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179:E12-2

「あ、そう」

「ふん」

 私はE12に向けて剣を叩きつけ、E12はジェラシピリッツの体を操って攻撃を正面から受ける。


「まあ、別に問題ないわ」

「ほう、強がりか」

 そこから鍔迫り合いには持ち込まず、私は最高速で回転してジェラシピリッツの体を斬りつけようとするが、E12は難なく私の攻撃を受け止め、弾く。


「ただの事実よ。やる事が変わる訳じゃない」

「言ってくれる!」

 その先は激しい打ち合い。

 私が攻めてはE12が守り、E12が攻めては私が守る。

 金属同士がぶつかり合う音が響き、火花が激しく散る。

 だが、お互いに一撃たりとも体に当てさせないように立ち回っている事もあって、私もジェラシピリッツの体も掠り傷一つ負っていない。


「『ルナリド・ムン・ワン・ボルト・ツェーン』!」

「『ヤルダバオト・ディム・フロト・ブラクウォル・ドライ』!」

 そうやって私とE12が位置を入れ替えつつ、激しく立ち回る中で、サロメも冷静に攻撃を仕掛ける。

 しかし、ジェラシピリッツの体に突き刺さると思われたサロメの攻撃は、その直前でジェラシピリッツの体に現れた人面疽が発動した魔法によって防がれる。


「『ルナリド・ファトム・フロトエリア・メンタ=イパクト・アハト』……効いてない!」

「都合がいい時だけ利用ってところかしら?」

「はははっ!直接的に我が糧にしていないだけ感謝してもらいたいところだな!」

 サロメは二度三度と攻撃を仕掛ける。

 物理的な攻撃だけでなく、精神面への攻撃も織り交ぜつつ、E12へダメージを与えようとする。

 だが、どの物理攻撃も壁によって防がれてしまうし、精神への攻撃はジェラシピリッツに攻撃が吸われてしまうのか、E12への効果はないようだった。

 ジェラシピリッツにとっては自分の身を守るためには、体の主導権をE12に奪われていようが、やれる事はやらなければいけないのだろうが……攻略する側にとっては面倒なことこの上ない。


「ふんっ!」

 そうして戦いを続ける中で、私は真っ直ぐに突きを繰り出す。


「はははっ!速いだけの攻撃など!」

「っつ!?」

 だがE12はそれを何なく避けると、私の懐に軟体動物のような動きで飛び込み、刃を向けてくる。

 私はその攻撃を回避するべく、スリサズの能力も使って後方に跳ぼうとする。


「容易く読めるわ!」

「っつ!?」

 しかし、避け切れなかった。

 E12の刃が手に掠り、赤い筋が一つ付く程度だが、確かに傷が付く。


「さあ!貴様も我が糧になるがいい!!」

「ちっ」

 直後、E12の能力が発動し、私の生命力を奪い取るための呪いが私に向かって流れ込み始める。

 これを放置すれば、私もこれまでの犠牲者と同じように全身が干からびて死ぬことだろう。

 そして、E12の呪いは『フィーデイ』に居る私だけでなく、『エオナガルド』に居る私にも確かに達しているようだった。


「面倒くさいわね」

「きさ……は?」

 で、他にも色々と情報は得たので、私は冷静に黒薔薇結晶を生み出して握りつぶすと、その作用によってE12の呪いを磨り潰して無効化する。


「とっとと磨り潰れなさい」

「っつ!?」

 それから新たに黒い霧を生み出して全身に纏うと、そのままE12に向けて突進し、霧に巻き込んでやろうとする。

 だが、自分の呪いを無効化されたことでE12にもこの霧の危険性が理解できてしまったらしい。

 ジェラシピリッツの能力によって姿を晦まし、私の攻撃を回避してくる。


「また姿が……」

「これだからゴースト系は……」

「ガウッ」

 E12が姿を消したことによって、サロメたちは直ぐに警戒態勢を取り、何時何処に現れてもいいようにする。

 しかし、今はまだ、そこまで警戒する必要は無いだろう。

 何故ならば。


「あら、怯える使い手なんて要らなかったんじゃないかしら?自分で言った事に自分から反するだなんて、それだから数打ち扱いをされるのよねぇ」

 E12が怒り狂う理由は分からなくても、怒り狂うポイントは分かっているからだ。


「貴様あぁぁ……」

 が、流石にメンシオスの黒い霧を纏った状態の私に直接切りかかるほどに怒らせる事は出来なかったらしい。

 苦虫を噛み潰したような顔をしつつも、誰からも離れた位置に現れて、私の事を憤怒の表情で睨みつけてきている。


「ただの事実じゃない。事実を指摘されて怒るだなんて、そりゃあ、貴方の製作者も貴方に誇るべき名前なんて与えたくはないわよね」

「ーーーーー!!」

 だから更に挑発をして、おまけにメンシオスの黒い霧も消してみるのだが……怒り心頭と言う感じになり、頭部が膨らんで、ジェラシピリッツが主導権を握っている時の様になってもなお、E12が私に切りかかってくる様子は見られない。

 前回の逃げ出した時もそうだったが、本当に攻めてはいけない時の自制心はしっかりとあるらしい。


「「「殺す。貴様だけは何としてでも殺す。我等に無き力を持つ貴様が妬ましいから殺す。我等の栄達を邪魔するから殺す」」」

「む……」

「馬鹿でしょ。エオナ」

「うわっ……」

「ガウー」

 E12の目が据わり、妙な気配を纏うようになってくる。

 刃の切れ味が明らかに増している感じがするし、体も向こう側が見通せないように濃くなっていく。

 周囲の空気も張りつめていくし、重苦しくもなっていく。

 これは……混ざったか。


「「「我等を馬鹿にしたから殺す。絶対に殺す。殺すという意思の下に、我らを統一する!!」」」

「まあ、問題は無いわよ。やる事は大して変わらないもの」

 実際には問題が大有りだが……それでも口ではこう言っておくべきだろう。

 なにせ、此処からの私の役目は……


「死ぬがいい!化け物ッ!!」

「来なさい。数打ち」

 目に留まらぬ速さで飛び込んできたE12の攻撃を受け止め続け、これまで以上に私へ釘付けにする事なのだから。

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