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第五話 フィールドにでるお話



「大丈夫だったか?」


 玲花はこの容姿だ。こういうことは慣れっこかも知れない。それでも心配の言葉を押さえられないのが人間というやつだ。


「はい!おかげ様で。有難うございました」


 ベンチに座りながらぺこりと頭を下げる玲花。


「なら良かった。」


 あ、そうだ。そういえば……


「玲花、早いとこフレンド登録しとこう。……申請送ったからなー」

「了解です~。承認っと」


 “フレイがフレンドになりました”


「玲花はフレイね。ゲームの中ではキャラネームで呼びあうか。オーケー?」

「オーケーです、クノさん。ところで、今からフィールド出ます?」


 初心者用の狩り場は確か街の南方面だったか?とりあえずそこにいって、戦闘がどんなもんか確かめるか。


「じゃあ、南にいくか。パーティー申請もしとくぞー」

「はい!」


 パーティを組むのは、経験値は山分けになるが人数によって経験値ボーナスが貰えるし、なにより多人数でやった方が効率よくモンスターを倒せるからだな。

 ということで俺とフレイは始まりの街、「リネン」の南門へと向かった。



 ―――



 南の草原 入口付近


「うわぁ、凄い人ですねー」


 フレイの言うとおり、南の草原には沢山の初心者プレイヤーであふれていた。まぁ当然といえば当然だな。みんなここで感覚をつかんでから西や東にいくんだろう。

 ちなみに北は「リネン」の周りで最も敵が強いため、あとしばらくは行くことはないと思う。


「もうちょい奥の方にいくか?これじゃあ相手にできるモンスターがいるかさえ怪しい。」


 事実さっきから現れるモンスターとは、ポップした瞬間に他のパーティーの皆さんがエンカウントしている。


「ですね~。じゃあちょっと走りますか?」


 ……走る、か。そうだ、失念していたな


「それはできればやめて欲しいんだが」

「ふぇ?なんでですか。」

「……俺Agiに1たりともポイント振ってないんだよ」


 そう、俺はAgiにポイントを振っていない。リアルでは運動は得意なほうだが、持久走なんかは苦手な部類だ。そんな俺が、Agiに(おそらく)ポイントを振って、速度、スタミナ(Agiは移動時のスタミナも強化してくれる)その他が強化されたフレイについていけるとは思えない。

 防具の補正も微々たるものだし...しかもこのフィールドかなり広いし。プレイヤーが少なくなる場所までどのくらいの距離があるんだろうか、想像するだけでげんなりする。徒歩もかんべんだよなー。時間がかかりすぎるし。ここらへんはAgiにポイントを振っていること前提で作られたフィールドが憎いよ。


「ええぇ!まさかのクノさんが遠距離系ですか。意外……」

「いや、バリバリの近接系だけど。ほら、武器も長剣だし」


 俺はいままでインベントリにしまってあった「古びた長剣」を取り出し、フレイに見せる。


 おっ、意外と軽いな。まぁ初っ端剣が重いとか萎えるし、そこはゲーム補正ってとこか。

 攻撃の威力の方は武器じゃなくて主にステータスで決まるしな。


 武器や防具は、「装備」をすると装備欄に移動し、そこから実体化させる。防具は装備欄に移したら自動で着替えがされるみたいだ。

 しかし武器はいちいちメニューの《equip》から実体化させないとなので、フィールドにでたら出しっぱなしにしておくのが普通だな。仕舞うときはその意思を持って念じれば自動で実体化が解除されるらしい。


「あ、本当ですね。クノさんはやっぱ近接……って、ええぇぇ!」


「フレイ、声でかい。周りに注目されてるから」 


 俺達はとりあえず、邪魔にならなそうな南門横の外壁付近に移動し、俺は外壁によりかかる。ちょっと興奮気味のフレイは


「近接系なのにAgiにステ振ってないんですか! どうやってモンスターの攻撃かわしたりするんですか! どうやってフィールド移動するんですか? 徒歩ですか! どんだけ時間かかるんですか!」

「ちょっフレイ、落ち着こう、な? そんな興奮することでもないだろ」


 そういうとフレイは、はっ、とした目つきに戻り


「……はぁ。すいません、ちょっとびっくりしちゃいました。でもなんでAgiに振ってないんですか? これからふってもポイント半減だし、取り返すのは厳しいですよ? てかむしろ何に振ったんですか」

「ん。知ってる。まぁ、ほら。人とあえて違うことをするのが俺クオリティだから。ネタキャラ覚悟でStrに120全部振った」

「」

「どした?」


 フレイが固まった。あ、ちょっとぷるぷるしてる、可愛いな。


「……なぁ……はぁ……いや、そういえばそうでしたね」

「何がだ?」

「ええ。クノさんはそういう人だったなーっと」

「……わかってくれて嬉しいよ。」


 褒められてんのか貶されてんのかいまいちだけどな。まぁ、こういう楽しみ方もありだろ。ゲーム何だから。


「じゃあ、クノさんはここから西にいったらどうでしょうか。あそこならまだ人も少ないでしょうし、多分クノさんのセンスと攻撃力なら立ちまわれますよ。少なくともここで延々歩き続けるよりかはいいかと」

「かもな。あ、でもフレイはどうするんだ?」

「私はAgi優位でStrはそこまでふってませんからね~。西はまだ効率悪そうなんで、残念ですけどクノさんとは別行動ですかね」

「そっか。悪いな、折角フレイが誘ってくれたやつなのに」


 フレイはぽやや~ん、としてる奴だけど、割と非効率な事はやりたがらない。面倒くさがりやともちょっと違うんだが。

 まぁそんな訳だから俺と組んで狩りをするのが今の段階ではお互いのためにならないと判断すれば、別行動の提案もできる。……普段はうるさいくらい俺にべったりなくせになー。寂しいなんてちょっと思った自分は心の底に封印だ。


「いえ。私も攻撃力が上がったら西にいきますし。そしたらクノさんと一緒です」


 うむぅ……悪いのは全てこの人の多さと考えなしにStr極振りした俺だな! うん。極振りは変えるつもりはないけど。


 フィールドは街をぐるりと囲むように存在しているので、南と西はつながっていることになる。とはいえ、あわい黄色の光の帯で仕切られていて、通りぬけることはできるが帯のあっちとこっちではモンスターのレベルが段違いなのだ。


 という訳でフレイとパーティを解散し、俺は街の外壁沿いに少し歩いて西のフィールドに入った。



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