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第64話 怒られた(´・ω・`)あるぇ・・・。


試験の手応えが駄目だった私は本気を出した。


昔から大事な場面で失敗すると焦ってしまう。何かを失敗して……心臓の鼓動が早く感じる感覚は嫌なものだ。面接も苦手で自分が何を言っているかわからなくなることがあった。


めったにあることではないが「自分の将来がこの数分で決まるかもしれない」というのは何もかも忘れて逃げ出したくなるほどに怖いものだ。


しかし、そのたった数分をうまくいくかは分からなくとも全力を注ぐのは大事なはずだ。自分の普段のパフォーマンスを超えることは出来ないかもしれないが……それでも精一杯、出し尽くした。



後で考えると金属製らしい的に向かって過冷却水と突沸水の魔法は意味がなかったように思う。単純な水槍の魔法も混ぜて威力を高めたものだったはずだが的はびくともしなかった。だからといって金属が熱の変化に弱いと考えて当てたが多分意味がなかったはずだ。


学校の化学の実験で鉄の板を壊す実験に使われたのは液体窒素とバーナー?だったと思う。しかもガチガチに凍らせて強い火力を当てたんだったのか、いや逆だったかな?とにかく熱の変化を急激に、しかも集中して行っていたはずだ。


ならこんな「当たれば氷になる」程度の過冷却水も「100度ほどにしかならない」突沸水も効果がなかったかもしれない。



だから……だから、焦って次の手に出た。



的の距離は私の操作範囲のギリギリ外だ。15メートルほどだろうか?


当てるだけなら簡単。しかし、ペーパーテストをひっくり返すほどの実力を見せつけなければならない。


だから中までみっちり詰まった水龍を当てた。しかし、それでもまだ破壊できなかった。だから今度は左右から当てて水流の、水の動く力と質量を利用した。


捩じ切りたかったが力が足りなかった。少し曲がったかな程度。


―――……もう時間がない。酸素と水素で火を吹こうにもここには火種がない。オゾンや過酸化水素で腐食?とかで金属への影響を狙う?前から思っていた奥の手を使う?




――――そんな時間はない。




やったことのない方法で一か八かに賭けるかけるぐらいなら確実に出来る方法を組み合わせて最高の結果を狙う!!




――――出来る限り大きな水龍を……過冷却水で作った。




初めて作る限界サイズの水龍を、限界まで冷やした過冷却水で作る。生成していくそばからドンドン凍っていく。それで良い。


それを胴体側の過冷却水と新たにまとわせた水で支える。


………水の質量は小さく見えても大きなものだ。たった1立方メートルの水であっても1トンもの重さがある。更にそれが凍れば?そしてそれを高速で飛ばせば?


ドンドン凍りついていく限界まで大きくした過冷却水龍。水の性質から離れて凍りついて動かせなくなる前に――――……振り下ろす!!!



――――バボッ!!



すごい音がいたと思うが私は水の膜の中だ。距離もあったのに5層ある水のバリアの3層が衝撃で破れた。


バリアを解除すると巨大な氷が大きく砕け、まだ凍っていなかった過冷却水が凍ってか、空気が冷えて風が吹き荒れた。


凍りついた爆心地は地面が凹み、周りの壁も少し破壊してしまって……色々凍りついていたが的の破壊は確認できた。フリムちゃんは満足だ。



もっと使える魔法はあるがこれでもう時間切れだろう。よく考えると過冷却水龍、半氷龍は凍りついてしまえば操作できないから頭上で大質量のものを持ち上げるのは少し危なかったかもしれない。その前に水を出して持ち上げるから問題ない?……しかし、これはなかなかに良い魔法なんじゃないかな?ガッチガチにまで強固な氷とまでは硬くは出来なかったが水の弱点である「液体」である弱点がなくなる。



振り返ると試験監督さんが尻餅をついて……なんか巨大なゴーレムが胸まで地面からせり上がっていた。



「ありがとうございました」


「なんて?」



冷たい風のせいで聞こえなかっただろうか?ちゃんと笑顔で頭を下げたし印象は悪くはないはずだ。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





「フリム様、素晴らしい魔法でしたね―――――……ですがやりすぎです」



従者の待機部屋から出てきたエール先生、何故か怒られた。


この試験において貴族は0点でも問題なかったそうだ。


貴族の中でも継承権のある人間は常識から最低限まで全部教えてもらえることになる。試験の問題は現時点での知識の確認でしかなかった。


流石に本当に最低限ぐらいの知識や礼儀がないと家の恥になるが私は全く問題ないと思っていたそうで……先に知りたかったなぁ。


平民や従士、そして商人なんかは選別の意味もあるから不合格もありうる。



……………凄く頑張ったんだが?



いや、ごめんなさい。



一気に凍える風が吹き荒れた会場では体調不良を起こす人もいたり、氷結ドラゴンハンマーによって吹っ飛んだ地面が飛散して壁のいたるところにヒビが入ってしまった。


生徒の中でも前のめりに私の魔法を見ていた女友達候補一号は衝撃に驚いて気絶していた……。



壁の修繕費はいらないらしいが、教師陣や生徒たちが私を見る目は明らかに変わったように思う。



破壊した的は―――なんかくれた。伝統らしい。


超希少金属で出来ていてとてつもなく頑丈。だからこれを壊せる人はなかなかいない。通常はミスリルという部分に魔法を当てて溶かすとかはあるらしいが……的の部分も棒の部分も折れ曲がったことをどうしたら良いのだろうか?


とりあえずこれらの破壊は名誉らしいので新しい私の部屋の壁にでも飾っておこう。



それとエール先生とヒョーカ・カジャールがついてきた。


エール先生は従者兼教育係として、ヒョーカは氷属性なので私のストッパー兼戦技指導官として………まって、君は氷室計画の要だって言ったよね私!?何勝手に教員になっちゃってるのよ?!


いや、貴族は家の仕事や式典に祭典などで学校から出てお仕事しても良い。だから倉庫の氷は私が作る予定だが。


二人共、私に忠誠を誓うというよりも王様に忠誠を誓って私の役に立つようにしている節はある。エール先生と違ってヒョーカは何を考えているかわからないがなにか目的があるのかもしれない。


エール先生にやりすぎと怒られた私だが貴族に最も必要なのは礼儀作法や美しい字ではなく魔法だ。バーサル様もフォーブリン様もかなり荒っぽい部分があるがそれでも二人は高等学校を卒業した。魔法でどうにかしたのがよくわかる……。



「フリムさんも合格したんですね!」


「はい」


「一緒に学校に通えて嬉しいです!」


「私もです」



合格した人の教室に連れて行かれた。不正防止のために速やかに採点されるらしい。


ミリーも受かったようだ。本気で入学できたのが嬉しいようでニコニコしている。


貴族以外にとってはこの学校の合格は難しいものらしい。試験の結果は知らないが優秀なのだろう。



「ご挨拶よろしいでしょうか?」


「はい」


「リーザリー・ローガ・レンジ・タロースですわ。ルカリム伯爵にお目通りできて嬉しく思います……仲良くしたいところですがすぐに高等学校に進学予定ですので短い間ですがよろしくお願いしますわ!いつか話したいと思っていたのですがルカリム伯爵は土くれのドゥラッゲンなどとな仲が――――「では僕も、テルギシア・フェニークス。火の一族、ルカリム伯爵の魔法が興味深い。よろしく」


「まだわたくしが話してるところでしょう?!」


「リーズの話は長い」


「貴女はいつもそうですわ!!」



リーザリーさんとテルニジアさん。こちらの人間の名前は驚くほど頭に入らないから頑張って記憶しないといけない。


二人は元々友達だったのだろうか?仲が良さそうである。



「俺も挨拶していいか?ダーマ・エイガム、騎士科志望、本当に見事な魔法だった。感服した」


「あ、ありがとうございます」


「私も私も!ミキキシカ!弓使ってた!すごい魔法だった!」


「えっと、その、失礼だったらスイマセン。でも、お隣なのに話さないのも失礼かもって・・スイマセンスイマセン、リコライです。ナーギラス村から来ましたリコライです。ル、ルカリム様は人気なんですね?つ、杖浮いてますよ?」



人の名前を覚えるのが苦手な私には結構辛い。


リーザリーさんは茶色い髪の少女、どう見ても貴族。テルニジアさんは赤い髪のショートヘアーで声の高さとスカートから女性。二人は友達っぽい


ダーマさんは体格の良い男性。ミキキシカさんは弓使うらしい女性。私の隣りに座っていたリコライ・ナギラスは多分男、平民っぽいし貴族が怖いのか可哀想なことをしている気分になる。


私の他にも教室で挨拶しているグループが居る。明らかに貴族の子や、どう見ても私を怖がっている子もいる気がするが話しかけてくれた子は大事にしよう。フリムちゃんは大人だが「周りは皆仲良しなのに一人だけぽつーん」と言う状況は怖い。



私の前世の小学校の始まりってこんなものだったのかな……?




――――……彼らとの付き合いが長くなるなんて、この時は思っても見なかった。


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