夢の無い話:自由な表現の自由*学校ヘン
基本的にあった話ですが流石に個人名等は変えてあります。
また、人から聞いた話なのでストーリーにする為に幾らか補完しています。
今、特別教室での今学期最後の図工の授業で粘土を練った御椀をさくら先生が焼いたものが返って来た。焼き上がった作品を各々が箱から取り出して、展示用の作品カードを書いていた。自分のカードも黒板前の机から取って静かに席に戻った。我ながら綺麗な輪郭と器の容量を両立できた良作だと信じている。若干変な所に細かい泡が有るが、基本的に問題は無さそうだった。
クラスメイト達は「平常」運転だが、そんな事よりも今学期の図工の時間精一杯努力して毎週放課後図工室にに監禁されて作ったこの作品の完成をしたかった。題名欄は置いておいて、学年出席番号氏名を書いた。工夫した点は迷わずスリムな見た目と容量の両立できる素晴らしいデザインを力説した。木々の彫りもうっすらと見えて内容に困らなかった。写実的な柄を目指したが、これはこれで芸術と言い張れる感じだった。
(タイトルは…もりもり、かな)
誰よりも早く書き終わってなぜか毎回持って来させられる教科書を読んで時間を潰していると、先生の陰がヌッと迫った。
「もりもり?漢字で書きなさい。」
教室の前方にいたはずの先生だった。
「えっ」
「とっくに習ったでしょ。1年の漢字だよ。」
「それなら先生の名前だって小学生レベルですよ。」
「…それは関係無いでしょ。それに名前だからいいの。」
作品名だって名前に変わりないがこの先生なら当たり前のように成績を下げそうだ。普段媚を売っている分の貯蓄が有るとはいえ、これ以上の反抗は危ないと思った。
「漢字に直しておいてね。」
そう言い残して先生は黒板に向かって歩いて行った。
どっちの漢字に直すか考えてから消しゴムで消して開けた空欄に書き込んだ。
『盛々』
書いていて虚しくなりました。
今の時代に学生をやっていたらこうなったのかな…