47 デート 転生者発見?
昨日の今日で、俺は女性と二人で買い物に来ている。相手の名前はローザさん。ローザさんとは既に出会ってから、二年近くの歳月が流れていた。
「ルシエル様、着いたよ」
「ここが、センス〇ブティックですか」
外から見ても中々の規模のお店だった。
「ほら行きましょう」
俺はローザさんに腕を引っ張られて店内に入った。店内は広く明るく清潔感があった。
「いらっしゃいませ。ってローザじゃない。」
「アンナ。久しぶりね」
「あなた今、給仕の仕事をしているんじゃなかったの?」
「ええ。でも今日はこちらの方の服を見立てる為に、此処に連れてきたのよ」
「あら、燕さん?」
「何言ってるのよ。ルシエル様よ。ここら辺だと聖変様かしら?」
「ええっ、ー聖変様ってお若いんですね~。あれ、もしかして聖変様の服をオーダーメイドしていただけるのかしら?」
「そうです。あ、初めましてルシエルと申します。何着か組み合わせて購入したいのです」
「あら? 太っ腹じゃない」
「そうよ。だって聖変様はお金持ちですもの」
「さすがローザ。じゃあ娘を呼んでくるわ。あ、そうだ。貴女も何か買ってもらったら?」
「私はいいわ」
「そうですね。ローザさん遠慮しないでください。二年近く、あと一年は食事を作っていただきますからね」
「いいのかい?」
「ええ。お世話になった方にはしっかりと恩を返しておきたいので」
「じゃあ、お言葉に甘えようかね」
「ふふふ。毎度ありがとうございます」
こうして店内を見渡しながら服を探していくのだった。えっ? ローザさんですか?給仕のオバちゃんです。親子ほど離れたローザさんと買い物に来たのは勿論、理由がある。
昨日マルトを厩舎に戻すとそこに戦乙女聖騎士隊の皆様が現れたので、思い切ってお願いしてみた。
「どなたか普段着を見立てていただける方はいらっしゃいませんか?勿論、お礼はさせていただきます」
返ってきた言葉は、予想していた通りのものだった。
・店を知らない。
・教会指定ではいけないのか?
・鍛冶屋や武具店なら良い。
これで彼女達と買い物することはなくなった。
次に報告の義務があるので、カトリーヌさんのところに向かい同じ事を聞くとローザさんを紹介されたのだ。
「私や教皇様の普段着はローザが買ってきてくれているのよ」
「ご自分では購入されないのですか?」
「私が行くのは武具店や食事しに行ったり、後は魔道具を購入しに行くぐらいよ。だから服は分からないわ。ローザなら元々は教皇様のお付きの侍女だったから、詳しいわよ。」
「そうなんですね。じゃあローザさんに聞いてきます。」
「ええ。」
こんなやり取りがあって、俺はローザさんと買い物に来たのだった。
そうこうしているうちに、採寸されて、ボタンシャツがずらりと並べられて、次にジャケットやチュニックシャツをベルトで締めるスタイルが出来上がり、パンツスタイルはスキニータイプとカーゴタイプを自動的に選択されて、ブーツまで全て決められた。
好きな色や形を言っても拒否されたりしたが、最近まで自分の顔も良く見ていなかった俺にローザさんやアンナさんとその娘さんが決めていった。
ちなみに娘さんは二十二歳で既婚していて、お腹が大きくなっていた。聖変様の祝福とやらでヒールを掛けて欲しいと言われて掛けてあげた。
こうして瞬く間にコーディネートされた服は、二週間ほどで出来上がるので、前金を全額渡して店を出た。
「ありがとうございました」
「こっちも服を買ってもらってありがとね」
「いえいえ。お送りしますか?」
「はっはっは。そこまで柔じゃないよ。それに聖変様の時間が勿体無いからね」
「分かりました。ではお気をつけて」
ローザさんを見送り俺は、魔道具屋に向かった。
「ここか。最近じゃ面白ダネが出てくるって言っていたし、楽しみだな」
前世で通った神保町の古本屋さんに何処となく似た雰囲気のあるその魔道具屋さんの扉を開くと俺はいきなり驚いた。
『イラッシャイマセ マドウグヤコメディアヘ ヨウコソ。 』
ドアを開けた途端、正面にいたゴーレムがお辞儀をしながら、何処から出したか分からないが声を発した。するとドタドタ音を立て人が迎えに来た。
「魔道具屋コメディアようこそ~」
出てきた子はメガネを掛けたショートカットの女の子だった。
「あ~、ここって魔道具屋で合ってますよね」
「はい。あ、これですか? これはメガネって言って遠くのものを良く見えるようにしたり、近いものが見づらくなったお年寄りが見えるように開発したものですよ」
あれ?異世界人ってこんなに近くにいたんですか?それともその関係者?まぁ私の対応はすでに決まっていた。
「へぇ~。そうなんですね。ここは色々面白いものがあるって聞いてきたんですけど?」
「ありがとう御座います。 ではご説明していきますね。」
そう言って一つ一つの商品を説明していく彼女は嬉しそうだった。
そして確信した。この魔道具屋のオーナーになった彼女は俺と同じ歳だった。そして此処にある魔道具は全て地球の電化製品を魔力で動く魔力製品、魔道具として生まれ変わっていた。
しかも俺には必要ないけど、ドライヤーや洗濯機、掃除機などジャンルに幅があった。
買わなかったのか?いえ、超買いました。
魔導コンロ、魔導浄水器、魔導冷風機、魔導暖房機、魔導五右衛門風呂、魔導生ゴミ処理機、魔導エアベット、魔導ミキサー、魔導ジューサーその他諸々で金貨11枚でお買い上げした。
購入した時に土下座する勢いだったのだが、今度トレットさんを紹介しても面白くなるかもと思いながら、彼女に作ってもらいたいものがあったので相談してみた。
「ありがとう御座います。でも、それって私が作れるようになるのは、まだまだ先ですね」
詳しく聞くと開発するには色々と条件があって、魔石の属性やスキルレベルに魔導技術士のレベルも関係しているらしい。
「これも鑑定ってスキルがあるじゃないですか? あれを作りたくて頑張ったんですけど、まだまだ技術が足りないんです」
彼女はそう言って俯いていたが、彼女が鑑定したいものが何かも分からないため、ただの金払いの良い客であり続けることにした。
きっとリィナと名乗ったこの少女とは今後も会うことが何度もあるだろう。
そう確信めいたものがあった。