第二十六話 報酬のお話②
後は単純にVitが足りないことによる防御力の低さだが、これはもともと諦めているので気にしないことにする。防御力はいわば、“自分が対応できない攻撃に対する保険”だ。
本来ならこの「保険」が今の俺にとってはもっとも必要なんだが、そのためにステータスを割くのは本末転倒なので、すっぱり思考外から追いやることにする。
なんとかして攻撃を喰らわない方向で行かなくてはだな
そして持久力の無さ。Agi、Vitが足りない事によっておこる問題だ。
スタミナが足りない、力を加え続けることができない、という欠点だな。
スタミナに関しては長距離の移動は勿論のこと、戦闘の際にも制限がかかる。
普通のプレイヤーの戦闘のように、走り込んだり飛びさすったりと激しく動き回っていると、スグに体力切れになってしまうのだ。
これの対策としては、戦闘ではなるべく動かず一点に留まって、こちらに向かって来たモンスターだけを斬り捨てていく、という戦法を取らざるをえなくなる。
それによって戦術の幅がかなり狭まってしまう訳だな。いや、もとより戦術なんか考えたことなかったケド。
力を加え続けることができない、というのは、鍔迫り合いをした時なんかには致命的だ。すぐに腕が、丁度今日の対抗戦で旗を運んだ時みたいに、疲労で持ち上がらなくなってしまう。
……アレ? 逆に言うと、そのくらいでしか障害にならないとも言えるか。これが問題になるのは、大剣なんかの(超)重量級武器を扱う時ぐらいだろうが、そんな予定もないし。
いや、それもそれでなぁ……やっぱり大剣は使いたかったなぁ……でかい武器は男の浪漫だろ?
極振りとの両立が厳しいというのが本当に悔やまれる……くっ。攻撃力を求めた結果、大剣が装備できないなんてなぁ。
まぁそれは置いておいて。
鍔迫り合いにしてもそこに持ち込まなければ良い話だしな、無問題だ……とか言いながら今日の対抗戦では鍔迫り合いをやろうとして、攻撃をくらってしまったんだが。
うん、良い教訓になったな。
ちなみに腕なんかの筋肉的疲労は、スタミナ切れの疲労とは違って、すぐに治る。ここら辺はやっぱりゲームだなーと感じるな。
後、Vitが足りなくても剣を振る分には、元から軽めの剣をエリザが更に軽量化してくれたことも相まって問題はない。
剣を振る、という動作は常に力を出し“続け”なくても、一瞬全力がだせればこと足りるからな。
“力を込めたまま連続で振り続ける”とかなったらまた別だが、そんなことをする必要は基本的には無いし。俺は一撃一撃の威力を大切(?)にするタイプだからね。
ちなみに腕を振ることに関してだけなら高Strで負担が極端に軽減されているのか、スタミナ的にも特に問題はなかったりする。これは素直に嬉しいことだね。
まぁ、あくまで“剣を振る”という動作のみならだが。
そして、振り切ってから相手の攻撃に備えて戻すまでの敏捷性が足りないため、普通より隙ができてしまうというのも悩みどころだな。そしてその隙は今後、命取りになると思うんだ。
いくら剣速があったって、その後のリカバリーがお粗末じゃあ反撃でやられるだけだしな。
だから俺はモンスターやプレイヤーに対しては、基本的に相手の攻撃を弾いた後に攻撃をするようにしているんだが。少しでも自分の攻撃の隙を、相手が見逃してくれるようにな。
とはいえ、今日のレベルでいくと“まだ”そんな対策は必要なかったみたいだけど、レベルが上がっていけば、ね……
ふむ、後はIntとMinとDexか。
Intはまぁ、攻撃魔法を使う予定はないので大丈夫だろう。
属性魔法以外の魔法は、Int依存というよりは魔法スキルごとに効果が決まっていて、それが変わるとしたら上位変化で上位のスキルになるぐらいだし。
Minは……魔法に対する防御は難しいだろうけど、魔法は詠唱があるせいで発動までに時間がかかるからな。
【危機察知】で発動の予備動作、詠唱の段階から予測できるみたいだから、たとえ範囲魔法でもなんとかなるはずだ。今日の対抗戦でもそれで大丈夫だったし。
やっぱ範囲のある攻撃は、事前準備もそれなりに長いからな。範囲自体が見える以上、走ればなんとか範囲を抜けられるハズだ。やたら詠唱速度が速かったりしたらお手上げだけど。
あと、「テルミナ」で見たことあるんだが、「詠唱破棄」とかな。
まぁ、そん時はそん時かなぁ……一応範囲系の魔法に対する対抗手段も必要、ってことは覚えておこう。
単体魔法なら、発動は早くても剣で弾けばいいだけだ。こっちは対応策が思いつくだけましだな。
……しかし、マシンガンのように数を撃たれたらアウトか。これについては、やっぱ広範囲を薙ぎ払えるような攻撃手段が欲しいところだな。いちいち全部弾くのは無理くさいから。
いや、もしくはスムーズに連続で腕を振るえるようになれば、全て弾くのも不可能ではないか? 軌道は予測できるし、剣速は十分なんだし。まぁ、それが無理だからこんな悩んでるんだけど。
Dexは生産系のスキルだったり、戦闘では遠距離攻撃(矢や魔法)の威力や精密さにかかわってくる。ステータスの効果としては、生産系スキルの強力化、遠距離攻撃の軌道を思い通りに修正するって感じかな?
生産スキルにしても手先が器用になる訳ではないし、遠距離攻撃に関しては攻撃自体が恩恵を受けるしと、あんまし身体に直接かかわってくるものではないな。
しかしながら、魔法はDexが無いとそもそも攻撃が当たらないし、弓系の場合はDexの数値が攻撃の威力に直結してるから尚更大切になってくるステータスである。
もっとも、戦闘に関してはこの二つ以外には、あんまり関係が無かったりする。他のゲームではクリティカル率に関係したりするが、『IWO』ではそもそもクリティカル攻撃の概念がないんだよなぁ。
後、俺に関係ありそうなことで言うと……対抗戦でちょっと味をしめた、投擲攻撃とかか。
確かに、投擲攻撃の精密さにも関わってくることはそうなんだが、Dexはあくまでも攻撃の精密さしか上げてくれないんだよね。だから例えば、投げナイフの威力や飛距離なんかは、Strの領分になってくる訳だ。
そして投げナイフといえば、あくまで戦闘のフォローという認識が強いので、軌道修正が生きるほど遠くから投げることも少ないし。遠距離攻撃したいなら素直に弓でも使えって話だ。
かといって中・近距離だと、Dexによる軌道修正が出てくるまでもなくそこそこ精密に投げられたりするんだよな……
ただ上記はあくまで、俺の場合は、だ。……普通はDexのサポートが必要なのかな?
「テルミナ」では斥候職としてサポートとして投げナイフを扱っていたから、こういう投擲は身体が覚えてるんだよな。爺さんの武器訓練プログラムにも、大型シ―スナイフの項目では投擲術もあったし。
あ、そうそう。
投擲攻撃の補助スキルとして【投擲】スキルもあるけど、あれは精密さと威力を“スキルによって”上乗せすることに加え、ある程度軌道を操作することができるようだ。とはいっても、精々緩やかに弧を描くとか、そのレベルだが。
カクカクと激しく動いたりはしません。いや、上位変化ならそれもあり得るか……? このゲームは底が知れないからな。
今後遠距離に対応するために、【投擲】は取っておきたいスキルの一つでもあるよな~。
先に言ったように、別にスキルがなくても投擲はできるが、結構神経使うんだよね。投擲フォームとかさ。
スキルがあれば結構適当に投げても対象に当たるようになるし、なにより威力が上がる!
火力特化としては、サポート的動作に含まれる投擲でも、攻撃力に妥協はしたくないのですよ。
と、まぁ他のステータスに関してはこんなものか。途中なんか脱線したような気もするけど。
こうして考えてみると、俺の今後の戦闘スタイルも自然、限られてくるよなー。
つまり、基本は待ちの姿勢で、相手の攻撃は全て、ひたすらその場で迎え撃つカウンター戦法?、と。
ただこれは、一対一ならこれで大丈夫だろうって程度なんだけど。やっぱ極振りにしながらどんな状況にも対応できるってのは無茶な話なのかねぇ?
対複数だと、どうしても多方向からの攻撃に対応しきれないだろうからな。
剣と剣を振れる腕が一本しかない以上、複数の攻撃を迎え撃つにしても無理な体勢になって隙だらけでハイ終了、がオチだろうし。
どうしたもんか……
ただ、敵の速さに対応できるのが剣を振るう速度だけである以上、このスタイルにならざるを得ないのは確かだ。少なくとも、俺が考えつける中では。
うーん。
やっぱ相手を一度大きくに吹っ飛ばせるような広範囲攻撃スキルが欲しいところだなー。
もしくは、複数の相手の攻撃を捌ききれるようになるようなスキル。自動迎撃、とか? や、そんなものがあったらステータスの意味が……でもスキルに関してはないといいきれないのがこのゲームだしなぁ。まぁ、一応心に留めておくか。
攻撃といえば、アーツでそれっぽいのがでればいいんだけど、確実性がないため、あてにはできない。
が、今回の報酬に良いスキルがなかった場合はそれっぽいアーツを覚えることか、良いスキルが出現することを信じて延々レベル上げをしなくてはいけない訳か。
極振りって、大変だなー。
と、そんな凄い今更なことを改めて確認するのであった、まる。
くっ、この回で報酬選択まで行けなかった……
お昼辺りに③を投稿予定。今度こそ報酬を選択します(断言)