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15話 テンプレチックワールド・1

 今、俺は現代日本の雑踏の中を一人で歩いている。

 現代日本と言っても俺が生きていた世界とは別物らしい。

 いわゆる平行世界(パラレルワールド)だ。

 今回サクラは別行動だ。

 なんでも今のままじゃレイの足手まといになるから別行動で修行してくるとか。

 全然足手まといだなんて思わないんだけどサクラもそこは譲れないようだったのでその提案を受け入れた。


 そんなわけで適当な依頼を一人で受けたのだが最初の依頼の時のように目的の世界ではなく現代日本な場所に飛ばされた。

 またこのパターンか。


 しばらく歩いていると急に周囲の人らが慌てて逃げ始めた。

 なにがなんだか分からずその場に立ちすくんでいると暴走した大型トラックがこちらに向かってくるのが見えた。

 

 ああ、トラックで死んで転生パターン?


「ふん!!!!」


 だが、そんなものは御免こうむる。

 俺は向かってくるトラックを全力で殴りつけてトラックを跳ね返した。


 周囲の人はそれを見て唖然としつつ飛んでいったトラックと俺を何度も見返していた。

 そんな中今度は足元に魔法陣が現れた。

 どうやらどこまでもテンプレ展開で押してくるらしい。


 俺はその魔法陣に逆干渉して召喚されるのではなく召喚してやった。

 そして目の前に現れたのは銀髪の美少女。


 多分どっかの世界のどっかの国のお姫様だろう。


「日本へようこそ」


 そういって状況をつかめずポカーンと地面に座っていた美少女に手を貸して立たせると近くにいた主人公になれそうなイケメンに押し付けて俺はさっさとその場を去ることにした。

 もちろん時間経過で自動的に元の世界に戻るように設定してあげてある。

 しばしの日本観光を楽しんでください。


 そうして再び歩いていると今度は地面に異次元への穴と思わしきものがあってそこに落ちそうになった。


「残念だったな。俺は落ちない」


 未だ地面に付いていた片足に力を込めて地面を蹴り脱出。

 その後穴を強引に閉じておいた。

 

 どこにいるかわからぬこの世界の神にドヤ顔していた所今度は後ろから怪しい男が走ってきて包丁で俺の背中を刺そうとしてきた。

 今度は通り魔に殺されてっていう展開か。

 そして刃が俺の背中に刺さったように見え……


「ふっ、残像だ」

「なっ!?」


 驚く男の背中を蹴り飛ばしゴミ箱にシュートしてやった。

 さっきから用意された展開をことごとく壊してるような気がするが別にいいよね。


 すると今度は銃を持ったテロリストが現れた。

 どういうわけか俺に向かって乱射する。

 もうなにがなんでも俺を殺りたいらしいな。


 俺は<神器>を取り出し銃にして連射し、テロリストが撃った弾と全て相殺させた。


「ば、ばけもっがぁ!?」

「テロ行為とか他人に迷惑をかけることをするな!」


 街中で銃を乱射する馬鹿に鳩尾に蹴りを入れてやった。

 

 そして再び魔法陣が足元に現れた。

 さっきとはまた違う魔法陣だ。

 

 さすがに遊びすぎだろうってことで俺は逆らわずに召喚された。



 

 俺は今鳥になっている。

 所謂HALO降下ってやつだ。

 もっともパラシュートなど装備しちゃいないのでHA降下だな。


 糞神め。

 散々遊ばれたからって初期リスポーンを空にするとか小さいやつめ。

 

 まあ、神たる俺にこの程度なんでもないのだが。

 あ、遠くに街が見える。

 それなりに大きいから王都かな?

 

「そろそろ地上だな……ん?着地予定地点になんかいるな……」


 形だけ見れば人間のようであるが人間ではない。

 その体は異常な巨躯で口元からは牙が上に飛び出ている。

 どうやらそれなりに強い魔物のようだ。

 

 たしか今回の依頼は魔王討伐だったな。

 ってことはあいつは別に倒していいだろう。


「食らいやがれえ!神の必殺(スーパー)高高度(ゴッド)落下キック(キック)!!」


 高高度から落ちた勢いそのままにその魔物の頭を踏み抜いて着地した。

 さすがに周囲1キロ四方を吹き飛ばす程ではなかったが1メートル四方を吹き飛ばすくらいには威力があった。


「着地成功っと」

 

 踏み抜いた魔物を改めて確認するとどうやらオークの様だ。

 内包してた力を考えるにオークの上位種ってところだろう。


 そして周りを見渡せばオークオークオークの豚面ばかり。

 っていうか多いってレベルじゃねえぞ。ここら一帯オークで埋まってんじゃねえか。

 そして、そのオーク達はこちらをみで呆然としている。

 襲ってこないのか。


「まあ試しにはちょうどいいよな」


 そういって<神器>を取り出す。


「チェンジ:グングニル」


 <神器>は形を変えて槍へと変化した。

 名前はグングニル。

 神話で有名な投げると戻ってくるあの伝説の武器である。


 まあ、ぶっちゃけ只の槍だ。

 擬似的にグングニルのように使えるが只の槍だ。


「ではまず一投。よろしくお願いしまああああす!」


 気合を入れて一投目。

 固まっていたオークの頭をぶち抜いてその後ろにいた奴らも巻き込んでいった。

 

 直ぐ様手元に引き寄せる。

 さすがのオーク達も状況を把握して動き始めた。

 

「だが遅い。もう一投!!!」


 今度は槍に魔法を込めてみた。

 槍の周りを螺旋のように炎が纏って周囲のオークを巻き込んで進んでいく。

 

 一方向だけでがそれなりに範囲を広げられるな。

 名付けるならそのままファイアースピアか。それともランスか。

 

「クラスターボム!」


 そう言って投げた先は上空だ。

 もちろん槍は一切当たらないが、槍からは常時左右に赤色の光が射出されている。

 その光は地上に落ちるまでの間にどんどん分裂し、赤色の光が地面に落ちた瞬間。


 ―――ドオォォォォォォォン!!!


 大爆発が起こり周囲はオレンジ色に染まってしまう。

 その名の通りクラスターボム的な魔法である。

 

 豚もミンチになって飛び散っている。これはひどい。

 規制されるわけである。

 だが、俺の使うこれは不発弾などあり得ないのでそこは安心して欲しい。


「にしても多すぎだろ。あれだけふっ飛ばしてまだこんなにいるのか」


 ほぼ全方位オークだらけ。

 先ほど薙ぎ払った方向も既にオークが補充され始めている。


「さっさと片付けよっと。大地に咲く華(ブラッディスピア)


 槍を地面に刺して魔法を発動すればオークたちの足元の地面が無数の槍となってオークを襲った。

 その槍に貫かれたオークは血飛沫を挙げ大地を彩っていった。

 ひと通り血飛沫を上げ終わると無数の槍から巨大な灼熱の火柱が上がりオークの死体を肉片残らず燃やしていった。

 後に残ったのはオークの焼け焦げた臭いと大地に大きく咲いた赤い華だけだ。


 その時ここら一帯を見ている人がいたらおそらくこの世の終わりを予感しただろう。


「ちょっと派手にやり過ぎたか?」


 うーん。

 まあ、いいんじゃないかな。

 これくらいよくあることだよ。うん。


 気持ちを切り替えて落下中に見えた街へ行こう。

 


 

 街へ辿り着いた。

 道中出会った適当な魔物を狩って門番に金の代わりにしてもらい入ることが出来た。


 今は定番の冒険者ギルドに登録中である。

 

「では最後に試験を受けていただきます」

「試験?」

「はい。ギルドマスターと戦っていただきます」

「それはどうしてだ?」

「冒険者はどうしても危険な場所へ行くことが多くなりますのでどれくらい強いのか確かめ実力に見合ったランクで始められるようにです」


 なるほど。

 この世界の冒険者もやっぱり実力主義なんだな。


「戦うということはギルドマスターは強いのだろうがランクで言えばどれくらいのランクだ?」

「ギルドマスターは元Sランクの冒険者ですので安心して胸を借りて大丈夫ですよ」

「じゃあ倒したら俺もSランクか?」

「ふふ、そうですね。もし本気のギルドマスターを倒せたらなれるかもしれませんね」


 苦笑しながらそう答えてくれた。

 冗談だと思ってるらしいな。

 多分こういうことを言う新人がよくいるんだろう。


「では、他の方とまとめて試験を行いますのでしばらくお待ちください」


 俺はギルドのすみにある試験控えと書かれたベンチに座って待つことにした。

 どうやら先客が2名いるようだ。

 どちらもかなり若い。日本で言えば中学生くらいだろうか。

 彼らも試験を受けるのか。

 

 ベンチに座ってすぐに女の人が横に座ってきた。

 金髪の美女で防具は金属の胸当てと腕甲を装備していて武器は長剣を使うようだ。


「こんにちは」

「ん、ええ、こんにちは」


 挨拶されたのでこちらも帰す。


「あなたも冒険者になるようですね」

「ええ、まあ」

「相当、腕に自信があるようね」

「それはまたどうしてそう思うんですか?」

「だってさっき言ってたじゃない。ギルドマスターを倒すって」


 それを聞いて先客の子がこちらをみて驚いている。

 それを見て苦笑しながらも女の人と会話を続ける。

 

「ああ、聞いてたんですね。あれはまあ確認ですよ。もしギルドマスターを倒したらっていうそういう仮の話」

「そう?そういうことにしといてあげます」

「そういうことも何もその通りなんですが。あなたはどうなんですか?」

「ええ、まあさすがにギルドマスターに勝つのは無理でしょうね。あ、そういえば自己紹介がまだでしたね。私はエルザと申します」

「おっと、俺はレイと言います」

「レイね。今日お会いしたのも何かの縁、今後共仲良くしてくださいね。それと普通に話したらいかがですか?」

「んじゃ、お言葉に甘えて。こちらこそよろしくな」


 そう言ってお互いに握手を交わした。

 尚、どうでもいいことではあるが今回別行動を取る前にサクラに「英雄色を好むって言うけど私は構わないよ。レイは最強だからね」なんていう寛大なお言葉を頂いている。

 最強だからって理由になるのか?

 俺はハーレムよりも一人を溺愛するほうがいいから本当にどうでもいいことである。

 

 ええ、本当に。




「エルザはどうして冒険者に?」

「私自身の力で生きるためです」

「へえそれはまたワイルドなことで」


 いいとこの家の出っぽいのにわざわざ荒事に飛び込んでいくのか。

 エルザと話していると先ほどの受付の人が来て試験の準備が終わったので移動すると伝えてきたのでギルド裏にあるという訓練所へと向かう。


 訓練所へ入ると大男が訓練所の真ん中に立っていた。

 その大男の前まで案内されたのでこの男がギルドマスターなのだろう。


「よく来たな新人ども!俺はここのギルドマスターのゴウガイだ!」

「「よ、よろしくお願いします!!」」

「おう、ガキはそんぐらい元気じゃねえとな」


 少年二人組が少し緊張で声を震わしながらも大きな声でそう言った。

 続いてエルザも落ち着いた様子でよろしくと挨拶していた。

 それに比べ俺はといえば


「おっさんまるでオーガみたいな身体だな」


 感じたままに感想をつぶやいていた。


「ああ?」


 ゴウガイはこちらを睨みつけたかと思えばすぐに顔を綻ばせて豪快に笑う。


「がぁーはっはっ!!中々生意気な糞野郎がいるじゃねえか!!」

「いえいえその自己主張の激しい筋肉よりは謙虚でごぜえます」

「口の減らねえ野郎だ!」


 そう言いながらも背中をバンバンと叩きにくる。

 まあ全部避けるのだが。


「おい!何避けてやがる!」

「いやいやそんな熊の一撃貰ってたら痛いじゃないですか!」

「今度はベアーだと!俺を前にしてここまで遠慮なしに物言うやつは始めてだぜ!」


 そう言ってガッハッハと豪快に笑うゴウガイ。


「えーそれで、だ。今からお前たちは俺と戦ってもらう。実力を計るだけだから安心しろ。まあもし俺に勝てたらその時はBランクにはしてやるぜ」

「Sじゃねえのか」

「俺一人に勝てるからって相性ってもんもある。他の様々な奴にも対応できるかは分からんからな。Bが限界だ」

「なるほど」


 確かにその通りだな。

 

「んじゃあまずはガキども二人からだな。お前らは既に二人でパーティを組んでやっていくらしいな?そのまま二人同時にかかってこい」


 まずは子供二人組。

 既にパーティ組んでたようだ。


 中々の連携を見せてはいたがやはり所々が甘いしそれぞれの能力も低い。

 が、まあ歳を考えればまずまずといった所だ。


「うむ。中々筋はいい。お前たちはEランクだ」


 ギルドランクはSSランクからGランクまである。

 Eランクなら野外での薬草採取や一番弱い魔物の討伐依頼を受けることが出来る。


「自分の力を過信するなよ。訓練所へ来ればいつでも鍛えてやる。死にたくなければ絶対に来い」

「「はいっ是非お願いします!」」


 うむ。

 元気な子達である。

 それに調子に乗らずにゴウガイの言葉を受け止めているようだ。

 

「次は糞野郎のお前だ」

「レイっす」

「レイか、よし糞野郎かかってこい」

「レイです。あと俺後回して頼みます」

「ああ?なんだ?怖気づいたか?」

「いえ、手加減はしますが万が一にもギルマスに怪我負わせたらまともにエルザの試験できなくなるじゃないですか」


 そういった瞬間二人組は目を見開いてこちらを見ていた。

 さすがのゴウガイも額に青筋を浮かべている。

 エルザはどこか面白そうにこちらを見て口を開く。


「私からもお願いします。試験には互いに万全な状態で受けたいですし」

「嬢ちゃんまで言うか……ええい分かった。糞野郎お前絶対ぶっ飛ばすからな」

「では、よろしくお願いします」


 エルザがそう言って自分の武器である長剣を構える。

 こうしてみると通常の長剣よりも幅広のものだ。

 それでもって厚さは普通の長剣よりも遥かに薄い。


 どうやら重さで叩き斬るというよりその刃で断ち切る刀剣のようだ。

 

 長剣はなかなかに重いはずだがエルザはそれを軽々と扱ってみせる。

 意外な膂力の持ち主のようだ。


「なあ、あんちゃん。すっげえ大口叩いてたけど大丈夫なのか?」


 エルザの試験が始まるとさっきの二人組が声をかけてきた。


「んん、まあ口だけじゃないってところはちゃんと見せるさ」

「でも武器とか持ってないようだけど大丈夫なのか?」

「自分の力を過信してると死んじゃうんだぞ」


 子供にそんなこと言われてしまった。

 苦笑しながらも


「大丈夫大丈夫。まあ見とけって」



「おっし。嬢ちゃんはCランクからだな」

「はい、ありがとうございます」


 お、エルザの試験が終わったな。

 鋭い斬撃を連続で放ってたしあれならそこらの魔物には苦労もしないだろう。

 それを軽々と避け続けてたゴウガイも流石と言ったところか。


「すげえな、ねーちゃん!」

「Cランクからなんてかなり強えじゃん!」

「ふふっありがとう」


 子供らがエルザを褒め称えている。

 エルザも嬉しそうだ。


「おし糞野郎さっさと準備しろ」

「はいよ」


 お呼びが掛かったのでゴウガイの前まで行く。


「お前、武器はなんもないのか?金無しで買えなかったか?」

「んーまあ持ってるんですけど強力なやつなんで武器の力とか言われると癪なので置いてきてます」

「ほう……よほど自信があるようだな」

「それよりそっちは武器何もいらないのか?」

「俺は元々拳専門でね」

「あんたも存外バケモンだよな」

「今更ビビっても絶対お前はぶっ飛ばすからな」

「では―――」


「行く!」

「来い!」



 


 勝負は一瞬で付いた。

 もちろん俺の勝利で、だ。

 その内容は至ってシンプル。

 ゴウガイが反応できない速度で接近し拳の一撃を顎に繰り出し寸止めした。

 ただそれだけである。


 今回特に縛ってないからな。自重はしない。

 あとは魔王が現れるなり情報が出てくるまでは好きに遊ぼうと思ってる。




 ギルドが運営する食堂で熊が豪快に笑っていた。

 そこには二人の少年と金髪の美女、そして俺が同席している。


「この糞野郎!本当に俺に勝つとはな!ガッハッハ!」

「うぜーこのおっさんうぜー」

「そう言うな!お前は誇っていいぞ!惜しむらくは規定でBランクにしかできんことだな!」


 試験が終わると唖然としていたゴウガイは直ぐ様再起動して豪快に笑い俺たちは無理やり食堂に連行された。

 そしてそのまま何故か宴会となっていた。


「あんちゃんまじすげー!」

「何やったらそんな強くなれるんだ?」

「正直思ってた以上だったわ」


 一緒に試験を受けたエルザ達にそうやって持ち上げられるのは悪くない。

 そうして気分よく色んな料理を食べていると後ろから声を掛けられた。


「おいお前!」

「ん?」


 振り向くとそこにいたのは山賊にしか見えない男がいた。


「お前がギルマスに試験で勝ってBランクになったっていう新人か?」

「まあそうだが」


 これはテンプレ来ちゃうかなー?

 この世界にくるまでに散々テンプレな展開用意されてたし。


「そうか。俺はトリムという。Bランクパーティ『戦陣』のリーダーをやってる。良かったら俺らのパーティに入らねえか?」

「あっずりぃぞ!トリム!俺たちだってタイミング伺ってたんだぞ抜け駆けすんじゃねえ!」

「うるせえ!お前らギルマスにビビって声かけられなかっただけだろうが!」

「なんだと!」


 山賊男……トリムからパーティ勧誘をされたと思ったらまた別の男が騒いで喧嘩が始まった。

 ここの冒険者達いい奴らだな。

 まさか絡まれるんじゃなくて普通に勧誘されるとは。

 こういうのはどんな卑怯な手を使ったんだあ?なんてイチャモン付けられてってパターンだろうに。


「やかましいぞお前ら!」

「そうです!レイは私とパーティ組むのですから!」


 ちょっとエルザさん?

 そんな話、聞いてませんが?

 エルザはこちらをみて私に任せてと言わんばかりの表情をしている。

 

 まあここは任せてみるのも一興だろう。


「ん?お前は?」

「私はエルザ。レイとは同期になるCランクの冒険者です。お互い気があったので組むことしたのよ」


 ほんとか?って顔でトリムがこちらを来た。

 エルザも何か訴える目でこちらを見ている。

 ここは乗っておこう。暇だしな。


「ま、そうだ。だからそっちの提案はお断りだ。悪いな」

「む……そうか。先着がいるのならそれも仕方ないか。だがもしうまく行かなかったら俺たちのパーティはいつでも歓迎してるからな」

「俺たちもだぞぉ!」

「そっちのねーちゃんも大歓迎だぞー!」

「ま、機会があればってことで」


 とりあえずはそんな感じで話がまとまった。

 その後新人冒険者の成功を祈ってとかで他の冒険者も巻き込んだ宴会となってギルド直営の食堂はかなり賑わしくなった。


 

 


「レイ」


 宴会が終わって宿へと向かおうとするとエルザに呼び止められた。


「ん?どうした?」

「レイは冒険者になってこれからどうするの?」

「んーとりあえずは適当に金稼いで各地を旅するって感じだな」

「それは……どうして?」

「なんていうか情報集めかな」

「ふーん」


 そうしてエルザは何かを考えるようにしてからある提案をしてきた。


「ねえ、レイ。さっき言ったのはあなたが乗り気じゃなかったから誤魔化しただけだけど本当にパーティ組んでくれない?」

「そりゃまたどうして組みたいんだ?俺が強いから楽できそうとか?」

「確かにあなたが強いからってのも否定出来ないわね。けれど、理由の大半はなんていうか直感なのよね」

「直感?」

「あなたと一緒に行動すれば絶対に面白いことになる、そう私の直感が囁くのよ」

「へえ」

「それにあなたが強いからっていうも別に楽したいというわけじゃないわ。まあ、ある意味ではそうかもしれないけれど、言ったでしょ?冒険者になるのは自分の力で生き抜くためだって」

「そういえばそう言ってたな」

「だからねパーティを組んで私を鍛えて欲しいの」

「つまり俺に師事したいと?」

「ええ。勝手なことを言ってるのは分かっているのだけどね」


 ふーむ。

 まあこんな話は普通なら断る話だよな。

 冒険者が組むパーティってのはリスク管理と利害関係によるものだ。

 この場合俺には特にメリットはない。

 精々美女と一緒に旅が出来るってくらいだ。

 

 ま、俺は普通じゃない冒険者だ。

 魔王に関する事がわかるまでの暇を潰してるだけだからな。


「まあいいぞ」

「え、本当に!?」

「なんだよその反応は」

「い、いえ。絶対断られると思っていたから……」


 それもそうか。

 エルザもダメで元々な面があったんだろう。


「まあ俺は暇だからな。とりあえず毎日の飯があればいいし。だが何処其処に行くとかは勝手にさせてもらうしこっちの都合でパーティ解散もあるからな?」

「ええ、分かっているわ。無理を言ってる立場だもの。その辺は弁えてるつもりよ」


 まあ、別にエルザの希望に合わせていいんだがそこを譲歩するのも何か違う気がするし。


「んじゃ、まあよろしく」

「ええ、よろしくお願いしますね」


 そう言って試験前と同じようにエルザと握手を交わした。

すいません最近不定期気味です。

不定期でも間隔は早めにを目指します。


※最初に倒した魔物=魔王っていうことにしようかなとも思いましたがやめました。



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