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13話:魔王、軍備を整える

ご要望が多かった、リゼル視点のおまけを最後の方に追加しました。



 実は宇宙海賊をやってみようかと真剣に考えてみた事もあるんだ。



 宇宙海賊という言葉自体、格好いいじゃないか。

 そうは思わないか?


 俺が思う宇宙海賊を構成する要素は3つ。

 実益、浪漫、悪の美学。

 偏った意見かもしれない。

 違うと言うなら聞かせてくれ。

 悪役に関する討論なら一晩中語り合える自信がある。



 実際に海賊をやるかどうか。

 あの交易ステーションで情報を集めてみたんだよな。


 幸い、交易ステーションには宇宙を股にかける商人達が集まる。

 当然、商人達は自分達を襲う海賊の情報を持ってるって訳だ。


 もし海賊になるなら参考になるだろう。

 宇宙海賊共の情報は値が張ったが、手に入れて検討した。




 先に結論を言おう、あいつら駄目だ。






 まず美学がない。

 海賊は基本、たまたま無防備か圧倒的な戦力差のある輸送船しか狙わない。

 手負いだったり単独なら戦闘艦を襲うこともあるらしいが、イレギュラーだろう。

 その上、襲った後も伝統を通り過ぎて古典的だ。

 荷物を奪って、乗員を殺して、乗員でも女は(時には男も)さらってなぶって、それで終わりだ。

 たまに誘拐もやるそうだが。

 やる事成す事、余りにも悪として小物過ぎる。

 いつの時代の海賊だよ!と言ってやりたい。

 やつらのボスは眼帯して片腕が義手で、サーベルでも腰に刺しているんじゃないか。

 肩にオウムを乗せるのも忘れていないだろう。

 まだ幼稚園バスをジャックする悪の秘密結社の方が悪の美学を判っているよな……



 次にまとまりや浪漫がない。

 海賊同士は多少の交流があるようだが、基本ボスが一匹いて部下を率いている。

 禁酒法時代のマフィア的な大組織があれば、それを乗っ取ってもいいかと思ったんだが、大組織は基本的にどっかの国の軍、艦隊が来て潰される事が多いそうだ。

 大きな組織を維持するほど海賊もすれば国も動くか。

 乱獲は良くないな。

 そのせいか、本当に極一部の海賊を除いては規模が小さい。

 そして軍の艦隊が来ると、海賊共は蜘蛛の子を散らすようにただ逃げ散る。

 怖い鬼(艦隊)がいなくなったら戻って来て、何事もなかったように海賊をやる。

 宇宙海賊への憧れが、ガリガリと音を立てて削れて行くのを感じたもんだ。

 政府や軍相手でも、怯まず、媚びず、己の思うがままに反抗する、骨太で豪胆な荒くれ共が集まる海賊ギルドとかを、夢をみていた時期が俺にもありました。





 最後に利益的にもそこまで美味しくない。

 商船を襲って積荷と船を奪えば、元手がかからない分船と積荷分は丸儲けだろう。

 刹那的に大金を手に入れるなら考えなくもない手段ではある。

 だが、少し考えてみて欲しい。

 積荷を売る手段がない海賊なのだ、その海賊から船や積荷を買う闇ブローカーは壮絶に足元を見て、二束三文で買い叩くこうとするだろう。

 それに襲える船だって限られている。

 美味しい積荷はしっかりと護衛がついているだろうしな。

 あれ?もしかして海賊って、あんまり儲からないんじゃないかと気がついて。

 象っぽい顔の異星人の交易商人に酒を奢って聞いてみたんだが。

 カネがあるなら海賊なんてしてないさと言われた。

 ごもっともな話だ。





 という訳で、宇宙海賊になる案は没となった。

 実益も浪漫も悪の美学も無いんじゃなぁ……



―――



 当面の方針を決めた俺達は、数日間逗留した交易ステーションを出発し。

 アドラム帝国勢力圏の外縁部を移動しながら、アドラム帝国東部外縁部にある星系へとやってきた。

 この星系の名は『船の墓場星系シップグレイブヤード・スターシステム』。

 名前で判ると思うが、払い下げの船や中古船の修理工場や。

 廃艦になって部品に分解するリサイクルドックなどが主力産業の場所だ。


 かなり昔は『|栄光なる帝国造船港星系(インペリアル・グローリアス・シップヤード・スターシステム)』とか凄いキラッキラの名前がついて、アドラム帝国における造船産業の中心地だったらしいが

 今じゃ斜陽に斜陽を重ねて、誰もその名前で呼ばなくなったらしい。


 今じゃこの未来世界にも生き残っている、廃墟マニア達の聖地になっているという。

 それだけで色々察してくれ。魔王にも情けというものはあるんだ。




 この星系にやってきたのはリゼルとワイバーンのお奨めの場所だったからだ。

 最初に辿りついた帝国南部は交易が盛んな事もあり。

 ワイバーンを補修できるようなドックは数が少ないし、料金も高ければ技師の腕も良くないという。

 需要が高ければ仕事がおざなりでも高い料金が取れる、どこぞの地方の観光地みたいだな。


 リゼルは『船の墓場星系』出身で、土地勘もあるし顔見知りもいる。

 技師達も仕事こそセコいものの、長年(10世代以上代々技師やってるヤツもいるらしい)の経験により腕も良いという。

 ワイバーンのように旧式の船なら得意中の得意らしいしな。

 リゼルの知り合いだという、廃墟と今ひとつ見分けがつかない老舗シップヤードのドックに停泊させたんだが。

 ドックのオーナーの、ドワーフっぽい髭面のおやっさんの第一声が。


「未だにこの型の船使ってる酔狂なヤツがいるとはな。これで博物館送りになってなかったのか」


「ちょっ、ガルン叔父!現役の乗組員に失礼ですよぅ!」

 だった。俺はワイバーンの艦齢を聞くのが怖くなってきたよ。




 ワイバーンの補修、改装計画は事前に全員で話し合って決めていた。

 食料生産機とその中に入っていたレシピデーターのように。

 どうやら、回復魔法で治る所とそうじゃない場所があるようだ。

 詳しく調べてみると、実に簡単な法則に従っていた。


 ファンタジー的な人間に例えるとわかり易い。

 リアクター(心臓)や推進器(足)は回復魔法の対象になる。

 多分、治癒魔法より高度な再生魔法なら回復率も高いだろう。

 武装に関してもワイバーン船体についてる固定砲(拳)は回復魔法で治るが、交換や改装前提の主砲(剣)は対象外だという。

 シールドジェネレーター(体)も回復魔法の範囲だが、シールド(服)は治らない。

 食料生産機とレシピも、食料生産は固定なので体扱い。中に入っていたレシピは後から追加されたものなので、小物や道具扱いで治らなかったという。

 ただの回復魔法で折れた剣や壊れた道具まで治るのはおかしいもんな。

 お分かり頂けただろうか?

 リゼルは例によって「判る訳ないですよぅ!」と泣いていたが。



 改装計画は「回復魔法で治る場所は予算をしっかり使って良い部品にする」「それ以外はある程度妥協する」という事になった。

 そして、ワイバーン自体が付喪神、半生物化しているし治療魔法もあるので、メンテナンスが難しかったり、耐久度に問題がある部品も潤沢に使えるのだ。


「だいたいの見積りが出来たのですよぅ」

「おうとも、これをやるなら顔見知りのジャンク屋締め上げて部品集めて来るぜ」

 リゼルとドワ……おやっさんが一緒に、ここはこれが…あっちは新しいのをとか、3Dっぽい設計図を前に散々に討論していた結果が出たらしい。

 こういうのは大抵、素人には良く判らない奇怪な設計図と専門用語がずらぁ。と並んでいるのがお約束なのかもしれないが。

 2人に渡された設計図や改造予定図は俺ですらすぐに理解できた。SF侮れない。


『リアクター:全交換 新型試作炉(帝国海軍開発部横流し品)

 リアクター数変更 2基→4基 出力42000%向上予定 (出力詳細/20KP→8400KP)

 出力調整に繊細な技術を要する』

 出力調整とかはワイバーンが適当に何とかするだろう。


『メインフレーム:遺失技術ロスト・テック品にてそのまま』

 SF世界にも古代文明が残した、オーバーテクノロジーの産物というか。

 まあ、ファンタジーで言えば古代魔法文明の魔剣的な分類の遺失技術品があるそうだ。

 ワイバーンに乗っていた旧型の品を付喪神にしただけなんだが。

 SF住人にいちいち「魔法だ」と言って回るより説明しやすくて良いか。


『推進器:全交換 改造型辺境調査船用推進器へ切り替え 推力533%向上

 それに伴い星間航路用リミッターを新設』

 出力馬鹿なアメリカ人の趣味オヤジみたいな顔の改造技師の顔付きだ。

 改造前の画像もついていたが、原型を留めてないな。


『機動制御用推進器:全交換 巨大無人高機動艦(AI種族艦)のものを転用

 当シップヤードに該当品を扱う記録は一切ありません。これからも』

 おい、どんな怪しげなものを持ってきたんだ。

 性能は良いみたいだが…


『竜骨、外殻:据え置き 解析不能、強度は十分だと推測される』

 そういえば、移動中暇だったし。ワイバーンが腰が痛いと言うから錬金魔法使ってアダマンタイト結晶にしてみたんだっけ。

 SF世界でアダマンタイト結晶は一般的ではないようだ。


『シールドジェネレーター:全交換 フィールヘイト巡洋艦タイプジャンク品流用

 シールド出力800S→30KS 詳細不明・新型だと推測される』

 なんか単位が違うな。3万とか…

 あの破壊した軽巡洋艦の残骸から拾ってきたやつだよな。


『近接・対空用固定レーザー砲塔:高収束・高出力型、単装連射型に全交換。

 6世代前のアドラム帝国駆逐艦主砲の発信器をリサイクル。

 頻繁なメンテナンスが必須』

 メンテナンスに関してはなんとかなるだろう。

 固定砲はワイバーンにとって肌や髭と大差ないらしいしな。


『主砲:全交換 2世代前試作、収束衝撃砲ショックウェーブカノン予定。

 巡洋艦の武装だが、旧型なので動作すると思われる。2連装砲塔×4予定』

 思われるってなんだ。

 ……ああ、リアクター出力が十分なら動くのか。


『副砲:新設 艦体上下左右と後方に各1門の計5門。対空用に調整予定。

 単装高エネルギー粒子砲 フィールヘイト型と思われる』

 これも軽巡洋艦からの拾いものだ。残骸になってたのも直せるのか。


『センサー類:全交換。広域探査用サテライト(廃棄品)のものを改造

 バッシブセンサー類をメインに2429%の性能向上予定』

 元がどれ位か判らないが、汚染惑星近くで潰して回ったサテライトの部品まで有効活用するんだな。道理でリゼルが破壊した後のジャンク品回収にこだわっていた訳だ。


『陸戦隊用スペース:改造用スペースの都合上オミット』

 ばっさりだな。

 地上制圧用の戦車とか乗せる気はないし、まあ…いいか。


『突入用ポッド:最新型に切り替え。新型にしろとかなんだ、高ぇぞ!』

 見積り書に苦情書くなよ!?


『その他小物等:老舗シップヤードオーナーによる春のお任せコース。

           ~森の香り漂うアドラム風ジャンクを添えて~』

 わけがわからないよ。


『総合性能 準フリゲート艦→準軽巡洋艦クラスの予定』

 見た目は強襲揚陸艦、サイズは駆逐艦、性能は軽巡洋艦か。

 もう効率とかそういうのを投げ捨てた、浪漫臭さしかないな。


 一通り目を通し終わった俺は、投影式ディスプレイの見積書を閉じ。

 メカニック冥利に尽きるのだろう。

 ドヤ顔のおやっさんと、きらっきらと目を輝かせるリゼルを見た。


「なぁ、もうこれさ。

 修復とか改装通り過ごして、置き去りにした上に周回遅れにさせるような魔改造だよな?」


「おうともよ!」

「そうですよぅ!」

 素直に認められると反応に困るな。

 今まで限られた環境だったせいか気がつかなかったが、リゼルもマッドメカニック的な素養があるようだ。


「予算的には大丈夫なのか?」


「おうよ、新型にしろって言う突入ポッド系以外なら、顔見知りのジャンク屋のケツの毛までむしっても集めてやるぜ!」


「……そうなのか?」

 おやっさんは太鼓判を押しているんだが、どうにも不安が残ってリゼルの方を見る。


「だ、だいじょぶですよぅ。ちょっと駆逐艦を新造できる位のお値段ですもん」

 視線を逸らしているな。


「リゼルリット、命令。小声で素直に吐け」


「はい、まいますたー。私の貯金も使えばギリギリ足りるのです……はぅあ、命令はずるいのですよぅぅぅ!」

 しっかり予算オーバーしているな。

 改造案を練ってるうちに楽しくなってこの位…というのを繰り返したと見える。

 地球に居た頃に大学の知り合いが、携帯ゲームの課金にハマって貯金を消し飛ばしていたのと似た雰囲気だ。


「ライム用にクラス5戦闘機、アクトレスを買うのも忘れてないよな?」


「そこはオマケでつけてもら……げふげふ。しっかり確保してあるのですよぅ!」

 さては後になって気がついて、おやっさんに泣きついたな。

 アクトレスというのは、リゼルが出会った時に乗っていた、あの欠陥戦闘機アクトレイのマイナーチェンジ版だ。

 欠陥部分を直したら大ヒットしたらしい。既に旧型らしいが。

 ライムの戦闘力…というか勇者としての攻撃力や防御力とかを生かそうとすると、大型艦だと少々勿体無いんだよな。

 汚染惑星脱出の時も回避力しか生かせなかったしな。

 何よりアクトレスは基本で復座、補助シートもあるので3人で移動する足にもなるというのが素晴らしい。

 と言う訳で、折角2機艦載機を搭載できるんだ、新しくアクトレスを1機購入する事にしていた。

 これでワイバーンの艦載機はアクトレイとアクトレスが1機ずつの2機になる予定だ。


「しっかし良いのか?俺ぁ趣味全開で改造できるのは良いんだがよ。

 こいつをまともに動かすんだったら、熟練の船乗りとメカニックが4ダースずつはいるぞ?特にリアクターや推進器回りは扱い難しかったりデリケートな部品が多い。

 まあ、だから安く仕上がるんだが」


「ああ、維持や運用は目処が立っているから大丈夫だ」

 ワイバーンにとって艦体は体も同然だし、特にデリケートな品を使う場所は回復魔法が効く場所だからな。


 おやっさんが取り出した電子契約書にサインをしてICを振り込んだ。


「そうだ、塗装はサービスしてやるよ。在庫品で良かったらだけどな」

 おやっさんが携帯端末を取り出してリストを見せる。

 やはり黒や青と言った宇宙に溶け込めそうな色は売り切れている。

 宇宙で迷彩効果があるのか良く判らない水玉塗装まで売り切れだと…?


「うん?これは新しい商品だし電波吸収とかの性能も悪くないじゃないか」

 リストの底の方にあったのは、アドラム帝国海軍の制式採用タイプ。

 今も現役で使われている船体塗装剤だった。


「ああ、それなぁ。海軍のヤツが塗料はセットでしか売らねぇって言うもんだから、買ったんだがやっぱり売れ残ってよ」


「これが良いな。性能も十分だし、何より見た目が良くなる」


「まぁ、見た目良くなるのは判るけどよ―――これ、純白ピュア・ホワイトだぜ?目立つし目視でばっちり見られるぞ」


「だから良いんじゃないか。浪漫だろう?」

 にやりと笑顔を見せる。


「ちっ、若いのに判ってやがる。浪漫だな!」

 おやっさんもにやりと笑う。漢同士は時に心を通じ合わせるもんだ。


「塗装は良いとして型番と艦名、後は所属はなんて書く?」


「これを頼む。格好良く仕上げてくれ」

 携帯端末を操作し、データーをおやっさんの端末へ送る。


「どれ……古代語か?汎用語でルビがついてなかったら誰も読めない趣味の世界だな」


 おやっさんの携帯端末にはこう表示されているはずだ。

『民間軍事企業・魔王軍(Private Military Company DLA[Dark Lord Army])』



 そう、俺達は海賊になる道を諦めて。

 海賊達を倒す賞金稼ぎとなる道を選んだのだった。





 …え、ライムはどうしたかって?

 船の事は良く判らないから任せる。と姿を消していたのだが。

 俺のベッドで毛布に包まり、まっぱで優雅に昼寝しているのを後で発見した。

 最初の一歩を踏み出す背中を押したのは確かに俺なんだが。

 この勇者様もどんどんフリーダムになっていくなぁ……。



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 以下おまけ 「8話:魔王、臣民を労わる」直後のリゼル視点

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 リゼル。リゼルリットという長ったらしい名前の娘の朝は遅い。

 ただでさえ朝と早起きは苦手だというのに。

 最近は色々と寝付きが悪いのだった。


「にゅふふぅ……くぅー……すぁー」

 うにゃむ……うーん。朝みたいですよぅ。ねむねむ。

 この所ゆっくり眠れなかった……くぅ……から。

 こんなにぐっすり眠れた朝か貴重なのです……。

 これも夕べ、たっぷりとイグサ様とスキンシップをした…おか……げ?


「……えぇっ!?」

 一瞬で眠気が宇宙の彼方に吹き飛んで、思わずがばっと身を起こしたのです。


「あ、あはは。この頃寝付きが悪かったから……き、きききっとへんな夢をみたのですよぅ」

 口から乾いた笑いが自然と漏れるのでした。

 そうです、この頃……えっと。何でかは黙秘するけど、夜寝付きが悪いのですよぅ。

 寝汗…そう、寝汗が酷くてパジャマを何度も交換するはめにもなってるのです。


「で、でもですよぅ。流石にあんな夢は、何かちょっと激しくおかしいのですよぅ」

 どきどきどきと、怪しい動悸がするのです。だってあんな夢……


「ふ、ふにゃぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」

 余りの恥ずかしさに、ベッドの上でごろごろごろごろー!と転がりまくるのです。


「なんですか、私、そんなに欲求不満になっていたのですか!

 そうだとしても、あの夢はないでしょう、ないですよぅ!?

 なんですか、ファンタジー過ぎる夢です!

 これもイグサ様やライムさんがファンタジーな事ばかりする影響なのですかぁ!」

 もう熱くて仕方ない顔を枕に埋めて、手足をばたばたと振り回して。

 頭の中は真っ白な癖に恥ずかしさがいくらでも出てくるんですよぅ!!?


「静まる、静まるのです。

 病人でもないし運動もしてないのに、こんな激しい動悸はいらないのです!」

 ベッドの上でばたばたと暴れていた私だったけど、30分もすれば……

 落ち着くまでに30分もかかったけど、何とか落ち着いてきたのです。


「こんな恥ずかしい夢を見ていたら体が持たないのですよぅ」

 ベッドに座り込み、子供の頃からの悪い癖なのですが。

 こういう時に尻尾の先を口にくわえて、がぶがぶかじる癖は治らなかったのです。

 でも、あんな恥ずかしい夢をまた見てしまいそうなのです。


「落ち着いて、落ち着いて。リゼル、クールになるのですよぅ」

 自分に言い聞かせるように深呼吸を続けるのです。

 尻尾の先を口にくわえるのは止められないけど、段々落ち着いてきました。

 落ち着いて自分の姿を見回してみると、パジャマじゃなくて普段着でした。


「あれ?私はいつ着替えたんですか」

 確か昨日はパジャマを着て…やっぱり悶々として全然寝付けなくて。

 夢の中でイグサ様に会いに行くのに普段着に着替え……て?


「あは…あはは、まさか、まさかですよぅ」

 がたがたと震え始める手を必死に押さえながら。

 大丈夫なはずの証拠を。

 さっきまで顔とか頭を押し付けていた枕を手に取るのです。


「もし、もしもですよぅ?あの夢みたいにぐりぐり匂い付けしていたら。

 絶対イグサ様の匂いがうつってるし、枕とかにもうつるのですよぅ」

 はい、私は誰に向かって説明しているのでしょう。

 だけど、口に出さないと怖くて行動が出来なかったのです。


「か、覚悟を決めるのですよぅ――――――すぅ」

 落ち着いて枕に鼻をつけて、しっかり匂いを嗅ぎます。

 私自身の匂いに加えて、とても濃いイグサ様の匂いが。

 これはもうすれ違ったとか、同じ部屋にいたとかってレベルじゃなくて。

 まるで夢の中みたいに、ぐりぐりと何度も押し付けていないと…

 つかない位の……濃い匂いなのd……………


「ふやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!??!?

 夢じゃなかったのですよぅぅぅぅぅぅ!!!」




 その日、ようやく落ち着いたのは昼過ぎだったのです。

 寝坊したってお二人にぺこぺこ謝ったのですが。

 イグサ様は「まぁ、疲れていたんだろう」と妙に優しかったのです。


 …………箱があったら入って丸まりたい気持ちで一杯なのです。



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 以下はファンタジー色の強いおまけです。

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名前:イグサ (真田 維草/Igusa Sanada)

種族:地球人 性別:男

年齢:21   職業:魔王

Lv:3 EXP:410/500


<ステータス>

ステータスポイント:777

筋力 (STR)=100 (+860%)

体力 (VIT)=100 (+938%)

敏捷力(AGI)=100 (+678%)

知力 (INT)=500 (+1528%)

精神力(MND)=600 (+1238%)

魅力 (CHA)=500 (+981%)

生命力(LFE)=200 (+1002%)

魔力 (MGI)=600 (+5642%)


<スキル>

スキルポイント:133945

 <色々略>

[汚染耐性]:LV10

[アドラム帝国汎用語]:Lv1(MAX)

[機械操作(共通規格)]:Lv10

[機械不正操作(共通規格)]:Lv10

[ソフトウェア操作(共通規格)]:Lv10

[ソフトウェア不正操作(共通規格)]:Lv10

[構造知識(宇宙船)]:Lv5

 <表記し辛い特殊戦闘スキル>:合計LV1287


<その他>

・身長/体重:183cm/68kg

・悪への憧憬

・黙っていれば知性的な外見

・中身はエロ魔王

・伊達眼鏡

・BL題材被害583件

・魔王の特権:無念の死を遂げた死者数によりステータス強化

・○○被害者にて加害者



名前:ライム (向井寺 頼夢/Raim Mukouji)

種族:地球人 性別:女

年齢:17   職業:勇者

Lv:4 EXP:968/1000


<ステータス>

ステータスポイント:14

筋力 (STR)=20 (+138%)

体力 (VIT)=15 (+86%)

敏捷力(AGI)=10 (+228%)

知力 (INT)=10 (+120%)

精神力(MND)=24 (+860%)

魅力 (CHA)=11 (+88%)

生命力(LFE)=20 (+368%)

魔力 (MGI)=14 (+175%)


<スキル>

スキルポイント:34


[武器習熟(剣)]:Lv5

[武器習熟(槍)]:Lv3

[武器習熟(弓)]:Lv3

[強打]:Lv4

[狙撃]:Lv2

[防具習熟(重鎧)]:Lv4

[回避]:Lv4

[騎乗] :Lv2

[大型騎乗] :Lv2

[騎乗:飛行]:Lv4

[法理魔法]:Lv2

[祈祷魔法]:Lv2

[概念魔法]:Lv2

[空間魔法]:Lv2

[交渉術]:Lv2

[鑑定]:Lv3

[治療]:Lv1

[魔物知識]:Lv3

[不屈]:Lv2

[アドラム帝国汎用語]:Lv1(MAX)


<その他>

・身長/体重:142cm/39kg

・クォーターによる隔世遺伝。銀髪翠眼

・外見年齢は12歳程度

・誤補導回数115回

・淡白・冷淡

・中身は割と熱血

・合法ロ……おいなにをするやm

・勇者特権:戦場に散った英霊達の数によりステータス強化

・はいてn(斬撃音

・弱みを握らせる事多数

・無表情デレ疑惑



名前:リゼルリット・フォン・カルミラス

種族:使い魔/アドラム人 性別:女

年齢:16         職業:宇宙船技師

Lv:3 EXP:448/500

使い魔Lv:4 Exp:1813/2000


<ステータス>

ステータスポイント:14

筋力 (STR)=8  (+14)

体力 (VIT)=9  (+14)

敏捷力(AGI)=7  (+14)

知力 (INT)=13 (+14)

精神力(MND)=5  (+14)

魅力 (CHA)=14 (+14)

生命力(LFE)=12 (+14)

魔力 (MGI)=1  (+14)


<スキル>

スキルポイント:2


[機械知識(共通規格)]:Lv1

[機械修理(共通規格)]:Lv1

[機械操作(共通規格)]:Lv1

[無重力運動]:Lv1

[ソフトウェア操作(共通規格)]:Lv1

[ソフトウェア作成(共通規格)]:Lv1

[構造知識(宇宙船)]:Lv1


<その他>

・身長/体重:158cm/52kg

・猫耳猫尻尾。黒毛

・元お嬢様

・天然

・かつ腹黒

・ファンタジーの世界へようこそ!

・→ファンタジー適応(弱)

・魔王の使い魔化によりステータス補正

・エロ猫(称号)

・マッドメカニック

・バッシブアビリティ:貢ぐLV3

本文中、0があまり並ぶと見辛いので

1000=1K 1000K=1M と省略表記しています。

K=キロ(1,000) M=メガ(1,000,000)

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