汚い獣人奴隷どもを買ったので使い潰す事にした

作者: 麦酒

過去最低の主人公です(当社比)

      人権なんてない!

  俺がこの世界に来てから実感した事だ



ベッドで寝てたはずなのに気付いたら森の中に居た

魔物が蔓延る森の中に……

 襲い来たゴブリンを倒せたのは奇跡に近かった


泥水をすすり魔物を食らい生き延びた

 半年後に森から出れた時は神に感謝した

  近くの村で密漁者と言われ、殺されかけた時に神を呪った


逃げ延びた先の街で、森の魔物から取った素材は買い叩かれた

 その金で冒険者登録した帰り、同じ冒険者から殺されかけ、有り金を奪われた

  どぶ川に流されながら、俺はこの世界を呪った


 何が言いたいか分かったか?

俺はこの世界では塵芥ちりあくた並の価値しかないって事だ、それは力を手に入れた今でも変わらない


 だから俺は更なる力を得る為に、奴隷を買い……使い潰す!



 俺は命の価値は全て平等だと思っている

だから俺に塵芥ごみな価値しかないなら、こいつらの命だって塵芥ごみな価値しかない



  ☆☆☆


 根城にしている、スラムにあるボロ小屋にしか見えない教会で、俺は買った奴隷たちを床に座らせ言いはなった


「俺がお前らのあるじ総社九(そうじゃナイン)だ、命令に背けば殺す、反抗したら殺す、気に食わなければ殺す」


 絶望した顔の50人の奴隷は、全員この国では差別対象となってる獣人だ

街中の奴隷商人からあるだけ買い漁った、もちろん難癖付けて暴力をちらつかせ値切りまくってだ


 冒険者になって数年、俺には才能か異世界転移の恩恵でもあったのだろう

普通の人間より遥かに早く、この世界の人間に言わせたらあり得ない速度で強くなっていった


 お陰で今はこの国で最強に近い力を手に入れた


もちろんその力で金もだ


「お前らには冒険者になってもらう、命懸けで俺の為に金を稼ぎ、レベルを上げ俺の兵隊となれ!」


 返事も無しかよ、楽する為とはいえ、これは教育が面倒くさそうだな


「取り敢えずお前ら臭いから風呂入れ!着替えはそこの袋に大人用と子供用で分けてるから、一人一袋づつ持って行け」


(なぁ、風呂ってなんだ?)

(バカ水浴びの事だ、無駄口叩くとまた前の所みたいに殴られるぞ)

(ううぅ、もうヤダ…)

(パパ……ママ……)



 あーうぜー、絶望した所で誰かが慰めてくれるのか?泣いたら誰か助けてくれるのか?


 バーカ、そんな奴居るわけねーだろ!




 教会の裏に作らせた大浴場に連れて行き、一通りの説明して入らせた

もちろん上がった奴らも順次匂いをチェックする、糞尿の匂いがする奴らと飯とか食えねーからな


(お湯……だったよな?)

(この服も新品だ、それも木綿だぞ)

(さっき匂い嗅がれたけど、私たちどうなるの……)

(パパ……ママ……)

(綺麗にする理由なんか……夜の相手か売るかのどちらかでしょ……)

(くそ、せめて子供達だけでも)


「ごちゃごちゃうるせーっ!飯行くぞ、今日は時間がないから俺が作ってやったが、明日からはお前らに作らせるからな!」


 食堂にはシチューが入ったデカい鍋が五つに山盛りにされた肉、そしてサラダとピッチャーに入った牛乳を置いておいた


 この世界は食事も最悪だ、まともに香辛料どころか塩や砂糖すら使ってない料理を平気で出しやがる!

だから俺は基本自炊している、クソ不味い料理なんかに金を払えるか!


 俺は自分の分の料理を盛ると、一番上座にドカッと座る、ちなみに俺だけはミルクじゃなく酒だ!

始めが肝心だ、甘やかすと付け上がるからな、ここは主従関係をしっかり味わって貰おう


「オラッ、お前らも料理取って席に付け…………なんで誰も肉取らねーんだよ!残すとか勿体無い事は許さねーからな!全員で食いきれ、これは命令だ!?」


 クソっ、舐められてるのか?好き嫌いとかガキかこいつらは!


(なんだこれ、俺は夢でも見てるのか)

(見ろよこのシチュー、具がたっぷりだ、それに良い匂いがする)

(お肉……食べてもいいの?)

(ああ神様……)

(残したらダメって、これ俺達が全部食べてもいいのか)

(分からねー、もう何がなんだか分からねー)


「全員取ったな?なら『いただきます』…………飯の前にはいただきますって言え!常識だろうが!?」


「「「「いただきます!!」」」」


「よし、食っていいぞ」


 シチューを一口飲むがいい味だ、流石俺だな、香辛料も録に揃わないのにこんな美味い料理が作れるんだから

それにしても、なんで全員恐る恐るシチューを啜ってるんだ、まさか不味いとか言わないだろうな?

おっ、ガッツキ始めたガッツキ始めた、スゲー勢いで食ってやがる、やっぱり俺の料理うめーよな!


 で、なんでこいつらお代わりに行かないんだ?もう皿にシチュー入って無いよな?でも鍋にはまだ大量に入ってるよな?肉もまだ大量に残ってるよな?


「お前ら…まさかもう満腹とか言わないよな?俺は残すなと言ったはずだ!」


 俺の言葉で鍋へ殺到するとは、クックックッ、少しは俺の言うことも聞くようになったって事か?なかなか幸先が良いじゃないか


(こんなに美味いの食ったの初めてだ)

(腹一杯に食べたのもだろ?)

(パパとママにも食べさせたかった……)

(今度のご主人は優しい人なのかな?)

(少し優しくされたぐらいで信用しちゃダメ……あれも人間なんだから……)

(……少し?)




 翌朝俺は全員を叩き起こした、昨日の風呂と料理にはポーションを入れておいたから、奴隷商や前の所有者から受けた多少の怪我とかなら治ってるはずだ


……一応聞いておくか


「今より訓練を始めるが、体調が悪い者、障害がある者は名乗り出ろ!」


 おっ、一人の女の子がビビりながら出てきた、足を引きずってる所を見るに怪我か?昨日のポーションで治らないなら、結構酷い怪我なんだろうな


「その足はどうした!」


 俺は怒鳴り付けた、優しさなんか掛ける気は更々ないからな


「ま、前のご主人に折られてから、治っても動かなくて……」


「じゃあお前はしばらく飯当番だな、これでも飲んでさっさと行け」


 マジックバックから、ハイポーションを一本取り出し渡した

ポーションは怪我を治すだけの薬だが、ハイポーションは健康な状態に戻す薬だ、骨折して動かなくなったならこれで治るだろう

流石に筋力までは戻らないから、しばらくリハビリは必要だろうが、飯当番くらい出来るだろ


 これから馬車馬のように働いてもらうんだ、手足が無くなったくらいで手離してたまるか!


「うそっ、動く……私の足が…………うわぁぁぁぁぁぁぁぁ----------ん!」


「うるせーピーピー泣くな!お前らも今の見たな、たかが骨折くらいで休めると思うなよ!」


(どこから突っ込めばいいんだろ?)

(あれハイポーションだよな?俺達を数人買うより高い)

(ウサちゃん治ったんだ、良かった)

(昨日の夜、私が夜伽に行ったら、『色仕掛けなんかで贔屓(ひいき)しねーぞ、そういうのは好きな奴としろ!』って怒鳴られたんだけど、どういう意味だと思う?)

(もしかしていい人とか)

(いい人が怒鳴ると思う?)

(照れ屋なんじゃね)

(((それだ!)))



 その後体力測定のつもりで走らせたが、ほとんどは申し分ないが何人かとガキは体力無さすぎだろ?

話を聞いたらそいつらはずっと内職紛いな事をやらされていたらしい、ガキは単純に栄養不足か?


 クソ、ある程度歳がいって体力ない奴は家事と事務をやらせるしかないか






「おいウサ耳、なんだこの料理はっ!」


 朝飯が出来たと言うから食堂に行ったら、俺の前には肉とパンと具沢山なスープが置いてあるのに、他の奴らには具がほとんど入ってない薄っっっすいスープの鍋が一つ置いてあるだけだった


「ヒッ」


「ヒッじゃねー!手抜きすんな!これから毎日訓練をやるんだぞ、もっとガッツリしたのを毎食作れ!」


「申し訳ございませんっ!」


 おーおーガタガタ震えてやがる、やっぱり恐怖で縛るのが簡単でいいな、これからも厳しくやって行こう


「おい、料理が出来る奴は手伝え!俺が本当の料理って奴を教えてやる!あとウサ耳もその鍋持って来い、作り直すからな!」


「「「はいっ!」」」


 料理から教えなきゃならないのかよ、この世界やっぱり最悪だわ

でも今だけの我慢だ、俺は面倒なのは先に片付けるタイプなんだ、今の内にみっちり仕込んで後で楽させてもらうからな!



(えっ、殴らないの?)

(俺達の飯が手抜きって……)

(まさか、毎回ご主人と同じ料理が食べれるのか?)

(ねえ?今日もご馳走が食べれるの?)





 朝食が終わった後、何人かの体力測定で使えないと判断した獣人どもを片付けに回して、残りの奴らを整列させた


「今日からお前らには戦闘訓練をさせる!訓練が終わったら冒険者として稼いでもらうから、死にたくなかったら、死ぬ気で訓練に(はげ)め!」


(……まあ、そうだよな)

(まともな食い物が食えるだけマシだと考えるんだ)

(やっぱりこの人も、人間なんだな……俺達を食い物にする)

(僕がんばる、だってご主人様はご飯くれるんだもん)

(女子供だけは、俺が……)


「何をブツクサ言ってやがる!さっさと走れ、先ずは足腰から鍛えるぞ!…………返事はどうした!?」


「「「はいっ!」」」


 さて、こいつらはイジメ抜いて鍛えるとして、使えない奴らにも事務仕事を教え……あいつら文字書けるのか?それと数学も……


 この世界の奴らはまともに読み書き出来ないカスばかりだったような、商人でさえ簡単な暗算も出来ないアホばかりだったような……俺が教えなきゃならないのかよ

クソっ、本当にこの世界は最悪だ!ついでに他の奴らにも教えとくか、一人に教えるのも五十人に教えるのも同じだしな


「ボケか貴様らっ!水分補給は小まめにしろ!塩分と一緒にクエン酸も摂れ、常識だろうが!?」


「「「はいっ!」」」


「そこっ!走れなくなったからって座るな!ゆっくり歩いて呼吸を整えろ、常識だろうが!?」


「「「はいっ!」」」






 あっという間に半年経った、最近ようやく獣人どもが多少は使えるようになった……長かった、ひたすら長かった

まさか全員数学どころか読み書きすら出来ないとは思わなかった、お陰で訓練が予定の半分も出来てない


 だが良いこともあった、足を治してやったウサ耳だが、あれ以来俺の忠実な(しもべ)になったのだ

俺はピーンと来たね、たかが足を治しただけで(うやま)うなら、命を助けてやったらどうだろう?とな


 予感は大的中だった、スラムやなんかで死にかけてる孤児を助けてやったら、みんな忠誠心マックスで俺の配下になった

チョロ過ぎて笑いが止まらなかったわ


──後こいつらの食費稼ぐ為に依頼こなしてたら、また強くなった

今は我慢の時だ、こいつらが育ったら俺は楽出来るのだから、そうこれは先行投資だ



「あの……ご主人様、お聞きしたい事があります」


 訓練の休憩中に獣人の一人、シラコダインが話し掛けてきた

珍しいな、こいつらから話し掛けて来るなんて


「なんだ?言ってみろ、聞くだけは聞いてやる」


「はい、あの…………俺達は何時になったら実戦を行うのでしょうか」


「はぁ?バカかお前は!漫画じゃあるまいし、素人がたった半年の訓練で魔物に勝てるとでも思ってるのか!」


「しかしご主人様は、戦闘経験も無かったのに数年でトップレベルの冒険者になったと、よくご自慢を…」


「アホかっ!俺が生きてるのは奇跡以外のなにものでもねーんだよ!最初のゴブリンを倒したのも奇跡だ、そいつが剣を持ってたのも奇跡だ、その後生き延びるのにどれだけ奇跡が続いたか教えてやろうか?お前らが俺に意見するなんて十年はえーんだよ!最低3つはスキルか魔法を覚えるまでは実戦は無しだ、覚えとけっ!?」



(たまに思うが、ご主人様は過保護すぎないか?)

(たまにか?俺はよく思うが)

(俺はもう3つ覚えてるんだが……)

(僕5つー♪)

(新しく引き取った子供たち以外はみんな覚えてるよな)

(言うな、いつかご主人様に恩返しする為にも、今は耐えるんだ)

(漫画ってなに?)


 ようやく使えるようになった道具を、そんな簡単に使い潰せるかよ!

俺はロープレでもレベルマックスじゃないとラスボスと戦わない派なんだよ、鍛え抜いてこの辺の魔物が雑魚に思えるようになるまでは、訓練は続けてやる!





 もうあれから五年も経ったのか、色々あったな……獣人狩りの奴隷商人どもをぶちのめして有り金奪ったり、獣人を村ごと配下にしたり、クソ貴族や性食者……聖職者を転校させて領民を配下にしたり、腐れ王が気に食わなかったから革命起こして修道院にいた女を女王にしたり……


 俺はなんでこんな面倒な事をしてるんだ?


 違うだろ!俺は楽する為に獣人集めたんだよ、なんで革命(実質一人で)とかやってんだよ!

クソっ、下らねー言い掛かりとか無視すりゃ良かったんだよな、たかが獣人や配下の女ぐらいくれてやれば良かったんだ

なんで俺は革命(無双)とかしたんだよ


あーあ……もう別にいいか

カッとしてやった、今では別に誰も後悔してないって言うしな



「ご主人様、総勢三千名揃いました、どうかご命令を!」


 うん、やはりウサ耳には軍服が似合うな、他の獣人と元孤児達の混成部隊は皮鎧だが、指揮官に抜擢した何人かは軍服を着せている

こういうあらかさまな待遇の差別を見せ付ける事で、こいつらも多少はやる気になるだろうという目論みだ


「いいかお前ら、今からやるのは初の実戦だ!気ー抜いた奴は死ぬからな!絶対に気を抜くんじゃねーぞ!?」


「「「「はいっ!」」」」


 クックックッ、やはり俺の教育方針は間違ってなかったな、最初は返事すらまともに出来なかったこいつらも、今では従順な兵隊だ

唯一の誤算は“上位”のスキルや魔法を覚えるのに五年も掛かったくらいか、俺が半年で覚えたのは、やはり特別だったみたいだな


(と言ってもゴブリン退治なんだよな)

(バカっ、気を抜くなと言われたばかりだろ!)

(これでやっとご主人様に恩返しできる!)

(僕の対消滅魔法が火を吹くよー)

(まさか五年で上位スキルを覚えれるとは思わなかった)

(普通は軍団長クラスよね……)

(そんな事よりゴブリンだ)

(やっとドラゴンの皮で出来た人形を切れるようになったばかりの僕の剣が、ゴブリンに通用するのかな……)

(岩しか切れない私は役立たずなんだろうな……)

(しまった、子供たちにゴブリンの説明をし忘れた……まっいいか)


「うるせーっ!初めての実戦だからってビビってんじゃねーぞ!…………おいウサ耳っ、気分が悪いなら帰って寝てろ」


「いえ、だ、大丈夫です」


「真っ青な顔で大丈夫なわけねーだろ!ハイポーション飲んで寝てろ」


「あの……出来たみたいで……」


「出来たって何がだ?」


「……赤ちゃんが」


「……………………お前ら出陣は中止だ!今日は宴会だぁぁぁーーー!?」


「「「「「えええぇぇぇぇぇぇぇぇ!」」」」」


 ええーじゃねー!こんな時にゴブリンとか知るかっ!


「ウサ耳が俺の子供を身籠った、実戦は無期限で延期する!家に産婆の手配と結婚式の準備をするように連絡しろ!」




一瞬の静寂の後


「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」」」」」


響く大きな熱狂



「うるせー!母体に響いたらどうする!あと赤ん坊の名前を募集する!男女一つづつ考えとけっ!?」


(お前ら全力で祝うぞ!)

(尊いご主人様の御子にお名前なんて畏れ多い)

(ご主人様の命令だ、死ぬ気で考えろ)

(男の子かな?女の子かな?きっと可愛いんだろーなー)

(………俺達一生実戦に行けない気がするんだが)

(言うなっ!今はお祝いすることだけを考えるんだ!)



 先ずは七五三の準備に雛人形や鯉のぼりだろ、あーウサ耳のウエディングドレスを忘れてた、それに新婚旅行もだ、後で要相談だな

まさかこのクソったれな世界で妻子持ちになるとはな、いかんいかんニヤけるな、これからが大変なんだから…………


───って、そうだった、ここはクソったれな世界だった!?


 只でさえ人の命が塵芥なのに、獣人は差別対象だ

なら俺の子供も差別対象になるのか?



───よし、女王には新しい法案を作らせるとして、獣人を排斥してる教会には物理(お話)をしに行こう、確か竜神を崇めてるらしいから、ちょっと神様かぶれな痛いドラゴンを脅せばなんとかなるだろう



 そろそろこのクソったれな世界にも教育が必要な頃だよな?




俺は命の価値は全て平等だと思っている

 俺の命が塵芥(ゴミ)な価値しかないなら

  こいつらの命も塵芥(ゴミ)な価値しかない

   だが、断じて塵芥(ゴミ)以下じゃない


自分の命を塵芥(ゴミ)以上だと勘違いしてる世界に教えてやる

 上等な命なんか無い、お前も俺と同じ塵芥(ゴミ)なんだとな

ちゃっかりウサ耳ちゃんと良い仲になってるクソ野郎です!

そして、子供が出来た途端に手のひら返しです!

まさに最低の主人公と言っても過言じゃないでしょう