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1:1 In the beginning God created the heavens and the earth.


 その争いがいつから始まったのか、正確な頃は誰も知らない。

 特殊技能を持つ者を迫害したのが始まりとも、日々の暮らしに直結する自然崇拝を『神』を崇める人々が認めなかったのが発端とも言われている。

 しかしながら両者の争いは長く、そして日を追うごとに激しくなっていることは誰もが知っていることだった。

 この争乱の原因を教会側にあるとする風潮は、農民の多さからすれば妥当であった。彼らやその彼らにより生活を支えられていることを理解している者達にとって、居るかどうかわからない神よりも目先にある自然の方が身近な存在だったからだ。

 数としては圧倒的な自然崇拝派だが、しかして教会はその信奉者に富裕層が多い為に力が強かった。

 力無い農民達がより力を得る為に教会に弾圧されていた人々ーー『魔女』や『魔法使い』と呼称される人々と手を取り合うことは必至であった。

 彼女、または彼らの殆どが異教の司祭や何かしらの専門知識を持つだけの人であったが、中には確かに不思議な力を持つ者も居た。

 彼らはその力を自身を守るため、或いは周囲の人を守るため惜しみなく揮うのだった。

 いつ迄経っても異教徒を打ち滅ぼすことの出来ないのに教会は業を煮やし怒り狂った。

 その臓腑を焼き尽くすような怒りは、遂に特殊技能を持つ本物の『魔女/魔術師』に対抗する虎の子の専門戦闘集団を生み出した。

 教会の狂気の結晶。それが異端審問科特別処刑執行部隊、通称『魔女狩り部隊(ウィッチハンター)』である。


  *****


「あァ……全く、何と言うか……本来ならとても愉しいことの筈なのに、陰気な空気に纏わり付かれているって言うのかしら?ハァ……気が重いわ……憂鬱なんて悪感情は真っ平御免だっていうのに」

 頬杖をついたまま少女は大きな溜息を吐き出した。しかしそんな動作も絵になるような美しい人物だ。年の頃はまだ十代の半ば程だろう。少し伏し目な呉須色は、繊細な月光を思わせる色の睫毛が一分の隙もなく取り囲んでいる。長い睫毛が影を落とす肌は血が通っていると感じられないほどに白い。そのくせ頬は淡く珊瑚に色付いているし、唇はよく熟れた果実のようだ。さらりと零れ落ちた細い髪をかきあげ、また溜息を零したその人は紛うことなき美少女ーーそれも人と思えないほどに整った美少女であった。然し乍ら彼女をお茶に誘うような人物は居ない。

「ほんとうに、どうしてよりにもよってアレと一緒なのかしら……弟のほうは好感が持てるというのに」

「シスター、お嘆きの所ですが目的地に到着しました」

 憂鬱に沈む彼女に男は船を漕ぐ手を止め声をかけた。彼は打って変わって特徴がない。様々な地域の混血なのか顔立ちから出身を読み取ることは出来ない。背も程々で声も普通だ。強いて言うならば黒に近い茶髪がこの辺りでは目を引くだろうか。特別醜いことも美しいこともない、人の印象に残らないことに特化した男だ。

「嗚呼、もう着いたの?仕様が無いわね……」

 鬱々としたままに少女は小舟からのろのろと腰をあげた。青褐(あおかち)のシスター服の裾をはたくと、うんと伸びを一つ。それから荷台の布を取り去って、うっそりとした笑みを浮かべた。

「さぁ、裁判の時間よ鋼鉄の処女(アイアンメイデン)

 荷台に横たわる鋼鉄の乙女が彼女を静かに見つめていた。

色々考えたんですが、ここで一旦切ることにしました。後日統合など行うかもしれません。

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