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#26 偵察者

どうも、ご無沙汰だと思います。ららと申します。


時は遡り芹に着いた翌日ーーー

「周寧さん。我々はどこに行くのですか?」

「今回の相手は太子の郭艾(かくがい)様ですね。」

桂高は想像だにしなかった相手の名前を聞き、思わず咳き込んだ。

「ハッハッハ。驚きましたか?とてつもない大任を任されましたよ。私はさっきから緊張で震えが止まりません。商談をしたことはあるのですが、私主導では無かったものですから。」

「そんな大任を任せて孫義は何をしているのやら………」

「まぁあの人は不利になるようなことはしない人なので。放っておいても大丈夫でしょう。強いですし。」

「そうですね。」


周寧と軽口を叩いて緊張を解していると郭艾の屋敷に着いた。

「孫の商人の者です。」

周寧はそう言って木の欠片を門番に渡した。割符というやつだ。

「お預かりいたします。少々お待ちください。………確認できました。どうぞお入りください。」


「ようこそお越しくださった。」

通された部屋には上座に座る男と側に一人の強面の男が立っていた。

「周寧と申します。こちらは」

「護衛の桂高と申します。」

敬語も割と慣れてきた。最初の頃は挨拶をした後に金属音が聞こえることもあったものだ。

「私が郭艾です。こちらが私の護衛の楽単(がくたん)です。お見知りおきを。どうぞ顔を上げてください。」

上座に座る郭艾が言い終わってから下げてから顔を上げる。


商談が始まった。毎度のことだが桂高にはサッパリ分からない。物音にだけ気を付けている。

「少し歩きませんか。」

二人の護衛は主人の向かう後を付いていく。

主人二人は馬車に乗り換えた。御者は郭艾の護衛の楽単である。桂高は馬には乗れるようになったが御者は務まらない。後ろから馬でついて行った。


「……楽単、左の木の上。」

郭艾が小声で呟いた。

その刹那、楽単は腰の弓を取り矢を放った。

木から落ちた者がいた。桂高は馬から飛び降り、落ちた者を組み伏せた。

「何をしていた!」

桂高は問い詰める。

「桂高とやら、詰めが甘いな。そいつは死んでいる。」

桂高は驚いて組んでいた腕を離した。腕が無気力に落ちる。

「舌を噛み切って自決したようだな。相当なやり手の賊だ。」


「何かその賊を示すものは無いか?」

桂高は胸の辺りを確認した。何か違和感を覚え、手を入れた。

取り出されたのは忌々しい青の布切れだった。

「それを頂けないだろうか。父上に言上しよう。」

「孫義様にも伝えます。狙われているのが我々の可能性もありますので。」


〜郭需の散歩中〜

郭需は近くの官に囁いた。

「どうだ?魚は泳いでおるか?」

「はい。優雅に泳いでおりまする。」

「そうか。それは良かった。鯉が鯛になれば良いのだがな。」



いかがでしたでしょうか。

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