67話:魔王、己を歌うサーガを調査する(前編)
2019/4/1更新内容
67話に68(後)話、69(裏)話を追加。既に投稿していた68話を70話に移動。
あとがき部分にその話登場した人物紹介を記載する事に。
71話として現時点までの人物紹介を記載。
「一点物の大型巡洋艦か小型の戦艦サイズで機動性重視の高速艦の発注か―――良い注文だ。リゼルが喜びそうだな」
『ヴァルナ』ステーションの商業区・大通り沿いに新しくできたオープンカフェの椅子に足を組んで座り、携帯端末でハーミット海難保障―――海賊ギルドからの注文を眺めていた。
このあたりはリゼル父が張り切って再整備したばかりで、初夏の日差しのような強く温かい日射しがあるんだ。整備が行き届いてない場所とか、一番明るい時でも日暮れ程度の薄ぼんやりした明るさにしかならないからな。
「……そういえばこの珈琲って何だ?」
唐突に普段飲んでる珈琲が気になった。『ヴァルナ』ステーションで売っている食料の大半、露天の串焼きから八百屋で売ってる野菜や、ホルモン肉から骨付き肉まで、基本的に汎用オーガニックマテリアルという、白い半透明の有機結晶体から作られている。
天然ものはもっと高価だから合成食料の一種だと思うが、どんな加工をすれば珈琲になるのか気になる。
「しかし平和な町中で悪事をしているのは良いものだな」
今受注した一品物の戦艦は、海賊ギルドに加入している歴史の古い有名な海賊団からの注文だ。
ジャンク品ではなく、製品として、かつ唯一のものとして作られた船をベースに作って欲しい、ベースになる船は実験艦や試作艦だとなお良い。とか、ロマンが良くわかっている。
そんな物騒な代物の建造注文を受けるのが、平和なステーションの中というのも良いものだな。
悪事的には「無法者への武器援助及び密輸」に該当するだろうか。
リゼルとおやっさんへ注文が入ったと連絡を入れて携帯端末をしまい、珈琲の入ったカップを傾けていた時の事だ。
「あっ、社長だ。社長ー! 今度またおごってねー!」
「いいぞ。あまり気取らない所の方が良いか?」
「せんせーだ。またねー!」
「またな。何かあったらすぐ大きな声を出すんだぞ」
休暇中だろう、大通りを歩いていた魔王軍の社員が手を振って挨拶してくるし、カバンを背負った学校の生徒らしい幼女には先生と呼ばれて親しげに挨拶される。
―――ふと思ったんだ。俺って魔王軍以外ではどんな評判を受けているんだろうか?
―――
「―――という訳で、調査を頼んだ訳だ」
一週間後、ワイバーンの会議室で調査の報告を受ける際にミーゼに聞かれたので事情を説明していた。
「良い機会でした。地元での情報収集はしているけど、それ以上の調査はしていなかったのです。おにーさんは良くも悪くも魔王軍の顔だから、気になっていました」
ミーゼが納得とばかりに頷いている。長い間通信販売番組に出ていた名物社長のようなものだろうか。
「じゃあ順番に報告していきますよぅ。投影画像の資料も一緒に確認して下さい」
普段着に白衣姿のリゼルがポインターを伸ばし、アルテが補佐について解説を始める。
―――『ヴァルナ』ステーションにおける・魔王軍の評判
「地元だけあって大体評判がいいですよぅ」
「本拠地で暴力事件を起こすような人物は徹底的に矯正しているであります」
アルテをはじめとするメイド隊は内部監査や、性格を矯正するような訓練・教育が得意なんだ。どの国も軍隊かそれに準じる組織はこの手の事が得意だしな。
「魔王軍が本拠地にしてから景気も良くなってきたって評判ですよぅ。職業斡旋所で人が足りない位の好景気になってます」
「リゼルねーさんが関わらない部分の、船部品のリサイクルや作成を任せている下請けの工房にも、仕上がりの良さを求められるけど代金の支払い遅れも無いって評判なのです」
「悪くない評判のようだな。これからもこれを維持できるように頑張ってくれ」
「了解であります」
―――『ヴァルナ』ステーションにおける・魔王の評判
「えーと、この前運営会議に出たらしいけど、イグサ様をステーションの名士名鑑に載せるか、要注意人物として旅行者に渡すステーション案内に載せるか会議が長引いたらしいですよぅ」
「……心当たりが多すぎて何も言えないな」
どういう意味での要注意人物か聞いたら藪から蛇が出そうだ。
「ちなみに、結局どっちになったんだ?」
「最初は後者の賛同者が多かったらしいけど、文句を言われたら誰が対応するんだい?ってパパの一言で前者で決まったのですよぅ」
賢明だな。
「イグサ様は歓楽街の方では評判が良好であります」
「金払いの良い遊び人は大抵歓楽街じゃ人気ものなのです」
アルテのフォローに冷静なツッコミを入れるミーゼの言葉が耳に痛いな。
「女の子向けのお店が増えすぎないための防波堤になっているって、歓楽街好きの男の人にも結構人気があるのですよぅ」
『ヴァルナ』ステーションで歓楽街に一番多く金を落とすのは魔王軍の社員だと思うが、魔王軍の社員は女性の比率が圧倒的に高い。
飲み屋とか食べ物屋、レジャー施設などは共用だから良いんだが、不健全な夜のお店になると男性向け女性向けが分かれるのが大半だ。
区画が離れているのでそちらは行ったことが無いが、魔王軍設立前に比べてホストクラブ的な店が随分と増えたようだ。
社員が被害に遭いそうな悪質な店は表や裏の影響力を使ったり、時には物理的に潰れて貰ったが、懐に余裕のある女性が多い環境だと必要になるんだ。
男も女もストレスを発散する先が多いに越したことは無いしな
。
その手のちょっと不健全だが、女性が安心して遊べる良心的なお店は近隣のステーションから観光客が訪れるほどに評判も高いし数も増えている。
機密情報を扱う部署の女性社員用に、魔王軍の直営店を出すか検討もしているが、男性社員は女淫魔とセットにして船員にしたいから難航中だ。
その影響で一時期男性向けの店がごそっと減ったり客足が遠のいたりした事がある。苦しい時期に俺やリョウが遊んだ事で生き延びれた店も少なくないという話だ。
そのせいか歓楽街に行くと客引きから店主、店員まで親しげに声をかけられる。
「地元で人気がある分には良いか」
―――『船の墓場星系』全般における・魔王軍の評判
「『ヴァルナ』ステーションの外に出ると影響力はがくっと減るのですよぅ。魔王軍が治安維持をしている星間航路の周辺ならまだ知名度があるけど、それ以外の場所で民間人レベルだと名前以上の事を知っている人を探す方が難しいです」
そんなものだろう。企業として以上の名声を集める気はない。
「魔王軍が保持している戦力が大きい分、自治組織は警戒している所も多いであります」
巡洋艦が一隻あれば重武装じゃないステーションならお手軽に破壊できるしな。
巡洋艦を大量に運用していれば、当然警戒されるだろう。
「魔王軍が提供している動画、キャプテン・ナイトグローリーや、魔法少女ロジカル☆ミーゼの方は他のステーションでも知名度が高いですよぅ」
「……ふふん、当然なのです」
ミーゼが嬉しさ8割照れ2割くらいで嬉しそうに胸を張っているな。
魔法少女の関連グッズをもっと増やしても売れそうだ。
「有名な番組のスポンサー程度で知名度があれば十分か」
「はいです。知名度が高すぎてもトラブルの元なのです」
―――『船の墓場星系』周辺の海賊勢力における魔王軍の評判
「純白のカラーリングの船と出会ったら命が惜しかったらすぐ降伏しろ、そうすればその場の命だけは助かるって評判ですよぅ」
「なぁ、もうこれ評判じゃなくて悪名だよな」
「でも変。リゼル、その割に降伏してくる海賊っていないよ?」
「海賊って捕まったら司法取引に使える大きなネタでも持ってないと、大体処刑台行きだから仕方ないのですよぅ……」
21世紀の日本感覚だと片端から処刑なんて残酷に感じるかもしれないが、海賊なんて大多数が処刑台送りにしてもぬるいレベルの外道行為をしているしな。
―――アドラム帝国辺境域・コランダム通商連合辺境、フィールヘイト宗教国辺境での海賊ギルドの評判
「ちょっと特殊だけど海賊ギルドの評判ですよぅ。海賊にしては、って但し書きがつくけど評判は結構良いのです。無抵抗な民間人への暴行のたぐいをしない、誘拐されても身代金を払えば帰ってくる、奪われた荷物もお金を出せば戻ってくる、麻薬の販売・流通に関わらないというのは、ポイントが高いのです」
「『海賊牧場企業連合』が健在な頃に、何度かギルド所属海賊団の討伐作戦が立案されていますが、海賊ギルドを潰した後に、今以上に交渉が出来るまともな海賊団が出るとは思えないと、地元の反対で討伐作戦が何度も頓挫しているのであります」
……討伐作戦が頓挫するのは良いが、地元の反対で討伐作戦が頓挫するというのは微妙な気持ちだ。
「海賊ギルドはギルド非加入の海賊と無条件で敵対する訳じゃないが、海賊の仁義に反するような海賊を排除する方針だしな」
まあ、大抵の宇宙海賊は好き勝手してるから敵対する事になるんだが。敵対しないような海賊は誘うと海賊ギルドに加入してくれる。
ごくごく希に「群れるのは好きじゃ無い」という格好良い連中もいるが、その手の勢力とは中立を保って貰うことにしている。
「コランダム通商連合の勢力内で、海賊ギルドに通行料を払う企業が出始めたのですよぅ」
「あの国の商人は本当にたくましいな……」
大体順調みたいだな。
しかし海賊ギルドが順調に勢力を拡大していったら、小さな国でも建国できそうだ。
―――アドラム帝国の『船の墓場星系』出身政治家達の間での魔王軍の評判
「『船の墓場星系』出身で、地元や中央で政治家している人とはだいたい『とっても仲がいい』のですよぅ。賄賂の絆でずぶずぶの関係です」
「中央への影響力は心許ないけど、その分地元での影響力は大きいのです」
「ん。お金で仲良くできる人達は大事」
「これの評判は考えるまでもなかったか」
―――アドラム帝国技術局・他企業研究室での魔王軍の評判
「評判が悪くないか良い所も多かったけど、逆に評判が凄い悪い所もあるのですよぅ」
「アドラム帝国の技術局や、他の企業の技術研究室や研究所なのです。帝国軍に納品した魔王軍の人型戦闘機を色々な方法で入手して、分解研究しているのに全然成果が上がってないのです」
「魔王軍製の量産型人型戦闘機『シュヴェルトイェーガー』に使われている偏向ベクトルエネルギーソードや、異相周波シールドジェネレーターを欲しがってるようであります」
「けど、分解して研究しても全然わからないというか、普通のビームソードとシールドジェネレーターにしか見えないって、技術者や研究者が過労とかストレスで倒れてるらしいのですよー……」
同じ技術者としてリゼルは後ろめたそうだ。
「魔法技術で作ったものを科学技術で分析しても、そう簡単に成果は出ないよな」
解析に難儀しているみたいだが、魔法の道具を科学で再現しているジャンプドライブの件もあるから絶対に無理とは言わないが、難易度が相当に高いだろう。
簡単に真似されても困る。
―――アドラム帝国、政府系情報データベース内の魔王の評判
「これがアドラム帝国の各局、課長以上が閲覧できるデータベースですよぅ」
リゼルが投影画像を立ち上げて新しい資料を出してくれる。
「リゼル、これどうやって調べたんだ?」
「シーナちゃんにお願いしたら2分で繋いでくれましたよぅ」
「それもそうか」
機鋼少女の中でもシーナは飛び抜けて能力が高いからな。
前は無垢な感じだったが、最近は休憩中にたまにグラビアのような健全な動画とか見て顔を赤くしているから、お年頃みたいだが。
「ええと……アドラム帝国の地方星系で生まれて、地方ではそこそこの研究機関で少し過ごした後、交流パーティで船の墓場星系の令嬢と出会い数年の付き合いの後に婚約、その後婚約者の両親の薦めもあり『ヴァルナ』ステーションに移り住んで起業し順調に事業を拡大している―――なぁ、これ誰なんだ」
適度に成功した青年実業家みたいな履歴が書かれている。
「これは情報局の仕込みだと思うのです。おかあさんが好きそうなシナリオです」
リゼル母の趣味か……ん?
『情報更新中です。暫くお待ち下さい―――帝国儀典局』
帝国儀典局の名前とマークが入った妙に豪華なスクリーンに切り替わる。
「これリアルタイムなのか?」
「そうです。常時更新型のデータベースですよぅ」
「……さっきより酷いのが出てきたな。没落しかけたアドラム帝国帝国貴族の長男として生まれ、中央星系の名門学校で優秀な成績を残し卒業、帝国史研究機関に就職するが、実家が危機的な状況に陥り家業を継ぐ―――なぁ、あちこちに会ったことも無い俺の恩師や友人のコメントがあるんだが」
「儀典局の仕込みだから多分実在する人です。直接聞きに言っても同じ事を話すと思いますよぅ。無い所から経歴を作る事なら、情報局以上に慣れてるところです」
「典型的な血筋も育ちも良く、かつ適度に苦労して現実を知ってる王子様的な経歴でありますね」
「待って下さい、続きがあるのです。『家業が落ち着いていた頃に出た夜会で、お忍びで参加していたエミリヴァイト殿下と名門学校以来に久しぶりの再会し、数年の付き合いの後に婚約。皇配として教育ちゅ―――あっ、良いところなのに!」
ミーゼが読み上げている最中にデーターベースが切り替わっていく。
『情報更新中です―――帝国情報局』
『情報更新中です―――帝国儀典局』
『情報更新中です―――帝国情報局』
「何か争いがあるらしいが―――否定的な内容じゃないのを喜んでおくか」
リゼルがこれを最後に持ってきた理由が何となくわかった。
「うかつに手をだしたら大変な事になりそうなのですよぅ」
―――
「さてこんなものか―――うん? どうした」
会議室を片付けて戻ろうとした所で、両手をライムとアルテに拘束された。
「イグサ、まだ聞きたい事が2つ残ってる」
「そうです。大事な事が抜けているのです」
何か残っていたか?と不思議な顔をする俺に対してミーゼがにこりとした顔で尋ねてくれる。
「ねぇ、おにーさん。私はリゼルねーさんと同じくらいまで成長するはずだったのです。なのに姿が変わらないのはどうしてでしょうか」
「ん。私も背がぐっと伸びて、肩が凝る位胸が立派になってもおかしくない頃」
いやいや、ライムは厳しいんじゃないかな。確か出会った時点で18歳。成長期終わっていたと思うんだが。
まあ言いたい事はわかった。獣系アドラム人なら一定の所で外見の老化が止まるが、地球人のライムとか、まだ成長中だったらしいミーゼがそのままの姿というのも不思議な話か。
「それは簡単だ。下っ端じゃなく魔王が直々に作った使い魔が100年くらいで死ぬわけがないだろう?」
勇者や英雄との戦闘で死ぬことがなかった高位の魔物は長生きするものだ。
「普通に成長はするが、成長しきった後に老化はかなり早い段階で止まるな」
ファンタジーだけにふわっとした境界線で、どこで成長しきったと判断するか個人差が大きそうだが。
魔王の配下がロリ娘ばかりというのも寂しい。お色気担当は大事だよな。
「イグサ様、契約した使い魔ってどの位の寿命になるんですよぅ……?」
「そこら辺は設定を弄らずにデフォルトままだったからな―――ええと、リゼルやミーゼみたいな魂の契約だと」
頭の中に魔方陣を浮かべて、寿命に関する項目を探す。
「―――魔王からの魔力提供が尽きた後に、樹木程度になるな」
樹木といっても常緑樹の大木になる樹レベルだ。
そこらのエルフよりは長生きすると思う。
魔力提供が尽きた後でもだいぶ長く活動できるのは、封印や討伐された魔王を復活させるために、暗躍する余地だな。
魂の契約まで行ってないが、ルーニアとユニアもエルフ位の寿命になっているはずだ。
直接契約してこそいないが、魔王の魔力が含まれたものを窃取しているからな……
ライムは俺という魔王に対抗するための勇者だし、最上位の契約をしてあるからな。
……老いるんだろうか? それにライムは魂じゃなく運命と因果律で縛ってあるからな、確かあれをやっていると、どちらかが死んだとしても、また近くに転生して関わる事になるはずだ。
「私がスタイル良い大人になるのに凄い時間がかかりそうなのです……」
思わずミーゼから顔を背けてしまった。魔法少女の賞味期間が長くなって良いじゃないか。
そっと逃げようとしたが、ライムが離してくれない。
「イグサ、もう一つ聞きたい事が残っている―――2人目っていつできるの?」
今すぐにでもとか言ったら部屋に連れ込まれて薄い本みたいな酷い事をされそうだ。
普通の人間ならすぐに次の子供を作れるから気になるんだろうな。
理性では納得できるんだが、背中に冷たい汗が流れるのは抑えられない。
「なぁライム、食物連鎖のピラミッド―――というのは知っているだろう?」
「ん」
「で、魔王とその子供というのはそのピラミッドの天辺から上に伸びたアンテナみたいな位置の存在だ。1人産んだらまたできるようになるまで、多少時間が空いてもおかしくない。具体的にどの位間が空くかはわからないけどな」
ファンタジーに出てくる長寿な種族は子供が出来にくいらしいが、俺の場合は簡単にできるというか、でき易すぎるから1度作った相手と2人目3人目を作るのに間が空いても不思議ではない。
魔王が人間みたいなペースで子供を作っていたら、討伐する勇者も大変だろう? 魔王を倒しても後継者が3桁もいて、倒すたびに~の後継者だと再起していたら気の長いRPGプレイヤーだってゲームを投げると思う。
「うん、納得した」
納得してくれて何よりだ。
「―――だから、その推測が合ってるかどうか実験する」
「えっ?」
「ワイバーン、会議室を当分使用中のままに。イグサや私達への連絡は緊急用連絡以外、代わりに対応しておいて」
『承知しましたライムはん。どの位会議室の使用スケジュールを押さえましょか』
「とりあえず3日くらい」
『ほいな』
「ラ、ライム……?」
「あのねイグサ、イグサの行動は仕方ないと思ってるけど―――私達にだって独占欲はあるんだよ?」
いけない、このまま流されるままだと危険すぎる。
「そうか、なら俺が夢中になってしまうほどライムの魅力をたくさん教えてくれないか?」
ライムの頬に手を当てて顔を近づけて耳元で囁く。
「……うん」
頬を赤く染めるライムを視界に入れながら、ここは死地だと覚悟した。
この場にはライムだけではなく、リゼルやミーゼ、アルテもいる。戦況は圧倒的に不利だ。正直勝機が見えない。
だから、生き延びれるように―――受け身にならずに全力を出さねばならない。
生き延びれば俺の勝ちだ……!
―――数日後『ヴァルナ』ステーションの一角にて、休暇中の魔王軍女性社員グループの会話
「あれ、ワイバーンの船員用業務連絡が来てるよ」
「本当だ。えっと……休暇を一週間延長? 社長がまた倒れたみたい」
「結構頻繁に倒れているよね。元気そうに見えるんだけど病弱なのかな?」
「元気そうに見えるけどね。まあいいや、有給らしいし、どっか遊びに行こう!」
・イグサ 主人公。SF世界で地道に頑張る魔王様。
・リゼル メインヒロインその2。黒髪に猫耳猫尻尾のアドラム人。性格と性根が残念なマッドメカニック。
・登校中の幼女 魔王様が理事長をしているハルナ02基礎学校の生徒。成人資格を取るのに子供達が通うため、様々な種族がいるため外見年齢はともかく生徒の実年齢は若い。
・ミーゼ メインヒロインその3。リゼルの妹、焦げ茶の髪に狐耳狐尻尾のアドラム人。陰謀策謀好き、魔王様の副官かつ戦闘でも経済でも頼れる右腕。成人前に魔王様と使い魔契約したのでほぼ永遠の少女姿が約束されている。
・ロジカル☆ミーゼ 魔王軍が本拠地にしているヴァルナステーションのご当地ヒロイン(魔法少女)。私欲のために悪を討ち悪の財産を私物化する姿、大人げなく部下を使って数で圧殺する容赦のなさが人気を博している。高度な認識阻害魔法で正体は謎に包まれている。
・シーナ 魔王様が創った機鋼少女という種族の少女。情報処理に特化した性能をしている。最近サブヒロインに昇格した。
・リゼル母 リゼルの母親。本名はベアトリス・フォン・カルミラス。だいたいリゼル母という通称で通っている。帝国情報局の前局長で、今でも情報局や帝国の色々な所に強い影響力を持っている。現在はアドラム帝国儀典局のリリアーヌ皇女(60話登場)と、どちらの娘(姪)を魔王様の婿にするか暗闘中。なお当事者である魔王様は独身生活を続ける事を希望しているが、当人の意思は考慮されていない。
・エミリ サブヒロイン。本名はエミリヴァイト・カルシファル・アドラム。アドラム帝国皇帝の皇太孫。一人娘を育てつつ、叔母のリリアーヌ皇女を応援中。たまにアドラム帝国市民のエミリとして魔王様の周辺に出没する。
・ライム メインヒロインその1。年齢的に合法(大事)な見た目が若い勇者様。最近は戦闘以外ポンコツの称号を返上し、仕事(経理)や家事を頑張っている。
・アルテ メインヒロインその4。メイド服の犬耳少女。特殊部隊上がりで部下と一緒に魔王様の近衛兵的な仕事をしている。