27 チート装備(ルシエル視点です。)でお腹いっぱい
冒険者ギルドでプチ騒動を起した翌日、大規模な遠征式が行なわれ凄まじい歓声の下で戦乙女聖騎士は旅立っていった。
戦乙女聖騎士隊の面々は、その熱狂振りに大いに驚いていたが声援の中に「ゾンビ様のように」や「ドM様のように」「聖変様みたいに」みたいな声が掛けられて馬上から、こちらを見つけて不敵な笑みを浮かべて、聖都シュルールから旅立っていった。
「あれだけ通り名を止めろっていったのに。まぁしょうがないか 」
俺は聖都出て行った皆を見送ると、いくつかの食処を回り迷宮へと向かった。
すでにカトレアさんが売店カウンターで本を読んでいた。
「あ、ルシエル君、おはよう。今日は遅かったのね 」
「はい。お世話になった戦乙女聖騎士の皆さんの見送りに行って来ました 」
「あ~あ。今から迷宮に行くのね?いつもと同じぐらいに帰ってくるの? 」
「いえ、ちょっと長く潜ろうかと思っています。こちらの方々からあまりよく思われていないみたいなので 」
「そんな危ないことは許可できないわ 」
「そう言われても自室には寝に帰っているだけですし、食事もこの魔法の袋に入れましたし、憂いはないですよ? 」
「そういう問題じゃないわ 」
「大丈夫ですよ。主部屋は一旦魔物を倒すと扉が開かない限り魔物が入ってくることは無いので 」
「慢心していると死ぬわよ 」
「ええ。戦乙女聖騎士の皆さんと懇意にしていたものですからどうやら恨みを買ったみたいで迷宮に雲隠れをしようと思いまして 」
「はぁ~。だったら絶対に一週間に一回は、此処に帰還しなさい。教皇様に強請ったものも、その頃には届いていると思うから 」
「了解です 」
「死んじゃ駄目よ 」
「ええ。私のモットーは死なないこと、生き抜くことですから。じゃあ行ってきますね 」
「気をつけて行ってらっしゃい 」
「はい。行ってきます 」
こうして迷宮に足を踏み入れた。
オーラーコートを発動して、一階層を駆けながら魔物を駆逐していく。
倒したあとに、足で魔石を踏んで魔法袋に回収しながら階層を下る。
地図を見て一度頭に道を入れてから、どんどん進みながら魔物を倒していき十階層のボス部屋に到達する頃には腹時計が鳴った。
「なんだか凄い持久力がついている気がする 」
俺はボス部屋を浄化してから、お弁当を拡げ、食事を摂ったら魔法の袋に収納してあれを飲んでから、しばしの休憩後、また同じように二十層まで進んだ。
「セイッ、テイヤアアアア、う!?クソッ!聖なる治癒の御手よ、不浄なる存在を戻し給え。ピュリフィケイション 」
詠唱を省略したことでいつもより多めに魔力を消費したが、死霊騎士を倒すことには成功した。
「ふぅ~。お腹が空いたって事は夕食のお時間ですかね。何だか迷宮で暖かい食事って心が安らぐな~ 」
色んなところで買った食事をバランスよく組み合わせた(つもり)。
そして物体Xを飲みながら、死霊騎士先生と数度戦い浄化魔法でボス部屋を浄化して、オーラコートを使用してから、物体Xが入った樽を近くに置き睡眠を取ることにした。
「知らない天井だ。って迷宮か。何か知らないが、こんなところでましてや固い地面で、よく爆睡出来たな俺は 」
そんなことを呟きつつ、周りを確認したが魔物は居らず嫌な感じもしなかった。
「浄化はされているって事だよな。よし。朝食を食べたら戦闘して二十一階層を調べよう 」
こうして食事を摂った俺は、一度だけ死霊騎士先生と戦い探索を開始した。
「グールってだけでもビビッたのに、ミイラまでいるのかよ。」
浄化魔法で一撃で倒すことは出来たが、あまりにも違いすぎる戦力に涙目になりながら、広くなった階層を必死で調べてお腹が空いて少し立った頃に漸く地図が完成した。
「さっさと戻ろう 」
俺は最短距離で戻り、階段の手前で物体Xを取り出し、彼等が追ってくるかを検証した。
「・・・本当に物体Xって何なんだ 」
アンデット達は一定の距離を保ったまま、全くこちらに近寄ってくることはしなかったのだ。
超万能チートアイテム物体Xを魔法袋をしまうとこちらに近づいてくる魔物を無視してボス部屋に戻り、死霊騎士先生と戦闘を行い、昼食を摂ってから魔法の練習と死霊騎士先生との鍛錬を行なった。
急所や切断される以外なら、幻覚を治す自信があった。
「幻覚でも切り落とされたら、後遺症とかありそうだからな。」
これが幻覚って少しおかしい? いや、ゲームの設定みたいだったから幻覚に間違いない。
そう思い込み、二日目の探索を終える。
翌日、二十二層、その翌日が二十三層と敵にビビリながらも何とか探索を順調に続けて、こちらの世界の一週間目に一度目の帰還をした。
迷宮から出ると売店にはカトレアさんが待っていた。
「ただいま戻りました。魔石の買取をお願いします 」
「無事で何よりだわ。それにしても五日で帰ってきてくれてよかった。新しい武器と防具、あといくつか貴重な魔道具を預かっているわ 」
「五日ですか。少し腹時計が狂ったかな。まぁ丁度良かったならいいですけど 」
そして魔石をPに変えて、もらった装備品の説明をしてもらった。
・ミスリルの剣 魔力が通り易く聖魔法の魔力を流せばアンデットに絶大な力を発揮する何処かで見たような剣。
・ミスリルの槍 魔力が通り易く聖魔法の魔力を流せばアンデットに絶大な力を発揮する。
・破邪の盾 不死属性が嫌う光を封じ込めた盾で、闇属性の魔法に高い耐性を持つ。
・聖騎士の鎧 聖騎士に任命されたものが着る鎧で光の加護が付いていて、闇属性に高い耐性を持ち、さらに瘴気遮断、重力軽減、温度調整、自動調整が付いているチート鎧。
・賢者の篭手 使用魔力を2/3に抑え、魔法の威力を1.2倍に上げる。
・大地のブーツ 名前で連想されるものと違って、軽く、魔力を通すと鋼鉄よりも固くなり、格闘家から見れば喉から手が出るほどの一品。
・天使の枕 この枕で眠ると安眠出来て疲れが翌日に残らないと言われている。また魔物が嫌う光の波動を出している。
「・・・武器以外は全てとんでも性能ですね。それにしてもこれだけのものが何で集まったんですか? 」
「期待もあるわ。まぁ本音はこれらを装備出来る治癒士がいなかったことね。いずれ迷宮を攻略を進められるルシエル君みたいな人が来るまで貯蔵してあったみたい 」
「それにしたって、破邪の盾とか賢者の篭手とかは聖騎士や神官騎士でも良かったのではないのですか?」
「それがそれって装備出来る人に条件があるのよ 」
「条件? 」
「そう。まぁ細かいことは気にしないで装備してみて 」
「分かりました 」
こうして俺はチート装備を身に付けた。
「あら、似合うわよ。それに装備もちゃんと出来たみたいだし良かったわ 」
「本当に条件なんてあるんですか? 」
「ええ。アンデットの魔物を1000体以上倒していること、光、聖属性どちらかの適性があること、ある一定以上のスキルレベルに達していることらしいわ 」
「へぇ~そうなんですね(完全にご都合主義をぶっこまれたな) 」
「それで今日はこの後はどうするの? 」
「また潜ります。その前に投擲するために短剣を買えるだけお願いします 」
「もう。無理しちゃ駄目よ 」
「ええ。もちろんです。それに主部屋って浄化すると不思議と落ち着くんですよ 」
「それは大発見じゃない。昔は臭いで体調を崩した人も多いから気をつけてね 」
「ええ。気分が悪くなれば戻ってきますよ 」
「じゃあまた一週間以内に戻ってくるのよ 」
「了解です。あと装備の件、教皇様とお会いする機会がありましたら、お礼を言っていたことを伝えてもらえますか? 」
「ええ。いいわよ 」
「それじゃあいってきます 」
「はい。いってらっしゃい 」
こうしてチート装備に身を包み、十階層のボス部屋までをランニングしながら階層の魔物を倒して、本日の宿を十階層のボス部屋にして泊まり、翌日また二十階層に向けて俺は走り出したのだった。
もらったもので一番嬉しかったものが、天使の枕であったことは俺だけの秘密だ。