戦いが示すこと
作品のジャンルを変更しました。
どこに当てはまるのか今ひとつわからないんですが‥
とりあえず、ファンタジーから、文芸>アクション に変えてみました。合ってるのかなあ‥。
アクセスしてくださる皆さま、本当にありがとうございます。アクセスしてくださる方がいるお陰で書けてます‥
読真は異生物が出てこない、と確信すると身体がぐらっと揺れるのを感じた。自分の身体なのに全く自分の意志で動かせない。そのまま地面にどさりと倒れ込む。
「読真!」
少し離れたところから真秀の声がした。そして駆け寄ってくる足音も聞こえた。
「読真、おい、しっかりしろ」
駆け寄って来たのはシダらしい。目を開けることができない。読真はわずかに顎を引いて意識があることを示した。
シダはバックパックからサバイバルブランケットのようなものを出して読真を包んだ。そして大声でよみねを呼ぶ。
「よみね!余力あるか!?」
呼ばれたよみねは小走りで近寄ってきた。読真には足音しか聞こえない。少しずつ自分の周りで話す人の声が小さくなっていくのを感じていた。
「‥結構ダメージがあるわね。身体の外も中もやられてる。‥とりあえずは外の傷を塞ぐだけにしておくわ。私まで救急のお世話になるわけにもいかないからね」
読真が聞いたのはその声が最後だった。
がくり、と力が抜けた読真の身体をそっと地面に横たわらせた。よみねが寄ってきて、読真の身体に癒字を書く。レンにも大きめの癒字を書いたのでよみねの顔色も決してよくない。それを見たシダはよみねの頭をぐしゃりと撫でた。
「無理するな、もうすぐ救急が来るんだろ?」
「‥黙ってて」
よみねは集中して癒字に祈念している。その横に真秀が身体を引きずりながらやってきた。シダがその姿を見て声をかける。
「真秀、身体は大丈夫か」
「‥俺は異生物にやられた傷なら治りやすい。今しんどいのは単純に体力と精神力を削ったからだ。‥でも読真は」
そう言って意識を失い転がっている読真の傍に座り込んだ。シダは座っている真秀の尻を軽く蹴った。
「大丈夫だ、よみねが応急処置をしてるし、もうすぐ救急も来る。お前も休め」
青い顔で額に汗を浮かべ、ぐったりと横たわる読真を見ながら真秀はずっと黙っていた。
しばらくして応援の第九隊と救急車がやってきた。最も重傷のレンがすぐに運ばれ、意識のない読真の事は帯同してきた医師が手早く診察する。外傷が多く、中にまで傷が達しているところが多かったので軽いショック状態になってはいたが、よみねの癒字で危ないことにはならずに済んだようだった。
とりあえず二日ほど病院で安静にしていればいいだろう、ということで読真は第九隊の車で近くの病院に連れて行かれた。
現場に残ったシダ、ソネ、キョウ、よみね、そして真秀の五人で辺りに散らばった装備品などを回収する。
およそ回収が終わったころに、シダが身体を屈伸させながら言った。
「‥‥さて、あとは今の異生物がどういう状態だったのか、検証と考察だな。‥俺たち書士ではないものの物理攻撃が効いていた。これが何を表すのか‥」
キョウが額に滲んだ汗をぬぐいながら答える。
「‥一度目の封殺寸前に犬を取り込みましたね。‥あれが関係してるのでしょうか」
その言葉を受けて、座り込んだまま真秀は考え込んだ。
鹿野山森林公園で戦った異生物も、何が毒性のある生き物を取り込んでいたのではないか、そのせいで異生物同士が連携を取っていたのかも、というような話を、流文字真幸からは聞いていた。だが、あの時に、闘字封字以外の攻撃が有効であったかはわからない。まさかそんな可能性があるなどと思わずに戦っていたからだ。
この次元の生き物を取り込めばどんなことが起きるのか。
それがまだ全く確定していない。
しかし、もし通常の攻撃で生命エネルギーを削ることができるなら、封殺はぐんと容易になるはずだ。
そもそも通常攻撃が効くのであれば、「絶対に殺せない」と言われていた異生物の息の根を止めることも可能になるかもしれないのだ。
「鹿野山森林公園で戦った異生物も、こちらの次元の生き物を取り込んでいたようなんですが、通常攻撃が効くものだったかはわからない‥です」
真秀は低い声で言った。真秀の方を向いたシダはその顔を見て驚き、しゃがみ込んで真秀の身体の下に腕を潜らせたかと思うとひょいと真秀の身体を抱え上げた。
「うわ、何するんですか?」
「お前もどんどん顔色悪くなってきてんぞ。病院まで送ってやるから一発点滴でも打ってもらえ」
そう言われて第九隊の車に放り込まれた。かなり疲れた様子のよみねもシダに無理やり車に乗せられていた。
「じゃあ、この二人しっかり病院にぶち込んどいてくれ。‥じゃあな、顔色マシになったら本部に帰って来い」
シダはそう言って車のドアを閉め、ドンドンと車体を叩いて行けという合図をした。
走り去っていく車を見ながら、シダはキョウとソネに合図をしてヘリコプターの待機場所に戻った。
(俺の胸についてるカメラがどのくらいの映像を取れているかだな‥あまり離れないようにしたつもりだったが、レンを引っ張った時は距離があったから‥)
映像を解析しながら原因を探るしかない。
対異生物戦において、革新的な瞬間に立ち会ったことをシダはしっかりと認識していた。ただ、これが人間にとって本当にいいことなのかどうかはまだ判断できないとも思った。
対異生物特務庁の装備を、実戦用に変えるべきか。
もし変えるとしたならば、その装備を身につけられるような規則、法律の改正を待たねばならない。対異生物特務庁は軍のような扱いではないので、火器・銃器の取り扱いの許可は出ていない団体だ。法整備が整うまで、たとえ異生物に実攻撃が有効だとしても対異生物特務庁が持ち得るのはせいぜい音叉刀だけだろう。
(音叉刀の重量化、または刃部分の鋭利化を秘密裏に進めるくらいしかできねえだろうな)
ヘリコプターに乗り込みながら胸元のカメラの電源を落とし、シダは考え込んだ。
お読みいただきありがとうございます。
少しでも、面白い、続きを読みたいと思っていただけたら、下の広告より↓↓にあります☆評価、いいね、ブックマークや感想などいただけると大変励みになります!
よろしくお願いします。