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第16話 勝つか負けるか


 誰1人として私が勝つことを想定してくれていないけど、だからこそこの雑草には意地でも勝ーつ! 負けてたまるかー!


「わっ!?」


 ぎゃー!? また葉っぱが飛んできたー!? 今度は冷静に見極めて……ここだ! 後ろにジャンプして回避!


「はっ!? 避け切れてない!?」


 しまった、後ろにジャンプしても予想よりもあの葉っぱが飛んでくる距離が長い!? ならば、もっと下がって回避をするまで!


チャガ : ……なんで後ろに下がり続ける?

咲夜 : それは言っちゃ駄目だ!

ミツルギ : あれだ、あれだよ。サクラちゃんはあの攻撃の射程を測ってるんだよ。

イガイガ : そうそう、敵の攻撃の射程の把握は重要だもんな。


「あ、私って射程を測ってたんですか!?」


 そっか、特に深い事は考えずに後ろに回避してたけど、これってよく考えたら敵の攻撃の有効範囲が分かるんだよね! ふっふっふ、無自覚ながらに敵の攻撃を分析していたとは、ナイスですよ、私!


ミツルギ : ……サクラちゃん。

イガイガ : うん、まぁ、うん……。

チャガ : なぜそこで折角のミツルギとイガイガのフォローを台無しに……。

真実とは何か : その真実の説明は必要か?

神奈月 : いらないだろうなぁ。

金金金 : サクラちゃんだしなぁ……。

ミナト : あはは、予想外の事ばっかしてくれるよねー!


「何か皆さん、私の扱いが雑になってませんかー!?」


 ぐぬぬ、おかしい。これはおかしい! 私の無自覚による華麗な戦略行動のはずが、何も考えてない扱いになってる気がする!?

 あ、あの葉っぱの届く範囲はこの辺りまでかー。後ろに軽くジャンプ3回分ってとこだね。ほら、ちゃんと有効範囲の判断は出来たのですよ!


「それにしても、遠近両用とはずるいですね、この雑草!」


 あの葉っぱを飛ばす攻撃の有効範囲は距離的にはどのくらいだろう? 多分3メートルくらい? うーん、どうやって近付くかが問題だねー。

 変にジャンプをしてまた投げられても嫌だから、ジャンプは使わない方向で。一気に駆け寄って……そのまま爪で切り裂きますか! うん、そうしよう!


「もう一度突撃だー!」


ミツルギ : 今度こそは、攻撃に移れるか?

イガイガ : 負けを予想したけど、負けるまでに何をやらかすかが気になる。

チャガ : ……まぁ余計な口出しはしないでおくか。


 ふっふっふ、私の戦いに口出しは無用! その葉っぱを飛ばして切り裂く攻撃は見極めたのだ! また葉っぱを飛ばしてくるがいい! その隙を狙うのみ!

 一気に駆け寄っていくけど、あれー? 葉っぱが飛んでこないまま、攻撃が届きそうな位置に来ちゃったんだけど……うん、いいや、このまま攻撃しちゃえ!


 えいや! あ、ガリっと雑草のHPが削れたー! やったー! この雑草に初めてまともな攻撃が通ったよ!


「どうですか皆さん! 倒せてはいないけど、1撃入れましたよ!」


ミツルギ : サクラちゃん、まだ戦闘中ー!?

イガイガ : 集中を切らすな!

神奈月 : こっちは良いから、集中!

金金金 : あっ。

咲夜 : あっ……。


「わわっ!? あ、危ないですね!?」


 いやいや、今のは焦ったよ! なんで切り裂いた爪に根で巻きついて来ようとしてるのさー!? ふー、コメントの反応がなければそのまま捕まるとこだった。

 うん、私、今のはナイス回避! それにしても、雑草のくせに色々やってくるよね! ……さっき、そういえば根で投げ飛ばされたんだっけ。なんでそれを忘れて無防備に話してるのさー!?


ミツルギ : ……ギリギリ回避か。

チャガ : 正直、今ので終わると思ったぞ。

ミナト : 今の回避が今までで一番動きがよかった気がするねー。

イガイガ : 余計な事を考える余地がない、切迫した状況の方がサクラちゃんの場合は操作精度が上がる?

金金金 : あー、なるほど?

ミツルギ : そうか、変に考えさせなきゃいいのか。

咲夜 : サクラちゃんは。戦略を考えるのには向いてない?

神奈月 : 要は脳筋?

ミナト : 神奈月さん、そこはオブラートに包もう?

真実とは何か : 真実とは時に隠すことも必要なのである。


「神奈月さん、それは失礼過ぎじゃないですかねー!? 誰が脳筋ですか、誰が!?」


 というか、地味にミナトさんも真実さんも失礼なことを言ってませんかね!? って、そんな事を言ってる場合じゃないー!? 今度はまた葉っぱが飛んできたー!?


「うがー! この葉っぱの攻撃、鬱陶しいんですよ!」


 この葉っぱ、叩き落せないかなー? うん、もう試せることはとことん試してみようっと。えーと、ここまでやってきた感じでは操作にはイメージが重要みたいだから……はっ!


「これで、どうだー!」


 おぉ、飛んできた葉っぱを叩き落せました! 今パッと思いついた猫が猫じゃらしにじゃれつくイメージ、ナイスですよ!


ミツルギ : サクラちゃんが……あれを、叩き落した……だと!?

イガイガ : ちょっと待て。あれ、慣れないと意外に難しいんだぞ!?

咲夜 : なんだ、何が起こった!?

神奈月 : バグか!? どんなバグだ!?

金金金 : え、そんなに驚く事なのか? オンライン版ならあれくらいは普通に出来るよな。

チャガ : ……あー、いやまぁそういう事じゃなくてだな。

ミナト : オフライン版でも、出来るには出来るんだけど……。うーん、今のはマグレかな?


「ちょっと皆さん、失礼な驚き方をし過ぎてませんかねー!?」


 私があの葉っぱを叩き落した事がそんなにおかしい事なの!? 今のって、バグを疑われるくらいの出来事なの!?

 うぅ、みんなして私の扱いが酷い! 頑張ってこの雑草を倒そうとしてるのに、うがー! この行き場のない憤りを雑草にぶつけてやるー!


「この雑草なんて、こうですよ!」


 雑草が地面から根を出して歩くんじゃない! そんなのは埋めてしまえ! 根はちゃんと地面の土の中に埋まっていなさーい!


真実とは何か : サクラちゃんがヨモギに背を向けて地面を掘り出した?

イガイガ : え、一体何を……?

ミツルギ : ちょっと待て、それって!?

チャガ : おい、余計な口出しは無しだ、ミツルギ。

ミツルギ : ……そうだな。


 なにか皆さんが反応してるけど、そんなのは今は無視だー! 犬が穴を掘るイメージで、掘った土を雑草に被せてやるー!

 その後、噛みついて咥えて、この穴の中に放り込んで埋めてやるのさ! ん? 何か今、掘ってる場所に手応えが?


<規定条件を達成したので、スキルツリー外の基礎スキルが解放されました>

<スキル『投擲』を取得しました>


 ん? あれ、これって何だろう? スキルツリー外の基礎スキルが解放? スキルで投擲? えぇ!? なんかスキルが手に入っちゃった!?


「あのー、ツリー外の基礎スキルってなんですか!?」


ミツルギ : あー、うん、やっぱりそうなったか。

イガイガ : というか、どのスキルもまだ解放してないのに、それより前に規定外ルートの基礎スキルを解放するって……。

咲夜 : そういうごちゃごちゃ言うのは後回しにしよう。スキルツリー外の基礎スキルっていうのは……ライオンのスキルツリーの中には組み込まれていないスキル。でも、他の種族で汎用的なスキルの一部が、特定行動によって使えるようになるやつだな。

ミナト : まぁ普通にやったらライオンじゃ取れないスキルだけど、他の種族でなら簡単に取れるってスキルだねー。

金金金 : あー、そんなのがあるのか。

神奈月 : これで手に入るスキルって、基本的に種族に合ってないスキルになるけどな……。まぁ進化ポイントを使わずに手に入れられるのはメリットか。


「そんなのがあるんですね!?」


 え、でもなんでそんなのが取得できたんだろう? 私、何も投げてないよ? 必死に穴を掘って、その土を雑草に被せて……って、妙な手応えがあったのがあった! あ、もしかしてそれが投げた判定になってるの!?


「まぁ良いでしょう! 何かよく分からないですけど、結果オーライです!」


 予想外にスキルの取得になったけど、スキルというからには今までの攻撃よりも威力は高いはず! それじゃ早速、『投擲』を使ってみて……って、スキルの使い方ってどうやるのー!?

 わっ!? 私が穴を掘るのを中断しちゃったから、掘った土で埋まりかけてた雑草が這い出てきて、ぎゃー!? また、葉っぱを飛ばしてきたー!


「ミツルギさん、ヘルプー! スキルの使い方を教えて下さい!」


ミツルギ : あー、スキル使用のチュートリアルは、スキルツリーで1個目を解放してからなんだが……この場合は仕方ないな。

イガイガ : まぁサクラちゃんから聞いてきてるなら問題ないだろ。

咲夜 : 早めに教えてやれ。サクラちゃん、死ぬぞ。


「出来るだけ早くお願いします! もう一回叩き落とし……失敗したー!?」


 うぅ、もう一度葉っぱを叩き落そうとしたら、タイミングが合わずに私のライオンの脚が切られて、胴体も切られたー!?

 あー、もう残りHPが危ないよー!? ミツルギさん、早くスキルの使い方を教えてー!


「……色々と何やってんの、サクラ?」

「いきなり呆れた口調は失礼じゃないですかねー!?」

「いや、だってねぇ……?」

「私は全力で頑張ってますよ!?」

「……おかしい、絶対に全力の方向性がおかしい」

「だーかーらー! その反応って失礼じゃないですかねー!?」

「……そう思ってるのは多分サクラだけだと思うけど」

「そ、そんな事はないはずです! 私、真っ当に頑張ってますよね!?」

「その思いの丈を、いつものに交えてどうぞ」

「そういう話の繋げ方をします!? えぇい、それでも構いませんよ! 私、サクラが真っ当に頑張っていて、あの忌まわしい雑草に勝てと応援してくれる方はブックマークや評価をお願いします! うがー! 絶対に勝ってやるー!」

「という事で、次回は『第17話 スキルの使い方』です。……まぁスキルも変な取得順番で行ってくれたもんだ」

「やってたら取れたんだからそこは知りませんよー!?」

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