこそ私の無自覚が考案した作戦なのですよ!
<幼生体を撃破しました>
<進化ポイントを1獲得しました>
あ、カニは噛んでたら死んじゃった。思ったより弱かったなー、このカニ。でも進化ポイントは手に入れたから問題なし!
「さて、間抜けな人?」
「私は間抜けじゃありません!」
「じゃあアホの子?」
「アホでもないですよ!?」
「ならば、やはりドジっ子か」
「ドジっ子でもなーい! 作者さん、私に喧嘩売ってますか!?」
「いや、別に? ただ、他のみんなの気持ちを代弁してるだけ」
「皆さん、そんな風にはもう思ってない筈です!」
「……まぁそう思ってるならそれでも良いけど、はい、今回の分」
「何ですか、その意味深な言葉は!? えーと、今回は……やっぱり喧嘩売ってますよねー!?」
「いやいや、自信があるならそれでも問題ないよね?」
「むむ、確かにそれはそうですけど……仕方ありませんね! 『ドジっ子なのにそれを頑なに認めないサクラを応援してくれるという方はブックマークや評価をお願いします』はい、読みましたよ! これで満足ですか!」
「……なんだかんだ言いながらも読むところがサクラだよなぁ」
「喧嘩売ってるっていうより、私をからかってますね!?」
「さて、次回は『第32話 失敗を活かして』です。お楽しみに!」
「うがー! 学習した私の活躍でからかえなくしますよ!」
「……え?」
「何ですか、その反応ー!?」