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037 成長と今後

『経験値獲得 レベルが7アップしました』


『ジョブ熟練度獲得 ジョブレベルが1アップしました』

『ジョブスキルの補正値が上昇します』

『ジョブスキル【プロテクト】を習得しました』


『スキル熟練度獲得 【ヒール】のレベルが2アップしました』

『スキル効果が上昇します』

『スキル熟練度獲得 【ディスペル】のレベルが1アップしました』

『スキル効果が上昇します』

『スキル熟練度獲得 【ファイアボール】のレベルが1アップしました』

『スキル効果が上昇します』

『スキル熟練度獲得 【瞬刃】のレベルが2アップしました』

『スキル効果が上昇します』



 怒涛の勢いでシステム音が鳴り響く。

 それだけの死闘だったということだろう。


 まあ、その辺りの確認は後回しだ。

 俺がユイナのもとに歩き出し始めた、その時だった。


「っ」


 ゆっくりと立ち上がっていたユイナの前で、俺の体がふらりと倒れそうになる。


「アレンくん!」


 慌てて駆け寄り、俺の体を受け止めるユイナ。

 どうやら戦闘で負った怪我と、魔力枯渇寸前まで行った影響で、満足に体が動かないみたいだ。


「助かった。ありがとう、ユイナ」


「……お礼を言うのはこっちだよ」


 そう告げるユイナの瞳には、雫が溜まっていた。


「助けに来てくれて本当に……本当にありがとう、アレンくん」


「……ああ」


 俺は、ユイナの真っ直ぐな感謝の言葉を受け取る。


 彼女が危険な目に遭ったそもそものきっかけは、俺がアレンに転生し、その行動がシナリオを変化させてしまったから。

 ……それでも、なんとか最低限の責任は果たせたと言ってもいいだろうか。

 俺はそう思った。



 その後、地面に腰を下ろし休息を取る中、ユイナはゆっくりと切り出す。


「でも、すごく驚いたな。まさかアレンくんが、こんなに強かったなんて……」


「……あー」


 なんと答えるべきか悩む。

 俺はこれまで周囲には実力を隠し、鍛錬も他人がいないところでやってきた。

 授業中に限らず、普段から俺と一番親しくしてくれていたユイナにも隠していたということで、何か思うところがあるかもしれない。


 そう不安に思っていると、ユイナは慌てて言う。


「あ、あのね、一応言っておくと、アレンくんの実力が他の人より高いってことは知ってたんだ」


「そうなのか?」


「うん。実は昨日の夜、たまたま鍛錬場で特訓するアレンくんを見つけて、その時に……」


「っ」


 それを聞き、昨日の物音の正体がユイナだったと理解する。

 しかし、そうなると……


「今朝から様子がおかしかったのって、もしかして」


「う、うん。そのことで色々と訊きたいこととかはあったんだけど、どう切り出したらいいか分からなくて……」


「……なるほど」


 これで全てに納得がいった。

 昨日の夜から引っかかっていた部分が解消され、俺はふぅと小さく息を吐く。


 とはいえ、他にも問題は残されている。

 それは俺の本当の実力についてだ。

 ルクシアに伝えた通り、周囲に実力を隠したいという方針は今も変わらない。

 とはいえ、ピンチになったユイナを救うために誰かがワーライガーを倒したと説明する必要がある以上、それも難しいかもしれない。


(仮にルクシアが万全の状態で、ユイナを助けてれば話は楽だったんだが……置いてきてしまったからな)


 魔力反響ソナーで大きく貢献してくれた以上、もちろんルクシアには感謝しかない。

 だが、理想を言うなら――



「二人とも、無事みたいだねっ」



 ――その瞬間だった。

 ふわりと、頭上から柔らかい声が降り注ぐ。

 見上げると、そこには外ならぬルクシアの姿があった。


「よっ……おっと!」


 軽やかに舞い降りたはずの彼女だが、着地の拍子にふらつく。

 この様子だと、まだ体調は万全じゃないらしい。


「来てくれたんだな」


「うんっ! 休んでたら少し回復したし、何より二人にもしものことがあったら嫌だから! でも……やっぱりアレン一人で大丈夫だったみたいだね」


 ルクシアは、ワーライガーが残した魔石に視線を向けながらそう告げる。

 すると、


「……えっと、ルクシアさん?」


 そのタイミングで、ユイナが困惑した声を上げた。

 なぜ彼女がここに来たのか分からないのだろう。


「実はな――」


 そこで俺は、先ほどは時間がなくて省いた経緯をユイナに説明していく。

 今日ダンジョンを一緒に探索する中でルクシアには既に俺の実力がバレていたことと、そして転移したユイナの居場所を探すのを手伝ってもらったこと。

 全てを聞き終えたユイナは、少し驚いたような反応を見せつつも、ルクシアに笑みを向けた。


「そうだったんだね……ありがとう、ルクシアさん」


「どういたしまして! って言っても、一番いいところはアレンに持っていかれちゃったんだけどね!」


 軽い冗談を言うルクシア。

 こんな会話ができるのも、ここにいる全員が自分の最善を尽くしたからであり、それを理解しているからこその発言だった。

 そんな二人のやりとりを見て暖かい気分になりつつ、俺は口を開く。


「ちょっといいか? 二人に、少し相談したいことがあるんだが」


「え?」


「なになに?」


 俺は相談内容を伝えていく。

 少し事情があって、もうしばらくは自分の実力を明かしたくない。

 だから、できれば今回ワーライガーを倒したのはルクシアだということにしてくれないか、と。


 すると、既に俺の事情を軽く聞いていたルクシアが口を開く。


「私は別にいいけど……今のアレン、びっくりするくらい傷だらけだよ? そこを訊かれたらどうするの?」


「まあ、そこはシンプルに、なんとか俺やユイナが時間を稼いだ後、ルクシアが魔法でトドメを刺した……って説明するのはどうだ?」


「ん、おっけー。じゃ、それでいこっか。ユイナもいい?」


「う、うん。私は助けてもらった立場だし……アレンくんに何か事情があるんじゃないかとは思ってたから。もちろん、大丈夫だよ」


 二人の許可を得たことで、ひとまずの方針は決まった。

 あとはどうやって上階層に戻るか。

 高い崖を見上げると、思わず気が重くなる。


「この状態じゃまず登れないだろうし……結局、助けを待つ必要がありそうだな」


 そう呟くと、ルクシアが反応する。


「それなら大丈夫だよ……飛翔」


 ルクシアが唱えた瞬間、俺たち三人の体を薄い風の膜が覆った。

 俺やユイナと同じように魔力枯渇寸前まで行ったにもかかわらず、すでにこのくらいの魔法を行使するくらいには回復しているようだ。

 こんな場面でも、ルクシアが規格外の存在であると実感せざるを得ない。


「それで上まで飛べるはずだから……じゃっ、戻ろっか」


「ああ」


「うん」


 こうして俺たちは、激闘を繰り広げたこの場所を去り、上階層を目指すのだった。



――――――――――――――――――――


 アレン・クロード

 性別:男性

 年齢:15歳

 ジョブ:【ヒーラー】

 ジョブレベル:3


 レベル:30

 HP:732/2280(+188)

 MP:17/720(+72)

 攻撃力:312(+35)

 防御力:268(+22)

 速 度:287(+31)

 知 力:401(+42)

 器 用:252(+25)

 幸 運:280(+29)


 ジョブスキル:ヒールLV8、ディスペルLV2、プロテクトLV1

 汎用スキル:ファイアボールLV5、ウォーターアローLV1、瞬刃しゅんじんLV5


――――――――――――――――――――


【プロテクト】LV1

 属性:聖

 分類:治癒系統の初級スキル

 効果:MPを消費することで聖なる防壁を出現させることができる。


――――――――――――――――――――

次回、第一章エピローグ。

そしてとうとう、待ちに待った彼女が再登場します。

どうか最後までお付き合いいただけると幸いです!

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