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68:グレジハト村報告会-1

本日は二話更新です。

こちらは一話目になります。

「回復魔法を撃ち続けろ!絶対に死なせるんじゃないぞ!!」

「誰か木材を頼む!壁の穴が想定以上にデカい!!」

「この部位は使えるな。こっちの部位は……駄目か」

 殲滅戦も無事に終えてグレジハト村に戻ってきた私とメイグイを出迎えたのは、戦後処理に追われるプレイヤーと村人の姿。

 重傷者を回復魔法と薬によって治療している姿に、戦闘で破損した壁の修復作業、倒した複製体でないモンスターの解体と、実に忙しそうにしている。


「エオナ様、まずはルナ様に会って話を」

「分かってるわ。ただ、これだけはさせて」

 私の魔法ならば色々と手伝える事はあるだろうが、既にグレジハト村守備隊のプレイヤーたちと村人たちだけで手は十分に足りているように見える。

 対して、ルナへの報告と今後についての協議は私にしかできない。

 だから、ルナとの話を優先するのは問題ない。

 問題ないが……これぐらいはしておいていいだろう。


「数は少ないですが、重傷者の方へこれを」

「これは……」

「HP維持と痛みを和らげることに特化した噴霧式の回復薬です。重傷者の方へ優先して使ってください」

「あ、ありがとうございます!おい、みんな!!」

 私はアイテム欄から自作の回復薬を3ダースほど取り出すと、治療を担当していたプレイヤーに渡す。

 すると、そのプレイヤーは直ぐに他のプレイヤーと村人に呼び掛けて、回復薬を使用していく。

 これで治療が間に合わずにと言う形での死者は居なくなるだろう。


「では行きましょうか」

「分かりました」

 そうして憂いを断った私はルナたちが居る部屋へと向かった。


「次に大規模攻撃をやる時はきちんと味方に事前通告するように。アレの爆風で何人か怪我人が出たし、閃光で目がやられた奴も居たからな」

「すみませんでした」

 で、即座に怒気を放つルナに対して平謝りすることになった。

 ルナと一緒に部屋の中に居たゲッコーレイとヤマスラさんが驚いているが、これはして当然の謝罪だろう。


「まあ、あの先制攻撃のおかげで敵の数がかなり減ったし、残った敵も無傷では済まなかったからな。その点は感謝している。助かった」

「あ、うん。そうね。そう言ってもらえると嬉しいわ」

 なにせ、前回のグレジファム村では、村までの距離があった事もあって、何事もなかったが、今回は距離と威力の問題で味方に被害を出してしまったのだから。

 本当に申し訳ないことをしてしまった。

 次からは気を付けないといけない。


「で、こっちに来るまでに薬を渡していたようだが、アレは?」

「ただの自家製の回復薬よ。回復量は対象の最大HPの20%ほどだけど、封印の力による鎮痛効果と、維持の力による状態悪化阻止に秀でているわ。だから、使った相手が死んでいなければ、後は普通の治療で間に合わせられる筈ね」

「回復以外の作用まで考えたら、普通に最上位か、その一歩手前程度には強力な回復薬だな……」

「そうね。でも、薬なんて使ってこそじゃない?」

「そうだな。後で箝口令は敷いておく必要がありそうだが、道具は使ってこそだ。重ね重ね感謝する」

 私の説明にルナとメイグイは何かを察したのか、微妙に目を細める。

 ゲッコーレイとヤマスラさんは薬の効果量に対して普通に驚いている様子だ。

 なお、あの薬の原材料はルナとメイグイの二人が察したとおり、私の体の一部と言うか、頭に生えている薔薇の花の花弁を加工したものである。

 なので、材料費は適当な容器の他は、敢えて加えるなら普通に綺麗な水ぐらい、と言うとてもリーズナブルな代物である。


「では、情報交換に……」

 さて、これからが本題。

 私とルナがそう思った時だった。


「アタシ感動しました!」

「えーと?」

「……」

 今まで黙っていたゲッコーレイが突然声を上げた上に、涙を流しながら私の手を握ってくる。


「アタシはゲームの頃からエオナ様のファンだったんですけど、今回の件でもっと好きになりました!!」

「そ、そう……」

「茨の馬に跨って、薔薇の花弁を撒き散らしながら夜空へと駆け上がる華麗な御姿!神話を思わせるような圧倒的な威力を思わせる青薔薇と赤薔薇の二撃!足場が無いはずの空中を自由自在に跳ね回る幻想的な光景!!アタシの位置から見えるのはそれくらいでしたけど、他にも色々やったと聞いています!!本当に凄かったです!!」

「は、はぁ……」

「おまけに傷一つなく帰還した上で、怪我人のために自分の資材を投げ打つだなんて……ああ、本当に素敵過ぎます!!後でサインください!!家宝にします!!」

 どうやらゲッコーレイは私のファンだったらしい。

 私の手を握り、顔を近づけ、熱く自分の思いを語るその様子には、少々近づきがたい物がある。

 と言うか、何故、私の事を此処まで慕うのだろうか。

 此処まで熱心だと、流石に少々訝しく思わざるを得ない。


「そう言えば、ゲッコーレイさん、昔、ゲームを始めたての頃にエオナ様に助けてもらったとか言ってませんでしたっけ?」

「言ってたな。テンプレ構成の信仰を押し付けようとしてた他プレイヤーから助けてもらったとか」

「ええ、その通りです!あの時の御言葉……『どのような信仰であれ、信仰とは自分の意思で選び取る物。強制するのは見過ごせない』と言うのは、今でも昨日のことのように覚えています!!」

「そ、そう……」

 どうやら、私は『Full Faith ONLine』でゲッコーレイを助けた事があったらしい。

 私としては当たり前のことをした程度の認識しかないので、正直に言ってゲッコーレイの事は覚えていないのだが。


「アタシ、エオナ様のために歌を作ってきます!待っていて下さいね!!ジャーマネ!そんなわけでこの場は任せたわ!!」

「分かりました!」

「あ、うん。そう……」

 そうしてゲッコーレイはヤマスラさんに後の事を任せて、部屋を去っていった。

 うんまあ、実質的なグレジハト村守備隊の隊長はヤマスラさんだし、この後の報告会の内容を考えたら、ゲッコーレイは居なくても問題は無いのだろう、たぶん。


「ちなみに歌って?」

「あ、ゲーム時代から舞と交友の神ダスフレンは自作の踊りを、歌と偶像の神ソアイドルは自作の歌を登録出来るんです。自作だと効果がマチマチなんで、ゲーム時代でも使う人は滅多に居なかったですけど」

「へぇ、そうなの」

 なお、ゲッコーレイはこれまでに六曲、自作の歌と踊りを作り出していて、その何れもが完成度の高さからゲーム的にも高い効果を有しているとのことだった。


「さて、話が逸れたが、報告会と行こうか。エオナ、お前は前線で何を見てきた?」

「そうね。まずはそこから話をしましょうか」

 さて、ゲッコーレイの話は此処まで。

 此処からは報告会である。

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