#14 帰郷
どうも、ご無沙汰だと思います。ららと申します。
月日が流れた。桂高の名は界隈では知る人ぞ知る程度にまでなっていた。
「アンタが桂高だな?」
鼻の横に大きなホクロのある青年が尋ねてきた。
「そうですが、何か?」
「オレは孫義っていうものだ。商人をしている。アンタにオレの護衛を頼みたい。」
「護衛の依頼ですね。了解しました。いつですか?」
「今からだ。ほら、さっさと行くぞ。」
(き…急だなぁ………)
とはいえ、交わした契約である。桂高は従う外ない。
「ちなみに行き先は?」
「安があったところ。といえば分かるか?」
(なるほどね。)
桂高は荷車に積んである麻を見て納得した。復興支援の一貫であろう。賊の襲撃から月日が経ったとはいえ一度荒廃しつくした村である。もとが田舎だったこともあり、同じ水準に引き上げるのにはかなりの時間がかかる。
「隊長はなんで護衛を雇ったんだ?いらねぇだろ。あの人。」
小耳に挟んだ言葉を無視し、商隊は出発した。
(これ、僕要る?)
桂高は小耳に挟んだ言葉を思い出しながら思った。
強い。それも恐ろしい程。
呆れ半分の桂高の目線の先には護衛を依頼してきた孫義が賊を撃退していた。
「お強いですね。何かの心得があるのですか?」
「まぁ、剣術と剣舞の心得くらいだな。」
孫義の答えに桂高は妙な納得を覚えた。孫義は剣術ではあまり見ない動きをしていたからだ。孫義の剣には辺りに花びら舞い散るような感覚を覚えた。
何も無いことは無かったが、商隊は安の国の辺りに到着した。
【業務連絡】
【これ以降安の国があった辺りのことを旧安国と表記します】
ここからの桂高の仕事は人々の抜け駆けの取り締まりである。土地が荒れていると人間性が荒くなる。
分配が終わった。桂高は孫義の許可を貰い、墓参りをしていた。
姉と呂淵の分である。自分の不甲斐なさがもたらした惨劇だった。
「あの賊はどういう目的で活動してるんだ?」
「さぁ?なんでだろうね。普への反抗とかじゃないのか?」
「やるにしても普の国でやってくれよ。周辺の国でやるんじゃない。今回のことでまた普の領土は広がったんだろ?賊と国が手を組んでるみたいだね。」
「冗談でも言って良いことと悪いことがあるぞ。」
「ごめんごめん。ちなみに白熊様はやはり覇者の目指すのかな?」
「どうだろうな。今の覇者は芹の穆公だが2代目になるのかねぇ。」
本人は声を潜めたつもりでも辺りが静かだと聞こえるものである。
桂高に深く影が刻まれた。
いかがでしたでしょうか。
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