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#31 劉韓

どうも、ご無沙汰だと思います。ららと申します。


郭艾らは郭需の命に従い、芹に戻ることにした。

が、大した収穫の無い結果に釈然としない帰路だった。


「なぜ父上は帰国命令など………」

郭艾は馬車に揺られながら銅像にでもなりたいのかと思えるほど同じ姿勢でひたすらに呟いていた。

「とはいえ、手がかりもなくなりましたし、何もできなかったのではないですか?」

「結局大した成果を挙げられなかった自分が情けないのだ。次代の君主だというのに………」

覇者の次。嫌でも注目される君主である。父に並ぶ名君か、大国として驕る暗君か。周囲の臣も、国も民も皆が注目している一つである。


(ヒュッ)

後方からかすかに音が聞こえた。次の瞬間、桂高の乗る馬は声をあげ、桂高を振り落として彼方へと走り去った。


一行は音のなった方を注視する。周りには隠れられる程度の木や岩が転がっている。

(ザッ!)

また反対の方向から音がすると、曲刀を持ち、顔の目から下を布で隠した男が斬りかかっている。

「郭艾様!ウッ…」

郭艾に向けられた凶刃を楽単が庇い、鎧の上から体の中心を一突きされた。

桂高が割って入り、牽制し合う形になった。楽単はまだ立っている。二人でなら勝機があると思えた。


「二人相手は不味いな。さっさと退くか。」

「待ってくれ!お前は、いやあなたは孫義様なのですか?!」

周寧は叫んだ。

「………」

暫しの沈黙の後、賊は顔を隠していた布を取り去った。

「これで満足か?」

そこに居たのは鼻の横に大きなホクロのある青年、孫義である。

「孫義も劉韓もあなたのことなのですね………」

「あぁ、そうだ。なら、それを手土産にお国に帰るんだな。」

桂高は唇を噛み締めながら、孫義が去るのを見届けた。


「楽単!息をしてくれ!!」

「郭艾……様…良き……君主に…なっ………れ。」

程なくして楽単の体から脈が無くなった。


「郭艾様…。」

「………父上に報告する。今回我らが手に入れた確かな情報である。確実に知らせねばならぬ。」

一行は郭艾を御者として周寧と桂高を乗せ、芹に急いだ。


〜芹の国〜

「………以上がご報告でございます。」

「ご苦労だった。ゆっくりと休むが良い。楽単の葬儀は後日行う。直前の功を踏まえ列侯として弔うこととする。」

「はっ!」


桂高と周寧は関係者として葬儀に参列した。

皆が悲嘆に暮れる中、ただ一人楽単の遺体に悲しみの目を向けない者がいた。


悲しみではなく、羨望や憧憬といった視線を向けるものが。



いかがでしたでしょうか。

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