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119:フルムス攻略作戦第四-3

「行くぞお前たち!『サンライ・ライト・ミ=ヘイト・アップ・フュンフ』!」

「「「おおおおおぉぉぉぉぉ!!」」」

「む……」

 私の意識が第二陣の複製体たちの集団の先頭に居た、全身を金属鎧で包み込み、巨大な盾を持ったプレイヤーの複製体へと引き寄せられる。

 どうやら自身のヘイト値を一気に稼ぎ上げる魔法を使われたのだろう。

 そのプレイヤー以外の行動を認識するのが明らかに難しくなる。


「「「くら……っつ!?」」」

「『スィルローゼ・プラト・エクイプ・ソンウェプ・ツェーン』、『スィルローゼ・プラト・エクイプ・イパロズ=チェイス・フュンフ』」

「何っ!?」

 が、難しくなるだけであって、認識できないわけではない。

 だから私は剣を鞭に変えると躊躇いなく振るい、攻撃。

 攻撃後に生じる薔薇の花が放つ衝撃波によって、さらに戦線を乱していく。


「それ以上はさせるか!」

「おっと」

 と、ここで金属鎧が私にシールドバッシュを仕掛けてくる。

 私はそれを剣で受け止め、勢いよく弾き返す。

 しかし金属鎧は勢いよく攻撃を弾き返されたにも関わらず、殆ど隙を見せずに盾を構え直してみせる。


「くっ、化け物染みていてもプレイヤーはプレイヤーか……」

「まあ、プレイヤーに対するヘイト稼ぎはヘイト下げよりも効きづらいから仕方がないわね」

 私は他の複製体たちの動向に注意を払いつつ、金属鎧と正面から向き合う。

 今のシールドバッシュの見事さと装備から見て、恐らくだが彼自身のレベルは90。

 そして、私の攻撃を受けた他のメンバーたちにしても、スムーズな立て直しと包囲への動きから見て実力者なのは間違いない。


「それと、使った魔法の位階がフュンフなのも問題ね。信仰値の問題でそれ以上を使えないんでしょうけど」

「よく分かってんじゃねえか……」

「貴方たちの立場がどんなものだったのかの想像は容易に出来るもの」

 しかし、それほどの実力者であるのに、金属鎧が最初に使った魔法はツェーンではなくフュンフだった。

 何故か、そんなの決まっている。

 信仰値が減りすぎていて、使いたくても使えないのだ。

 彼らはファシナティオ占領下のフルムスにおいて、きっとファシナティオに魅了され、自我の無い部下としてこき使われていた。

 魅了中の悪行で信仰値が下がることは無いだろうが、ファシナティオに魅了されている間は自分が本来信仰している神々への祈りなど出来るはずもない。

 そうなれば、必然的に信仰値は大きく減り、信仰値が減ればそれだけ魔法の効力も下がる。

 だから、使いたくても使えないのだ。


「とは言え、それでも私に挑むのを決めたのは貴方たち自身。だから私はそれに応じるわ」

「そりゃあ……どうもっ!」

「「「一斉攻撃いいぃぃ!!」」」

 金属鎧が再びシールドバッシュを仕掛けてくる。

 それに合わせる形で、他の複製体たちも攻撃や防御をそれぞれの手段で行ってくる。


「ごふっ……」

 流石にヘイト操作で集中力が金属鎧に向けられている状態で、しかも左手が塞がっている状態で相手を殺さないように気を使いつつ、全ての攻撃を防ぎきる事は出来ない。

 私の体に何本もの刃が突き刺さり、前衛の離脱に合わせて攻撃魔法が降り注ぐ。

 爆発が何度も起こり、砂ぼこりが巻き上げられ、私の姿を複製体たちの目から隠す。


「これだけやれば……」

「エオナがどれだけ頑丈でも……」

「やったか!?」

「あ、馬鹿……」

 うん、問題は特に無い。

 と言うのもだ。


「あー……流石にちょっとは効くわね」

「「「……」」」

 これぐらいなら十分再生可能な範囲。

 ドレス含めて全身の皮膚が焼け、右腕が落ち、胸と腹と左目の辺りに大穴が空いているが、ほんの数秒ほどで再生は完了する。


「いやいや、幾ら何でも再生が早すぎだろ。エオナ」

「完全に化け物だな。あれは……」

「エオニャン、それは心が折れるのニャ……」

「はいはい、エオナだから仕方がない。エオしかーエオしかー。はぁ……マジでアレの相手はマトモにやってられないわね」

「ああぁぁ……流石はエオナ様……」

 ルナたち外野が五月蠅いが、そちらは無視。

 そもそもだ。


「んなもんアリか……」

「アリよ。だって私の本性は植物に近いし、ここに居る私は樹に付いている葉っぱの一枚ぐらいなものだもの。幾らでも引き出して来れるわ」

 今の私はスィルローゼ様の代行者であると同時に、封印したものたちを収める監獄でもある。

 故にこの場に居る私は私の一部でしかなく、本体とでも言うべき部分はフルムスのミラビリス神殿のように折り畳まれた空間に隠されている。

 だから、この場に居る私がどれほど傷つこうとも封印は揺らがないし、折り畳まれた空間から体を引き出して交換すれば、幾らでも問題なく戦い続ける事が出来る。

 ついでに金属鎧に私の言葉が正しいことを示すように、顔に何本か茨の棘を生やし、見せてみせる。


「そうかい。だったら、やり過ぎは気にしなくていいって事だな」

「そう言う事ね。ま、準神性存在ならこれくらいは出来ないと、危なくて力試しの一つも出来ないわ」

 私は地面に落ちた剣を拾い直し、再び構える。


「全員!やれるだけの事はやるぞ!!最後に一花咲かせてやれ!!」

「「「おうっ!」」」

「最後だなんて……封印と死は別ものよ。ま、来なさい。全員叩きのめしてあげるわ」

 それに合わせて、金属鎧たちは再び全員でかかってきた。

 それに対して私は……笑顔で応え、鞭を振るった。

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