4話 街へ行こう
華音がこの世界に来てから数日
『よし!決めた。面倒事には首突っ込まない。
人前では歌わない!平凡に生き抜いてやる!』
動物達に連れてこられた洞窟で
大きな独り言を叫びながら立ち上がった。
湖で顔を洗い、軽く体を曲げ伸ばししてみる。
『朝の湖は気持ちいいなぁ~!』
足の痛みはとれ、体も軽い。
湖面に顔を近付けると、最初に見た時の違和感の正体が
分かった。
若返っている。おそらく20歳ほど。
見た目18、19歳ぐらいだろうか。
だがしかし、中身は立派なアラフォーだ。
なぜ若返っているのか、もはや考えたら負けだ。
ここは異世界。変な動物や魚もいるし。なんでもありだ。
歌で傷が癒えるぐらいなんだから
魔法なんかもあるんだろうか。
『ふぁ...ファイアー...』
なんとなく恥ずかしくてボソッと呟いてみた。
もちろん火は出ない。
『あ~あ。火が出たらご飯のバリエーションも
違ってくるのにな~。』
動物達が持ってくる果物で飢えをしのいでいたが
いい加減に肉や魚も食べたい。
服も汚れが目立ってきている。
この数日で意思疎通がなんとなくできてきた
動物達に一生懸命身振り手振りで聞いてみた。
『この近くに街とかあったりする?』
すると、隣で毛繕いをしていた4枚羽のペリカンちゃんが
首をクイッと森の方に向けた。
ペリカンちゃんのネーミングセンスが微妙なのは
突っ込まないで。
『あるの!?』
コクコクと頷くペリカンちゃんに嬉しくなって
思わず抱きついてしまう。
ポニーちゃんがどこかから拾ってきてくれたボロ布で
ルームウェアを隠して出発の準備をする。
お金もない、ボロ布を羽織る姿は明らかな不審者だ。
『ふふっ。レベル1って感じ』
もはや笑えてくる。
この状況でもまだ笑っていられるのは動物達のおかげだ。
心配そうにしながらも華音の行動を見守ってくれる。
『みんな、行ってくるね!』
明るく手を振る。
さぁ、冒険の始まりだ!