第二十七話 報酬のお話③
5/5 【武器制限無効化】の効果変更
「アーツ使用不可」→「武器アーツ使用不可」
分析終了、かな。
「ん~。こんなとこかぁ。じゃ、お待ちかねのスキルに目を通していきますかね」
あまり意味のなかった気もする考察を終え、改めて報酬一覧のスキルカテゴリを見ていく。
何か役立ちそうな物はないかと、目を皿にして一覧をスクロール。
普通とは違う使い方で俺の目的が達成されるようなスキルもあるかもしれないため、念入りにチェックだな。
ちなみにこのスキル数、合計38個だ。多くない?
…
……
………
うん。
とりあえず、これだっ、というようなスキルはなかった。
まぁそううまくいかないよなぁ。
いくつか良さそうなのは有ったんだけど、デメリットを考えると微妙……というものばかりだったし。
はぁあ。
俺は少し落ち込みながら、イベント報酬の方は一旦置いておき、MVP報酬の方を展開。
こちらはどうやら、スキルしかないみたいだ。
数もイベント報酬のものより少ないな。14個。
その分レアなものがあるってか? 期待値も鰻昇りだが~?
一覧をスクロールしていく。
どれどれっと……
……んー。
……【剣圧】というスキルを発見。
攻撃可能範囲を増やすアクティブスキル……あ、だめだ。戦闘中に五撃分しか発動できないや。長期戦に対応できないじゃないか。
しかしこれ以上によさそうなのは……
おろ?
スクロールしていった、一番最後らへん。
なんというか、説明が明らかに普通のスキルとは一線を画する、ネタとしか思えないようなスキルを発見した。というか、そんなスキルが四つ並んでいた。
こんなんがMVP報酬で、いいのか運営陣。いや別にケチつける訳じゃないけども。
それが、これらだ。
【虚構の偽翼】【幻想の偽尾】【異形の偽腕】【至綱の偽棘】
……名前だけは無駄にカッコいいし、良い感じじゃね? って思うだろ?
だがしかし! 効果説明がお粗末すぎるんだよなぁ。他に割の良い報酬が有る中、これを好き好んで取るプレイヤーはよほどの物好きなんじゃないかなー。
でもこれ、俺の予想だと、使いこなせたら相手の攻撃を捌ききるのも夢じゃないような……どうだろう?
四つの中で、特に俺の目を引いたのは、【異形の偽腕】だ。
肝心の効果説明は、こんな感じ。
【異形の
『腕』が増える
効果時間:任意
※操作は個人によって適性有り
うん。なんだコレは、って感じだよな。
もうちょい詳しく説明があってもいいんじゃないかい?
増えるって、おい。短いよ。開発仕事しろ。
他の三つも同じ感じで、端的すぎる素っ気ない説明だった。
しかし、興味をひかれることは確かなんだよなぁ。全くこのゲームは……なんでも有りなのか?
とりあえず、疑問点をあげてみようか。
まず、腕ってどんな腕だよ。大きさとか、形とか。
でもまぁ、そこは“ぎわん”という言葉の響きからすると人間を模した形の可能性が高いか? いやでも異形ってついてるしなぁ。
最悪物がつかめれば大丈夫だけども……
後、増えるってどこからだよ。
オーソドックスに身体から生えてくるのか、はたまた地面とか壁から生えてくるのか、それとも虚空からにょきっとくるのか。言葉に幅を持たせすぎだと思うんだ。
そして、何本増えるんだ?
明確に本数が記載されていないのは、何本も生えてくるということなのか? そこも任意?
注釈の“操作”という言葉からするに、自分で思い通りに動かせるんだろう。このスキルの最大のポイントはここだな。
だが、果たして俺に適正とやらはあるのか? 流石にごく一部の人間しか扱えないようなモノが報酬になっているとは考えにくいが、このゲームならそれもあり得そうで怖い。
せめて動かし方とかの説明があると嬉しかったんだがなぁ。
そして動かせたとしても、俺の考える実戦レベルで操れるのかどうか。
簡単な動きしかできなかったらアウトだな。
筋力とかのステータスはどうなってるんだろうかって疑問もあるし。
そこは持ち主(?)のステータスと同じと考えるのが普通かな?
とまぁ、このように疑問は多いが。多いんだがぁ……
……さきほどイベント報酬で発見したあるスキルを組み合わせれば、俺の弱点を補えるものになってくれるんじゃないかとも思うんだよなぁ。
もっとも、俺の予想が外れていなければ、だが。
まぁ。そうでなくても
むしろこのふざけてるとしか思えないような説明文も、開発の罠かもしれなくて、実は凄いスキルだったりしてね。
極振りまでしたんだ、こういう悪ふざけ的なことに敢えて突っ込むのも良いかな。
うまくいったら儲けもん……うまくいかなくてもフレイ達に話す話のネタにはなるかなぁ。
だがしかし、報酬は貴重なものであり、【剣圧】というスキルも貰えるなら貰いたい。
……むー。
そしてじっくり考えた結果。
元々【剣圧】はピンとこなかったことも合わさって、結局俺は【異形の偽腕】を選択することにした。
うん、これでハズレだったり俺に適正とやらがなかったら、フレイに盛大に笑ってもらおう。
スキルを選ぶと同時に、俺の身体が薄く光る。どうやら、選択と同時に取得できるみたいだな。
そして俺はイベント報酬に戻り、【武器制限無効化】というスキルを選択する。
【武器制限無効化】PS
武器制限を無効化する
武器アーツ使用不可
武器制限とは、「一個の武器しか装備することができない」という縛りみたいなものである。もっと言うと、「装備」という機能自体を別の言葉で言い表したものだとも言える……のかな?
公式で明言はされていないんだが、そんな感じのはず。wikiでも同じような言葉が出てきていた。
ちなみに、「双剣」のような対になっている武器は二つで一個つの武器とみなされ、「短杖」「長杖」「魔書」は武器のカテゴリには入らない。
属性魔法を使うための「補助器」というカテゴリで、そのため最初の武器スキル選択の時にも魔法系は武器種ではなく【~属性魔法】が選択できた。
後、地味に「盾」系スキルも武器スキルではない。まぁ攻撃力が設定されてないから当たり前っちゃそうか。
また、属性魔法スキル、補助器スキル、盾スキルは「武器スキル」と違って何個でも取得することができるんだけど……今は関係ないな。武器制限の説明だった。
で、だ。
この武器制限がなくなると、例えば“大剣で二刀流”とかの浪漫が実践できるようになるんだ。武器制限無効化ってのは、武器を何個でも扱うことができるって訳だな。
このスキルもスキルで、結構レアな部類のスキルだと思う。
しかし、その代償は、このスキルの場合“武器アーツ使用不可”。
このゲームにおいて、アーツは対プレイヤー戦においては決まった動きしかできないので敬遠される一方、対モンスター戦においては猛威をふるっている。
“アーツを制す者は戦闘を制す”
一番初めの説明で、ジャッジさんが口にしていた近接戦闘の極意だ。今なら確かに、と頷ける言葉だな。
そのためこの“武器アーツ使用不可”の代償は大きいものだが、【異形の偽腕】をうまく扱うことができればその欠点を補って余りある威力が生み出せると俺は考えている。
なんたって、普通ならできないレベルで手数が増えるんだから……多分。
まぁ、どちらを取るかと聞かれて、ハイリターンが期待できそうな方を取るのは基本だよな?
たとえ多少、リスクが高くても。というか、でないとこの先本格的にやっていけなくなる恐れがあるし。
後、別に俺のStrならアーツ無くてもモンスターを一撃で倒せるってのも大きい……ボス以外なら多分。
俺の予想通りの場合、【アーツ威力強化】のスキルを捨てる必要があるな。
スキル枠が一つ空くから、その分新たに攻撃力を強化するスキルを入れようっと。
ここで【投擲】か、それとも【付加魔法】か。悩むな~。
って、今悩むべきことでは無いのか。
「ふぅ、こんなもんか。あー、なんか疲れた」
ばふん、とベッドに倒れ込む。憎らしいことに、俺の部屋のものよりふかふかだ。
そうして、俺は増えたスキル枠を全て埋め、代わりに、試す価値のある可能性を手に入れたのだった。
ちらっと時計を見ると……現在時刻、16時48分。
……やべぇ、姫との約束に遅れるっ!
街の中でも使える【異形の偽腕】の効果を試したかったが、そんな暇はないな。
俺は急いで「ウウレ」の中央広場を目指したのだった。
おもしろそう、で貴重な報酬を棒に振るかもしれない選択をするのがクノリティ。後悔はしてません。
補足
生産系スキル(ちらっとでてきた【修復技能】とか)の例もあるように、基本的に“戦闘中のみ発動可能”と書いてないスキルであれば、街中でも発動はできます。
アーツ、魔法は全て戦闘中以外は使用不可。
おまけ
【虚構の偽翼】
『翼』が増える
【幻想の偽尾】
『尾』が増える
【異形の偽腕】
『腕』が増える
【至綱の偽棘】
『棘』が増える
※全部揃えてもミ○ドラースのようにはなりません、悪しからず。