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54話:魔王、太古の遺産を狙う

3話同時投降です。話数にご注意下さい。

SF成分多めでお送りします。



「性能はしっかり伸びました。

 装備もオプションも増えたけど、このままだと同時に使える部分が少なくて欠陥艦になってしまうのですよぅ……」





 低めの室温設定をした上でコタツを配置し、その上にミカンもどきを山積みしたスタイルがすっかり定着したワイバーンの会議室に緊急事態だと呼び出されていた。


 黒板型の投影スクリーン前に立っているリゼルに説明を受けていたんだが、一通り説明が終わった後にリゼルは珍しく肩を落して深い溜息をついて落ち込んでいた。

 いつも気楽そうにピンと立っている猫耳が、へにゃりと力なく倒れている辺り本気で落ち込んでいるようだ。


「問題点はリアクターか?」


 投影映像でワイバーンの内部図面のようなものが表示されているが、リアクター周りだけ何度も書き直した跡が残っていて、リゼルがどこに悩んでいるかが分かりやすい。


「そうなのですよぅ。

 今まではガルン叔父の所で乗せた帝国型の試作炉を弄って何とかしていたけど、ジャンプドライブの稼動には時間かかるし、今度つける新装備を動かそうとするとどーしても出力が足りないのが分かったのです」


 リゼルが左手の指先で四角く空間をなぞると、投影画像の数式がずらずらっと出てくる。

 細かい計算式の先に最大負荷稼動時にリアクター出力48%不足と書かれていた。


「不足と書かれているが、実際に動かすとどうなるんだ?」


 ワイバーン船体の修復や新装備搭載の為の船体拡張も終わっているし、搭載する部品開発も終わり、新装備の組み立てや動作テスト中だ。

 リゼル入魂の小型ワープドライブなど、一部は既にワイバーンへ搭載されているから、船が動かないレベルの致命的な出力不足ではないと思うが。


「戦闘中とかの最大負荷時にリアクター出力が不便な感じに足りないのです」

 ぱんぱんとポインターで黒板型の投影ウィンドウを叩くリゼル。


「今度増設する主砲を使おうとすると衝撃砲や近接迎撃用のレーザー砲台動作停止したり、無理矢理両方使おうとしたら今度はシールド出力が思い切り低下したり、砲撃戦闘しながら新型のシールドジェネレーターを全力運転させると推進器に回すエネルギーがなくなったり、追加したワープドライブは起動中武装が全部使えなくなったりするのですよぅ!」


 ……使えない事はないが、微妙に不便だな。

 大規模戦をする軍用ならその位尖った性能でも良いと思うが、単艦運用する事も多い民間軍事企業の船としては、常に全力を出したいものだ。


「なぁリョウ、普通の戦闘艦と比べてどうだ?」


「……ああうん、魔王軍うちの非常識さがまた一つ身に染みたっつーか。

 砲撃戦時に機動性を下げて浮いたエネルギーを火器にまわすとか、主砲を全力運転させる時は副砲やら使えなくなるとか、そっちの方が普通なンだよ。

 主砲と副砲と対空砲を同時射撃できる余剰エネルギーがあンなら、ちょっと無理してエネルギー消費の激しい強力な火器詰むンだよ。普通」


「ワイバーンに重装備させすぎると船体バランス崩れるし、反動抑制がしきれなくて不安定になったりするんですよぅ!

 その辺クリアできたから、今度はもっと良い砲を詰もうとしたら問題ができたんですもん!」

 ワイバーンは駆逐艦サイズの船体に巡洋艦の主砲を乗せていたしな。


「元からンなに無駄出力がある方が変なンだよ!」


「リョウ、よく分かったから落ち着け」

 ヒートアップしてきたリョウを宥めて座らせる。

 巨大戦艦に乗っていた海賊の親分に非常識と言われるのか。

 おやっさんとリゼルの非常識ぶりがよく分かる。


「確かに非常識ではあるが、今までのように出力に余裕がある方が戦い易かったのは事実だ。

 ジャン曰く”戦闘艦とは思えないアクロバティックな戦い方”らしいけどな。

 リアクター出力を何とかする方向で考えたいと思う。

 リゼル、リアクターの出力増加改造や増設で何とかならないのか?」


「出力を増やす改造は計算上はやれます。

 けど、今でも普通に動かしたら数日で不安定になるのが、回復……魔法が途切れた瞬間に臨界爆発するような代物になるのですよぅ」

 魔法という単語を素直に言えない辺り、技術者をしている時のリゼルの葛藤が見て取れて胸が温かくなる。

 だが問題はそこじゃないな。


「常時修復用の回復魔法を使い続けて、途切れてしまったらその瞬間に内部から爆発轟沈か……流石にそんなものに乗りたくないな」

 淫魔や魔獣達、元隠者の英知構成員など魔法が使える人材は増えているが、魔法を常時使い続けるシフトを組むのは厳しい。

 シフト的にはやろうと思えばできなくもないが、戦闘の衝撃とかで担当の魔法使いが転んだりして回復魔法途切れたら内部から爆発して自沈とか、実用品どころか実験用だとしても動かしたくない代物だ。

 戦闘艦は一度航海にでれば長く暮らす家でもあるんだ、導火線に火がついている爆弾の上で生活したくはないぞ。


「私だって乗りたくないですもん。

 普通にリアクターを増設すると艦体が大きくなって、大きくなった艦体に合わせてシールドジェネレーターとかを増強して、それを支えるのに艦体が大きくなって、必要なリアクター出力が増加していって、船が大型化するのですよぅ。

 これが普通に増設した計算を元にした予想図です」

 リゼルが新しい投影ウィンドウを開くと、細部の輪郭は違うがワイバーンだと分かる強襲揚陸艦のモデルが表示される。

 ……が、形こそ似ているが550m級高速巡洋艦セリカと同サイズだな。全長が3倍位大きくなっているぞ。


「……これなら最初から巡洋艦に乗っていた方が早いな」

 改装費用の見積り額も中古の高速巡洋艦が5隻は買える値段がついている。

 ワイバーンは特に魔改造度が高いし、構造や装備も特殊だから値段が高くなるのは仕方ないとしても無駄すぎる。

 高速巡洋艦に突入ポッドや地上部隊展開用装備の追加改造をした方が良いな。


「それでも装備の量を減らしたり、切り替え方式にしない所を見ると何か解決策があるんだろう?」


「勿論です。これが欲しいのですよぅ!」

 先ほどまでのしぼんでいた空気を忘れたような元気さで投影画像を開くリゼル。

 画像には光沢のある石の質感を持った黒い円柱が映っていた。

 一緒に映っている人や建物からすると、大体十メートル前後の棒状の物体だな。

 会議室に集まってる人間の半分位からは驚き。残り半分は何だろう?という疑問の空気が流れている。

 結構知名度が高いものなのだろうか。


「ミーゼ、知ってるか?」

 膝の上に乗っているミーゼに尋ねる。

 ついさっきまで膝の上に座れる権利をかけて、ライムとミーゼがボードゲームで真剣勝負していたのは、どうでも良い話だろう。


「はい。遺失技術で作られた遺物アーティファクトの中でも特に発見数の多い『オベリスク』なのです」


 ミーゼに説明して貰ったが、そこそこメジャーな代物らしい。

 遺失技術で作られ、現在の技術では再生産が出来ないものの通称、遺物アーティファクト

 遺物『オベリスク』はアドラム帝国だけに限らず、既存宇宙のあちこちの惑星や衛星で発掘される事がある遺物で、動作原理すらわからないものの、設置された星の衛星軌道から星系外縁部まで迎撃できる対宇宙兵器として知られている。

 使い方も簡単。エネルギーいらずでメンテナンス不要と使い勝手は非常によく、威力も直撃すれば一撃で巡洋艦が沈むほどに強力。

 しかし設置された場所から移設すると動作停止するので動かせない、使用期限があるのかある日突然停止したりする、使い方が簡単すぎる上にロックもできないのでテロや襲撃の標的になりやすい、単体戦力として非常に強いものの物量に押し負けるなど難点も多いため、中央星系や重要な星間航路に近い所ではあえて動作停止させたり撤去してしまう事が多いらしい。


「……おねだりする物にしては物騒だが、普通に売ってる訳ないよな?」


「作動停止した『オベリスク』は帝国技術局や大企業の研究所行きになるし、稼働中のものは軍や治安部隊の管轄なのです。

 多分リゼルねーさんはこれを狙っているのです」

 ミーゼが展開した投影画像には半年ほど前の日付の地方ニュースが表示されていた。

 帝国西部辺境にある惑星が一つ反乱軍の穏健派―――反乱軍なのに穏健派というのもおかしい表現だが、制圧しても税率や法律、治安維持する役所や警察機構までそのまま維持するし給料も支払う、統治権を奪う事だけが目的の反乱軍に占拠されたと書いてあった。

 この手の奪い合いはジャンプゲートが未開通な事も多い辺境部だと珍しくないらしいが、占拠された惑星には宇宙的に見ても珍しい集中配備・連動動作型の『オベリスク』群、通称『ストーンヘンジ』があり、反乱軍に『ストーンヘンジ』を占拠され、星系の支配圏ごと奪われたのでニュースになったようだ。


「イグサ様、ここにある『ストーンヘンジ』は所属が反乱軍のものだから貰っても違法じゃないし、貴重な稼動品なのですよぅ!」


「動かすと動作停止するんじゃないのか?」


「そこなのですよぅ!

 一般には知られてないけど、動作停止した『オベリスク』は対宇宙兵器として使えなくなるけど、反応型リアクターの触媒にすると普通のものと桁が違う位に小型で高出力なものになるんです。

 アドラム帝国の主力戦艦で、重力炉式じゃないくせに重力炉よりも出力が一桁大きい「アドラム・ワン」もこれを使っているのですよぅ!」


「……わかった、何とか確保してみよう」

 爛々と目を輝かせて、このまま黙っていたら押し倒されるんじゃないかと危惧する勢いで迫ってくるリゼルに対して断る言葉は出せなかった。




 たまに思う事がある。

 俺やライムはSF世界にとって非常識ファンタジーな存在だが、リゼルやおやっさんのような頭にマッドがついたメカニックも方向性こそ違うが、十分に非常識ファンタジーな代物だよな?



―――



 ワイバーンのリアクター問題の会議は休憩を挟み、そのまま『ストーンヘンジ』奪取の作戦会議になった。

 会議に必要な情報は休憩時間中に情報処理型の機鋼少女とセリカが集め、オペレーターやブリッジ要員達が資料にしてくれた。

 準備がスムーズかつ短時間で終わる辺り、人材が揃い育ってきたのを感じるな。


「これが目標の『ストーンヘンジ』が設置されている惑星、『アクエリア190-A』の画像なのです」

 今度はリゼルの代わりにミーゼが黒板型の投影画像の前に立っている。


「ん、んー……」

 空いた膝の上にライムが抱きつくような形で座り、顔を胸元に押し付けて甘えている。

 まるで寂しがりの子猫のようだが、そのせいでミーゼから飛んでくる視線が鋭く痛い。

 俺のせいじゃないよな、これ。


「『アクエリア190-A』は表面の8割が海に覆われた準海洋型惑星。

 200年前からテラフォーミングと入植が始まった惑星なのです。

 敵戦力の主力はやっぱり『ストーンヘンジ』、惑星の赤道上にある島が設置場所で円形に配置された12基の高エネルギー粒子射出型の『オベリスク』が連動動作して星系全体を射程距離に収めています。

 防御戦力は軌道上に駆逐艦が12隻と戦闘機搭載専用の小型母艦が1隻。

 正確な数は判明してませんが、星系内部に索敵用のサテライトが大量に散布されています。

 大気圏内部は大気圏内専用の旧型戦闘機が100機位、後は『ストーンヘンジ』周辺に地上部隊なのです」


 重要施設のある惑星を一つ制圧しているにしては非常に少ない戦力だ。

 いっそ無防備ともいえるな。


「大物除けば大した事ねぇな。

 なぁ、帝国軍の評価はどうなンだ?」


「この星を制圧するのに必要な戦力の予想は地上制圧艦を中心とした2000隻。

 うち60%が『ストーンヘンジ』による迎撃で喪失されると予想されているのです」


「こんな辺境の星系一つ取り戻すのにそんな大損害を出すには割に合わないか。

 惑星上に固定設置されている対宇宙兵器なら惑星の逆側から接近するとか出来そうなんだが、その辺りはどうなんだ?」


「通常の『オベリスク』なら設置された惑星や衛星を影にして接近する手が使えますが、この『ストーンヘンジ』はその手が使えないのです。

 相互に干渉する高エネルギー粒子をタイミング合わせて複数のオベリスクから撃つ事によって弾道を曲げ、惑星の反対方向も迎撃してくるのです」

 反射衛星とか使うかと思ったが、繊細な技術で弾道を曲げてくるというのは予想外だったな。


「だから防御戦力も少ないのか。

 大抵の艦体なら『ストーンヘンジ』単体で相手ができて、大艦隊相手は制圧されるのを覚悟して相手に徹底的に被害を与えると。

 治安維持隊や役所など市民生活に手を入れないのも上手い手だ。

 これが圧政を敷いたり市民に被害を出したりしていれば、帝国は被害覚悟で面子をかけて奪還するだろうが、税率を上げるどころか住民感情を抑える為に減税までしているというのだからな」

 そうなんだ。帝国の腰が重いもう一つの理由は、反乱軍が制圧して市民生活が苦しくなるどころか楽になっている。

 生活に密接する場所の減税をしているし、役所や治安維持隊はサボタージュなどされないように給料を上げてすらいる。

 人気取りに汚職の摘発も熱心に行うし、それらに掛かる費用な反乱軍が自腹を切っているんだ。


「そうなのです。

 アドラム帝国としても無理に奪還しようとして大きな被害を出すよりも、反乱軍が財源的な問題で星系の維持ができなくなった所へ「解放軍」として乗り込むか、ある程度反乱軍に任せておいて、育った所で回収したするのを狙っているのです」


「『ストーンヘンジ』の戦力はどんなものなんだ?」


「はいはい、そっちの説明は私がするのですよぅ!」

 居眠りしかけていたのが、メカ的な話題になった途端に元気になったリゼルが手を振る。


「リゼル、任せる」


「いえす、まいますたー。

 ここの『ストーンヘンジ』は単体性能としては非常に優れているのです。

 発射させる高エネルギー粒子の威力は戦艦の主砲クラス。

 確かに強力だけど、威力やエネルギー量的にはそう珍しいクラスじゃありません。けど、射程距離と継続稼動能力が飛びぬけているのですよぅ!」


「詳しく説明してくれ」


「普通の戦闘は光学機器で直接相手が見える位の距離でやりあうけど、ここの『ストーンヘンジ』は星系内全域に届くし、その射程距離を生かせる照準装置がセットになっています。

 そして一番の目玉は継続稼動能力。

 戦艦主砲クラスの高エネルギー粒子弾を小型レーザー機銃みたいに連射してくるのです。

 戦艦の主砲クラスの威力なら、戦艦を持ってくれば防げるけど、それを凄い勢いで正確に連射してくるのは、今の技術じゃちょーっと真似できないし対抗も難しいのですよぅ!」


魔王軍うちで力押しするのは論外だというのは良く分かった。

 弱点はないのか?」

 ファンタジー的な魔法防御を重ねればアルビオンの艦首砲にも耐えられるワイバーンだが、戦艦主砲クラスの攻撃をされ続けたら無事で済むとは思えない。


「弱点というか構造的にどうしてもフォローしきれない部分がありますよぅ。

 まず『ストーンヘンジ』自体は破壊が困難な耐久度だけど、それを制御する施設は後から作られたものだから、周辺の制御施設がねらい目です。

 制御施設が弱点になるのは分かっているらしくて、展開範囲こそ狭いものの要塞レベルの高出力シールドと地上部隊で守られているのですよぅ」


「難攻不落の要塞も良い所だな。

 この施設を奪取した反乱軍はどうやって奪ったんだ?」


「百人単位で工作員を惑星に潜入させて、何世代もかけて地域住民になって施設職員として雇用されて、中で反乱を起こして制圧したらしいですよぅ」


「手間も時間もかかるが要塞を落す方法としては正攻法だな。

 流石に魔王軍うちで真似はしたくないな」

 難攻不落の要塞攻略に数十年、下手したら百年越えの手間隙をかけるのは楽しそうだが、盆栽じみたその手の気長な趣味は老後にでもとっておきたい。


「次に射程距離は非常に長いし精密射撃もできるけど、その分近くのものを狙って撃つのは苦手ですね。

 大気圏突入中の揚陸艦や駆逐艦位なら狙えるみたいだけど、衛星軌道より内側を高速移動する戦闘機とかの小型物体を狙って撃つのは無理そうです。

 やれないとは言わないけど、外して流れ弾が地上に落ちたら惑星環境への被害が凄い事になるのですよぅ」


「……つまり惑星の迎撃部隊を突破して、地上部隊に対抗しながら高出力シールドに守られた制御施設を破壊できる戦闘機サイズの戦力があって、さらにその戦力を衛星軌道近くまで運べれば何とかなるんだな」

 魔王軍うちにはその手の作戦にうってつけの玩具もあれば、探知をぐぐりぬけて接近する技術まほうもあるじゃないか。


「リゼル、ワイバーンに『ローゼンガルデン型』を2機乗せた上で、人型戦闘機をどの位搭載できる?」


「うーん『グリューン』は格納庫に入るとして、前部主砲を片方外してもう一機。

 突入ポッド射出機を人型戦闘機射出用に切り替えて『シュヴェルトイェーガー』タイプを6機が限界ですよぅ」


「合計8機か、少数精鋭になるな。

 リョウ、魔法を使える人型戦闘機パイロットの中から精鋭6名を選出しておいてくれ」


「おうよ、人型戦闘機乗りの中でも腕利きの上に魔法も使えるっつーと、元隠者の英知の連中と魔獣の中から選ぶ事になンな」


「おにーさん、もしかして―――」

 ミーゼの言葉に頷いて返す。


「ああ。人型戦闘機による軌道降下作戦をやるぞ」



 浪漫だろう?と笑みを浮かべる。

 余程俺が楽しそうな表情をしていたのだろう。

 ミーゼは呆れと諦観と僅かな期待が混ざった、なんとも言えない表情をしていた。






「社長、俺は絶対についていくぞ!こんな美味しい画を逃したら一生後悔するぜ!」

 こんな”おいしい”シチュエーションにジャンがカメラマン魂を燃やすのは分かっていた。


「良いのか、相方がアレだが」

 指差した先には、コタツに頭からもぐりこんだジャンの相方―――レポーターのナナフェルの姿。


「危なすぎるって私の勘が言ってるの、行きたくない、いーやー!」


「危ないのは今更だろう、てめぇのとりえはヤバいところでも仕事できる所じゃねぇか、顔ばかりの小娘に主役奪われたくなかったら覚悟きめやがれ!」


「いやー!危ないのも嫌だけど、また年下の顔だけぶりっこにでかい顔されるのもいやー!!」

 コタツから飛び出ているナナフェルの両足を持って引き抜きにかかるジャン。



 ジャンとナナフェルのコントじみたやり取りに、会議室に笑いが広がっていく。

 なんともしまらないオチがついたが、これもまた魔王軍うちらしいな。





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