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#15 特使

どうも、ご無沙汰だと思います。ららと申します。


支給品の分配が終わり、朝になった。

孫義の商隊は普の都に帰ることになっている。

支給品の運搬だけだったので帰りは特に守るような荷物は無い。そもそも護衛なんていらないんじゃないかとは思うが。


〜道中〜

「孫義さん、向こうの方に馬車がいます。」

「どれどれ……。あれは異民族か?関わるのは面倒くさそうだ。少し迂回して帰ろうか。」


この国の周りには様々な民族が住んでいる。この帝国が成立したときに帰順した部族もいれば今日に至るまで細々と活動しているものもいる。


「あれはどの民族なのでしょう。」

「う〜ん…帰って行った方角的には狗の方だな。というか、奴らが都ではなく普の方に来るとは………。この帝国も落ちぶれたものだな。」

「何かあったんですか?」

「まぁ、簡単に言うと災害とそれに伴う民衆の蜂起だな。そんでそれを鎮めたのが朝廷じゃなくて諸侯だったからなぁ。権威なんて地に堕ちてる。」

「さてそろそろ着くな。護衛の任お疲れさまだ。」

孫義はそう言って報酬を渡してきた。

「ありがとうございます。」

「じゃ、次もよろしく〜。」

そう言って孫義は行ってしまった。





〜数刻前 普の国〜

「近頃、我々狗族に対して孤族が怪しい動きをしています。そこで普の国に保護していただきたい。」

「ほう。それを承諾した場合、我々に何か見返りはあるのか?」

白熊は使者に尋ねる。

「はっ。第一に定期的に良質の馬と金銀を貢物として送らせていただきます。」

白熊は目を光らせた。狗族の町はこの国の北部にある。北部の馬は強靭として有名なのである。

「第二に我々狗族の姫を公族のどなたかの妻にしていただきたい。」

「ほう。公主様はおいくつかな?」

「15にございます。」

(皇太子の白鴎は既に正妻がいるが、白燕はまだだったな……)

「いいだろう。そなた等の申し出、この白熊は了解した。これより狗は我が普の保護の下である。」

「ありがたきしあわせでございます。白熊様のご即断痛み入ります。」


使者は決まりどうりの礼を終え、退室した。


「父上。」

「どうした、白燕。」

「取引の最初から見返りを求めるのはいささか疑問を感じます。強き者は弱き者を慈しむべきと心得ます。」

「白燕よ。お前はちと優しすぎる。この立場は舐められては終わりなのだ。」

「わかりました…。」

「あと、狗族の姫はお前が娶れ。いいな?」

「はっ。了解しました。」


〜白熊の自室〜

「ただいま戻りました。」

「そうか。使者を見たか?」

「はい。護衛も少なく、正使とは思えませんでした

。」

「それだけあの国が弱っているのだ。」

「北には支配が広がりましたな。まぁ、我々は何もしていないのですが。さてと、次はどこにしましょうか。」

白熊は壁に掛けてある簡素な地図を見た。

「そうだな………ここだ。」

白熊は普の南西を指差して言った。

そこには『(はく)』の文字が記されていた。

いかがでしたでしょうか。

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