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#37 逃亡

どうも、ご無沙汰だと思います。ららと申します。


〜数日前〜

狗放から宴会の緊急時の詳細が知らされた。

桂高は簡単に言えば殿の役目だった。

屋敷周辺からの護衛と馬の用意、そしているであろう追手の撃退。これが桂高の任務だ。


(ここで死ねれば…)

桂高の頭にふとそんな考えが過った。

主君を守り抜いた末の戦死。なんと美しい最期だろうか。

ただ一つ心残りがある。師匠の呂淵との約束、彼の娘・呂麗はどうなったのだろうか。何の変哲もない一人の娘の動向を記録している人などいないだろう。増して呂麗が生きているとすればあの時賊に攫われているのだ。今何処にいるかなんてわかるはずもない。

会いたい。そして謝りたい。あの時守れなかったことを。



書簡の最後にはこうあった。

『変事後、我々は居城を捨て、狗の里に向かう。』


今目の前には白燕様への追手がいる。

(生き延びなければ)

桂高は強く思った。

幸いにも道は細く相手の人数の利を活かせない地形だ。これなら勝機はある。


「チッ…撤退せよ!」

桂高は敵の後ろ姿が見えなくなってから書簡の指示通り狗の里に向かった。



〜国境の城 白燕の居城〜

「孫仁様。こちらを。」

「やはりか……城の兵には知らせるな。白燕様の直臣のみを連れ、北に向え。この城は放棄する!」

「はっ!」

(後は桂高という者がやってくれるはずだ。我が妻の父・趙玄の護衛を務めたあの男なら。)


〜国境の城 白鷗の居城〜

「典海様。こちらを。」

書状を見た典海は泣き崩れた。

「こうなってしまったか………やはり………私が止めきれなかったばかりに………」

拳を強く握り締める。


「典海様。目通りを希望する者が。」

「誰だ。」

「鳳の使いと名乗っております。」

典海は目を見開く。

「断われ。私は今気分が優れぬ。」

「そんなこと言わないで頂きたいですなぁ。」

「御客人、ここから先は……」

行く手を阻んだ者が首への手刀に倒れる。

「貴様は誰だ。」

「申し遅れましたな。私は曹章と申す者。鳳の使いとしてそなたに天啓を伝えに参った次第。」

「天啓?」

「えぇ。熊狩りなどいかがかな?」

曹章と名乗った青の鎧に身を包んだ小柄な男は薄ら寒い笑みを浮かべ言ってきた。


いかがでしたでしょうか。

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