第五十一話
「俺は、今度こそちゃんとお前と向き合いたい。そして叶うなら俺はお前に、頼って欲しいと思っている。――――――今度こそ、俺はお前の力になりたいんだ、ドイル」
一言一言、自身の中にある覚悟を確かめながら、殿下ははっきりとそう俺に告げた。
焚火の火を映した殿下の深緑の瞳は、中心に燃え盛る火が灯っている様に見えて、強い意志と決意を感じさせる。
「だから隠さず答えてくれ、ドイル。例えそれがどのような感情であっても、俺は全てを知りたい。――――――――――お前は、オブザという冒険者を恨んでいるのか?」
先ほど俺が誤魔化そうとした問いかけを、真っ向から再び問う殿下には、一生敵わないなと思う。どんなに後悔して己を責めても、最後の最後は全部認めて、正々堂々真っ向勝負が出来るこの人は、本当に強い人だ。見ない振りして我慢して、でも我慢しきれなくて、道をそれた俺とは大違いである。
その上、前世を思い出すという常人にはありえない経験をし、その分同年代よりも色々な見方や考え方が出来るはずなのにまったく活かせないどころか、こうやって指摘されるまで何だかんだ理由をつけて殿下と向き合うことから逃げていたことにすら気が付かないとは、なんて情けない。
こんな有り様じゃ、父上達を越えるのに何年かかるんだか…………。
前世を思い出す前からまったく成長していない己に呆れてしまう。
想いは言葉にしなければ伝わらない。
そんな事、誰だって知っていることだ。しかしそれを実行するのは難しく、人に求めるのはもっと難しい。人に求めるなら、まず自身の本音を吐露せねばならないからだ。そして、己の心の内を曝け出すのは、誰だって怖い。誰だって己を否定されるのは怖いし、傷つきたくないのだから。
けれども殿下は今、そのリスクを背負ってでも俺と向き合おうとしてくれている。面白くもなんとも無い、下手したら身勝手で愚かな負の感情を聞く為に、言いたくなかったかもしれない後悔を、不安を、わざわざ言葉にして俺に教えてくれたのだ。
だからお前も恐れず言葉にしろと、俺の背を押してくれている。
こういう所が王の器なのだろうかと、俺から目を放さない殿下を見て思う。不安からかギュッと拳を固く握っている癖に、でも絶対に引かないという姿勢は、何処までも強く真っ直ぐで、誠実だ。
幼馴染だからか、俺が大切な妹の婚約者だからなのか。殿下の周りには多くの人間がいるというのに何故ここまで俺にこだわり、心砕いてくれるのか。殿下には聞いてみたいことだらけだ。
離れていた間、何があったのか。
それ以前は俺の事をどう思っていたのか。
【槍の勇者】になれない俺でもいいのか。
殿下とは話したい事が沢山ある。話さなければならない事も沢山。でも、俺が今一番すべきことは、必死に俺と知ろうと、向き合おうとしてくれている目の前の幼馴染の優しさに応える事だろう。
「――――勿論。あの人さえいなければ知らずに済んだのに、と何度も思いましたよ。俺にかけられる期待も愛情も、何も一つ知らない癖に『【槍の勇者】にはなれない』と軽々しく口にするオブザさんが、俺は心の底から憎らしかった」
「……そうか」
だから俺はあの時の、ありのままの感情を殿下に伝えた。
知りたくない事実を頼んでもいないのに突き付けて去って行ったオブザさんは、あの時の俺にとって疫病神そのものだった。
「ずっと疎ましく思っていました。あの人の存在が、思い出が。………………でも、記憶から消し去ることがどうしても出来なくて。オブザさんを嫌うことが出来なかった」
矛盾していると、自分でも思う。
けれども、オブザさんの不器用に撫でる手が、痛ましげに俺を見るその表情が、どうしても忘れられなくて。疎ましく、二度と会いたくない疫病神だと心の底から思っていたけれども、あの人を忘れ全てを無かったことには出来なかった。
「あの人が教えてくれた剣のスキルを、俺は必要の無いものだと、切り捨てました。【槍の勇者】になれない俺に何の価値があるのか分らなかったから。【槍の勇者】になることを諦めてしまったらこの手には何も残らないと、あの時の俺はそう決めつけていたんです。だから、俺に槍の才能はないと告げるオブザさんが疎ましくて、憎らしくて、恐ろしかった。…………でも、オブザさんは、俺が渡した僅かばかりの口止め料を二つ返事で受け取ると、俺の適性は誰にも教えないと約束してくれました。俺が不安にならないように、黙っているかわりにオブザさんが持つ適性を見るスキルの事も秘密にしてくれと、交換条件まで残して」
「そうか」
当時を思い出しながら、一つ一つを言葉にしていく。あれだけ隠したいと思っていたあの時のことも、感情も、話しだしたらするすると言葉になって己の中から出て行くから不思議だ。
そしてそんな矛盾だらけの俺の言葉を、殿下は相槌を打ちながら静かに聞いてくれる。
「その時、最後にオブザさんに言われた言葉が、どうしても忘れられなかったんです。あの言葉があったからこそ、俺は道を誤った後も最後の一線を越えずに踏みとどまれたのだと、思います」
「…………なんて言われたんだ?」
俺に呼び出され、戸惑うオブザさんに無理やり硬貨の入った袋を握らせた。そして、己の言いたいことだけ言って立ち去ろうとした時の事を思い出す。急にお金を握らされ戸惑いながらも、それでもオブザさんは俺に一生懸命呼びかけてくれていた。
「この世界は、俺が思っているよりもずっと広く、色んな可能性があると言っていました。そして俺が思っている以上に、俺には沢山の可能性と未来がある。だから諦めるなと。道はいくらでもあるのだと、そのような事をオブザさんは最後まで言ってくれました」
「――――随分と曖昧だな?」
「別に誤魔化している訳では無いですよ? 何分子供でしたし、己の事で一杯一杯だったからその辺りは朧げなんです。でも、大まかな内容は同じはずです」
「なら、いい」
俺の言葉に不愛想な返事を返しながらも握りしめていた拳を緩めた殿下に、くすぐったいものを感じる。
あやふやな俺の言葉に、殿下が責めるような音を滲ませながら聞き返して来た時はドキッとしたが、一応納得してくれた様子の殿下にそっと胸を撫で下ろした。
「――――ドイル」
「はい」
「…………その、な。…………正直、なんと声をかけていいのか分からないのだが、」
「はい」
「――――ありがとう」
「はい?」
「話してくれて、ありがとう。…………色々あったがこうして今、お前と言葉を交わし、その胸の内を聞けたことを俺は感謝する。―――――――だから、ありがとう」
話してくれて嬉しかった。
そう呟いて、照れくさそうに顔を伏せた殿下の姿に、その呟かれた言葉に、込み上げてくる感情をなんと表現すればいいのか、俺には分らなかった。
いつだって周りが見えなくて身勝手な俺を見守り、心配して叱ってくれる殿下には感謝しなければならないことが沢山ある。しかしだからといって、焦って一人で突っ走っては駄目なのだということも教えて貰った。
…………ありがとうだなんて、そんな。礼を言うなら俺の方なのに。
心配してくれて、ありがとう。
見守ってくれて、ありがとう。
待っていてくれて、ありがとう。
よく考えろと叱ってくれて、ありがとう。
向き合いたいと言ってくれて、ありがとう。
「――――――俺の方こそ、聞いてくれて、ありがとうございました」
込み上げてくるこの気持ちを殿下に伝えたかったが、上手く言葉にすることが出来なくて。
掠れる声で途切れ途切れに告げた俺の言葉に、顔を上げて嬉しそうに笑った殿下の顔を見て、俺は心の中でもう一度、ありがとうと呟いた。
さわさわと木の葉が風に揺れる音が聞こえるほど静かな森の中で、会話の途切れた俺と殿下の間では焚火の火がパチパチと弾ける音が響いていた。
殿下の不愛想な返事を境に会話が途切れてしまったのだが、合宿に入ってから何度目かの沈黙は今までとは違い心地よかった。
「殿下も飲みますか?」
「貰う」
バラドが置いていった夜食と共にあった水をコップに注いで、殿下に差し出す。普通合宿でコップを使うことなど無いのだが、普通に水差しとコップを準備してきているバラドの用意周到さには若干慣れてきた。
殿下も敷き布や水差しなどを常備しているバラドに慣れてきたのか、何も言わずに受け取っていた。細かい事を気にしなくなった様子に殿下も毒されてきたなと思いつつ、コップを受け取ったのを確認した後、俺も腰を落ち着かせる。
そして、ちびちびと水を飲みながら時折【気配察知】を使って周囲の様子を探った。
「…………なぁ、ドイル」
「なんですか?」
「急に口調を戻せとまで言わないが、呼び方だけでもどうにかならないか? お前に殿下と呼ばれると変な感じがする」
「呼び方ですか?」
「…………なんなら呼び捨てでもいいぞ」
特に異常も見当たらず、することもないのでぼんやりと焚火を見つめていると、殿下が急に呼び名について言い出したので思わず聞き返せば、昔の呼び名どころか呼び捨てでもといい出したものだから、思わず殿下をまじまじと見る。
「昔は俺の名を呼んでいただろう? 『グレイ様』と」
自分から言い出しておいて照れているのか、徐々に小さくなる殿下の声に俺は珍しいものを見たと、思わず目を見張る。同時に、あの殿下がそんなに俺の口調を気にしていたのかと思うとくすぐったいやら可笑しいやらで、つい笑ってしまった。
「っ! 笑うな! 俺は真面目に――――、」
「…………? 殿下」
殿下の申し出を笑った俺に一瞬怒った殿下だったが、途中で言葉を切った。怒った殿下が言いかけてやめるなど珍しかったので、殿下の名を呼んでみたのだが返事はなく。
笑ったことでそんなに傷つけてしまったかと思い、もう一度殿下に声をかけようとした瞬間、殿下は笑みを浮かべて俺を見た。
「――――――そんなに、俺の名を呼ぶのが嫌なら、お前は特別に『お兄様』と呼んでくれてもいいんだぞ、ドイル? 勿論、先輩方と違って公の場でもな。何しろクレアに『この花が枯れるまでには必ず迎えに行くから、待っていてくれ』と告げたそうじゃないか。ご丁寧に、枯れない薔薇を添えて」
満面の笑みを浮かべ猫撫で声でそう言った殿下に、俺は思わず手に持っていたコップを落とす。零れた水が足にかかったのを感じたが、そんなことなど気にならない程の、今日一番の衝撃を受けた俺は殿下の言葉にピシリと固まった。
そしてそんな俺を見てさらに笑みを濃くした殿下は、殊更優しい声色で反撃を続ける。
「淡いピンクや白色でまとめられた、クレアが好みそうな可愛らしい花束だったな? しかも、全部お前の手作りだって? 年の数だけなんて随分と女心に配慮した心遣いまでして。是非、俺にも作って貰いたいくらい素晴らしい出来の花束だったなぁ、ドイル?」
穏やかな笑みを浮かべているというのに据わった目が、殿下の怒りをヒシヒシと伝てくる。わざとらしく肩を竦めながら、まるで実物の花束を見てきたかのように問いかける殿下に、俺は唖然と見つめ返すことしかできなかった。
「お前の事だから、覚悟を決めるのにもう少しかかると思っていたから驚いたがな。クレアはお前に惚れこんでいるから、『永遠に待っていろ』と言われてそれはそれは喜んでいるそうだ。勿論、俺も幼馴染として、クレアの兄として、お前がクレアを娶る覚悟を決めたことを心から祝福しているぞ? 二人ともまだ高等部を卒業していないから、今すぐ結婚式をという訳にはいかないが今さら反対はしないし、させないから安心するがいい。後三年も経てば、お前が俺の義弟になるなんてこれ以上喜ばしいことはないなぁ、ドイル? なぁに、近いうちに正式な家族になるのだからお前もクレアの伴侶として、堂々と、俺を『お兄様』と呼ぶがいい!」
口元に弧を描きながら据わった目でそう告げた殿下を、俺は茫然と見つめる。
いつ知ったんだとか、花束や言付の詳細まで何故殿下が知っているのだとか、リェチ先輩達じゃあるまいし『お兄様』なんてとか、とにかく色々言いたいことがあったのだが、衝撃の方が強すぎてどれも言葉にならなかった。
というか、何処のどいつが俺の情報を殿下に売りやがった!?
クレアに紙薔薇を贈ったことならまだしも、花束の色彩や言付の内容を一字一句違わず知っていた殿下に声が出ない。学園にいたくせに何故殿下は王城での出来事をこんなにも詳しく知っているのかなど、数々の疑問が頭の中を駆け巡る。
しかし一方の殿下は、パクパクと声にならない声をあげる俺を見てフンッと鼻で笑った後、少々乱暴な仕草で持っていた水を飲み干した。
そしてカン! と音がしそうな勢いで地面にコップを叩き置いた殿下は、何事も無かったかのように俺を見ると普段と変わらぬ声色で静かに問いかけた。
「で? お前は俺をなんと呼びたいんだって?」
「………………………………グ、グレイ様でお願いします」
まじでこの人には敵わない、と思った瞬間だった。
「最初から、素直に呼べばいいんだ」
「…………御手間を取らせて申し訳ございませんでした、グレイ様」
「本当にな」
尊大な態度でそういいながら空になったコップを突き出すグレイ様に、俺は黙って水を注ぐ。そんな俺の態度に満足したのか、グレイ様は改めて水を一口飲み直すと今度は静かにグラスを地面に置いた。
「それで何か無いのか」
「……何かとは?」
「俺に相談したい事とか、頼みたい事とかだ」
一体この人は何処まで知っているのかと戦々恐々している俺に、何か無いのかと聞いてきたグレイ様に恐る恐る言葉の意味を尋ねると、悩みは無いのかと返されたので俺はしばしの間考え込む。
悩み事、ねぇ。
何処か期待の籠った眼差しで俺の返答を待つグレイ様になんと答えようか悩む。ここでないと言ってしまうのは簡単だが、クレアの件以上の何かが出てきてしまったら嫌過ぎる。
しかし悩み事と言われても俺の目下の悩みと言えば、暴走気味な部下の操縦法とか、自分の馬まで洗脳しようとしているバラドが怖いとか、ブランの忠誠心が重いとか、たまにジンに尾っぽが見えるとかである。
どれも下らなく微妙で、正直グレイ様の手を煩わせるものでは無い。というか、グレイ様もバラドやブランを丸投げされても困るに違いない。あいつ等はちょっとというか、かなり変わっている。グレイ様に限ってそれはないと思うが、ミイラ取りがミイラになられても困る。
となると、それ以外の悩みとなるのだが……………………、
グレイ様に相談するのに丁度いいものはないかと頭を悩ませていると、不意にリュートの事を思い出した。リュートとセレジェイラに関してはもともと殿下に相談出来ればと考えていたことだし丁度いい。
「グレイ様」
「何かあったか?」
「ええ。グレイ様、セレジェイラ・フォン・ブルームをご存知ですよね?」
「クレアの乳母の娘だろう? 勿論知っているが、まさか興味があるのか?」
「いやいや、そう言う興味じゃないですよ? リュートの件で、彼女にきている縁談に興味があるんです!」
「リュート・シュタープ?」
丁度いいと思って出したセレジェイラの名を聞いた途端、声を低くしたグレイ様に慌てて弁明する。グレイ様に変な疑念を抱かれてはたまらないので、急いでリュートの名を出せば、ぱちりと目を瞬かせ意外そうな表情を浮かべた後、続きを話せと無言で先を促すグレイ様に俺は思わず溜息を零した。
昔からそうだが、グレイ様は俺がクレア以外の女性に興味を持つことに対してとても厳しい。このシスコンめと、心の中で毒づきながら俺は改めて口を開いた。
「リュートとセレジェイラ、恋仲らしいんです」
「確かなのか?」
「ええ。バラドに調べさせたので間違いないかと。――――それで、どうやら俺の所為で上手くいかなくなったようで。この間の決闘も彼女にきた縁談が絡んでいるようです」
「……………………そういえば、セレジェイラに隣国の侯爵子息から縁談がきていたな」
「その侯爵子息はクレアに求婚しに来た王子の付き人だったんですよね?」
「…………成程、それで」
俺が告げた少ない情報であの決闘がどういった経緯か、何となく把握したらしいグレイ様は僅かに眉を寄せた。
「逆恨みじゃないか」
「そうなんですけどね。ただ、リュートには入学式の件で負い目があるので」
「そんなものこの間の騒ぎでチャラだろう?」
「…………でも、二人が本当に恋仲ならクレアも悲しみますよね?」
「それは――――、」
「どうにかなりませんかね?」
「…………」
俺の相談に渋い顔をしたグレイ様に、クレアを出汁にさらに頼み込む。すると、グレイ様は眉間に皺を寄せて考え込んでしまった。恐らく今グレイ様の中で、俺の頼みごと+クレアとリュートの心証が秤にかけられているのだろう。
もともとグレイ様が俺の肩を持っていたところに、この間の決闘騒ぎの所為でグレイ様のリュートに対する心証はかなり悪いのだと思う。さらにリュートが学園の決定を無視して俺に決闘を申し込んだことも、公平な条件でなく明らかに己の得意な分野で勝負しようとしたことも、グレイ様の心証を悪くしたに違いない。
グレイ様はそういうところには厳しいからな。
あの決闘が学園を通して正式に申し込まれたものなら、リュートが馬術以外で勝負したのならグレイ様もここまで渋ることは無かっただろう。
俺からすれば得意な分野があるならそれで勝負したい、自分が優位だと分った上で勝負を行いたい気持ちはよく分かるのだが、グレイ様はそういった小細工を嫌う。
勝負をするなら、同じ条件でどちらにとっても公平な勝負を望む方だ。きっと、誰もがリュートが勝つと思っていたあの決闘は色々な意味で気にくわないものだったのだろう。
どちらにしろ、力を貸すか貸さないかを決めるのはグレイ様なので、俺は静かにグレイ様の結論を待つ。今は渋い顔をしているが、この優しくシスコン気味な幼馴染はきっと力を貸してくれるはずだから。
「――――――――――セレジェイラが縁談を望んでいないなら、縁談を延ばす口添えはする。しかし、リュート・シュタープが何らかの功績をたてない限り、俺がシュタープを引き立てることは無い」
「十分です! ありがとうございます、グレイ様!」
たっぷり悩んだ末にそう結論を出したグレイ様にお礼を告げれば、グレイ様は面白くなさそうに口を噤む。
しかし思った通りの答えを出したグレイ様に、俺は上機嫌だった。
二人の問題は時間が無くなってしまった事なのだ。時間をかければリュートは自力で爵位を賜るだろうし、難しそうなら俺が功績を立てられる場をリュートに用意してやればいい。
未だ眉間に寄せたままのグレイ様に苦笑いを浮かべながら、これでほぼ解決したリュートの件に対して再度礼を述べようとした瞬間。
森の空気が変わったのを感じ取った俺は、反射的にグレイ様を焚火の傍から突き飛ばして、焚火とグレイ様の間に体を滑りこませた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。