#12 似ている町
どうも、ご無沙汰だと思います。ららと申します。
日が暮れはじめた。桂高は城に戻る。
聞こえた話は結局よく分からなかった。明確なのはあの賊はかなり息の長い賊だということだ。
あれからあの賊のことは耳にしない。この国から討伐軍が送られたらしいが、取り逃がしたのだろうか。
さっさと滅んでほしい想いとこの手で直接制裁を下したい想いが交錯する。頭では分かっているのだ。自分一人では勝てないと。しかし、………
桂高は大袈裟に頭を振り、そんな考えを捨て去ろうとした。
「明後日には普の都に戻る。」
そう言われたのは夕餉の時だった。
「わかりました。予定より早いですね。」
「商談が早く終わったからな。一日分の宿代が浮いたからその分を分けようか。」
「いいのですか?」
「構わんよ。恐らくちょっとしたものなら買える程度の額になるだろう。」
「ありがとうございます。」
朝になった。明日の朝にはここを去るそうだ。
昨日と変わらず桂高は町に出向く。
「これを一つ。」
桂高はくすんだ緑に黒の線が入った腰帯を手に取り、店主に言った。
「どうも!ありがとうございます!銭10になります!」
「これでお願いします。」
「はい!ありがとうございました!」
「そういえばお兄さん何処の人だい?」
「安の国の者ですが、何か?」
「…そうなのか…。いえ、ありがとうございました!」
店主の質問に疑問を覚えながら桂高は城に戻ろうとした。
「しかし、7年でここまで回復させるとは白熊様の内政手腕はすばらしいな。」
「他国の政治の仕組みらしいが、躊躇なく取り込んだ白熊様に乾杯だ!」
普の君主・白熊。知っている限りでは数年前に父である白瑛を追放し、内政に力を入れている名君らしい。安の危急を救ったりと何かとありがたく思う。
良くない評判が無いわけでは無いが良い評判が圧倒的多数である。
聞く限りこの町は安の国の前例のように思える。賊に襲われ、滅びかけたが今も命脈を繫げている。余りに似過ぎではないだろうか。
桂高の胸に少し不信がよぎる。
明日は都に戻る日だ。自分の仕事の時である。
依頼人を”護る”そんな仕事の時だ。
いかがでしたでしょうか。
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