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#25 孫義

どうも、ご無沙汰だと思います。ららと申します。


「では行って参ります。」

「頼んだぞ、桂高。」

「お任せください。」


「………行ったな?では、オレも動こうか。」

孫義は今着ている服を脱ぎ、動きやすい服に着替えた。黒を基調とした目立たない色の服である。そして目元から下を隠すための薄い布を巻いた。これで特徴的な鼻のホクロは見えなくなる。


「劉韓様。」

「ここでその名前はやめてくれ。」

「失礼しました。孫義様。」

「頼むぞ。」

「オレ達が探るのは芹の総兵力、君主の郭需の様子とその太子のこと、そして次代の有力者になりそうな者の把握とその対立者だ。報告は夜にこの部屋だ。伯凰様のため、力を尽くせ。」


孫義の話が終わるとそれぞれの任務に着いた。

調査は単純な聞き込みから侵入まで幅広いが、今回は侵入である。


とはいえ、流石に郭需の屋敷の警備は堅かった。

(想定はしていたが………どうしたもんかなぁ………)

(これは毎日通って流れを把握したほうがいいか。)

劉韓の日課が生まれた瞬間である。

日課があるのはいいのだが、孫義の部下と桂高の目を逃れながらやるのが面倒だった。


ただ毎日通った結果2,3日に一度夕暮れに庭を歩くことが分かった。今回は暗殺ではなく、観察なのでこれでも十分かは分からないが及第点だろう。

この時なら顔色や歩き方くらいは観察できるだろう。


劉韓は守備兵に隠れて散歩中の郭需を観察した。


顔色は良いとは言えない程度だろうか。流石にかの覇者も寿命には勝てないようだ。また、郭需は美食家でありかなりの肥満体型に見える。体型を誤魔化せるような服を着ているが劉韓の目は誤魔化せなかった。ただこれは劉韓の慣れの問題でもある。

後数年で死ぬ。劉韓はそう思った。


これで大体の仕事は終わりである。部下には報告が終わればそれぞれで帰ってもらう予定だ。その辺りの賊に殺されるような軟な奴らではない。


報告をまとめよう。

兵力は十五万程度らしい。どれくらいかと言うと普の正規軍の兵力が七万程度、伯凰様は精々一万と数千程度だろう。圧倒的とはこのことだろう。

無理だ。勝てない。兵力だけなら良いが相手は歴戦の名将でもある。ただ死期は近い。救いはこれだけである。

権力対立はほとんど無かったらしい。太子が既に元服しており、他に候補もいない。ただこういう場合は君主が死ぬと表面化することがよくある。水面下まで探らせてもらえるほど甘い国では無い。


劉韓はここまでをとりあえず伯凰に伝えることにした。部下を呼び、文を託した。


劉韓は慎重に部屋に戻り、孫義になった。

(コンコン)

「入っていいぞ。」

「失礼します。ただいま戻りました。」

「ご苦労だったな。何かあったか。」

「えぇ。賊に襲われました。皆無事です。」

「なんと!無事なら良いが………どんな賊だ?」

「この賊です。」

サッと前に出た桂高は左手に握っていた青の布切れを見せた。





いかがでしたでしょうか。

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