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#35 太子

どうも、ご無沙汰だと思います。ららと申します。

人によっては失踪を疑う期間が開きました。私は元気です。

白燕様に仕え始めて早くも半年ほどになった。

都は変わらずの重税だ。1日で何人の餓死者が出ているのか想像も出来ない。

活動資金としてある程度の金を持っている桂高でさえ油断しているとすぐに底が見える。


孤の姫・孤藍が入内して以来城から管弦の音が絶えたことは無いと言われている。実際問題、観察を始めてから音は奏でられ続けている。たまにある静かな夜には甘露を楽しんでいるのだろう。

最近白熊が民衆にしたことと言えば毒を持つ生物を捕えろというお触れを出したことぐらいだ。報奨の金を目当てに大量の蛇が城に運ばれた。

桂高はつぶさに白燕様に正確には上司である狗放に報告する。



それはある日のことだった。白熊が民衆に大量の金や食料をばらまいたのだ。

このことに歓喜するもの、疑うものなど反応は様々だった。

「桂高様。こちらを。」

部下の一人が書状を渡してきた。狗放からのものだ。

内容は白熊の第三子の誕生の宴会の案内だった。白燕様はこれに出席せねばならない。行かねば不敬として処刑である。が、第三子の母である孤藍が何もしないとは考えられない。

書状には宴会当日の役割と有事の際の対応が記されていた。

「了解したと伝えてください。」

部下は足早に去っていった。




「おぎゃぁ!おぎゃぁ!」

数日後、白熊は歓喜に満ちていた。自分が生涯で最も愛した女との子なのだ。当然である。

「お前は白渓だ。この国を統べるものだ。」

白熊はそう言って抱きかかえた。

「白熊様。渓を王にしてくださるのですか?」

「当然だ!白渓こそ我が後継ぎに相応しい!!」

「ありがとうございます。」

孤藍はそう言って疲労しきった体を白熊に預けた。目の前には醜い顔を持つ男児とそれを碧玉のように’可愛がる絡繰りの姿があった。



孤藍は自室に戻り、柔らかな寝台に倒れた。疲れた体を十分に休めるよう白熊に言われたのだ。いかに若い孤藍と言えども出産後は体力が無かった。

孤藍は疲れ切った体をなんとか起こし、隠し扉から小さな鐘を取り出し、窓の近くで微かに鳴らせた。

どこからともなく現れた同族に誕生の旨を伝えた。

そしてすぐに消えた。

「あと少し。あと少しでこの国は滅びる。邪魔な奴らを消せば………」

誰にも聞こえない線のような声で孤藍はポツリと呟いた。

いかがでしたでしょうか。

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