第四十八話 騎獣のお話④
あれから俺は、レイレイに乗って東のモンスターを狩りまくった。
モンスターに遭遇してはレイレイから降りて蹂躙し、またレイレイに乗って次の獲物を求める。いちいち乗り降りしなくてはならないのは、「アイテム使用:不可」と「武器使用:不可」のせいだ。
武器実体化ができない、予め実体化させている武器も背に乗れば強制的にインベントリに送られてしまう、というのはカタログで見た時はどうでもいいとか思っていたけど、いざ狩りにでて見ると地味ーーに不便だ。
ならばと一縷の望みをかけ、制限されない『偽腕』で直接殴れはしないだろうか? と思い試してみたのだが、失敗に終わった。やはり『偽腕』はモンスターをすり抜けてしまい、何のダメージも与えられないのだ。まぁ分かっていたことだけど、こうやって実際に殴ってみた事はそういえばなかったかなー、と思って実験してみた結果がコノザマである。
やはり、自身と自身の所有物以外透過でFAのようだなぁ。
しかしそれでも、今までよりは格段にモンスターを狩るスピードが速くなったと思う。流石はレイレイ、速度を追い求めた騎獣である。
多分スピード的には、フレイ以上の速さだ。擬音で表現すると、ギュンッ! とかキィィン! って感じだな。スラスターがついているだけの事はあった。
ちなみにスラスター部分からは、何とも浪漫なことに走っている間は黒く幻想的に淡く光る粒子が絶えず放出され、尾を引く姿は黒き流星だ。カタログには走行補助機能がそうとか書いてあったし、魔力的なもので走りを増強しているとかそういうことなのかな。まぁいいけど。浪漫だし!
とはいえ、常時そのスピードだとバテてしまうので、精々俺の全力くらいの速さでフィールドを周っているんだが。
「クケェ」
「ん? どうした?」
「クケ、クケ」
「んー?」
レイレイに乗り始めてから、早二時間ほど。
レイレイが何かを訴えかけてくるが、残念ながら俺に機巧ダチョウ語はわからない。
仕方ないので一旦レイレイから降りてみると、異変に気付いた。
薄青く光っているのだ。レイレイが。
そしてその光は俺が降りると急速に輝きを増し、やがてレイレイを覆い隠し――消えた。
光が解き放たれ、消滅した後に、レイレイは居なかった。
「え? 何、どういうことだ?」
すぐにインベントリを呼び出し、「召喚魔晶:ドラク・レイヴィアス」を見てみる。
するとそこには、“再召喚まで 0:59:41”と表示されていた。
……あぁ、そういうことな。
つまり、召喚していられる時間には制限があると。でもってスグには再召喚もできないと。
召喚時間は二時間、再召喚までの時間は一時間と、この辺が妥当か?
んー、まさか制限時間つきだったとはなぁ。ちょっと使い勝手が悪くなったか。
召喚時間がまだ残っている内に実体化を解いたりしたら、どうなるんだろうな? 今度検証してみるか。
「キシャー」
お、エンカウント。
レイレイが還った後。これからどうするか考えていると、もはやお馴染みとなった土蜘蛛さん登場。数は四体だ。
「【異形の偽腕】【狂蝕の烈攻】【覚悟の一撃】【捨て身】」
即座にスキルを発動させる。開幕発動させるスキルが多くて、ちょっとめんどいな。若干息が切れるし。
『偽腕』はこの数時間で定位置となった、斜め前後左右に設置。
そしてインベントリから「黒蓮」を四本、ノータイムで『偽腕』の手の中に実体化させる。
「ほいっ、と」
そしてそれを掴んで、すかさず投げつける。先手必勝、ってね。
【投擲】スキルの補助が有るとはいえ、それぞれの『偽腕』で投げた剣を狙った場所に当てるのは並大抵の事ではないが、そこは俺が『偽腕』の扱いに随分と慣れてきたということなのだろう。
ザクザクザクザクッ
「黒蓮」で頭を貫かれ、地面に縫いつけられた蜘蛛達は静かに光の粒子になって消える。が、しかし。
「キシャー」
「チュウゥ」
「シュー」
後からまたモンスターがやってくる。
慌てて「黒蓮」を戻して、再度実体化させ、追加で二本、俺の手に納める。
これは……腕輪の効果がまたでてきたか。
レイレイが戻ったタイミングとぴったり、ってことは、腕輪の効果の再発動時間も二時間なのかね?
こりゃ偶然。俺としては腕輪とレイレイ、交互に活用して効率よく狩りができそうだから万々歳だけどな。
さて、と。では、
「……いくぞ?」
俺はあくまで無表情に、モンスターに向かって六刀を振りかざすのだった。
ふふふ。
余談だが。
クノの今日の“狩り”がまた掲示板を賑わしたことは、もはや言うまでもないことだろう。
―――
【化物対策本部@14】
1・名無しさん@大剣使い
前スレ【化物対策本部@13】
基本的には【雑談スレ・クノ編】と変わりません
クノに関する情報を話し合ったり、愚痴ったりするスレです
2・名無しさん@刀使い
>>1乙
多くのプレイヤーがオルトスさんスレに居る中、何故このスレを立てたしw
3・名無しさん@双剣使い
何故だろう、掲示板を開いたと思ったら、気付いたらここにいた
何を(ry
4・名無しさん@短剣使い
オルトスさんのパーティー、確か第三のボス討伐したんだよな?
さらっとしか聞いてないけど
5・名無しさん@長槍使い
初見でギリギリ討伐したらしい。
むこうのスレは今祭りやってるから、お前らも参加して来いよw
俺はここにいるけど
6・名無しさん@刀使い
おっかしいな……なんでおれはこのスレを開いてるんだろうか
オルトスさん祭りに行こうとした筈なのに
7・名無しさん@短槍使い
何故かクノスレが立ってると反応しちゃう自分がいる
びくんびくん
8・名無しさん@片手剣使い
>>1こんな時に立てたからには、なんか凄いネタが有るんだろうな?
9・名無しさん@大剣使い
>>8勿論だ。
立てずには、居られなかった。俺は立てることを強いられているんだ!
10・名無しさん@刀使い
だいたい何のネタか察しはつくがw
というか祭りが終わったら俺がたてようと思ってたのにw
11・名無しさん@双剣使い
>>10俺も立てようと思ってた
12・名無しさん@短剣使い
>>10俺も
13・名無しさん@大剣使い
今回のネタは、クノにとってはもはや日常茶飯事なのかしらんが、またアレだ。
14・名無しさん@刀使い
西狩り、北狩りと第一エリアでやらかして、今度は第三での東狩りか
もうクノは、モンスターにとっての魔王だろw
あのなんか勇者っぽい奴呼んでこいよ……
もしくは侵略兵器 モンスターが可哀そうになるレベル
そして驚きの殲滅力w
15・名無しさん@長槍使い
詳細
後、勇者っぽい奴って誰よ?
16・名無しさん@大剣使い
「ロビアス」の東フィールド
なんか、モンスターが次々とクノに向かって行って、次の瞬間には消されてた。
何が起こったのかよくわからなかったが、とにかくやばかった。
クノの周囲には黒い腕みたいなのが四本浮いてた。
禍々しさがマックスハートだった。
全体的に真っ黒だった。
17・名無しさん@短剣使い
でもってその腕と、自前の腕で計六本の黒剣を振るってた
やばかった。あれはやばかった
剣のスピードと正確さも人外の域、更に言うとなんか無表情で高笑いしてた
いや、ホントやばかった
あれには狂気を感じた
真っ黒だった。心まで真っ黒だった。
18・名無しさん@片手剣
クノ……遂に人間やめたのか
六本腕操るとか、尋常じゃねぇ脳してんな……
19・名無しさん@刀使い
>>15ほら、一昨日辺りにスレがたってたミカエル
とかいうプレイヤー。顔とか雰囲気とか装備とかがやたら勇者っぽい(笑)
無修正イケメソまじ爆死
つかクノも地味にイケメソ爆死
>>18元々人間じゃねぇよww
20・名無しさん@双剣使い
>>19人間じゃない確かにw
あと、クノはクール系いけめそだが、
目がナマモノじゃないから大丈夫!
21・名無しさん@片手剣使い
>>19そういやそうだったwとっくに人間やめてらしたなw
すまんすまんw
そしてミカエルw クノとは別の意味で話題性乙
22・名無しさん@刀使い
更に言うと、真っ黒な騎獣を従えてた
クノはどこにいくつもりなんだろうか……
23・名無しさん@長槍使い
>>19サンクス。スレ探してみるわ
>>22騎獣?
まじか。あれ従えるとかクソめんどいぞ
おれは諦めた
24・名無しさん@双剣使い
まず背中に乗せてくれないっていうね。騎獣なのに
そして苦労にたいしての対価が少ないっていう、ね
ぶっちゃけ騎獣は、総合的にいろいろと人を選びすぎる 俺も諦めた組
25・名無しさん@短剣使い
クノが従えてた奴は、「ドラク・レイヴィアス」って種類だったハズ
スラスター系機械翼がかなりイカすが
プライドの☆が5だ←
やばい。俺の語彙がやばいに集約しつつあるレベルでやばいなクノ
26・名無しさん@大剣使い
>>25プライド☆5とか無理ゲーだろwww
騎獣スレみたけど、
プライド☆5のところには「諦めろ」って一言しか書いてなかったぞ?
更にそのことについて誰一人突っ込んでなかったぞ?
いっそあの連帯感は怖いレベルだったんだが
なんでクノは使えてるわけ……
27・名無しさん@双剣使い
>>26クノだから
これでおk
28・名無しさん@短剣使い
あぁ……おk
そうか、クノだったな
人間の常識に当てはめちゃいけねぇよな
29・名無しさん@大剣使い
実際これで全部解決しかねない辺り……クノェ……
そしてここまで「クノだから」に違和感を抱かなくなってる俺らェ……
31・名無しさん@長槍使い
ホントあれだよなぁ。
着々と調教されてきてる感がやばい
32・名無しさん@刀使い
ホントだよなぁ……
以下、クノの異常性に毒されつつあるプレイヤー達が、危機感を抱く。
そしてその危機感すら「クノだから」で片づけられる辺りもう手遅れ。
61・名無しさん@短剣使い
ちょっと話戻るけど
クノは突っ立ってるだけで、モンスターが寄ってくるじゃん?
なんであんなにモンスターが寄ってくるんだろうな?
今日のやつなんか、ヤバいくらいのバキューム率だったし
62・名無しさん@刀使い
>>61クノだから
真面目に考えると、なんかスキルかアイテムでも使ってるんだろ
クノは基本動かない(=Agiが低いと予想)から、それを補うためじゃないか?
騎獣も召喚時間に制限あるしな
63・名無しさん@双剣使い
そんなスキル有るっけ?
64・名無しさん@大剣使い
【誘う眼差し】AS
視認したモンスターを自身の方向へと引き寄せる
非戦闘時のみ有効
効果時間:10秒間
こんなんとか?
65・名無しさん@刀使い
>>64でも、後ろからも来てたぞ?
その後ろのモンスターをノールックで切り捨てるクノについても一言申したいが、
今は置いておいて
視認してないところからも来てることは確か
更に言うと、明らかに視界から外れてるところのモンスターもバキュームされてた
66・名無しさん@大剣使い
じゃあ、
【撒き餌】AS
同フィールド上のモンスターを5体まで引き寄せる
引き寄せられたモンスターはHP上昇+100%
再発動時間:60分間
効果時間:120秒間
って思ったけど、クノのあれは明らかに五匹超えてたしなぁ
67・名無しさん@片手剣使い
>>66なんぞこの微妙に使えそうにないスキルww
68・名無しさん@短槍使い
>>66こういう明らかに使えないだろう、
ってスキルまで完備してんのが『IWO』のいいところでもある
ホント、スキルに関してはピンキリだよなぁ
69・名無しさん@刀使い
自分の取得可能スキルだけでも目が回るほどあるからなぁ
総数にすると、どれくらいになるのかねぇ……
というか俺的には、クノが使ってるのは未発見のスキルorアイテムと予想
70・名無しさん@双剣使い
>>69やっぱ未発見かー。妥当なとこだな
てかクノは未発見持ちすぎだろw
赤のオーラとか黒のオーラとかなんか六芒星が浮き出るやつとか黒い腕とか←New!
71・名無しさん@刀使い
>>70多いなまじでwww
俺達とは行動が根本的に違うんだろうな……流石っすわぁ
あと、上で言ったノールックから、きっと未発見の知覚系スキルも持ってると予想
【心眼】あたりも死角までは対応してなかったと
72・名無しさん@長槍使い
やばいっすわぁ
パンドラボックスっぷりがぱないw
追加で、そもそも剣を六本持ってることから、
それを可能にするスキルもだな
73・名無しさん@片手剣使い
>>72パンドラボックスw 的を得ているw
いや、まじで多いな!?(驚愕
74・名無しさん@双剣使い
>>73居ている、だな
75・名無しさん@大剣使い
>>74射ている、な
76・名無しさん@短槍使い
www
その内クノは二つ名でも付きそうだな
候補が多すぎてアレだがw
『IWO』発売から一カ月以上……二つ名スレはまだか!
おまけ:
主人公と一般プレイヤーのステータス比較(Lv38)
クノ
Str 1341(1475)
Vit 0
Int 0
Min 0
Agi 0
Dex 0
一般近接プレイヤー(大体の平均)
Str 457(479)
Vit 259(271)
Int 0
Min 84
Agi 215(225)
Dex 0
なんという偏った比較。
()内の値は、【(ステータス)強化】スキルの効果適用後の値。そしてこのスキル以外のステータス上昇系スキルは、この()内の値(「基礎ステータス」と呼称)を参照し、ステを上昇させます。(強化スキルはステータスポイントを振った値を参照)
ちなみに上昇は~%で表わされているが、全て基礎ステの~%を加算という方式である。
主人公はスキル等を合わせるとStr5000以上まで跳ね上がるという……しかも与ダメ1.5倍……なんという理不尽。
ジャストキルなんて微塵も考えない、スーパーオーバーキル仕様となっております。
運営が一周回って感覚麻痺してくるレベル。