祭りの後②
大罪迷宮都市グリード、酒場【火鯉の池】
地下に存在するその酒場は多く存在する他の酒場と同じく、冒険者たちで賑わっている。特にこの酒場では派手な格好をした若い女性の従業員が多く、所謂”サービス”も豊富である為か、男達には人気の場所だった。今日も今日とて、迷宮で稼いだ金を女たちに貢いでいた。
そんな、ある意味実に昨今の冒険者らしさの詰まった酒場の片隅で、浮かれた雰囲気からは程遠い怒気を撒き散らした連中がいた。
「くそ!あの女!やってくれやがって」
「俺らをなめ腐ってやがる!」
「このままじゃ済まさねえぞ……今にもの見せてやる!」
【赤鬼】のメンバーは殺気立っていた。
当然である。彼らは”してやられた”のだ。あのシズクという少女に。何も知らない素人のツラで、金だけを奪い取り、更にその情報を拡散し劣化させ、そして賞金首討伐の機会をまんまと奪い取られ、討伐されてしまった。
やられたという以外言葉がない。彼らは小娘の手のひらの上で踊らされたのだ。
「…………」
だからこそリーダーのオーロックは苦い顔になった。仲間たちの怒りはもっともだ。自分だって腹が立っている。だが、それは負け犬の遠吠えであるという事実を理解できないほど彼は間抜けではなかった。
もともと、相手を侮って、相手の無知に付け込んでやろうとしたのはこちらである。要は”騙し合い”に敗れたというだけである。だというのにこれで怒りのまま復讐すれば、【赤鬼】の名は地に落ちるだろう。素人の冒険者に騙し合いに負けて、挙句それに怒って復讐に走った無能な冒険者として
そんなことになれば、この都市での居場所がなくなる。冒険者のウワサはすぐに広まる。元より【赤鬼】が良く見られてはいないことは承知だが、この復讐は明らかに”限度”を超える。それは彼にもわかっていた。
「オーロック!このままでいいのかよ!!」
だが、仲間たちは収まらない。復讐しない、なんて提言でもすれば一触即発、下手すれば分裂解散の危機である。彼は板挟みにあっていた。そしてその全ては結局シズクの所為であった。
あの女本当に余計な真似してくれやがって……
八つ当たりとわかっていてもそう思わざるを得ないくらい彼も追い詰めていた。仲間たちの意見に思わず賛同しそうになった、その時だった。
「失礼いたします。【赤鬼】の皆さま」
シズクが、正面から自分たちを訪ねてきたのは、
「…………は?」
彼は流石に己の目を疑った。彼女は店の酒場の扉から堂々と、仲間の少年を引き連れやって来たのだ。
当然、仲間たちの怒りは頂点に達した。
「こ、このアマ!?」
「よくも顔見せられたなあ?!おい!!」
罵倒を向けられてなお、シズクは平然としている。その背後で仲間のガキがいるとはいえ、まったくもって気にする様子はない。やはり囲まれた時、怯えていたのは”フリ”だったようだ。憎たらしい事に。
「で、何の用だ?俺達を嗤いに来たのか?」
「謝罪と賠償を」
皮肉たっぷりに言うと、彼女は素っ気なく返事し、そしてことんと目の前のテーブルに手を置いた。思わず全員が目を向ける、彼女がテーブルから手を離すと、其処には
「……金貨だ」
そう、金貨があった。それも”2枚”
「1枚は貴方達に渡した情報の対価。結果として此方でその情報の価値を損なわせてしまいましたから、その代償で」
「……もう1枚は?」
「僅かであれ、協力関係であったことへの感謝です」
実際は協力、なんてものは欠片もなかったのはシズクも承知だろう。であるにもかかわらずそう口にしたのは、此方を納得させるためであるのはすぐにわかった。
だが、
「ふ、ふざけんな!納得するかよ!!」
仲間達はいきり立つ。
これが得のある話なのは皆分かっている。金貨2枚を受け取れば金貨1枚分の黒字。馬鹿でもわかる。しかも、仕事という仕事は殆どしていないのだからまる得と言って良いだろう。だが、それでも「だから”やられた”のを飲め」と言われると、プライドが邪魔をする。
本当は後ろにいるバカどもだって金は欲しいに決まってるのだ。しかしバカ故に肥大化したプライドを制御する手段を持っていない。さてどうするか――
「前提として、あんたが脅迫まがいの真似をしなきゃ、こんなややこしい事にはならなかったんだがな」
と、そこに、女をかばう様に仲間の少年が前に出てきた。自分よりもはるかに強面の男たちに囲まれても、怖がる様子も見せない。宝石人形と正面から殴り合い、一枚剥けたらしいルーキーは堂々とこちらを見つめてくる。
「シズクのやり方にケチをつけて、自分たちはセーフ、なんてのはちょっとカッコ悪くないか?」
「てめ――」
「それともう一つ、祭りが起こる前、迷宮でシズクがお前らを助けたのは覚えてるか」
「あ」
と、仲間の一人が声を上げた。声を出してしまった。それが決定的だった。仲間達は先ほどまでの威勢が急激にしぼんでいった。
オーロックもその件は知っている。仲間たちが無茶をして、宝石人形退治を狙い、挙句失敗した。他の冒険者に邪魔された、と言っていたが、どうやら向こうの言い分は違うらしい。そして、どちらが真実であるのかは、仲間達のしょぼくれた顔を見れば明らかだった。
「迷宮で助けてくれた恩人を脅しかけた挙句、逆に利用されてしかも逆ギレしたバカになるのと、労せずに金貨一枚の得を得たやり手の冒険者。どっちが好みだ」
「……いいだろう、金だけおいて消えろ」
一言、それだけ言った。オーロックの言葉に、僅かに仲間たちはどよめき、抗議するように声を上げようとするが、勢いはない。まともに言葉になろうとするその前に
「それでは失礼いたします。」
シズクは深々と頭を下げ、金貨を置いて退散した。完全に怒るタイミングを失い、振り上げたこぶしを振り下ろす間もなく好機を失った彼らは、途方に暮れていた。酒場の騒がしさ、男たちのはやし立てる声と女の声が響くそのさなかにおいて彼らの空気は冷え切っていた。
「いいのが?リーダー」
口を開いたのは、メンバ―の中でも比較的冷静だったグロッグだ。問われ、オーロックは頷いた。
「これ以上の引き際はねえよ。アイツの言うとおりだ。損しかねえ選択と、得しかねえ選択。選ぶなら後者だ」
「だがよ」
「それに、討伐祭の時ならいざ知らず、平時での冒険者の諍いはご法度だ。あの女の所為で今後の生活に支障をきたすわけにはいかねえ」
正論を淡々と述べ、まだ少しくすぶっていた不満を丁寧にもみ消す。それでもぶつぶつと不満を口にするが、先ほどまでの勢いは完全に消沈していた。
オーロックは内心で冷や汗をかきながら安堵していた。金貨を見た瞬間、仲間たちの怒りが一気に萎んだのを感じた。すぐに頭に血が上るやつらばかりだが、金には弱い。
で、あれば、あとはもうひと押し
「んで、リーダー、かね、どうすんだ?」
「んなもん決まってら!あぶく銭だ!女と酒よ!!!」
オーロックの言葉に、メンバーたち歓声をあげるのだった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「……無事事が収まってよかった」
飛び出した酒場の中で小さく聞こえてくる背後で男達の歓声を聞きながら、ウルは静かに安堵した。
「すみません、ウル様。ご迷惑をおかけしました」
頭を下げるシズクにウルは首を横に振る。
宝石人形の賞金を得て、真っ先にウル達が行ったことは、【赤鬼】達との決着だった。宝石人形打倒の為の装備を整えるためにシズクがだまし取った冒険者たちへの謝罪。
しかし別段、シズクが【赤鬼】と交わした契約で間違ったことは一つもしていないし、返金のみならず追加で更に金貨を一枚くれてやるというのはやりすぎかもしれない。が、禍根を完全に断つための必要経費とウルは割り切った。グレンも事情を説明するとそれに同意した。
―――無駄な恨みは買うなよ、おめーら弱いんだから
「あの時得た金貨はいわば無理矢理こさえた借金だ。利子くらいつくさ。上手く向こうが流してくれたのは幸運だった」
もし、そうでなかったなら、厄介なことにはなっていただろう。ヒトの恨みとは根深く、いつまでも後を引く。
「まあ、もう済んだことは良い。それよりも、やらなきゃならんことがある。めんどくさいが」
「既に酒場に連絡は入れてあります」
そう、赤鬼への謝罪は前座でしかない。本番、討伐祭の勝者が行わなければならない”恒例の義務”はこれからだ。
すなわち、勝者が獲得した賞金をふるまい行う宴会である。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
刹那主義の乱暴者、先を考えず今を楽しむ冒険者、というのも今は昔。
命の危機あれど、安定した収入の約束された迷宮という職場を得てからというものの、冒険者も建設的に金を貯め、将来に目を向けるのが当たり前となった。その日稼いだ金をその日のうちに全て消費するようなバカな真似をする冒険者は最早希少種だ。
しかし、時に大金が懐に転がり込むような事があった場合――例えば賞金首を討った時など――その時は冒険者は大盤振る舞いで金を散財するのが決まりになってる。”義務”と言ってもいい。
「特に討伐祭なんかは、他の冒険者を出し抜いたわけだろ?恨みっこなしの一発勝負っつっても、奥底で恨みつらみを抱えちまうのが人間だ」
「だから、それを後々に引きずらないために、討伐祭の勝利者は、普段世話になってる酒場で宴会して、全員に”おごる”のが通例と……面倒な」
と、グレンの解説を思い返しつつ、ウルは顔を上げる。
場所は『欲深き者の隠れ家』、本道から若干外れつつも賑やかしいこの酒場は、普段と比べさらに人が多かった。見た顔は多いが見ない顔も結構ちらほらいる。ひょっとしたらおこぼれにあずかろうとしてるのかもしれない。まあどうでもいい。
そして彼らは全員が全員、此方をじっと見つめている。ウルが口を開くのを待っているかのように見える。いや、本当に待っているのだ。なにせこの場の主役はウルなのだから。
「……えー」
ウルはグレンに教えられた定型文を頭の中で繰り返す。なまじこんな真似をするのは初めてのなので緊張した。が、宝石獣と対峙するよりははるかにマシだと心を落ち着かせた。
自分の隣にはシズクもいる。いつも通りのほほんと、柔らかい微笑みを浮かべる彼女を見るとさらに落ち着いた。緊張しているのがバカバカしくなる。
さて、と、ウルは咳を払い、全員に聞こえるように大きく落ち着いた声で伝えた。
「賞金、ゴチになりました!!」
瞬間、酒場中から一斉にブーイングが起こった。
「代わりに今日は俺の奢りだー好きに飲んでくれ!!」
瞬間、酒場中から歓声と共に乾杯の掛け声が響き渡った。
「おお、ウル!我らが大将!!乾杯!!」
「大物喰らいのウル!!人形殺しのウル!!」
「てめえが手に入れた賞金全部のみほしちゃるからなー!!」
「シズク!!偉大なる魔術師の卵よ!!」
「シズクちゃーん!!かわいーぞー!!」
元気だ。とウルは思った。もちろん、それはありがたいことではあった。そうやってバカ騒ぎして、禍根を残さないでいてくれるならそれでいいのだ。
皆が注がれた
「やーや、カッコいいねウル」
「ディズ」
借金取りの少女、ディズである。彼女はアカネを膝に抱えながらにまにまと嬉しそうに笑った。アカネはキョロキョロと人がたくさんいる場所を楽しそうに見て回っている。
「アカネ、果実水飲むか」
《のーむ》
店主に頼んでいた甘い飲み物(幾つかの果実を絞りミルクに混ぜたもの)をアカネに渡すと、アカネはとてもうれしそうにコクコクと飲み始める。ウルはアカネの頭を撫でてやるとくすぐったそうに目を細めた
「可愛らしい」
「俺の妹だぞ」
「今は私のものだもんねー……ちょっと、そんなこの世の終わりだみたいな顔にならなくても。いいよ君の妹でいいから顔をあげなさい」
テーブルに突っ伏すウルをディズはぺちんぺちんと叩いて起き上がらせて、
「君、妹好きだね。アカネもウルが好きだけど」
《にーたんすきよ》
「好き嫌いとかよくわからんが、家族だ」
「それを望むなら今後も頑張らないとねって、今いうのはヤボだねー……そんなわけでどうぞ。2人にプレゼント」
「……これは?」
手渡されたそれは、一見すると単なる小型の鞄で、腰に装着するためのベルトがついている。深い紺色の生地で誂えられており、派手な装飾もなくシンプルだが、不要な部品を取り除いた機能美を感じた。
鑑定能力など持っていないウルでも、良いものであるというのは分かった。これは
「【拡張鞄】か?」
「いわゆる”魔石収容鞄”。拡張魔術が仕込まれているから借り物のボロ袋よりも収容率は数倍。重さは逆に驚くほど軽い高級品、おまけに魔石の自動回収機能付きだ。大事にしなよ」
見れば魔石以外にも、魔具薬品地図その他を収容する袋が備わり実用性に富んでいた。試しにウルが自身の腰に備えてみるとしっくりと収まった。いう通り、重さもなかった。
「良いのか?貰って。高いだろう?」
「私の無茶ぶりに君は真正面から答えた。ご褒美くらいは用意するさ」
ディズは笑って、両手を叩いて拍手する。アカネもそれをまねした。
「おめでとうウル。シズク。見事宝石人形を討ち取った。とても素晴らしいことだよ」
《おめでとー》
「ありがとうございます。ディズ様。アカネ様」
「ありがとうございます……無茶ぶりはもうないよな?」
「後は冒険者ギルドに評価されて銅の指輪が獲得してその後黄金級になるだけだよ!」
結局元の大問題が残されている事実に、ウルは机に突っ伏した。しかしもともとはウル自身が打ち立てた無理難題であるので、文句も言えない。
「……なんだか、あんたとは長い付き合いになりそうな気がするよ。ディズ」
「そうでなくては困るね。ウル。アカネも寂しがるだろうから」
そういって、よいしょとディズは膝に座らせていたアカネをウルの方へとやる。ウルは元気になった。
《にーたん元気ー?」
「アカネ、最近はどうだ。ディズにいじめられていないか」
《ハゲのおっちゃんすきー》
「ハゲ言うのはやめなさい。とりあえず後でお礼とお詫び言っておかなければな」
《これきれい》
「お酒はダメだぞアカネ、まだお前には早い」
紅の身体をくねらせながらも、ウルに「何が楽しかったか」を語っているアカネの様子を見るに、今のところひどい目には合っていないのは間違いないらしいので、ウルは安堵した。この幸せそうな彼女を悲しませてはならないとウルは心を引き締め、
「おりゃー、ウルー!よくしななかったにゃおめー!!」
よっぱらいに絡まれた。アカネは使い魔のフリをしながらパタパタとディズの懐に逃げ込む中、アルコールにより顔を崩壊させたナナがテ―ブルに乗り込んできた。
顔が真っ赤である。鎧を脱ぎ捨て薄着で肌色があちこちから見えている。酒瓶を両手に握りしめて暴れるさまは酔っ払い以外の何物でもない、教育に悪い。
「んにゃ!あちしゃかんどうしたんらー!おまーらがなー!ほうせきにんぎょーほな!」
「この素行で指輪はく奪されないかと心底思うんだがもう少し酒癖をだな」
「だいじょうぶらよー!!ほら、あらひ!素行の良さがあふれてる!!」
「口から嘔吐物があふれようとしてるけどな危ない危ない待て待て待て」
結果として彼女の口からあふれ出た”素行の良さ”は桶に収まり何とか処理は完了した。ため息をついたウルの気も知らずうへへへへと笑うナナはごにゃごにゃと言葉にならない言葉を呟いて、ウルに向けて笑みを浮かべ、
「んふふ、死ななくてよかったらー」
「……うん、心配をかけた」
心配してくれていたのは事実なのだろう。酒に酔っ払いぐでんぐでんになったナナにウルは素直にお礼を言った。そんなやり取りを見て、隣のテーブルで酒を飲んでいたジャックが同じく酔いで座った目で大きな声で叫びだす。
「俺は別にくたばっても構わなかったんだがなー!そしたら賞金は俺の物だった!」
「ぬかせよ!おまえにゃーむりだよチンピラ三下」
「んだとーら!!」
ケンカが始まった。とたん、近くのテーブルが他の冒険者たちの手によって速やかに除けられ、二人を囲むゴングができた。早くも賭けを取り仕切り始める者まで出てきている。ケンカなんてものは冒険者には日常茶飯事らしい。店主はやれやれとほうきを持ち出し破損した瓶の片づけを始めた。
「元気だねーアホどもは」
「宴会としては正しいと思うが……というか、それこそアンタは何してんだグレン」
その騒乱の最中、グレンは彼らのバカ騒ぎには全く絡まず、一人で酒をドンドンと開け、そして目の前のおかずをチビチビとつまんでいる。やってることは独身男の贅沢な晩酌である。
「あん?ただ酒とただ飯を楽しんでるよ」
「タカリか」
「何のためにお前に宴会の手順教えたと思ってんだ」
「やっぱりタカリじゃないか」
世話になったのだから感謝したいというのに感謝しがいのない男であった。最も、彼は基本的にこんな感じだったのでいつもの事だった。ウルは空になっているグレンのコップにエールを注ぎ、頭を下げた。
「ありがとう師匠。死なずに済んだ」
「そりゃよかった」
「そんだけか」
「上等だろうが。ほれ、酔っ払いに絡む暇あったら行くとこあんだろが」
グレンはしっしとウルを追い散らす。行くところ、というと一つしか思い当たるところはなかった。思えば起きてからドタバタとし続けてまともに話してはいない。ウルは自分のテーブルで先ほどから変わらず椅子に座る相棒に顔を向けた。
「シズク?」
普段からおとなしく、ふわふわとしている彼女であるが、今日はそれよりも増して随分と静かだった。彼女はウルの声で顔を上げるが、いつものようにやんわりと笑いもせず、マジマジとウルの方を見つめ返してくる
「……どうした?」
「ウル様……」
しばし間をあけ、そして彼女はこらえきれない、というように立ち上がり、ウルに駆け寄って、
「やりましたね」
そういって、彼女はウルの両手を自分の両手でぐっと握りしめた。
途端、彼女の中の感情がウルの中に伝達するようにして、ウルの身体の奥から、まるで噴火するような想いが湧き出てきた。喜び、達成感、安堵、目の前の彼女への圧倒的な感謝、今の今まで実感出来ずに蓋をしてきたモノが怒涛のようにウルの身体を包み込んだ。
きっとそれは目の前で、微笑むシズクも同じだった。
「……そうだな、やった」
「はい」
「やった、俺たちはやった。やれたんだ」
何度も言葉にする。だがそれだけでは到底足りない。あふれ出る感情を処理する事なんてとてもできなかった。だからウルは衝動に従い、目の前のシズクを腰から抱いて、掲げるようにして、思い切り叫んだ。
「俺たちは、勝ったぞ!!!」
「はいっ」
そのウルの咆哮に、冒険者たちは再び乾杯を掲げ、ウル達を讃えたのだった。
【討伐祭・宝石人形討伐戦:リザルト】
・宝石人形撃破賞金:金貨10枚
・宝石人形獲得魔石:銀貨20枚相当
・討伐祭特別報酬:金貨5枚
・落下物:宝石人形の石片
・人形の魔片 吸収
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