#20 『まもる』ということ
どうも、ご無沙汰だと思います。ららと申します。
「孫義さん、僕に何の用ですか。情報はまわっているんでしょう。」
「そうだな。護衛役を放り出し、賊の襲撃に立ち向った愚かで、勇猛な奴だってな。」
「護衛役の評価としては下の下です。」
「そのとおりだ。そんな最低評価のお前に依頼を出そう。我々を護衛しろ。」
「断ります。僕ではあなた方を護れない。」
「そうか。なら言い方を変えよう。我々についてこい。」
「僕が付いていくことに何の意味があるのです。」
「お前がいたほうが安心する。ただそれだけだ。」
「なぁ桂高。俺がお前に依頼を出したとき、お前は何をした?」
「何って護衛役」そんな言葉が口から出ようとしたが口は動かなかった。
そうだ。何もしていない。道中は全部孫義が片付けた。僕は孫義を護ってなんていない。ただその場に『いた』だけだ。
「なぁ桂高。お前はまもるって何だと思う?」
「それは………」
何も言えなかった。分からなかった。
「俺はな人を安心させることだと思うんだよ。」
「お前は護衛を放りだして賊に立ち向った。これは依頼人に不安を与えただろう。この点ではお前はまもれていない。だがな、賊に一人で立ち向った姿は帛の多くの人を安心させただろうな。お前は趙玄を守らなかった。でも帛の国の人をまもったんだ。」
「以前、俺は後ろを気にせず前に出た。それはお前が近くにいたからだ。」
「だからさ、俺と一緒に来てくれ。」
桂高は静かに頷いた。振動で水が溢れた。
桂高の目には涙が浮かんでいた。孫義の言葉が甘美だったからだろうか。
あの自分勝手な行動で後悔しない日は無かった。積み上げた信用も用心棒としてまもってきたという自信も失った。
護衛役としては下の下でも他をまもれたということに救われた感じがした。
「よし。契約成立だ。出発は一月後になる。それまでにいなくなるなよ!」
孫義はそう言うとどこかに行ってしまった。
〜?????〜
「伯凰様。報告に参りました。」
「どうだ?」
「はっ。予定通りに行きそうです。そちらは?」
「万全と言える。あとはけしかけるだけだな。」
「それは良うございます。」
「計画成就の時は近い。そのためにも不安定要素は滅ぼさねばな………」
「しかし、そこまでうまくいくものでしょうか?」
「なんだ?文句があるのか?」
「い、いえ!滅相もございません。」
「そうか。なら任務に戻れ。健闘を祈るぞ?曹章。」
「はっ。」
曹章は退室した。
「不安定要素か………桂も潰さねばな………。熊にかけ合ってもいいかもしれぬな。」
いかがでしたでしょうか。
評価などしていただけると励みになります。