1話:プロローグ1 どうやら時代遅れみたいです
どこまでも続く、赤錆色の砂っぽい一面の荒野。
遠くには遥か昔に人々が暮らしただろう、ビルの廃墟が所々卒塔婆のように立っている。
荒野のど真ん中で2人の人間が背中合わせに座り込んでいた。
1人は魔王―――そう、全身黒一色でマントとコートを合わせた、いかにも悪役っぽい服装をした青年。
1人は勇者―――白をベースに金で縁取られた鎧姿に、いかにも聖剣!という感じの神々しいデザインの長剣を腰に刺した少女。何故か首には鎖付きの首輪がついている。
「なぁ、どうするよ?」
青年…いや、魔王が夜空を見上げ、途方に暮れた感じの口調で呟いた。
<<人間の死者数が14万人を突破しました。魔王のステータスが強化されます>>
「あ、また死者増えて俺強化されたよ。止めてこいよ、勇者様」
「無理。どう頑張っても無理。だって―――」
勇者も星空を見上げていた。その先では―――
夜空の先、宇宙空間には多くの宇宙船が浮んでいて、ビーム的なものやミサイルが飛び交い、被弾した船が閃光と共に爆発四散する。
小型の戦闘機っぽいものが飛び交いお互い撃ち合い、あるいは船を襲っては対空砲火で燃え尽きる。
ビームとミサイルと爆発、そして人の命で作られた花火が夜空一杯に広がっていた。
「聖剣貰った勇者でも、宇宙で戦争してる連中を止められる訳ない」
体育座りをして、すねたように言う勇者。
地球から魔王として召喚された青年は、疲れた口調で呟いた。
「どうみてもファンタジーじゃなくてSFの世界です。本当にありがとうございました」
<<勇敢に死亡した人間の数が8000人を越えました。勇者のスキルがアンロックされます>>
「なぁ。こんな世界で魔王だ勇者だってやってる俺たちってさ―――凄い時代遅れじゃないか?」
「言わないで。私も後悔してる」
魔王が恐怖に陥れるべき人々は宇宙で勝手に殺し合い、滅ぼす
勇者が守るべき人々はもうこの
「「どうしよう」」
取り残され感が半端無い魔王と勇者は、ただ途方に暮れていた。