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18話 神婚旅行と子供達と異類婚姻譚と(6)

本日2話目


グロ注意

 サクラとエルザに偽神の攻撃が襲い掛かろうとしていた。

 だが、偽神はその大鉈を完全に振り下ろすことは出来なかった。


『なっ!?』

「それはいかんよなあ。かっこ悪いにもほどがあるぜお前」


 俺の目の前でサクラとエルザに危害が及ぶなどあるわけがないしあってはならない。

 いや目の前でなくてもサクラ達に危機が迫れば守って見せる。

 奴の大鉈には上空から垂れた極細の糸のようなものが絡みつき、その糸の端は俺が左手で握りしめて固定し、その動きを食い止めている。


「そいつは天糸(てんし)と言ってな、要するに異常に細くて強靭で、自由に操れるのさ」

『こんなもので俺の<神殺し>を止め切れると……っ!?」

「おらどうした。ちっとも動いてねえぞ」


 すでに勢いがついていた大鉈すら止めてるのにそこからただ力を入れただけで抜け出せるわけがない。

 俺は思いっきり力を込めて天糸(てんし)を引っ張り、<神殺し>ごと偽神の巨体を釣り上げる。

 この天糸は辺りに何もなくても自由な位置に一部を固定することが可能で、辺りに何もない平原だろうが天糸を張り巡らせて罠にしたりすることもでき、そしてこいつを釣り上げたように上空から垂らすようにして引っ張れば上向きに釣り上げられる。


「キャッチアンドリリースってな」


 勢いよく上空に釣り上げてから今度は下向きに引っ張って結界へと叩きつけて天糸の拘束を解除する。


『くっくっく……それを解除したのは間違いだったな。この程度の攻撃なんぞ何のダメージにもならん。それにその糸の攻撃も二度は食らわんぞ』

「この程度で済ましてんだよ。お前のやったことは簡単な死で償えるほど甘くない。あらゆる苦痛を与えてから殺す」


 こいつのやったことはただ死を与えてやるだけじゃ物足りない。

 苦痛を与え、アイツのすべてを打ち砕いて完膚なきまでに叩きのめしてやらないと気が済まない。


『舐めたことを、その口すぐに開けなくしてやる!』


 小物っぽいセリフを吐いて偽神が顔を真っ赤にいて突撃してきた。

 その巨体から大鉈を振り下ろしてきた。

 が、慌てることもしなければ避けもせず、


「チェンジ:アイギス」


 そう呟くと糸状だった<神器>がすぐさま盾へと変化し、偽神の攻撃を真正面から受けた。


「そのままそっくり食らうといい」

『ぬ!?がああ!?』


 偽神の攻撃がアイギスに触れたかと思うと俺は一切の衝撃を感じることなくアイギスは攻撃のすべてを偽神へと反射した。

 偽神の結構な力を込めていたようで、それが全て自分に跳ね返ったことで山なりに吹き飛んでいった。

 盾の形態であるアイギス。

 <神具>が通常の相手の攻撃を反射する様を見て思いついた形態だ。

 完全カウンタータイプの形態だが、<神具>でも衝撃を緩和できないような攻撃でも跳ね返せるから結構便利。

 そのまま返したり倍加したり、盾の表面から棘が伸びたりといろんなパターンで反射が可能で結構凶悪な代物である。


 それにしても結構遠くまで飛んだな。

 500mくらいか?

 おまけに片膝ついて立ち上がれないらしい。

 それだけの威力の攻撃だったって事か。

 ていうかよわっ。

 あれで俺の天敵とかなんとか抜かしてたのか?


「チェンジ:アルテミス」


 だが、絶好の攻撃チャンスをみすみす逃すわけもなく、今度は弓に変える。

 そしてゆっくりと弓を引くと魔力で作られた矢が現れる。


「たっぷりと苦しむといい。幻痛の矢(ファントムペイン)


 十分に引き絞った弓から矢が放たれた瞬間、矢は五つに分裂して偽神へと突き進む。

 そして両肘、両膝、そして偽神の腹に同時に刺さると、


『がああああああああああああああああああ!?』

「うーんナイスな絶叫だぜ」


 500m離れているのにかなりはっきりと絶叫が聞こえてきた。

 まるで俺が悪役みたいだな。


 矢が刺さった偽神に目立った外傷はない。

 幻痛の矢(ファントムペイン)が与えるのはまさしく痛みのみだからな。

 両肘両膝に腹を同時に射抜かれた痛みはさぞいたかろう。

 それも射抜かれただけの痛みだけでなく、内部で骨や肉をずたずたに抉るような痛みも味あわせるのだから俺だって自分で食らえば絶叫する。

 でも、気絶もショック死も許さないように強制的に覚醒させて精神を微回復し続ける効果付きだから安心してほしいね。


 

 次は何で苦しめようかと考えつつ絶叫が収まるのを待った。


 と言ってもさすがに偽神だ。

 三十秒ほどで絶叫をやめて立ち直ったようだ。


 いや、三十秒も痛みに支配されて動けずにいたと言った方がいいだろうか。

 偽神の顔色はとてもじゃないがいいとは言えない。


「よう、痛快だったろ?」


 フレンドリーに声をかけてやれば


『貴様ああああああああああああああ!!!』


 激昂して叫ぶ偽神。

 どうやらドMじゃなかったようだ。

 おまけに新しい扉を開くことも適わなかったようだ。


『殺す殺す殺す殺す殺ス殺スッ!!』


 顔を真っ赤にした偽神は自らの腕を浅く斬り血を流す。

 ってことはアレが来るな。

 そうでなきゃ困るというものだ。

 完膚なきまでに叩き潰すなら相手の本気を真っ向からぶち壊して絶望を与えないといけないのだから。


 解放された<神殺し>はその力を格段に増したようだ。

 おまけにそれを使う偽神の力も増幅したようである。


『ぶち殺すッ!』


 もはや言葉からは最初の時のような余裕は感じられない。

 だが、その分全力となった偽神は一瞬で俺の目の前に現れ大鉈をその大きさから考えられない速度で横に薙ぎ払ってきた。


「チェンジ:山断之大剣(ヤマタノオロチ)


 選んだ形態は大剣。それも刃の長さが5m、で厚さ50cmはあるアホみたいにでかい大剣だ。

 そして柄もやたらと長くそして、太さが一定じゃない。それも段階的に細くなって柄がでこぼこしている少しばかり歪な大剣だ。

 名前の通り山を斬ることを目指した一品であり、実際に山を斬ったこともある。

 どうでもいいが個人的にこのネーミングは最高だと思っている。

 自分がいいと思えばそれは最高なのである。

 俺は、それを斜めに切り上げるように振り上げ、偽神の大鉈と打ち合わせる。


 互いの武器がぶつかり合い中心で爆発が起きたかのような衝撃を生み互いを大きく後ろへと下がらせる結果となった。


「なんだなんだ、力を解放してもその程度かぁ?」

『クソッ!』


 自慢の<神殺し>も正面から受け止められ相手はさぞ苛立っていることだろう。


「今度はこっちから攻めてやるよ」


 衝撃で距離が空いて、今は10mぐらい離れているがこの距離はまだ俺の間合い内である。

 俺は大剣を右脇に構えて、<神器>のサイズを変える。


 すると5m程だった大剣が巨大化して15m程の大剣になった。

 元々この機能を想定して作ったのがこの大剣なので5mの時と持つ部分を変えることでしっかりと握ることができる。

 段階的に細くしていたのはどのサイズでもちゃんと握れるようにするためである。


『なっ!?』

「おらあ!」


 山をもぶった斬るその大剣で薙ぎ払う。


『ぐっ、だがこんなもの当たらなければッ』

「フン!」


 予想通りに空中に飛んで回避しようとした偽神だったが、俺はそれを見て横薙ぎから切り上げに切り替える。

 アホみたいなサイズのこの大剣を人間サイズの肉体で強引に軌道を変える。

 常識なら不可能なそれを可能にする神のスペックは理不尽だな!

 もちろんタネがあるのだが


『ぐぅッ……だが、この程度ッ!』


 されどさすがに相手も今までの雑魚ではなく、迫る大剣に対して大鉈の刃を斜めに置いて滑らして受け流された。

 細かい制動が効かないからそれを可能とするのであれば受け流しは確かにこの大剣に有効だ。

 ただし、それを可能にするには技術だけじゃなく武器と肉体も揃ってなければ無理な芸当だがそれをやってのけた。


「だがしかし、無意味だ」


 斜めに切り上げたその大剣はピタリと止まり今度は袈裟懸けに切り返す。

 偽神もこの巨大な大剣が軌道を変えるどころか瞬時に戻ってくるとは思わなかったようで今度は受け流す余裕も無かった。

 それでもその手の大鉈でかろうじて防御して受け止めることには成功しているあたりはさすがと言ってもいい。

 それを受けた偽神はそのまま結界へと叩きつけられバウンドしていった。


 サイズを変えるのは<神器>そのものにある機能だし、まさかサイズ変えても握りやすいってだけの大剣なんぞ作るわけがない。

 この大剣そのものの特徴は質量を1gから見た目相当以上まで自由に変えれること。

 それゆえに大剣なのに異常に早く振り回せて当たる瞬間に質量を増やしてやればその速度と質量から莫大な攻撃力を産みだせる。


 それにしてもまた距離が空いてしまった。

 こんな時はやっぱり遠距離攻撃だよな。

 グングニルもいいかなと思うけどここは


「チェンジ:トライデント」


 と言うわけで三又の槍へと変える。

 これは実際の神話の物とは違い刃の先に返しがあり石突には鎖が繋がっていて、完全に武器と言うよりは漁のための使うかのように少し改造してある。

 でも機能としてはグングニルと一緒だ。

 つまり投げると自動で敵を貫く。

 

 これを偽神の右肩狙って投擲してやれば、遠く離れた偽神の右肩に狙い通り突き刺さる。

 そしたら鎖を思いっきり引っ張って引き寄せる。

 右肩に深々と刺さったトライデントは刃の返しによって抜けることなく偽神を傍に引き寄せた。

 先ほどの山断之大剣(ヤマタノオロチ)の一撃で既に偽神はかなりのダメージを負っていた様で満身創痍となっていた。

 大鉈での防御をしてのこの様か。


『ぐ……っ!なんだ……!?その力は……いくらなんでも常軌を逸している!』

「さあ?お前が弱かっただけじゃねえのか?」

『ぐあああああああああああっ!?』


 もはや俺に対して恐怖している様子の偽神だが構うことなく<神器>を刀に変えて両腕を斬り飛ばす。

 これでもうこいつは<神殺し>を扱えない。


「さて、もうおしまいにしようか」

『あ……が……』


 諦めたかのように動かない偽神だが万が一などあっても困るので<神器>を銃へと変える。

 そして偽神の両膝へと弾丸をぶち込んだ。


『うがあああああああああああああああっ!?』


 ただ弾が撃ち込まれただけでなく体内に弾が残り、その弾から肉を突き破るようにして木が生え偽神の両足を完全に殺した。


 最後に痛みで大口開けて軽く気絶している偽神のその口の中にとあるものを放り込んだ。

 異物が突然喉を通ったことで驚いたのか偽神が目を覚ました。


『な、何を食わせた……?』


 その声はひどく怯えているようでよほど恐怖を感じているらしい。

 だが、その恐怖もすぐになくなくなるさ。

 とっておきを食わせてやったんだからな。


「じゃあな。チェンジ:棘玉 サイズ最大っ」


 とっておき……<神器>を棘玉へと変えてサイズをでかくする。

 このサイズ変化は毎秒1cm大きくなるように調整しているので……、


『ん……何が……っ!?うう!?あ……ああっ!?がああああああああああああ――――!!!!』


 徐々に内側から肉がぶち抜かれる感覚を味わうことになりその痛みは想像を絶するものである。




 あとに残ったのは死んだ偽神の肉片と偽神が持っていた<神殺し>、そしてサクラとエルザの俺を蔑むような視線だった。

もっと苦戦させようかなとも思いましたけど、書いてるうちに小物臭がすごかったので。

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