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47話:魔王、機械人形の夢を見る

2話同時投稿です。話数にご注意下さい。


S×F成分及びメカ・ロボット成分多めでお送りしています。



 さて。唐突だが、俺は随分と魔王軍の運営を頑張ってきた。


 仕事を頑張ってきた目的は魔王軍自体を大きくする事じゃない、俺の浪漫を実現させるIC(資金)と人脈コネを作る事だ。

 綺麗なお姉さん達と遊ぶ資金を得る為でもないぞ?

 少しも考えてなかったかと聞かれれば黙るしかないが。


 民間軍事企業『魔王軍』第二艦隊も順調に動き始め、アドラム帝国とフィールヘイト宗教国の辺境部では『魔王軍』の名は海賊達にとっての死神の代名詞にもなってきている。

 最近に至っては所属を告げただけで海賊達が「降伏するから命だけは助けて欲しい」と無条件降伏してくる事もある位だ。


 総合商社『魔王軍・兵站課』はますます規模を拡大して、売り上げも黒字も眩暈を覚えるレベルになってきている。



 つまりだ、そろそろ俺の浪漫を1つ2つ実現しても良いだろう!



 悪としての浪漫を叶えるのは司法関係へ太い人脈コネがもう少し増えるまでは魔法少女の敵役に海賊ギルドの裏の支配者、たまにある悪役として振舞えるイベントで満足しておくとして。



 まずは折角のSF世界なんだ。宇宙戦艦に戦闘機に無人戦闘機に装甲服まで揃っているなら人型戦闘機を作っても良いじゃないか!



 ああ、浪漫云々を横にどけると非合理的だろうという意見は良く判る。

 良くわかるし合理的じゃないのは俺も重々承知している。


 だからこそだ、非合理的だと言われてる人型戦闘機が活躍したら、それはもう爽快だし浪漫だろう?



―――



「予算が確保できたのは良いけど、この所研究が難航しちゃってるのですよぅ」


 最近は俺の年頃なら誰でも一度は思いつく、精神感応兵器を頑張って作っていた。

 というか随分昔に似たような兵器はあったんだ。

 再現してみて、自分の思考誘導で機動レーザー砲台が移動・攻撃するのは楽しかった。

 楽しかったんだが「無人戦闘機ドローンを放出して自動戦闘させた方が強いのです。それに移動砲台に頼るなら人型戦闘機はいらないのです」と、実験風景をたまたま見ていたミーゼに指摘されて暗礁に乗り上げてしまった。


「やりたい事は多いけど、やれない事が多すぎるよ!」

 この方面での理解者2人、リゼルとルーニアも一緒に悩んでいた。



 魔法技術を惜しみなく投入すれば道理も常識も引っ込んで人型戦闘機の夢は簡単に叶うだろう。

 試作機や専用機的なものはそれで良いとしてだ、やはり高性能な試作機や専用機は廉価な量産機があってこそ華があるとは思わないか?



 と言う訳で量産機に悩んでいた。

 目立ちすぎないレベルで魔法技術を投入するのは『海賊団・隠者の英知から遺失技術を回収した』という言い訳が使えるので良いとして、そもそも戦闘で役に立たないといけないし、魔王軍以外―――順当な所でアドラム帝国軍辺りから声がかかる程度の需要が欲しい。

 量産されるからこその量産機だ。

 俺は単純にコストを下げただけの廉価版を量産機として認めたくないからな…!



 更には魔王軍内部から要求が来ていて、それも開発のハードルを上げていた。



 ―――ジャン曰く

「なぁ社長、そろそろ映像に新しいインパクトが欲しいぜ。

 子供向け番組で強襲揚陸艦ワイバーンは、架空のヒーロー『キャプテン・ナイトグローリー』が乗る無敵の船としての地位を確固としたものにしてる。

 けどよ、もっと子供達に分かり易くインパクトのある映像が欲しいんだ。

 ほら、戦闘艦ってのは大きさ位しか子供達には強さが今ひとつ分かり辛いだろ?

 だから何かないか、子供達とついでに大きなお友達をあっと驚かせられるのがさ!」

 オーケー、ならば人型戦闘機だ。

 子供達のヒーローといえばスタイリッシュなロボットだろう!

 無骨で不思議な位頑丈なのも良いが、そっちは俺の趣味の守備範囲外だ。


「デザインも良いやつを頼むぜ、なんせヒーローだしな!」

 任せろ、ダサい人型戦闘機など浪漫の敵だからな!



 ―――ミーゼ曰く

「おにーさん、ドローンゴーストは戦闘機相手ならとても強いけど、シールド出力と火力で押してくる戦闘艦が出てきた時に対処し辛いのです。

 対艦戦闘が得意なタイプで、出来ればミサイルみたいに使い捨てじゃないのが欲しいのです」

 よし分かった、ならば人型戦闘機だ。

 小型機で大型艦との対艦戦闘といえばロボットによる近接戦闘が20世紀後半から21世紀を生きる男の子として常識だろう。


「でも大型化したり局地戦仕様すぎても困るのです。

 輸送艦に乗せられる位の小型か、輸送艦に随伴できる位に航続距離がないと使えません」

 わ、分かった。何とかしようじゃないか。

 輸送艦に乗せられるというと小型のクラス4から5戦闘機サイズ、全長または全翼15mから20m以内かつ機体自体もスリムなもの?

 さ、流石に厳しいかな。人型戦闘機は大型化しやすいんだ。

 航続距離を何とか伸ばしてみよう。



 ―――リゼル母曰く

「ねぇイグサさん、そろそろ「使えるけど量産性がない」感じの遺失技術を1,2個公開するか使った製品を作ってくれないかしら。

 魔王軍が持ってる遺失技術が羨ましいーって色々な所がうるさいのよ。

 使い方が特殊すぎてアドラム帝国うちのくにの正規軍で使い辛かったり、再現が難しい方が長く黙らせられると思うの、お願いできる?」

 よし、ならば人型戦闘機だろう。

 コストと量産性命のアドラム帝国ではさぞかし使い辛い事だろう。


「あ、でも情報局うちの特殊部隊で使えるものだともっと嬉しいわ」

 まあ人型戦闘機なら特殊部隊で運用できなくもないだろう。

 …なぁ、リゼル母。実は俺やリゼルとルーニアがやっていた実験を知った上でのリクエストじゃないか?



 ―――ライム曰く。

「イグサ、そろそろアクトレスだと力不足。

 外を飛びまわれて、出来れば聖剣技が使える機体が欲しい」

 正直ライムの要求が一番辛かった。

 もうそれは剣を装備できる腕を持った人型戦闘機以外じゃ実現できないよな!?


 確かにライムはワイバーンの主砲としての仕事がない時は、戦闘中でも暇そうだったからライムの特性が生かせる機体を作りたかった所だ。


 うん?なら戦闘機に腕だけ生えてればいいじゃないかって?

 そんな美しくないもの、俺は認めないぞ…!


「やっぱり武器も鎧も性能が高い方が伸び代も良い。

 元の能力も期待してる」

 よし、ライムには試作機か専用機を回そう。

 量産機にそこまで求めるのは酷というものだろう?





 さ、さて。SF世界で人型戦闘機が使われてない理由を探してみようか。

 使われてない理由を一つ一つクリアしていけば実現するからな。


「リゼル、人型戦闘機って今は作られていないのか?」


「うーん。汎用性のある人型戦闘機はないけど、局地戦用なら近いのはあるのですよぅ」


「あるのか?どういう代物だ」


「制空権が確立できてない時に、軌道上から惑星上に強行揚陸をかける大気圏降下型大型戦闘服です。

 アドラム帝国近くの国だと、コランダム通商連合とカシワギ軍事同盟の陸戦隊が持ってますよぅ」


「アドラム帝国では使われてないのか?」


「むかーし使っていたみたいだけど……えーと?」


「はいはい社長、私知ってる!今は『惑星上に上陸戦をしかけるなら、宇宙空間の戦闘艦から徹底的な砲撃で迎撃戦力を喪失させる、その後多数の強襲揚陸艦を使っての揚陸と地上攻撃を行い、最終段階として戦車と装甲歩兵隊での制圧を行う』ってのに統一されてるよ!」


「良く知っていたなルーニア」


「頑張って勉強してるからね、イグ……社長、私役に立てたかな?」


「ああ偉いぞ」


「えへー…」

 しっかりもののルーニアだが、良く出来たと撫でてやると、にへらと実に緩んだ顔になるが、これはこれで悪くない。


「むむぅ……出番を取られました」




「アドラム帝国は戦車が主役か、大型装甲服や人型戦闘機を使わない理由は何だ?」


「コストが安いの一言です。

 アドラム帝国の基本戦略は「数は力」だから汎用性が高くてもコストが高いのより、コストが安くて大量配備できるのをどう上手く使うか、戦術もそっち方向に進歩しているのですよぅ」


「コスト面は戦車と比べられると辛いな。

 コランダム通商連合とカシワギ軍事同盟が大型戦闘服を採用している理由は何だ?」


「コランダム通商連合は主要種族が水棲型だから、惑星も海洋惑星が多いんです。

 空は大気圏突入能力を持った戦闘艦、大気圏内外両用の戦闘機で誤魔化せるから良いけど、海上、海中、海底と色々な場所が戦場になるんです。

 全部に対応する海上艦、海中艦、海底戦車とか揃える位なら、汎用性のある人型や人型に近い大型戦闘服、コランダム通商連合に限っては「水上/水中環境適応汎用大型戦闘服」で統一した方が安上がりなんですよぅ」

 水中適応型の人型機とか素晴らしいが……ここでもコストか。

 しかもそのタイプだと、コランダム通商連合の惑星環境以外で使い道がないな。


「カシワギ軍事同盟はどうなんだ?」

 段々切なくなってきたが仕方ないだろう。


「あそこは不思議な国なんです、何故か宇宙軍と陸軍に分かれてて、しかもお互いの仲がすっごい悪いのが伝統なんですよぅ。

 陸軍は専用の輸送艦を持ってるし「宇宙軍に頼り切った戦闘する位なら、敵の砲火の中に飛び込むのが名誉である」って非合理的な事をしてるから、軌道上から降下しながら戦闘ができて、陸戦でも使える大型装甲服を採用しています」

 SF世界が合理主義の国ばかりじゃない事に安心した俺がいる。

 とは言え―――


「その戦い方では被害が相当に出ないか?」


「普通なら、すっごい出ますよぅ。

 けどそういう戦い方をする人をカシワギ軍事同盟じゃ「特課降下猟兵」って、アドラム帝国の帝国近衛艦隊並のエリート兵士で固めて、被害を最小限に抑えているんです」


「他に似たような戦い方をする国は?」


「他の国の人はそんな戦い方するなら、最初から無理しなきゃいいのにってみんな思ってますよぅ」


「………特殊すぎて参考にならないな」



―――



「なら逆に考えてみようよ、社長はどんなものを作りたいの?」

 建設的な意見だな―――よし、浪漫を語ろうじゃないか


「そうだな、まずは機動性は外せない」


「速さを求めるならどこかの国の戦闘機に似た形状になるし、人型で戦闘機並の機動性を確保しようとしたら、リアクターや推進器が大型化して歪な形状になるのですよぅ」


「メインは対艦戦だ。

 遠くから打ち合うなら戦闘艦で出来る、なら接近しての近接戦または白兵戦を主力にしたい」


「イグサ様も知ってると思うけど、リアクターからのエネルギー変換効率は近接用レーザー砲が一番高くて、遠距離攻撃用になるほど効率が落ちるから、接近したら大火力で蜂の巣になるのですよぅ」

 リゼルの正論が耳に痛い。


「え…えっと、シールドで防御すれば良いんじゃないかな!」

 ナイスフォローだ、ルーニア!


「シールド同士は干渉し合うから、自分より大型の艦に接近したら弱い方―――人型戦闘機のシールドが一瞬で剥げるし、最悪シールドジェネレーターが吹き飛ぶのですよぅ」

 流石に申し訳なさそうに言うリゼルだが、メカニックとして気休めや嘘は言えないんだろう。


「な、なら瞬間火力で勝負してはどうだ。

 攻撃はある程度装甲で防ぐとして、手持ちのエネルギーブレードなら戦闘艦の装甲を切り裂けるだろう!」


「……多くの戦闘艦のシールドは、物理干渉の阻止よりエネルギー中和が得意なんですよぅ」

 ……ああ、つまり戦闘艦のシールド効果範囲じゃエネルギーブレードの類は中和されてそもそも使えないのか。


「待て、対艦ミサイルの多くは対シールド能力を持っているだろう。

 後、対シールド貫通能力を持った実弾兵器もあるよな、あれはどんな原理なんだ?」

 原理とかは余り気にした事がなかった。

 SF世界の大多数の住人もそうだが、便利なものに関しては「どういう効果があるのかが分かって、かつ使えれば良い」というスタイルだったしな。


「対艦ミサイルも実弾兵器も原理は同じです。

 エネルギーキューブ還元炉みたいな、消費型の高エネルギー源を使ってシールドの物理干渉を部分的に中和、突破して運動エネルギーや化学反応エネルギーでシールド内部から敵艦に攻撃するのですよぅ」


「あ、なら同じ仕組みが入ってる実体剣ならダメージが入るよ!」

 ルーニアのフォローがありがたいが、涙目のリゼルを見れば答えは判る。


「……ああ、つまりこう言われる訳だな。

 「ならミサイルで攻撃した方が危険が少なくコストに見合った効果を発揮するではないか」って」


「いえす、まいますたー」



「「「…………」」」

 リゼルが頷いて思わず3人で黙ってしまった。

 人型戦闘機は効率が悪くて難点が多いとは思っていたが、ここまでハードルが高いとはな。

 最大の敵はコストと効率の二大巨頭。浪漫の敵はいつも貴様らか…!




「よし、量産機にもある程度の遺失技術を投入をしよう。

 解析できないからこその遺失技術だ、魔王軍うちで量産する分には多少使っても大丈夫だろう」

 この際開き直りが必要だな。

 コストや効率なんて現実は御伽噺ファンタジーで吹き飛ばせばいいのだろう!?



「まず、最大の難関は敵艦のシールドか」


「はい、シールドの突破方法があればぐぐーっとハードルが低くなりますよぅ」


「……実験が必要だな。

 リゼル、小型のシールドジェネレーターと装甲材、後は高エネルギー系の…プラズマ化半実体系のエネルギーブレード発信器を準備してくれ。

 確か一番無効化されやすいが、あれが一番エネルギー効率も威力もあるんだったよな?」


「一番無効化しやすいから、戦闘艦の装甲材も対策してないのが多いんです。

 すぐに準備してきますよぅ!」


「社長、遺失技術なんて使って大丈夫?

 遺失技術を持っていたから情報局に狙われるとか怖いよ……」

 気弱げな言葉を漏らすルーニアだが、アドラム帝国のAI関係を除いた遺失技術好きは帝国臣民が一番良く知っている。

 一般向けのサスペンスドラマなどでも遺失技術がらみの陰謀話には事欠かないからな。


「大丈夫だ、少なくともアドラム帝国に製品を売っているうちは守ってくれるさ。

 情報局の人間には色々と知り合いも多いからな」

 この人型戦闘機の作成、リゼル母の注文も受けているしな。

 この前前リゼル母(元局長)の紹介で、情報局の現局長と会う機会もあった。


「情報局の局長もなかなか可愛い子だったぞ?

 まあ食えない性格しているのだろうけどさ」

 なかなかイイ性格をした子だろうが、百戦錬磨すぎるリゼル母と比べると可愛らしいという感想しか出てこない。

 割と浪漫を解する少女だったせいか、意気投合して明け方まで飲み屋で一緒にいたしな。


「やだ、やーだー、聞きたくない、聞きたくないよ。

 そんな修羅の巣窟みたいな所の情報とか知りたくないよ!?」

 耳を手で塞いで小さくなるルーニア。

 獣系だけに押さえる位置が頭の上だったりして可愛いじゃないか。

 まあ、現代風に例えると米の国の中央情報局の上層部事情なんて、知りたいものじゃないか。




「イグサ様、お待たせしました。

 シールドジェネレーターと戦闘艦に使う装甲材。

 それとこれが装甲歩兵用の半実体エネルギーブレード発信器ですよぅ」


 さて、今の主流のシールドはエネルギー中和と物理干渉の両方が出来るという。

 プラズマ化半実体エネルギーブレードは魔法的に言えば、炎、光及び物理の複合属性だ。

 各属性強化をして出力で押し切る方法が一番簡単なのだが、炎、光、物理属性の3つを強化する魔法を付与するのは難しい。

 正確にいえば魔法として付与するのは簡単なんだが、3つの強化魔法を並列発動させる遺失技術品として作った場合、3つの魔法を魔力の代わりに科学的なエネルギーで代用して行使するのは、戦闘機に比べて大型化しているせいで多少余裕があるとはいえ、人型戦闘機のリアクターでは無理がある。


 つまり、シールドを無効化させるのが一番手っ取り早い。


『概念魔法発動―――属性変動Ⅱ』


 魔法としては初級も良い所の魔法だ。

 例えば氷魔法に特化した魔法使いが、同じ氷魔法に特化した魔法使いに遭遇したとしよう。

 お互いに氷魔法は打ち消しあうし、氷系の耐性魔法も豊富にあるので勝負がつかない。

 そこで使うのがこの魔法、対象と属性をずらす魔法だ。


 戦闘艦や戦闘機に使われてるシールドはエネルギー中和、物理干渉への防御。

 ファンタジー的に言えば光属性・炎属性・物理属性防御だ。


「よっ、と!」

 属性変化魔法をかけた半実体エネルギーブレードが、シールドジェネレーター効果範囲内にあった装甲材を豆腐のように切り裂いた。


 シールドが中和、防御できる光属性・炎属性・物理属性以外の何かの属性になったエネルギーブレードがシールドを貫通するのは当然だよな?



「シールドジェネレーター出力安定。

 装甲板は5層全部貫通してる。社長、良い感じだよ!」


「エネルギーブレードの色が変化したと思ったらシールドをすり抜けました。

 イグサ様はいつも非常識をやってるけど、エネルギー中和フィールドを高エネルギー体がすり抜けるとか、こんなの絶対おかしいのですよぅ!」


「リゼル、いつものように慣れてくれ。

 と言う訳でこれを目玉にしようと思う」


「社長、これってシールドも同じ様にできない?」


「付与する魔法は一緒だから簡単だぞ?

 そうか、シールドにも属性変動の付与をすれば、相手のシールド効果範囲内で自分もシールド維持が出来て防御力も上がるな」


「基礎科学が否定されていくのですよぅ……」

 めそめそと泣き始めたリゼル。

 リゼルは自分の守備範囲に非常識ファンタジーを持ち込まれるのに弱いようだ。


「でも社長、これどういう言い訳で売ろうか?」


「言い訳が必要なのか?」


「うん、だって製品にするなら「わけが分からない技術できてます」って言うより「こんな技術です」ってキャッチコピーがあった方が良いよ。

 ほら、夕飯の買い物する時だって天然ものの魚だけど、どこの星で取れたか分からないものより、汎用オーガニックマテリアルで特別に作った魚ですって方が買いやすいよね?」


「少々例えが身近すぎる気もするが、正論だな。

 そうだな、属性の変化をしているのだから―――

 偏向ベクトルエネルギーソードに、異相周波シールドジェネレーターなんて売りならそれっぽくないか?」


「何かそれっぽいよ!」


「研究用に買った人が解体ばらして頭抱える未来が透けてみえるのですよぅ…」


「簡単に技術を取られてしまうより良いじゃないか」


「そうだけど、解体してもヒントも何もないのは同業者としてちょっと可哀相なんですよぅ!」


「ヒントが得れなくてまた買ってくれるから、2重に売れて売り手としては助かるな」


「鬼がいますよぅ…」

 鬼じゃなくて魔王だぞ。


「さて、装甲にも少し手を加えるか。

 刻印魔法で、法理魔法系の低位・耐熱防御辺りを装甲内に刻んでみよう。

 属性防御と違って熱全般に強くなるから、エネルギー兵器の大半に防御性能が付くな。

 リゼル、早速試験機を組上げるぞ。人手を集めてくれ」


「はいですよぅ。

 もう私知らない、知らないったら知らない、メカニックの良心とかゴミ箱にぽいです!解体ばらした人が泣いちゃうようなもの作りますもんね!」

 良い開き直りだ、心強い。



―――



 一度方針に基礎設計が出来てしまえば後は順調なものだ。

 その日の夕方には、試作型人型戦闘機[DLA-HT-01T プロトイェーガー]計画がスタートして開発用の人員が集まり、次の日には作成に入っていた。




「イグサ様、遺失技術の属性変動刻印?を入れるのはリアクター部分で良いですか?」


「そうだな、機体から外せない部位が良い。

 リアクターはうちで新型を作ろう、旧式のリアクター設計のライセンス契約を取ってくるか。

 リゼル、どこかリクエストはあるか?」


「はいはい、勿論あります。

 ユニオネス王国の王立工廠、1世代前の「リンダー・ベル」シリーズのリアクターが設計の完成度が高い上に改造しやすくてすっごく良いのですよぅ!

 ちょっと大型化しすぎて人気はなかったけど、人型戦闘機なら容量に余裕があるから乗せても問題ないのです!」


「分かった、夕方までにはライセンス契約の締結と設計図の取り寄せをしておく」




「イグサ様、耐熱用の刻印を刻んだんだけど、試験してもあんまり耐熱能力が上がってないのですよぅ」


「ああ、あっちは恒常発動形だから少し面倒なんだ。

 正しい手順で刻印を刻んだ上に、エネルギーを一度循環させないと発動しないからな。

 作成手順の……ここだな。

 2-21から25と3-15と18を逆にして、エネルギー循環は……

 出来上がった装甲を一度不安定化エネルギーキューブ炉に突っ込んでみてくれ。

 大雑把にエネルギーが入れば、刻印魔法が発動するだろう」


「手順書の……メモメモですよぅ」

 携帯汎用端末を取り出して素早くメモを取っていくリゼル。

 フリータッチで書かれる文字は意外な位に綺麗なものだ。

 つい忘れがちになるが、リゼルは箱入りのお嬢様でもあったな……いや本当に気をつけないと忘れてしまいそうだが。




「社長、現場で作業してる技師の人達から問い合わせだよ。

 ええと……外部アーマードウィングスラスター?

 外部装甲をつけるのも分かるし、追加の推進器を外部接続するのは分かるけど、一緒にする意味がわからないって言ってるよー!」


「趣味だと答えてやれ!」


「はーい。社長からお返事を頂きました、趣味だそうです………あれ、倒れた音がした。

 もしもし、もしもーし!」




「社長、射撃兵器の搭載はどうします?

 エネルギーブレード一本だけと対応に困る場面が多いと思うのですよぅ」


「そうだな、手持ちに対戦闘機用のリニアニードルガン、肩部に戦闘艦の近接レーザーと同じ規格のレーザー砲を2門、後はミサイルポッドの増設ハッチを付ける位か。

 他にもあれこれ付けたいが、リアクターや積載量的には余裕はまだあるか?」


「もう無いのですよぅ。

 戦闘機並の機動性と対艦近接戦闘を行える防御性能って時点で結構厳しいんです」




「無理!絶対むりー!

 こんな特殊形状の人型兵器を、戦闘機と同じ規格の操作に会わせるとか無理なのですよぅ!」

 投影ウィンドウに人型戦闘機の稼動用プログラムを開いて調整していたリゼルが泣き声を上げている。


「昨日飲み屋で共通規格と機種転換訓練の容易さの重要性を語っていたのはリゼルだろう、いいからやれ、多少の無理は前に作った精神感応操作を併用させて誤魔化せ!」




「社長、テスパイロットの人達から近くに同型機がいると、お互いの考えてる事がぼんやりわかるって報告が上がってきてるよ」


「操作系に精神感応装置を混ぜた影響が出たか、それ以上の害はないから安心しろと伝えてやれ」


「うん、なんかね。お互いこっそり好きだったのが分かって、その人達結婚しちゃったよ」


「会社名義で祝儀を送るか」


「でもね、その人達女の子同士だったんだ」

 SF世界では科学技術にものを言わせて同性同士でも子供も作れるものの、実際に結婚するのは少数派止まりのようだが、その少数派の嗜好の持ち主同士だったらしい。


「………勿体無い事をしたな。

 テストパイロット達の資料をくれ、場合によっては後日訪問しに行く」


「社長、何の為に訪問しに行くの?行くのかな?」


「………」

 まあ……その、なんだ。面談にな?


「黙っていたら分からないよ、社長ちゃんと言おうね、

 オイタはいけないと思うんだよ!」


「仕方ないな、見た目と性格次第でオイタをしようと思うんだが」


「正直に言えば良いという訳じゃないよ!?」




「ふう、やっと一通り組みあがったのです。

 後は量産用の部品設計書を書き上げれば完成なのですよぅ!

 久々にベットで眠れそうなのです!」


「リゼル、一仕事終わった所でこれも頼む」


「はいますたー、えーと…「DLC-HT-01専用機計画」?

 なるほど、量産性のいいのとは別にエースパイロット用に性能のいい機体を作るんですね。

 あれ?基礎設計は同じだけど全長35mって大きさからして違うし、何でリアクターが双発になってるんですか、もう別機体ですよう?

 あれ、イグサ様どこ行きました、イグサ様ー!?」




「量産型の1号機がロールアウトか、感慨深いな」

 工房から搬出された量産型人型戦闘機[DLC-HT-01 シュヴェルトイェーガー]を見上げる。

 流線型をしているが、スリムというよりはゴツさを感じるマッシヴなスタイル。

 リビングアーマーのデザインを参考にさせたので、巨大な甲冑のような外見がいかにも頼もしい。

 高速機動時には翼のように展開し、通常時は肩から胴体の追加装甲になっている一対のアーマードウィングスラスターは入魂の一品だ。

 全長は25mになり、リアクター出力からも、分類上はクラス3戦闘機になっているが、コストと効率ばかりが横行するSF世界に産声を上げた汎用人型戦闘機だ。



 ワイバーンのような艦船とは違ったロマンの塊だな。

 いや実に美しい。


 とは言え、俺の趣味だけで終わらせてしまっては勿体無い。



「ルーニア、アドラム帝国の情報局に仕様を流しておいたが、注文は入っているか?」


「うん、アドラム帝国の軍部ばっかりだけど。

 第3、4、5艦隊の陸戦隊から各50機、数からして試験導入かな?

 後は兵器開発局から20機と情報局からも120機注文が来てるよ」


 新型戦闘機としては少ないが、新しいジャンルの品としては十分な滑り出しだろう。

 新興の民間軍事企業が独自開発した新型機と、市場評価すら定まらないものとしては異例の売り上げと言ってもいい。


「売れ行きは好調だな。

 最初の注文は3ヶ月以内に納入したいと工房に連絡を頼む。

 その後は月間生産数は20機、年間生産数240機と制限をつけてくれ。

 遺失技術を組み込むのに手間がかかると言えば、どこからも文句は付かないだろう」


「社長いいの?

 開発にかなり予算使ったから、どんどん売らないと元が取れないと思うけど」


「このクラスの遺失技術なら簡単に再現できると、宣伝したら後が面倒だからな」

 それに宇宙戦の主役が戦闘艦に戦闘機だからこそ、少数の人型戦闘機が映えるというもの。

 人型戦闘機での戦闘が主流になったのも悪くないんだが、生憎俺の趣味じゃない。


「そっか、産業スパイとかに気をつけないといけないのは嫌だよね」


「……所で、リゼルはどうした?

 完成記念に3人で打ち上げに行く予定だったと思うんだが」


「社長が一週間前に突然持ち込んだ、兵装交換によるバリエーション化の設計と部品の生産をずっと続けていて、さっき工房の隅で寝てたよ」

 リゼルには悪い事をしたな。

 近接戦用以外にも突入兵員隊輸送型や大気圏降下型などのリクエストがリゼル母から来たのだから仕方ない。

 情報局が一番機体購入をしてくれている上得意だし、何より兵装換装による仕様用途の変化なんて人型兵器の浪漫だから仕方ない。

 尊い犠牲だったな……いや死んではいないが。




『うん、良い感じ。

 動きやすいし、アクトレスより細かい機動がしやすいよ』

 一時的に管制室代わりに使われているワイバーンのブリッジ。

 ブリッジの各所には所狭しと様々なデーターが流れるように表示される投影画像が立ち並び、技師達がチェックする中。

 メインの投影画像には宇宙空間を青い光のラインを描いて疾走するライムの機体[DLC-HT-02 ローゼンリッター]が映し出されていた。


「しかし思ったより簡単に組みあがったな」

 まだ量産型人型戦闘機[DLC-HT-01 シュヴェルトイェーガー]のロールアウトから一ヶ月も経っていない。


「サイズは大きいし少し機構は複雑になったけど、基本設計は一緒だから楽だったのですよぅ」


「うん、一度作ってしまえば部品の流用も出来るのは便利だよ」


 量産機のシュヴェルトイェーガーと高コスト機のローゼンリッターは後者の全長が10mほど大きいのもあるし、全長が大きくなった分容量に余裕が出来てマッシヴなスタイルだったシュヴェルトイェーガーに比べてスリムになっている。

 リアクターを双発にして出力が上がっているのもあるが、何と言っても大型化した追加装甲兼推進器翼アーマードウィングスラスターが8枚4対に増えて、最大加速中は花弁のように展開した姿が美しい。


 実用性?エース専用機にそんなものを求めてはいけない。

 追加装甲にシールドジェネレーター増やして防御力を更に上昇、機動性を上げて白兵戦はやりやすくなっているし、増えたシールド容量にものを言わせて素のままで大気圏降下まで出来るなどオプションも増えてる。

 増えているんだが、いかんせん値段が量産機の8倍から10倍と素敵な価格になっている。


「ライム、余り慣れないうちに戻ってこい。

 ライムの専用機はもう少し性能上げたじゃじゃ馬になるからな」


『ん。分かった。もう一回りしてから戻る』

 気に入ってくれたようだな。


「イグサ様、これ以上の改造はお値段的にも機体的にも無理だと思うのですよぅ」


「安心しろリゼル、これ以上機械的な改造はしないさ。

 俺とライムの専用機作るから2台準備してくれ。

 ライムの分は今と同じ方向性のものをフルオプションで、俺の分は白兵装備を少なくして射撃装備を充実させた砲撃戦仕様で頼む。


 身内の分なら手加減なしに遺失技術をブチ込んでも、どこからも文句は出ないだろう?」


「社長が凄い良い笑顔してるよー。

 でも楽しそうだから良いか、いいよね、いいんだよ私っ…!」

 自分に必死に言い聞かせてるルーニアが愛らしくて仕方ないな




「装甲材から手を入れるんですか?

 この前の刻印技術で十分すぎると思うのですよぅ」


『付与魔法発動:魔法付与Ⅸ・対象魔法増加Ⅲ/概念魔法:対炎属性/対光属性/対物理属性Ⅸ』

『付与魔法発動:魔法属性付与Ⅷ』


「こんな所だな、耐久試験にかけてみてくれ」


「はいですよぅ。うう、嫌な予感しかしないのですよぅ」


「リゼルさんも泣いてないで早くやろうよ、レーザー照射開始。

 順次出力上昇……えーと、最大出力になったけど表面がちょっと焦げたかな?」


「嫌な予感が当たりました。

 戦艦レベルのレーザーを受け止めて平気な装甲とかおかしいのですよぅ!」


「アルビオンクラスの主砲相手になると少々心もとないと思うんだが」


「社長、流石にそれは私だって比較対象がおかしいって分かるよ!?」




「イグサ様、ご注文通り外装部分と内部機構はまだ組上げないで用意したのですよぅ」


「助かる、後から一緒にするんだが、今は分れていた方が都合が良いんだ」


『死霊魔術発動―――』


「あれ社長、今動かなかった?」


「ほへ、まだリアクターに火も入れてないですよぅ?」


「外装部分をリビングアーマーにして、内装部分は傀儡くぐつ人形と両方魔物化したからな、自分の意思で動けるぞ?」


 鑑定魔法の結果は―――と。『魔王の鎧lv246』と『魔王の傀儡lv228』か、レベルが高い無機系の魔物は魔王って名称が付きやすいんだろうか。


「リゼル、もう組上げて良いぞ。

 お前達、完成品にして貰うのだからじっとしていろよ?」


『『イエス・ダークロード。この身は御身の為に』』


「まだエネルギーすら入れてない機械が喋るとかファンタジーすぎるのですよぅ!

 うう、無機物のはずの内部機構が人肌位にほんのり暖かいのです」


「私技師じゃなくて良かったよ…」




「イグサ様、武装はどうします?

 リアクター出力が3桁上がってるし、推進器も不思議な出力になってるから戦艦用の砲を手に持って使う位はできそうなんですよぅ」


「それは目立ちすぎるな。

 ライムの機体は出力に余裕がある位で良い。

 追加装甲部分に実体弾砲を追加、実体剣を持たせてやってくれ。


 俺の機体は追加装甲1枚につき1つ肩部と同じ戦艦規格の近接レーザー砲を、手持ちにこのカタログに載ってる、多相エネルギーライフルをつけて貰えるか?」


「多相エネルギーライフル?

 あ、フィールヘイトで一昔前に流行ったやつですね。

 大型戦闘機用に開発したけど、威力があるもののエネルギー消費が激しすぎてすぐに廃れたのですよぅ。

 なるほど、出力に余裕がありすぎるコレなら連射どころか掃射だってできるのですよぅ!」

 リゼルは魔改造になると急に生き生きとするな。




「イグサ様が自重を忘れると酷い事になるのは分かっていたのですよぅ」


「身内用の機体なら全力で遊んで良いと思わないか?」


「社長、この報告書私上手くかける自信がないよ……」


 ワイバーンのブリッジの投影画像には完成した[DLC-HT-02RS ローゼンガルデン]ライム専用機だからと自重せず魔法技術をつぎ込んだ機体が映っていた。

 近くに漂ってる残骸は旧式の巡洋艦のもの。

 実戦テストに海賊を探しに来たら、運の悪い海賊巡洋艦が丁度『船の墓場星系』の東ジャンプゲートから侵入してくる所だった。


 ライムに好きにしていいぞと言ったら、巡洋艦から飛んでくるエネルギー砲の砲撃をシールドと装甲で受け流したり実体剣で切り裂いたり、ミサイルの類は避けるか内蔵のレーザーで打ち落として接近。

 後はエネルギーブレードと実体剣の二刀流で砲塔の類を切り落とし、丁度今ブリッジがあるだろう艦体中央が勇者の聖剣技によって輪切りにされた所だった。


 たまたまついてきたジャンは良い映像が撮れたと大喜びしているんだが、稼動データーの収集をしていた技師達も絶句して苦笑いすら出ていない。


 こんな星系に海賊巡洋艦の侵入があったのだから、それこそ怪獣が来襲した日本みたいな大騒ぎになるはずなんだが、一般市民に知られることなく撃沈された海賊達の運の無さには正直同情を覚える。


 ……こいつら、何の為に来たんだろうな?





 こうして効率とコストの名の下に駆逐されていた人型戦闘機をSF世界に復活させてみた。


 魔王軍配備型の量産機には知能の高いファントムアーマーを指揮官に、リビングアーマー達をパイロットに乗せる事になった。

 機体ごと魔物化させても良かったんだが、折角の人型戦闘機なのだから誰かが操縦しないと浪漫がないよな?


 リビングアーマー搭載型の機体は『魔王軍・兵站部』の輸送艦隊にも配備され、すぐに対艦戦闘で良い戦果を上げ始めた。

 ドローンゴースト達と違って少々コストが高くつくので、配備数を多く出来ないのは難点だけどな。


 幸いな事に帝国軍に出荷した人型戦闘機も帝国軍テストパイロット達に好評で、一部では少数ながら実戦配備もされたという。



 長い目で見れば利益回収できるものの、開発費とかを考えると結構赤字が出てしまった。

 だが、浪漫を満足させる為に貯めていた資金なんだ、たまには浪費も悪くない。



 浪漫を一つ叶えてとても満足だ。



 功労者のリゼルとルーニアに何か褒美は欲しくないか?と聞いたら温泉が出る保養惑星に行きたいと口を揃えて言っていたので、今度連れて行くつもりだ。

 SF世界に温泉文化がまだ残っていたのは驚きだが、風呂好きとしては嬉しくて仕方がない。

 ルーニアはまだしも、リゼルが同行する辺りで風呂をゆっくり楽しめる気がしないが、気にしたら負けだよな……



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 以下はSF色の強いおまけです。

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46、47話に登場した艦船/戦闘機


>>戦闘機・クラス3


・SR-MMF-503 So-fu2 ソーフー2型 (35m×20m)

 カシワギ軍事同盟の2世代前の主力戦闘機。

 当時はコランダム通商連合とカシワギ軍事同盟との戦争が激化し大量生産されたため、現在では中古船市場でよく見かける機体となっている。

 カシワギ軍事同盟製の戦闘機が持つ特徴通り、宇宙及び大気圏内飛行能力を持つ。

 本来は単独での大気圏突入/離脱能力を兼ね備える予定だったが、大量生産化に伴いその機能はオミットされている。

 旧型ではあるが、防御力と速力に優れた機体なので民間機に転用される事も多い機体である。

 太古の大気圏内戦闘機に似た、機能美に富んだ形状は現在も愛好者が絶えない。




・DLA-CF-503SOFU-R ブリーゼウィンド (37m×20m)

 カシワギ軍事同盟の2世代前主力戦闘機、ソーフー2型をアドラム帝国の民間企業が改修したもの。

 追加武装を外され、ドローンを3機運搬するドローン母機という特殊な用途に使われている。

 また、リアクターや推進器、シールドジェネレイターも更新され堅実な防御力と機動性を兼ね備えている。

 星間航路の警備と海賊対策に従事し着実な結果を残している。



・DLA-HT-01 シュヴェルトイェーガー (25m×12m)

 アドラム帝国の民間軍事企業『魔王軍』が独自開発した汎用人型戦闘機。

 リアクター出力からクラス3戦闘機に分類されているが、操作系に精神感応操作を併用するなど特殊すぎる機体となっている。

 最大の特徴は遺失技術が武装に使われている点と機体の運用目的が明確な点だろう。

 他のシールドと干渉しない異相周波シールドジェネレーターと、シールド範囲内でも使用できる偏向ベクトルエネルギーソードを持ち、戦闘艦に接近し白兵戦を基本方針として設計されている。

 現在は帝国軍にのみ販売されているので一般普及はしていないが、既に帝国艦隊の一部では実戦配備が始まっている。

 また簡単に武装を換装できるようになっており、デフォルトの接近戦仕様のA型、砲撃戦仕様のB型、陸戦隊を敵艦へ突入させる強行揚陸艦としてのC型、大気圏突入降下用のD型、未確認ではあるが自動戦闘機化されたM型などバリエーションも豊かである。

 翼のような外部大型推進器を持つ事から、アドラム帝国の敵対国では「偽天使」など早くも渾名がついている。

 古代の甲冑を彷彿させるデザインは威圧感があるが、一部の好事家達は熱狂している。




>クラス2・戦闘機


・DLC-HT-02 ローゼンリッター (35m×20m)

 アドラム帝国の民間軍事企業『魔王軍』が独自開発した汎用人型戦闘機。

 [DLA-HT-01シュヴェルトイェーガー]が量産性に重点を置いた機体であるのに対して、こちらは高コストかつ高性能な機体になっている。

 機体は大型化しているが2枚から8枚に増えた外部装甲兼推進器により、機動性は落ちるどころかむしろ向上し、シールドジェネレーターと装甲の増加により防御力も格段に上がっている。

 反面、攻撃性能はシュヴェルトイェーガーと大差ない。

 貴重なエースパイロットの為にある機体と言っても過言ではないだろう。

 この機体も兵装の換装によりバリエーションが分れる。

 シュヴェルトイェーガーよりもスリムな形状をしているが、それでも普通の戦闘機と比べると武骨な印象を受けるデザインである。



・DLC-HT-02RS ローゼンガルデン (35m×20m)

 アドラム帝国の民間軍事企業『魔王軍』が独自開発した汎用人型戦闘機。

 [DLC-HT-02 ローゼンリッター]のバリエーションであるが、元々ハイエンド品である機体をさらに高コスト・高性能化させている。

 機体の現存数が少なく情報が限られているが、部品品質を上げたものだと推測されている。

 単独で巡洋艦を圧倒したとか、高度AIが搭載されていて無人でも自立戦闘ができるなどという荒唐無稽な噂まであるが、常識的にありえない。

 戦闘試験で巡洋艦サイズの標的艦を沈めた程度だと思われる。

 



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